母子家庭で公立高校の学費が払えない!母子家庭が公立高校の学費を用意するのに利用できる制度は?この記事では、母子家庭が公立高校の学費を払うときに利用できる制度を紹介します。前もって高校の学費を用意するコツも解説するので母子家庭の方はぜひご覧ください。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

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母子家庭で公立高校の学費が払えない!利用できる制度は?

内容をまとめると

母子家庭で公立高校の学費が払えない場合は以下の2つの制度を利用することができる

・高等学校等就学支援金制度(無償化) 

・高校生等奨学給付金 

その他にも以下のような制度の利用も可能 

・母子父子寡婦福祉資金 生活福祉貸付金制度の「教育支援資金」 

・就学支度資金貸付制度 

・修学資金貸与制度 

・各自治体が設ける学費支援 

・国の教育ローン 

・ひとり親家庭支援奨学制度 

・民間の奨学金制度

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こんにちは、マネーキャリア編集部です。


先日、高校生のお子様を持つ母子家庭の母親からこんな相談がありました。

収入が低いため、子どもの学費が払えないのですが、どうしたらよいでしょうか。

子育てをしながら相応の収入を稼ぐためには気力だけでなく、職務能力などが必要になります。


しかし、このような条件を満たしている方はごく少数です。


平成28年のデータによると母子家庭の年収の中央値は100~200万円と低収入になっています


「このような収入でも子どもの学費を支払うためにはどうしたらよいのだろうか。」


このような母子家庭を対象に支援金や奨学金制度はいくつかあります。


今回は母子家庭で高校生の学費を支払えない方が利用できる制度について紹介します。


生活に困っている母子家庭の方のお手伝いになれば幸いです。

母子家庭で公立高校の学費が払えないときの主な制度2つ!


まずは母子家庭で公立高校の学費が払えないときに利用するべき制度を2つ紹介します。


  1. 高等学校等就学支援金制度(無償化)
  2. 高校生等奨学給付金

①高等学校等就学支援金制度(無償化)

1つ目の制度は高等学校等就学支援金制度です。


この制度は、申請要件に該当すれば、公立高校に通う高校生1人につき公立高校の1年間の授業料である11万8000円が支給されるという制度です。


この支援金は申請者が国から受け取るのではなく、国が学校に直接授業料を支払うことになっています。


そのため、授業料は実質無償化されることになります。


高等学校等就学支援金制度の支給要件は、親権者の所得額であり、以下の要件満たす必要があります。


  • 市町村民税の課税所得額×6%-調整控除額<30万4200円
給与所得者の場合、年間の住民税から均等割額の5000円を差し引いた金額が30万4200円未満であれば、要件を満たすことになります。

世帯収入で約910万円よりも低い世帯が所得要件を満たします。

なお、上記の計算を厳密に行うと複雑でかつ市町村によって計算方法が異なるため、市町村役場に一度問い合わせてみましょう。

高等学校等就学支援金制度の書類が配布される時期は6月下旬から7月上旬、提出期限は7月下旬となっています。

提出書類である受給資格認定申請書とマイナンバーカードの写しを学校に提出することで申請が完了となります。

②高校生等奨学給付金

2つ目の制度は高校生等奨学給付金です。


この制度は授業料以外の教育費の負担を減らすために低所得の世帯を対象に必要経費分を給付します。


具体的には教科書代やPTA会費、修学旅行費などに使うことができます。


年間給付額は、世帯収入や子どもが通っている課程によって異なりますが、住民税非課税世帯で全日制の公立高校に通ってる高校生に対しては年間11万100円が支給されます。


なお、高校生等奨学給付金は返済する必要はありません。


高校生等奨学給付金の支給要件は住民税非課税世帯となっています。


住民税非課税世帯とは、住民税の所得割と均等割がともに非課税になる世帯のことです。


母子家庭で母親が給与所得だけの場合、年収の目安は204万円以下となります。


高校生等奨学給付金の申請時期は高等学校等就学支援金制度と同様に、6月ごろ各学校で案内が開始され、申請期限は7月下旬に毎年設定されています。


新入生に関しては給付の一部を早められる制度があるため、詳しくは案内を確認しましょう。


提出書類は申請書以外に課税証明書などの所得に関する証明書が必要になります。

「高等学校等就学支援金制度」と「高校生等奨学給付金」の違い

「高等学校等就学支援金制度」と「高校生等奨学給付金」の大きな違いは以下の2点です。

  1. 給付金の用途が異なること
  2. 給付対象となる所得額が異なること

給付金の用途が異なる

1つ目の違いは給付金が支給される用途・目的が異なることです。


高等学校等就学支援金制度は公立高校の授業料に対して支給される支援金です。

一方、高校生等奨学給付金は教科書代などの授業料以外の経費に対して給付される給付金です。


このように支給される用途・目的が異なっています。


また、前者の支援金は申請しても申請者に給付されるのではなく、学校に直接支払われるため、実質的に授業料が無料となります。


一方、後者は授業料以外で補助ができるように国から申請者に直接振り込まれるようになっています。


給付対象となる所得額が異なる

2つ目の違いは給付対象となる所得額が異なることです。

高等学校等就学支援金制度の所得要件は上記で説明していますが、年収の目安としては約910万円以下です。

この所得額は母子家庭でなくても、多くの世帯で所得要件を満たすことができます。

一方、高校生等奨学給付金の所得要件は住民税非課税世帯と低所得者を対象としています。

多くの母子家庭では両方の制度を利用することができると考えられます。

母子家庭が公立高校の学費を払うのに利用できる他の制度を紹介!


ここからは母子家庭の世帯が公立高校の学費を支払うために利用できるほかの制度を紹介します。


この記事では以下の8つを紹介します。

  1. 母子父子寡婦福祉資金
  2. 生活福祉貸付金制度の「教育支援資金」
  3. 就学支度資金貸付制度
  4. 修学資金貸与制度
  5. 各自治体が設ける学費支援
  6. 国の教育ローン
  7. ひとり親家庭支援奨学制度
  8. 民間の奨学金制度

①母子父子寡婦福祉資金

1つ目に紹介する制度は母子父子寡婦福祉資金です。


この制度は母子家庭もしくは父子家庭でかつ子どもが20歳未満であれば利用できる貸与型の制度です。


この制度の特徴は資金を借りるときの連帯保証人が不要であること、また、返済時の利息はかからないことです。


また、返済開始は卒業から6か月後であるため、返済義務のある子どもにとっては助かる部分が多い制度です。


母子父子寡婦福祉資金は厚生労働省が所管の制度ですが、申請・相談窓口は各自治体の福祉担当となっています。

②生活福祉貸付金制度の「教育支援資金」

2つ目に紹介する制度は教育支援資金です。


生活福祉貸付金制度は母子家庭など低所得世帯に貸与されている貸付金制度です


生活福祉貸付金制度は教育を目的とした教育支援資金だけでなく、総合支援資金や不動産担保型生活資金などがあります。


連帯保証人を立てる必要はありませんが、立てることができれば無利子で、立てることができなければ、年1.5%の利息が生じます。


この制度を運営しているのは都道府県社会福祉協議会で、申請の窓口は各市区町村の社会福祉協議会となっています。

③就学支度資金貸付制度

3つ目に紹介する制度は就学支度資金貸付制度です。


この制度は母子家庭・父子家庭を対象とした母子父子寡婦福祉資金の一部の制度で、高校などに入学する際に必要となる経費に対して貸し付けられる制度です。


この制度も貸与型で返済する必要があります。


公立高校への入学の場合、貸付限度額は16万円となっています。


返済開始は卒業後6カ月からで、返済期間は5年以内となっています。

④修学資金貸与制度

4つ目に紹介する制度は修学資金貸与制度です。


これも母子家庭・父子家庭を対象とした母子父子寡婦福祉資金の一部です。


この制度で貸与できる資金は高校などに就学させるために必要な授業料や教科書代などの費用に充てることが目的となっています。


月額上限額は私立で自宅外通学の高校生に場合、月額52,500円支給されます。


公立高校生でかつ自宅から通学している場合、上限はこれよりも低くなりますので、詳しくは各自治体に確認してください。


返済開始は卒業後6か月、返済期間は20年以内となっています。

⑤各自治体が設ける学費支援

5つ目に紹介する制度は各自治体が設ける学費支援です。


高等学校等就学支援金制度や高校生等奨学給付金など国が一律で行っている給付金制度もありますが、一方で、各自治体が独自で支援制度を実施しているところもあります。


自治体が独自で実施している制度は私立に通っている高校生を対象にしていることが多いので、申請する前には十分に確認しましょう。


この記事では例として東京都と北海道について紹介します。


東京都の学費支援制度 

東京都では私立高校に通う高校生を持つ世帯を対象に授業料援助を目的として対象者に給付金を支給しています。 


この給付金は返済の必要はありません。


対象世帯所得は年収760万円~910万円未満で、最大で約35万円が支給されます。


また、所得要件の上限を超えていたとしても子どもが多い場合は支給される場合があります。 


北海道の学費支援制度

北海道でも私立高校に通う高校生を持つ世帯を対象に授業料援助を行っています。


この給付金についても返済の必要はありません。


支給額は世帯所得によって異なりますが、年収が270万円未満の世帯に対しては就学支援金を含めて月額33500円が上限として支給されます。 

⑥国の教育ローン

6つ目に紹介する制度は国の教育ローンです。


これは日本政策金融公庫が行っている教育ローンで、上限350万円まで借り入れることが可能です。


日本学生支援機構からの奨学金との併用で貸与することができます。


日本政策金融公庫が行っている教育ローンの最大の特徴は返済方法について柔軟に考慮してもらえることです。


子どもの人数や世帯収入、母子家庭などを考慮して返済額・返済期間を決めることができます。


近年は、借入の手続きが日本政策金融高校の店舗まで行く必要がなくなっていますので借り入れを考えている方は是非お問い合わせください。 

⑦ひとり親家庭支援奨学制度

7つ目に紹介する制度はひとり親家庭支援奨学制度です。


この制度は一般財団法人全国母子寡婦福祉団体協議会とローソングループによって運営されています。


ひとり親家庭支援奨学制度は給付型の奨学金で、採用されると月額3万円支給されます。


募集人数は全国で400人と上記で紹介した制度よりも厳しくなっています。


応募資格は以下のすべてを満たす必要があります。

  • ひとり親世帯でかつ経済的に困難な生徒であること
  • 社会貢献に積極的で品行方正な生徒であること
  • 全国母子寡婦福祉団体協議会の会員もしくは入会を希望する生徒であること
  • 会員登録している団体、及び入会を希望する団体代表者の推薦を受けている生徒であること

⑧民間の奨学金制度

最後に民間団体が運営を行っている奨学金制度について紹介します。

民間の奨学金の特徴は経済的困難だけでなく、学業が優秀であることが必須の要件になっています。

そのため、民間の奨学金の数は30以上ありますが、いずれも募集人数は少人数になっています。

民間の奨学金制度の例として今回は2つ紹介します。

公益財団法人佐藤奨学会

この財団は佐藤製薬元会長の佐藤幸吉によって設立され、学業が優秀でありながら、経済的理由により修学が困難な学生に対して援助を行うことが目的の制度です。

この奨学金は返済不要で、高校生の場合、採用されると月額11500円支給されます。

ただし、採用人数は高校生で2名だけと非常に厳しくなっています。

Z会奨学金

Z会奨学金はZ会が設立、運営を行っている制度で、学ぶ意欲が高く、成績が優秀でありながら、経済的理由により修学が困難な学生を対象に援助を行うことが目的の制度です。

Z会奨学金は大学進学を希望している高校3年生が対象で、大学入学後の経済的援助を行います。

この奨学金も返済不要で給付額は大学入学時の一時金30万円と入学後に月額8万円が最大4年間支給されます。

ただし、入学を希望する大学は旧帝大であることが募集要件であり、それほど学業が優秀である必要があります。

公立高校の学費はいくらかかるのか確認!【私立高校と比較】


次は公立高校の学費について解説します。


文部科学省の平成28年度の調査によると公立高校の3年間の学費の平均は約135万円かかる結果となっています。


1年間で約34万円かかる計算となりますが、そのほとんどが学校教育にかかる費用です


この費用が約28万円で、主に授業料や教材費、通学費、修学旅行代などにかかっています。


残りの約8万円は学校外活動費であり、学習塾費などがこの費用に該当します。


そのため、学校外活動費は家庭の経済事情によって金額が大きく異なります。


一方、私立高校の学費は1年間で約100万円程度かかります。


私立高校は公立高校に比べて授業料が高いため、授業料を含む学校教育費に約75万円かかっています。


また、私立高校に通う学生の課程は経済的に余裕のあるところが多いため、学習塾費を含む学校外活動費も約28万円と公立高校の平均の3.5倍となっています。

母子家庭が高校の学費を用意するには【貯めるコツを紹介】


母子家庭が高校の学費を用意するためには前もって貯金をしておくことが重要です。


ここからは高校の学費を用意するための貯金方法について以下の3つを紹介します。

  1. 児童手当を教育資金としてためておく方法
  2. 学資保険などの貯蓄型保険を利用する方法
  3. 積立貯金を行う方法

児童手当を教育資金としてためておく方法

児童手当とは中学生までの子どもを養育している家庭を対象に毎月支給する手当のことです。


3歳までの支給額は月額15000円、3歳から小学生までは第1子、第2子で月額10000円、第3子以降で15000円、中学生は月額15000円となっています。


第1子の場合、支給される児童手当をすべて貯金しておくと中学卒業時には約200万円を貯金することができます。

学資保険などの貯蓄型保険を利用する方法

学資保険とは将来の教育費に備えるための保険のことで、満期が来ると保険金を受け取ることができ、それを教育資金に充てることができます。


学資保険は途中解約ができないなど換金性が低いため、より確実に貯金することができ、より確実に貯金を教育資金に使うことができます。


また、学資保険を利用することで税制面でもメリットがあります。


学資保険は生命保険に該当するため、所得税や住民税を計算するとき、所得税で最大40000円、住民税で最大28000円の所得控除となります。

積立貯金を行う方法

積立貯金の方法にもいくつかあります。


例えば、財形貯蓄は企業が福利厚生の一環として行っている制度で、給与から天引きされて貯蓄することができます。


また、自動積立定期預金は決まった日に一定額を定期預金に振り替える積み立て方式です。


このように強制的に積み立てを行い、かつ満期などが到来するまでに簡単に引き出せないようにすることで確実に教育資金の貯金をすることができます。

参考:母子家庭の生活を支援する手当を紹介【学費以外】

最後に母子家庭の生活を支援する手当や制度を紹介します。

  • 児童扶養手当
  • ひとり親家庭医療費助成制度
  • 住宅手当・家賃補助制度
  • 児童育成手当
  • 所得税や住民税の減額 

児童扶養手当

児童扶養手当は、母子家庭もしくは父子家庭でかつ所得が低い世帯を対象に支給される手当のことです。


支給額は子どもの数や世帯収入によって異なりますが、子どもが1人で全部支給である場合、支給額は月額43160円となります。


支給要件の所得額であるかの計算が非常に複雑であるため、管轄の市区町村役場に問い合わせてみましょう。

ひとり親家庭医療費助成制度

ひとり親家庭医療費助成制度は、母子家庭もしくは父子家庭で親もしくは子どもがケガや入院をしたときに負担した医療費を助成してくれる制度です。


支給額や助成してくれる範囲が各市町村によって異なるため、助成を受ける場合は問い合わせる必要があります。


しかし、所定の条件を満たせば、自己負担した医療費を全額助成してもらえる場合があります。

住宅手当・家賃補助制度

住宅手当・家賃補助制度は所得の低い母子家庭もしくは父子家庭に対して家賃を補助してもらえる制度です。


所得要件は子どもの数によって変わりますが、扶養人数が1人の場合、年収230万円以下であれば、住宅手当・家賃補助制度が利用できます。


ただし、自治体によってはこの制度を行っていない場合があるため、各自治体に確認してみましょう。

児童育成手当

児童育成手当は様々な理由で母子家庭もしくは父子家庭になった世帯に対して児童の福祉の増進を図るために設けられた手当です。


所得要件は扶養人数が一人の場合、年収398万円以下でこの制度が利用できます。」


支給額は月額13000円です。


この制度も自治体によって異なるため、各自治体に確認してみましょう。

所得税や住民税の減額

母子家庭もしくは父子家庭でかつ合計所得額が500万円以下であれば、ひとり親控除の対象となります。


ひとり親控除の対象となると課税所得額から35万円控除されます。


つまり、その分、所得税や住民税の納税額が低くなります。

母子家庭で公立高校の学費を払うのに利用できる制度まとめ

母子家庭で公立高校の学費を払うために利用できる制度を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは

  • 国の援助制度として高等学校等就学支援金制度と高校生等奨学給付金があること
  • 国の制度以外にも各自治体や民間団体が運営している制度もあること
  • 公立高校の学費を支払うためには貯金が大切であること
でした。

母子家庭もしくは父子家庭であっても子どもの教育を支援してもらえる制度はたくさんあります。

いろんな制度を利用して子どもに不自由のない高校生活が送れるようにサポートしましょう。

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