

この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 「控除」の活用がカギ!個人事業主がiDeCoの出口戦略を決めるポイント
- 受け取り方は3種類
- ポイント1.他の退職金は?
- ポイント2.公的年金は?
- 個人事業主のiDeCoは出口戦略が重要!迷ったらFPに相談に相談してみよう
- 【みんなはどうしてる?】実際にiDeCoの受給をした個人事業主の体験談
- どの受け取り方法を選びましたか?
- 受け取り方法の選択にあたり気をつけたことは?
- 受け取りで後悔したことはありますか?
- 個人事業主のiDeCoの受取額をシミュレーション
- 一時金で受け取る場合
- 一時金と年金を併用する場合
- 個人事業主がiDeCoの受取額を増やすための出口戦略3選
- 公的年金の繰り下げ受給を活用する
- iDeCoの受け取り開始時期を遅らせる
- NISAを活用しながら非課税メリットを受ける
- 個人事業主のiDeCo出口戦略で注意すべきポイント
- 他の所得との兼ね合いが重要
- 退職所得控除には5年ルールがある
- 19年ルールにも要注意
- どの出口戦略が最適?悩む個人事業主はiDeCoに詳しいマネーキャリアに聞いてみよう
- 【まとめ】個人事業主のiDeCo出口戦略は自身のマネープランを踏まえ決めよう
「控除」の活用がカギ!個人事業主がiDeCoの出口戦略を決めるポイント
個人事業主の場合、会社員や公務員と比べてiDeCoの拠出限度額が大きく、国民年金基金や国民年金付加保険料と合せて、月額6万8,000円※まで拠出できます。
拠出限度額が大きいほど受け取りの額も大きくなり、税金がかかってくる可能性も高くなります。したがって、iDeCoを利用して積み立てていたお金を受け取る場合、税金をいかに減らすかが出口戦略のカギとなるでしょう。
iDeCoで積み立てたお金には、さまざまな税制優遇措置が設けられています。しかし、額が大きければ優遇される限度額を超えてしまう可能性もあるでしょう。iDeCoを受け取る前に、税制優遇措置がどの程度まで適用されるかの確認も重要です。
受け取り方は3種類
iDeCoは掛け金だけでなく、受け取り方も以下の3種類から選べます。
- 一時金:60~75歳になるまでの間に一括で受け取る
- 年金:5~20年間で分割して受け取る
- 一時金と年金の併用:受け取れる金額の一部を一時金、残りを年金の形で受け取る
ポイント1.他の退職金は?
個人事業主でも「中小企業共済」をはじめとした他の退職金があるケースもあります。他の退職金がある状態で受け取り方を一時金とした場合、退職所得控除の枠を超えてしまう場合もあるので、注意が必要です。退職控除の計算方法は、以下の表のとおりです。
拠出年数 | 控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×年数 |
20年超 | 800万円+70万円×(年数-20年) |
なお、20年以下の場合、控除額が80万未満でも最低80万円は控除されます。控除額を超えた分に税金がかかるので、個人事業主でまとまった額をiDeCoを利用して運用していた場合は一度控除額を計算してみましょう。
ポイント2.公的年金は?
年金の形でiDeCoで積み立てたお金を受け取る場合、公的年金等控除を超える額に税金がかかります。控除額の一例は以下の表のとおりです。この表は、収入の総額が1,000万円以下の場合です。
65歳未満 | 65歳以上 |
---|---|
60万円未満 0円 | 110万円未満 0円 |
60万円~130万円まで 収入金額-60万円 | 110万~330万円まで 収入金額-110万円 |
130万円~440万円まで 収入金額×0.75-27万5,000円 | 330万~440万円まで 収入金額×0.75ー27万5,000円 |
410万~770万円まで 収入金額×0.85-68万5,000円 | 410万~770万円まで 収入金額×0.85-68万5,000円 |
770万~1,000万円まで 収入金額×0.95-145万5,000円 | 770万~1,000万円まで 収入金額×0.95-145万5,000円 |
1,000万円超 収入金額-195万5,000円 | 1,000万円超
収入金額-195万5,000円 |
※参照:公的年金等の課税関係|国税庁
収入の総額が2,000万円を超える場合は、国税庁の公式サイトにある「公的年金等の課税関係」を確認してください。個人事業主は公的年金が少ないことが多いため、会社員や公務員と比べて控除枠にも余裕があります。
個人事業主のiDeCoは出口戦略が重要!迷ったらFPに相談に相談してみよう

iDeCoは掛金の全額が所得控除になるなど、節税効果の高さがメリットの年金です。しかし、受け取り金に税金がかかるため、出口戦略を誤ると節税効果が失われてしまう恐れもあります。
これからiDeCoを始めようと検討している方はもちろんのこと、すでに積み立てを始めている方も出口戦略を考える必要があります。
「自分に最適な受け取り方は何か?」と悩んでいる方は、無料相談ができるFP相談窓口を利用してみるのがおすすめです。iDeCoは定期的に改定があり、これからも改定される可能性も高いでしょう。個人に関するお金のプロであるFPに相談すれば、最適なアドバイスが得られます。

【みんなはどうしてる?】実際にiDeCoの受給をした個人事業主の体験談
ここでは、実際にiDeCoを受給した個人事業主の体験談をご紹介します。体験談を読めば、自分に当てはめてシミュレーションも可能です。出口戦略に迷っている方はもちろんのこと、これからiDeCoを始めようと考えている方も参考になるでしょう。
※ 2025年6月12日~2025年6月15日時点での当編集部独自調査による
※ 口コミ内容は回答者の主観的な感想や評価です。
どの受け取り方法を選びましたか?

受け取り方法の選択にあたり気をつけたことは?
受け取りで後悔したことはありますか?
ここでは、iDeCoを受給した方に受け取り方で後悔したかどうかの具体的な答えを詳しく見ていきましょう。
後悔しなかった方が70%いる一方、約17%の方が「後悔した」と答えています。「どのような点を後悔しているのか」も紹介するので、受け取り方を迷っている方は参考にしてください。

60代男性
思ったより税金が多かった

70代男性
ライフプランをもっと考えればよかった
年金を選択しましたが、受け取り期間中に収入が減少してしまいました。特に持病もなく、75歳まで働こうと考えていたので失敗したと思っています。

60代女性
公的年金との合算で課税が発生した
年金での受け取りを選びましたが、運用がうまくいっていたせいで受取額がそこそこありました。それ自体はうれしかったのですが、公的年金と合算されたため課税の対象になりました。

70代女性
制度の仕組みが理解不足だった
「iDeCoは節税になる」程度の知識で始めてしまいました。公的年金の支払いと同じ感覚で積み立ててしまい、結果的にあまりメリットが感じられない結果となりました。

60代男性
税理士のアドバイスを受けるべきだった
個人事事業主だったので、まとまった額を毎月積み立てていました。その結果、受け取り金額は多くなり、単純に一時金で受け取りましたが、課税額も多かったです。
個人事業主のiDeCoの受取額をシミュレーション
個人事業主がiDeCoを利用した場合のシミュレーションをしてみましょう。なお、今回のシミュレーションは掛け金を想定の利息で運用し、順調に利益が出た場合のものです。税金の控除額を知りたい場合は、iDeCoの公式サイトにシミュレーションがあるので、活用してみましょう。
前提は、20年間月6.7万円を積み立てて年6%で運用し、順調に利益が出た場合です。
- 積立総額:約1,608万円
- 運用益:約1,487万7,000円
- 合計額:約3,095万7,000円
一時金で受け取る場合
一時金で受け取る場合、所得は退職所得になり退職所得控除が活用できます。控除額および課税額の計算方法は以下のとおりです。
- 退職控除額:40万円×20年=800万円
- 課税対象所得=3095万7,000円-800万×1/2=約1,100万円
- 所得税:1,100万円×20%=220万円
- 手取り額=3,095万7,000円-220万円=2,875万7,000円
一時金と年金を併用する場合
一時金と年金を併用する場合は、退職所得控除だけなく公的年金等控除も使えます。なお、公的年金控除等は64歳までと65歳以上で控除額は異なります。詳しいことは国税庁の公式サイトを確認しましょう。
一時金と年金を併用する場合、利用できる控除は以下の3つです。
- 退職所得控除=40万円×20年=800万円
- 60~64歳の公的年金等控除=年間60万×5年=300万円
- 65歳~74歳の公的年金等控除=年間110万円×10年=1,100万円
※参照:公的年金等の課税関係|国税庁
複数の所得控除を利用すれば、まとまった額の収入があっても税金を抑えられます。
個人事業主がiDeCoの受取額を増やすための出口戦略3選

ここでは、個人事業主がiDeCoの受取額を増やすために自分でできる出口戦略を以下の3つ紹介します。
- 公的年金の繰り下げ受給を活用する
- iDeCoの受け取り開始時期を遅らせる
- NISAを活用しながら非課税メリットを受ける
公的年金の繰り下げ受給を活用する
iDeCoを年金の形で受け取る場合、公的年金の繰り下げ受給を活用すれば一定の節税効果があります。公的年金は繰り下げると受給総額が最大で84%※1増えるため、75歳まではiDeCoの年金と仕事での収入で生活し、75歳を超えたら仕事を退職して公的年金を受給する形です。
そうすれば、安定した収入が得られると同時に受給額増額のメリットも享受できます。また、公的年金控除もフルに活用できるでしょう。
iDeCoの受け取り開始時期を遅らせる
公的年金ではなく、iDeCoの受け取り時期を遅らせる方法もあります。iDeCoは公的年金のように繰り下げても受給額が自動的に増額しません。しかし、運用期間が延びれば資産を増やせる可能性も高まります。
iDeCoの運用が順調で今積み立てたお金を受け取るのはもったいない、まだ10年ほど自営業を続けられそうだといった場合は、iDeCoの受け取り時期の調整を検討してみてください。なお、公的年金と同様に75歳※1まで後ろ倒しができます。
NISAを活用しながら非課税メリットを受ける
iDeCoの一時金をNISAを利用して運用する方法もあります。NISAは、投資によって得た利益が非課税になるメリットがあり、税金を抑えながら資産形成が可能です。
NISAはiDeCoとは異なり、必要ならばいつでも利益分を引き出せます。一時金を受け取ったほうが最も節税になるが、単に貯蓄しておくのは惜しい場合は、再投資も検討してみましょう。
例えば、75歳以降にシニア向けの施設などに入所したい場合の資金形成などに利用できます。
個人事業主のiDeCo出口戦略で注意すべきポイント

最後に、個人事業主のiDeCo出口戦略で注意すべきポイントとして、以下の3点を紹介します。
- 他の所得との兼ね合いが重要
- 退職所得控除には5年ルールがある
- 19年ルールにも要注意
他の所得との兼ね合いが重要
個人事業主は定年がありません。そのため、65歳以降も事業を続けているケースが珍しくなく、事業の収入と収入とiDeCo年金の合算で課税額が大きくなる可能性もあります。
「公的年金等控除」をはじめ、所得は控除もありますが上限も定められているので注意が必要です。個人事業主の場合は、老後の事業継続の有無や収入見込みも踏まえて、一時金と年金の比率を戦略的に調整が重要です。
退職所得控除には5年ルールがある
iDeCoの一時金を先に受け取り、5年以上経過してから職場の退職金を受け取った場合、両方に退職控除を利用できます※1。個人事業主にとっては関係ない話に思えますが、かつて会社員をしており「中小企業共済」に加入していた場合は、退職金扱いになるお金を受け取れるケースもあります。
かつて会社員をしていた方は、自分が退職金扱いのお金を受け取れる共済に加入していなかったかどうか、確認しましょう。加入している場合は、受け取り方を再検討する必要があります。
19年ルールにも要注意
退職所得を受け取る順番にも注意が必要です。先に退職金を受け取った場合、iDeCoを一時金の形で受け取りたいと思っても、19年間は退職所得控除が一度しか使えません※。iDeCoの一時金と退職所得の受け取る期間を19年間空けるのは実質不可能なので、税負担が増える可能性があります。
すでに退職金を先に受け取ると決めてしまった場合は、一時金としてそのまま受け取って税金を払うか、受け取りの方法を変えるか検討しましょう。
どの出口戦略が最適?悩む個人事業主はiDeCoに詳しいマネーキャリアに聞いてみよう

iDeCoに加入している個人事業者の場合、最適な出口戦略は個人の状況で大きく変わります。中小企業共済に加入しているのか、事業は順調か、事業はいつまで続ける予定なのか等、確認が必要なものはたくさんあります。
さらに、退職金や年金に関する税制は複雑なので、個人で理解しづらい部分もあるでしょう。自分の状況を正しく理解し、最適な出口戦略を選ぶには専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。
【まとめ】個人事業主のiDeCo出口戦略は自身のマネープランを踏まえ決めよう
個人事業主の場合、会社員と比べると各人の状況の違いが大きくiDeCoの出口戦略も複数の選択肢があります。「皆と一緒の選択をしておけば大丈夫」とは限りません。
特に、退職金控除や公的年金控除への理解が乏しいと最適な出口戦略の選択が難しいでしょう。税負担を最小限に抑えながら老後資金を確保するには、マネーキャリアに相談してアドバイスを受けるのもおすすめです。
また、iDeCoに関する税制は定期的に改正される可能性が高いため、最新の情報を常にチェックし、定期的に戦略を見直しましょう。

税金のことをすっかり失念しており、単純に「一時金が最ももらえる金額が多い」と一時金を選択しました。その結果、そこそこの額の税金が課せられ、後悔しています。