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この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- iDeCoは相続対策としても有効!2つのメリットを解説
- 遺産分割協議の対象外になる
- 相続税の非課税枠が適用される
- 相続対策としてiDeCoを活用するならFPへの相談が不可欠
- 【どう対策すべき?】iDeCoの相続をした人の体験談
- 非課税枠の期限を逃し税負担が増えてしまった
- 死亡一時金の受け取り手続きに時間がかかった
- 相続対策にiDeCoを活用する際の注意点3つ
- 早急な受け取りが必要
- 受取人の指定を忘れずに
- 手続きに時間がかかることも
- iDeCoの相続対策でよくある質問
- Q. iDeCoの拠出途中で死亡したらどうなりますか?
- Q. iDeCoを受給中に死亡したらどうなりますか?
- Q. 死亡一時金の受取人はどのように指定できますか?
- Q.相続放棄をすると死亡一時金はどうなりますか?
- 自分にとってiDeCoを用いた相続対策は有効?マネーキャリアに相談してみよう
- 【まとめ】iDeCoの正しい知識を身に付け適切な相続対策を
iDeCoは相続対策としても有効!2つのメリットを解説
iDeCo(個人型確定拠出年金)は老後資金の形成に役立つ制度として知られていますが、実は「相続対策」としても注目されています。加入者が死亡した場合、iDeCoの残高は「死亡一時金」として遺族に支払われる仕組みになっており、うまく活用すれば相続トラブルの回避や相続税の軽減につながる可能性があるのです。
しかし、iDeCoの制度や税制は一般的な預貯金や金融資産と異なる点も多いため、正しい理解がないまま放置してしまうと、手続きの遅れやトラブルが発生するおそれもあります。特に、死亡一時金の受取人指定や手続きの流れについて知らないと、遺族が困るケースも少なくありません。
そんなiDeCoが、相続対策として有効な理由は大きく2つのポイントがあります。まずは、死亡一時金が遺産分割協議の対象にならない点、そして相続税の非課税枠を活用できる仕組みがあることです。それぞれの特徴を理解し、活用方法を確認していきましょう。
遺産分割協議の対象外になる
iDeCoは老後資金の準備を目的とした制度ですが、加入者が死亡した場合には、その時点の残高が「死亡一時金」として遺族に支給される仕組みになっています。
この死亡一時金は、一般的な遺産とは異なり、原則として遺産分割協議の対象には含まれません。つまり、他の財産と一緒に誰がどれだけ相続するかを話し合う必要がなく、指定された受取人に対して直接支払われるのが特徴です。
この制度上の仕組みにより、相続の場面でありがちな争いを回避できる可能性があります。財産の分配について考え方の違いが生じやすい家庭では、iDeCoを活用して明確な資産の受け取り先を設定しておくことで、不要なトラブルを防ぐことができるでしょう。
相続税の非課税枠が適用される
iDeCoの死亡一時金は、遺族に支払われる資産のひとつとして、税務上は「みなし相続財産」に分類されます。つまり、相続税の課税対象となるのですが、一定の条件を満たすことで非課税枠が適用されるのが特徴です。
具体的には、加入者が死亡してから3年以内に死亡一時金を請求した場合だと「500万円× 法定相続人の数※」の非課税枠が認められます。たとえば、配偶者と子ども2人が法定相続人となるケースでは、500万円×3人分で1,500万円までが相続税の課税対象から除外されることになります。
非課税措置は、遺族の生活支援という観点から設けられた制度であり、iDeCoを活用する際にも大きなメリットとなるでしょう。
相続対策としてiDeCoを活用するならFPへの相談が不可欠

相続対策の一環としてiDeCoを活用することは、一定の節税効果を期待できる手段のひとつです。
iDeCoは掛金が所得控除の対象となるため、運用期間中の利益に対しても非課税となり、老後資金の形成だけでなく、資産を次世代へ引き継ぐ際にも有利な場面があります。しかし、その活用には注意すべき点が多く、必ずしも全てのケースで効果的とは限りません。
たとえば、iDeCoの受け取り方法には一時金や年金形式がありますが、それぞれ税制上の取り扱いが異なります。これにより、他の資産との兼ね合いや相続人の立場によって、最終的な税負担が変わる可能性があるのです。また、iDeCoにおける死亡時の受取人指定を怠った場合、遺産分割の対象となり、相続トラブルの原因となることも考えられます。

【どう対策すべき?】iDeCoの相続をした人の体験談
iDeCoは老後の資金準備だけでなく、相続対策としても一定の効果が期待できる制度です。死亡一時金という形で遺族に資産を引き継げる点などは、従来の相続とは異なるメリットがあります。
しかし、実際に相続の場面を迎えると、思わぬ手間や見落としが発生することも少なくありません。特に制度の期限や手続きの詳細について把握していないと、損失や余計な税負担につながるおそれがあります。
今回は、実際にiDeCoを相続した人の体験談をもとに、注意点を具体的に見ていきます。
非課税枠の期限を逃し税負担が増えてしまった
iDeCoの相続において、制度の特性を正しく理解していないことが、結果的に遺族の税負担を増やしてしまうケースがあります。
ある60歳の男性が亡くなった際、妻は夫がiDeCoに加入していたこと自体を知らず、死亡一時金の請求手続きを行わないまま時間が過ぎてしまいました。日常的にお金の管理を任せていたこともあり、夫婦間で資産の詳細について共有されていなかったのが原因です。
さらに問題だったのは「そのうち手続きをすればいい」と妻が思い込んでいた点です。誰からも急ぐように言われることもなく、必要な書類の準備も後回しにしたことで、結果的に死亡から3年以上が経過してしまいました。
これにより、相続税の非課税枠「500万円×法定相続人の数※」は適用されず、受け取った死亡一時金は「一時所得」として所得税の課税対象となってしまったのです。
死亡一時金の受け取り手続きに時間がかかった
iDeCoを利用していた家族が亡くなった際、死亡一時金の受け取り手続きに想像以上の時間を要してしまうケースがあります。
ある方の体験談では、70歳で亡くなった父親がiDeCoの年金を受給していたものの、どの金融機関で運用していたかが不明だったことが大きな課題となっていたのです。家族の間でiDeCoについての情報共有がなされていなかったため、遺族は父親の遺品や郵便物を頼りに、運用管理機関を調べるところから始めなければなりませんでした。
さらに、該当の金融機関が判明した後も、必要書類の案内や取り寄せに手間がかかり、準備が整うまでに時間を要しました。戸籍謄本や住民票、死亡診断書など、公的書類の収集や提出先の確認にも時間をとられたことで、申請は後ろ倒しに。結果的に、死亡から実際の受け取りまでに半年以上かかってしまったといいます。
相続対策にiDeCoを活用する際の注意点3つ

iDeCoは老後の資産形成にとどまらず、相続対策としても注目される制度です。
死亡一時金という形で遺族が資産を受け取れる点や、相続税の軽減に寄与する可能性など、多くのメリットがあるのは事実です。しかし、その一方で注意すべき点も存在します。制度の仕組みを十分に理解しておかないと、せっかくの利点が損なわれてしまうことにもなりかねません。
遺族に余計な負担をかけないためにも、事前の備えが欠かせません。ここからは、iDeCoを相続対策として活用するうえで注意しておきたい3つのポイントを紹介します。
早急な受け取りが必要
iDeCoの加入者が亡くなった場合、その残高は「死亡一時金」として遺族に支給される仕組みがありますが、この受け取りにはいくつかの重要な期限が設けられています。これらの期限を把握しておかないと、受け取れるはずの金額に大きな税負担がかかってしまう可能性があるため、注意が必要です。
まず、死亡一時金には相続税の非課税枠が適用される場合があります。これは「500万円×法定相続人の数※」までが対象となるもので、死亡日から3年以内に請求を行うことが条件です。
しかし、この期限を過ぎてしまうと、非課税扱いとはならず、代わりに「一時所得」として所得税の課税対象となります。一時所得には所得税および住民税が課されるため、結果として遺族が手にする金額が大きく減少してしまうおそれがあります。
受取人の指定を忘れずに
iDeCoを相続対策の一環として活用する場合は「誰に受け取ってもらうか」という点が重要です。
死亡一時金の受取人の指定は、生前に必ず確認・設定しておくべき事項のひとつです。受取人を明確に指定していないと、想定外の人が資産を受け取ることになったり、本来渡したい人に資産を残せなかったりする可能性があるため、慎重に対応しましょう。
iDeCoでは、死亡一時金の受取人を加入者があらかじめ指定できる仕組みが設けられています。受取人をきちんと登録しておけば、加入者の意思に基づいて資産が移転されるため、相続トラブルの予防にもつながります。しかし、この指定をしていない場合は、法律に基づく一定の順位で受取人が自動的に決まってしまう点に注意が必要です。
手続きに時間がかかることも
iDeCoを活用して資産形成を行っている場合、万が一の際には「死亡一時金」として遺族に支払われる制度があります。
しかし、実際にこの一時金を受け取るまでには、一定の時間がかかることを理解しておく必要があります。特に、手続きの流れや必要書類が事前に把握されていない場合、遺族が対応に苦労し、受け取りが大幅に遅れるおそれもあるため注意が必要です。
死亡一時金を受け取るには「裁定請求」と呼ばれる手続きが必要となります。この請求方法や流れは、加入している金融機関や運営管理機関によって異なります。そのため、ある程度手続きに時間がかかることは避けられず、即時に支給されるわけではない点を理解しておくことが大切です。
iDeCoの相続対策でよくある質問
iDeCoを活用して資産形成を行うなかで「万が一のとき、残された家族にはどう影響するのか?」と不安に感じる方も少なくありません。特に相続対策としてiDeCoを意識している場合は、制度上の仕組みや取り扱いについてしっかり理解しておくことが重要です。
そこでこちらでは、iDeCoに関する相続の場面でよく寄せられる質問を取り上げ、それぞれのケースに応じた対応や注意点をわかりやすく解説していきます。
Q. iDeCoの拠出途中で死亡したらどうなりますか?
iDeCoは、原則として60歳以降に受け取ることを前提とした老後資金のための制度ですが、加入者が拠出途中で亡くなった場合にも、積み立てた資産が無駄になることはありません。このような場合、死亡時点での運用残高は「死亡一時金」として遺族に支給される仕組みとなっています。
具体的には、亡くなった時点でiDeCo口座に残っている金額全体が給付対象となり、現金として一括で支払われます。この死亡一時金は、加入者本人があらかじめ指定した受取人に支給されるのが一般的です。受取人の指定は、iDeCo加入時や運用中に変更可能であり、誰に資産を残したいのかという意思を明確に反映できる重要な手続きです。
Q. iDeCoを受給中に死亡したらどうなりますか?
iDeCoの受給が始まった後に加入者が亡くなった場合、受取方法が一時金であっても年金形式であっても、まだ受け取っていない分については「死亡一時金」として支給されます。つまり、受給中に残っていた資産は無駄になることなく、遺族に渡る仕組みです。
ただし、注意が必要なのは、すでに年金形式で受け取りを始めていた場合でも、その年金の受給権自体を他の家族が引き継ぐことはできないという点です。年金形式の受給は、あくまで本人の権利として扱われ、本人の死亡時点で消滅します。
Q. 死亡一時金の受取人はどのように指定できますか?
iDeCoにおける死亡一時金の受取人は、運営管理機関を通じて手続きすることで指定可能です。一般的には「死亡一時金受取人指定書」を提出する方法が採用されており、これにより加入者の意思を反映した資産の引き継ぎが行えます。
指定できる対象は「一定の範囲の遺族」と定められており、具体的には配偶者(内縁関係を含む)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹などが該当します。法的に認められた範囲内であれば、誰を優先的に受け取らせるかを明確にすることが可能です。
Q.相続放棄をすると死亡一時金はどうなりますか?
相続放棄をした場合でも、iDeCoの死亡一時金を受け取る権利は自動的に失われるわけではありません。死亡一時金は、通常の相続財産とは異なって「みなし相続財産」として扱われるため、受取人として指定されていれば、放棄していても受け取ることが可能です。
ただし、死亡から5年が経過し、なおかつ死亡一時金が相続人同士で分割協議の対象となっている場合、その財産については放棄したものとみなされ、受け取る権利を失う可能性があります。このような状況では、当初の受取人指定の有無にかかわらず、支給が困難になる恐れがあるため、早めの手続きが重要です。
自分にとってiDeCoを用いた相続対策は有効?マネーキャリアに相談してみよう

iDeCoは老後資金の形成だけでなく、相続対策としての活用も可能な制度です。ただし、その有効性は誰にとっても同じというわけではありません。ご自身の資産構成や相続人との関係性、他の非課税制度との兼ね合いなど、さまざまな要素を踏まえて総合的に判断する必要があります。
たとえば、iDeCoの死亡一時金は受取人を指定することで、相続手続きを簡素化できるというメリットがありますが、その一方で、受け取り方によっては相続税が発生することもあります。また、拠出期間中や受給中に死亡した場合の取り扱いについても、制度の詳細を誤解していると、意図せぬ税負担や遺族間のトラブルにつながるリスクがあります。
【まとめ】iDeCoの正しい知識を身に付け適切な相続対策を
iDeCoは老後資金を準備する制度として知られていますが、実は相続対策としても効果を発揮します。ただし、遺族がスムーズに死亡一時金を受け取れなかった場合、相続税の非課税枠を逃す可能性や、所得税の課税対象となるリスクもあるため、注意が必要です。
有効な対策としては、加入者が生前に家族へiDeCoの加入状況や運用金融機関を明確に伝えておくことが挙げられます。さらに、非課税枠の活用についても、生命保険の受取額との関係性を含めて検討する必要があります。制度の仕組みを正しく理解し、事前に準備を進めることが、円滑な相続の第一歩と言えるでしょう。
