内容をまとめると
- iDeCoのスイッチングとは、現在保有している運用商品を売却して、その代金で別の運用商品を購入することです。デメリットは「運用効率の低下」や、「売却時手数料の発生」です。
- 配分変更とは、毎月の掛金で購入する運用商品の種類や配分割合を変更することです。デメリットは「申請から完了までに価格変動がある可能性がある」ことです。
- iDeCoの配分変更は、加入者専用サイトにログインして、次の手順に従います。
- トップページから「運用商品・掛金配分を変更」を選択する
- 個人ポートフォリオへ移動する 「商品別配分変更」を選択する
- 変更後の商品別配分を1%単位で入力する
- 「商品別配分変更確認」で指定内容を確認する
- iDeCoのスイッチングと配分変更で悩んだらマネーキャリアの「iDeCoの無料相談窓口」に相談!自身の積み立て状況から最も最適な方法がわかります。
監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。
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この記事の目次
iDeCoのスイッチングや配分変更って何?デメリットはある?
こんにちは。マネーキャリア編集部FPの西田です。
先日、30代男性から以下のような質問を受けました。
iDeCoを利用されている方の多くがご自身の環境や収入の変化に合わせて、ポートフォリオの見直しを行っています。
見直しにあわせて必要に応じて行うものとしてスイッチングや配分変更があります。
スイッチングとは運用商品の買い換えのことを言い、 配分変更とは運用商品の比率を変更することです。
スイッチングや配分変更を状況に応じて行うことで、より確かにお金を増やせるのです。
スイッチングや配分変更を行うことでデメリットも発生するため注意が必要になります。
スイッチングには一部コストがかかり、配分変更には手続き完了まである程度の時間を要します。
本記事では、iDeCoのスイッチング・配分変更の仕組みや具体的な方法に加えて、メリット・デメリットについても解説していきます。
本記事が、iDeCoを利用して資産形成を検討されている方の参考になりますと幸いです。
iDeCoのスイッチングと配分変更について解説
iDeCoの運用を行うにあたって、生活や収入の変化に合わせて見直しや変更が必要になります。
たとえば、「20代の時よりも収入が安定したから、iDeCoで利益を得られるよう挑戦したい」という方や、「若い時はハイリスクも覚悟できたけど、定年も近いし安定した運用を行いたい」という方も少なくないでしょう。
こうした希望に対応する方法として、スイッチングと配分変更があります。
ここでは、スイッチングと配分変更について解説していきます。
スイッチングは運用商品を買い換えること
スイッチングとは、現在保有している運用商品を売却・解約し、他の運用商品に買い換えることです。
たとえば、運用商品Cを15万円、運用商品Dを20万円で売却して、運用商品Eを35万円で購入するといった方法があります。
以下、表を参照し、詳しく見ていきましょう。
スイッチングの例(残高150万円のケース)
変更前 | 変更後 | ||
---|---|---|---|
運用商品A 45万円 | → | 運用商品A 45万円 | → |
運用商品B 39万円 | → | 運用商品B 30万円 | → |
運用商品C 15万円 | → | 運用商品C 残高なし | ↓ |
運用商品D 60万円 | → | 運用商品D 40万円 | ↓ |
運用商品E 残高なし | → | 運用商品E 35万円 | ↑ |
スイッチングを行う場合、投資信託によっては信託財産留保額という費用が発生します。
スイッチングを過度に繰り返すと、信託財産留保額によって利益が下がることもあるので注意してください。
配分変更は運用商品の比率を変更すること
配分変更とはiDeCoの掛金で購入する商品の種類、購入比率の変更です。
iDeCoでは毎月の掛金で購入する、運用商品の種類、及び配分割合の変更が認められています。
配分変更を行う際に手数料は発生せず、無料で行えます。
また、変更は何度でも可能です。
無料、かつ繰り返し行うこともできる配分変更ですが、頻繁に行うことはおすすめしません。
配分変更を行う状況として、年齢や経済状況が変化した時、リスク・リターンの大きい運用から小さい運用に変更したい場合などを挙げられます。
配分変更は多くても一年に一度程度に留めておくことが一般的です。
配分変更の注意点として、変更が認められるのはこれから購入する商品だけであることです。
既に購入した運用商品の配分を変更する場合は、スイッチングを利用します。
スイッチングと配分変更の違いについて徹底解説
スイッチングは現在保有している運用商品を売却・解約して他の運用商品に買い換えることです。
一方、配分変更とはこれから購入する運用商品や購入割合を変更することを言います。
スイッチングと配分変更の違いを表でまとめると以下のようになります。
その後の拠出金の配分割合 | その時点の商品ごとの資産残高 | |
---|---|---|
配分変更 | 〇 | × |
スイッチング | × | 〇 |
スイッチングと配分変更を混合してしまう方も少なくないですが、この二つは明確に異なるものなので注意してください。
運用方針の変更を行いたい場合、資産配分割合を変更することが一般的ですので、スイッチングでは資産配分の割合が変わらないことを覚えておくと役立つはずです。
スイッチングはどんなときに利用する?【メリットを解説】
スイッチングとは今まで積み立てを行ってきた資産の商品構成などの変更を行うことです。
ここでは、スイッチングはどんなときに利用するのか説明していきます。
あわせて、スイッチングを行うメリットについても解説します。
①利益を確保するとき
スイッチングは利益を確保するときに行います。
iDeCoは60歳以上の給付開始年齢にならないと受け取れず、長期的スパンで運用を行う金融商品です。
値上がりして損益がプラスになったまま放っておき、今後値下がりした場合には損失が出る可能性もあるため対策が必要です。
投資信託の利益配当分を売却し、元本確保型商品に代えることによって利益を守ることができます。
②リバランスを行うとき
運用を行っていると、掛金の配分と資産残高の配分が変わってきます。
例えば、株価の下落により、商品Aと商品Bの資産に占める割合が減り、他の商品の割合が増えたとしましょう。
この時に、スイッチングを行い、資産配分割合を戻しておくことで、株価が上昇した時に大きなリターンを得られる可能性が出てきます。
iDeCoは、リバランスを年に一回程度行うことでリスク回避につながり、リターンを安定させられると言われています。
③投資信託の乗り換えをするとき
iDeCoの運用商品は加入者自身で選ぶことができます。
スイッチングを行うことで、今持っている運用商品を解釈・売却し、別の運用商品に変更可能です。
スイッチングを使うことによって、別の投資信託に乗り換えたり、元本確定型に預けていた積立資金を投資信託に変更したりすることができます。
スイッチングを上手に行うことで、将来的に受け取るお金を増やすことができるのです。
スイッチングや配分変更をする上でのデメリット(注意点)を解説
スイッチングや配分変更は比較的簡単にできますが、安易に行うことはおすすめしません。
スイッチングや配分変更をする際は、iDeCoの特徴を利用して短期的な損得だけでなく、長いスパンで考えた上で行いましょう。
また、スイッチングを行う際に、手数料が発生することもあるので注意が必要です。
以下、スイッチングや配分変更をする上でのデメリットを紹介していきます。
スイッチングをするには一部コストがかかる
iDeCoにおいてスイッチング、売却・買付に手数料は発生しません。
しかし、スイッチングをする際、商品によっては解約金が発生することもあります。
この解約金は信託財産留保額と言い、投資信託の解約金が指定されているものにかかります。
たとえば、楽天証券においてスイッチングの際に手数料がかかるファンドは以下の通りです。
投資先 | ファウンド名 | 手数料 |
---|---|---|
バランス型 | セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド | 0.1% |
国内外株式 | セゾン資産形成の達人ファンド | 0.1% |
海外債券 | みずほUSハイイールドファンド<DC年金> | 0.2% |
信託財産留保額が発生する投資信託を扱っている機関は、銀行や保険会社に多い傾向にあります。
一方、楽天証券・SBI証券(セレクトプラン)といったネット証券では、信託財産留保額が発生する投資信託の取り扱いは比較的少ないです。
スイッチングを行う際は一部コストが発生することを頭に入れておくようにしましょう。
スイッチングをやりすぎることで、かかったコストにより損をする可能性もあります。
配分変更はむやみに行わないほうがいい
資産運用で成功するための3つのポイントとして、分散投資、長期投資、継続投資を挙げられます。
iDeCoはお金の運用を長期的に行うことを前提とした制度ですので、投資の3つのカギがあてはまります。
配分変更によって運用方針の変更を繰り返し行うと、長期投資の効果を得にくくなります。
iDeCoで利益率を上げるには、この商品の長期運用という特徴を活かし、目先のことだけでなく長い目で考える必要があるのです。
手続き完了までに時間がかかる
スイッチングには6営業日かかることが一般的です。
スイッチングの手続きの流れはだいたい以下の通りです。
- 手続きを申し込む
- 商品販売会社に売却の指示が出される
- 売却注文が約定し、受け渡しとなる(約4営業日)
- 買付注文を出し、受け渡しとなる(2~4営業日)
スイッチングする商品によっても日数は異なりますが、「1週間程度かかる」と思っておくと良いでしょう。
運用商品・資産配分の見直しのタイミングを解説
iDeCoは長期的スパンでお金の運用を行う制度であるため、契約内容を頻繁に変更することは好ましくありません。
iDeCoを上手に運用するためには1年に一度程度は運用商品・資産配分の見直しを行うことをおすすめします。
年齢とともに資産状況は変化しますので、リスクを受け入れられる許容範囲が変わります。
たとえば、若い時にハイリスク・ハイリターンのポートフォリオを作成したものの、子供の教育費に思いのほかお金がかかり「老後資金は着実に貯めたい」と考えが変わることもあるでしょう。
また、運用をはじめてから一定期間が過ぎると、株価や金利の変化によって運用商品の価格が変動することもあります。
この変動によって、分配した資産の比率が大きく変動することも少なくありません。
以下、運用商品・資産配分の見直しのタイミングを2つ紹介していきます。
①スケジュールを決めて一定期間ごとの見直し
②年齢の変化や職場などの環境の変化に応じた見直し
iDeCoはご自身の決めたタイミングのみならず、年齢や生活に大きな変化があった時にも見直すことをおすすめします。
たとえば、若いけれども安定タイプの運用を好まれていた方で、安定した収入の企業に就職が決まり積極的な運用タイプに変更されることもあります。
一方で、iDeCo加入当初は経済的に余裕があり積極的に投資を行っていた方でも、不況の影響を受けて日々の生活費に悩んでしまうケースもあります。
このようなケースでは、確実に老後資金を形成するため安定型に切り替えられています。
iDeCoは老後のお金を準備する制度ですので、60歳になるまでは資産を引き出せません。
老後資金を準備するには、ご自身の年齢や環境の変化に応じて見直し、その時々で最善の運用方法をとることが大切です。
実際の運用商品見直し例を見てみる
iDeCoは老後資金の形成を目的とした金融商品であり、短期的な損得ではなく長期的スパンで運用を行うことが好ましいとされています。
年に1回程度の見直しが必要と言われており、契約したあと放置しても良いというわけではありません。
iDeCoを活用してお金をふくらませていくには、環境、年齢、目標の変化に合わせてポートフォリオを見直すことが不可欠です。
ここでは、「リスクの変化に合わせた見直し例」と「年齢の変化に合わせた見直し例」を紹介していきます。
リスクの変化に合わせた見直し例
人の生活環境や収入は一定のものではなく、何かをきっかけに大きく変わるものです。
置かれた状況によってとれるリスクの大きさも変わります。
iDeCoの運用において自分の生活状況やとれるリスクの変化に合わせて見直しを行うことが重要です。
ここでは、リスクの変化に合わせたポートフォリオの見直し例を紹介します。
20代前半にiDeCoの運用を始め、30歳で収入が安定したAさん
- 定期預金 50%
- 国内債券 25%
- 海外株式 15%
- 海外債券 10%
20代前半は趣味の時間を優先したいことから、フリーランスとしてマイペースに働いていました。
収入はさほど多くはないものの老後の資金形成に不安を抱き、iDeCoに加入しました。
お金を確実に貯めることを優先したため、ポートフォリオは安定型です。
Aさんは30歳になって正社員として企業に就職し、収入が安定したのでiDeCoのポートフォリオの見直しを行いました。
金銭的な余裕や、若さを考慮してiDeCoで積極的にお金を増やすことに決めました。
ポートフォリオを以下の通り変更しました。
- 海外株式 50%
- 海外債券 25%
- 海外リート 10%
- 定期預金 10%
- 国内リート 5%
Aさんは海外株式、海外債券なども積極的に取り入れ、リスクを覚悟でお金を増やしていくようです。
Aさんのように、環境、収入などに大きな変化があったら、ポートフォリオをその都度見直すことが大切です。
年齢の変化に合わせた見直し例
投資について若いうちはいくらでも立ち直れるため、ハイリスク・ハイリターン型のポートフォリオがおすすめと言われることが多いです。
20代から30代はお金を稼ぐ機会を得やすいですし、かつ単身であれば家族に損失が被ることもないからです。
一方、ミドル層以降の年代にはローリスク・ローリタン型の投資を勧めることが一般的です。
定年退職まで期間が短いことや、家族を抱えていることを考慮すると、ハイリスク・ハイリターンの投資は危険であるからです。
ここでは、年齢とともに見直しを行ったポートフォリオの例を紹介します。
20代後半にiDeCoの運用を始め、50歳になったBさん
見直し前
- 海外株式 50%
- 国内株式 12%
- 海外債券 12%
- 国内リート 8%
- 海外リート 12%
- 国内債券 6%
20代後半にiDeCoを契約したBさんは、これからもお金を稼げるということで、ハイリスク・ハイリターンのポートフォリオを契約時に作成しました。
若いので「失敗したらゼロからやり直そう!」と前向きにとらえ、積極的に利益をねらう方針です。
ポートフォリオを以下の通り変更しました。
- 定期預金 38%
- 国内債券 20%
- 国内株式 3%
- 海外債券 23%
- 海外株式 15%
- 海外リート 1%
Bさんは50代になって掛金の受け取りまで近いことや、若い時のように損失が出た場合に立ち直ることが難しいことを考慮し、安定型への切り替えを決めたのです。
スイッチングや配分変更についてよくある質問を解説
スイッチングや配分変更はiDeCoを最大限有効に活用する上で、不可欠なものです。
しかし、スイッチングや配分変更について「なんだか難しそう」「方法が分かりにくそう」といった先入観から、これらを利用しない人も少なからずいらっしゃいます。
そこで、スイッチングや配分変更についてよくある質問を以下解説していきます。
スイッチングの締め切り時刻は?
スイッチングの締め切り時刻は、毎営業日の午前10時です。
午前10時までに申し込みされたスイッチングは当該営業日の受付扱いになります。
それ以降は翌営業日の受付扱いとなります。
スイッチングと配分変更には手数料がかかる?
スイッチング自体に手数料はかかりません。
しかし、信託財産留保額が設定されている投資信託を売却する場合、売却金額から手数料が差し引かれます。
信託財産留保額は基準価額の何%というように一定割合が決められており、一般的には0.3%程度です。
ご自身の取り扱う商品によって手数料の有無は変わりますので、スイッチングを行う際に詳細を確認してください。
スイッチングはどのくらいの頻度で可能であるか?
スイッチングの頻度は3ヵ月に1回以上できるよう法律で決められています。
運用管理機関によってスイッチングが可能な頻度が毎日、毎月などと決められているため、回数制限は運用管理機関によって異なります。
スイッチング自体には手数料はかかりませんが、信託財産留保額が設定されている投資信託を何度もスイッチングすると、手数料がコストとして重なり利益が目減りします。
スイッチングを何度も行うことを自制するため、「年に一度、iDeCoを始めた月に行う」「年に一度、誕生日の月に行う」など、自分でルールを決めている人もいます。
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まとめ:iDeCoのスイッチングと配分変更について解説
「老後資金2000万円問題」、「年金支給年齢引き上げ」といったニュースが話題になる今日において、多くの人たちが老後資金形成に不安を抱えています。
そうしたなか、老後資金をつくるための年金制度iDeCoは注目されているのです。
iDeCoは自分が拠出した掛け金を、自分で選んだ商品によって長期にわたり運用し、老後資金を効率的に準備できる仕組みとなっています。
運用したお金を60歳以降に年金、もしくは一時金として受け取ることができるのです。
iDeCoでお金を膨らませるポイントは短期的な利益ではなく、長期的な目線で運用を行うことにあります。
年齢や環境・収入の変化に合わせて見直すことが大切です。
また、生活に大きな変化が特にない場合でも、ポートフォリオを一年に一回は見直すようにしましょう。
ポートフォリオの見直しを行う際に、スイッチングや配分変更を状況に応じて行います。
スイッチングとは保有している運用商品を他の運用商品に買い換えを行うことで、配分変更とは運用商品の比率を変更することです。
とれるリスクの大きさが年齢や環境によって変わりますので、その時々で最善の選択を行う必要があります。