止まらぬ食料品の値上げ…食料自給率の観点から問題を考察しますのサムネイル画像

円安、原油価格の高騰などにより様々なものの値上げが続いている日本。5月以降もその波はまだまだ続きそうです。食料品の値上げの要因の一つと言われている、日本の国内自給率の低さから起きている問題や、今後の輸入食品の値上げに対し私たちの出来ることを考えてみます。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

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5月も続く値上げラッシュ

年明けから続く値上げラッシュは5月以降も続きそうです。


5月に値上げするものは以下の通り

会社名
値上げされる商品
明治レトルトカレーを
6.5〜7.7%値上げ
チョコ・グミなど菓子類
3%〜11%値上げ
コカ・コーラ
ボトラーズ
ジャパン
大型PETボトル製品を値上げ
キッコーマンデルモンテトマト調味料を
約3〜10%値上げ
キッコーマンソース(4アイテム)を
約6%値上げ
オートバックス国内各タイヤメーカー、
輸入各タイヤメーカー
の国内市販用タイヤを
5月9日より値上げ

上記以外にも、電力大手10社と都市ガス大手4社が料金の値上げを公表しています。


食品の値上げは7月末までに6100品目、値上げ幅は平均11%に上る予定であることが、民間の信用調査会社の調査で分かっています。

食料品の値上げと食料自給率

食料品の値上げの原因を考えるとき、その食品の自給率は考慮に入れる必要があります。


日本の食品自給率は、約37%と言われており6割以上の食品を輸入に頼っているのが現状です。

最も自給率が高いものはお米で、約98%が国内で生産されています。次いで、野菜、魚についても比較的多く自給されていることから、価格が大きく変動せずに安定的に消費者に供給されているのです。


他の食品も国内の自給率を上げることが出来れば、消費者が価格の変動を心配せずに商品を

購入することができるようになるため、自給率を上げることは大きな課題といえます。

野菜の値上げは少ない


お米に続いて、野菜も自給率約79%と国内において自給率の高い食品です。比較的価格が安定している食品といえます。


今月はほぼ平年並みの価格で、キャベツ、レタス、白菜がお買い得の見込みです。


野菜の値段は一体どのように決められているのしょうか。

  • 台風などの天候により生産量が下がった場合、価格は高騰してまう
  • 天気が良くてたくさん野菜が市場に入荷した時には、野菜が安くなる
  • 入荷が多い時には、売りたい人が多いので野菜の値段が安くなる
自給率の高い野菜は、国内の天候によって価格が変動するものの、輸入に頼っている食品に比べると輸入先の諸事情により価格が左右されずに済むのです。

輸入食品の値上げが激しい

一方の輸入食料は値上げラッシュです。

共通する理由としては、円安と原油価格の高騰があります。


円安はまだ続くと予想されており、エネルギー問題も解決の糸口は見つかっていない状況です。

今後も、各種の輸入食料の値上げは続いていくと予想されています。


今や物価の優等生のお米と違い、円安や原油価格の高騰などの影響を受けて価格が高騰している輸入食品が数多くあります。


どんなものがあるのでしょうか。


  • 豚肉
  • 牛肉
  • とうもろこし
  • 生鮮・乾燥果実
  • アルコール飲料
  • 鶏肉超製品
  • さけ・ます

など。


様々な世界的要因を影響に受けて、輸入される食品の値上げに繋がってしまうことになります。

小麦の値上げの原因

ロシアによるウクライナ侵攻により、小麦の価格が高騰しています。


2月下旬にロシアによる軍事侵攻が始まり、小麦の供給に対して世界的に不安が一気に高まったことで、先物価格が上昇したと農林水産省はコメントしています。


ロシアとウクライナから輸出される小麦が世界全体の3割を占めるからです。


日本で消費される小麦は約9割を輸入に頼っています。小麦から作られる小麦粉は、加工特性に優れているため、実に様々な食品に使われ、使用料、用途どれをとっても世界中でもっとも人気の高い穀粉です。


ロシアとウクライナからの小麦の輸出が止まってしまうことになると、世界の小麦市場は混乱し、小麦の争奪戦が始まり価格の高騰はもっと加速してしまうかもしれません。



食肉の値上げの原因

食肉の仕入れ価格の上昇に伴い販売価格が値上がりすることをミートショックと呼びます。

とりわけ輸入牛肉の値段の高騰が目立っています。


ミートショックの原因と言われているのが、

  1. 産地であるアメリカやカナダ、オーストラリアで、コロナの影響により人員不足となり生産できない
  2. オーストラリアの干ばつなど、天候の変化が影響している
  3. 中国の景気が良くなるにつれ、大量の牛肉を輸入するようになった


の中国の牛肉の消費量の増加は大きな要因となっています。国内の生産量だけで賄いきれず、世界からの輸入量を急速に増やしているのです。


日本でも需要の高い牛肉。


需要の観点から考えると、日本は中国に「輸入競争」で負けてしまったことになります。


理由はいくつかありそうです。

  • 中国の輸入業者が高い値段をつけ買っているから
  • 人手不足に悩まされる米・豪の畜産業者が、部位ごとに仕入れる日本よりも細かい注文をしない中国を優先した
  • いつかは下がると楽観視し買うタイミングを逃した


世界中でも需要が多く人気の高い牛肉の価格の高騰は、まだ続きそうです。

まとめ

食料品の値上げはしばらくの間、上がることはあっても下がることは難しいかもしれません。今回は円安、原油価格の高騰、ウクライナ問題など大きな問題が多数あり、企業努力だけではカバーできない状況です。


我々消費者一人ひとりが出来ることを考え、固定費の見直し、食料自給率の高いお米や、野菜を多く使うなどの値上げに対抗することが必要です。それは合わせて、日本が食料自給率をこれ以上下げないということにも繋がります。


国内で作られているものを積極的に購入し、未来に大きな食糧問題が起こらないように考えていかなければなりません。