- iDeCoに加入すべきか検討している人
- 企業型確定拠出年金とiDeCoのどちらに加入すべきか悩んでいる人
- 厚生年金を減らしたくない人
- iDeCoで厚生年金は減らないが、リスクは検討すべき
- 選択制企業型DCでは厚生年金が減る可能性がある
- 選択制企業型DCのデメリット
監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- iDeCoでは厚生年金は減らない!
- 確定拠出年金で厚生年金が減るパターン・減らないパターンを解説
- ①厚生年金が減るパターン:企業DCを利用した場合
- ②厚生年金が減らないパターン:個人でiDeCoを活用する場合
- 企業型確定拠出年金における選択型企業DCのメリット
- ①給与額から算出される社会保険料が下がる
- ②非課税で運用できる
- ③退職所得控除や公的年金等控除が適用される
- ④掛金の額を変更して給与受け取り額を調整できる
- iDeCo(確定拠出年金)における選択型企業DCのデメリット
- 厚生年金を減らさないためには?iDeCoを活用しよう
- ①企業型DCに拠出せず、全額給与として受け取る
- ②受け取った給与で自主的にiDeCoを活用する
- 選択制DCにより支給額が減る可能性のあるもの
- ①老齢厚生年金
- ②障害厚生年金
- ③遺族厚生年金
- 参考:確定拠出年金の選択制度で厚生年金はどのくらい減る?
- まとめ:iDeCoの相談ならマネーキャリアへ
iDeCoでは厚生年金は減らない!
結論から言うと、iDeCoに加入しても、厚生年金の受け取り金額は減りません。
iDeCoは給与から掛金を差し引かれるわけではないので、厚生年金などの年金の受け取り金額には影響を与えません。
そのためiDeCoは、厚生年金などの公的年金の受け取り金額を減らすことなく、老後の資金作りが可能です。
iDeCoは個人型拠出年金であり、加入者本人が掛金を出して、金融商品を選んで運用を行います。加入者の運用次第で、将来受け取れる金額は大きく異なります。
確定拠出年金で厚生年金が減るパターン・減らないパターンを解説
確定拠出年金のなかには、「個人型」と「企業型」があります。
iDeCoの別名である個人型確定拠出年金は、前述した通り、加入者が掛金を出して運用を行う年金制度です。
それに対して企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業が毎月一定額の掛金を支払い、社員が運用して年金を作っています。
確定拠出年金を利用することで、厚生年金の受け取り金額はどうなるのでしょうか。
以下のパターンを解説していきます。
- 厚生年金が減るパターン:企業型DCを利用した場合
- 厚生年金が減らないパターン:個人でiDeCoを活用する場合
①厚生年金が減るパターン:企業DCを利用した場合
企業型DCを利用した場合、厚生年金の受け取り金額が減る場合があります。
企業型DCは、会社が社員に掛金を支払い、社員が金融商品を選んで運用を行います。
拠出分の掛金は全額非課税になるため、社会保険料を算出する標準報酬月額が減少します。そのため当然、社会保険料の負担額も減ることになります。
その一方で厚生年金で受け取れる年金額は、保険料を納めた金額や期間によって変化するため、支払う社会保険料が少なくなると、受け取れる年金額も少なくなってしまう場合があるのです。
このように、支払う社会保険料が減ることは一見メリットに感じますが、将来受け取れる厚生年金額を減らしてしまうことも覚えておきましょう。
②厚生年金が減らないパターン:個人でiDeCoを活用する場合
個人でiDeCoを活用するのであれば、厚生年金の受け取り金額は変わりません。
個人型の確定拠出年金であるiDeCoは、個人で掛金を支払って運用を行います。
会社員以外にも自営業者や主婦でも加入できる仕組みです。
加入年齢は20~65歳で、加入条件は以下の通りです。
- 第1号被保険者
- 第3号被保険者
- 勤務先に企業型確定拠出年金制度がない第2号被保険者(会社の規約で同時加入が認められている場合を除く)
加入者が個人でiDeCoを活用するので、標準報酬月額は変化しません。給与の受け取り金額も当然変わらないため、支払う社会保険料の負担も同じです。
このように、個人でiDeCoを活用するのであれば、厚生年金の年金額は減りません。
詳しくは「厚生年金を減らさないためには?iDeCoを活用しよう」で解説しています。
企業型確定拠出年金における選択型企業DCのメリット
選択制企業型DCとは、「社員が資産を運用するために掛金を支払う」か、「掛金分の金額を給与として受け取るか」を選択できる企業型DCの一種です。
選択制企業型DCのメリットは以下のような点が挙げられます。
- 給与額から算出される社会保険料が下がる
- 非課税で運用できる
- 退職所得控除や公的年金等控除が適用される
- 掛金の額を変更して給与受け取り額を調整できる
それぞれ解説していきます。
①給与額から算出される社会保険料が下がる
企業型DCにおいて、掛金として支払った分は、給与として扱われません。つまり、社会保険料を算出する際に用いられる標準報酬月額が少なくなるのです。
厚生年金の保険料は収入によって変動するため、収入が少なくなればなるほど支払う社会保険料も少なくなり、月々の出費を抑えることにつながります。
ただし、支払う社会保険料が下がるということは、将来受け取れる年金額が減ることを十分に理解しておくことが大切です。
公的年金だけでなく、他の金融商品と組み合わせながら資産運用を行い、老後資金の準備をしておく必要性が高まります。
②非課税で運用できる
企業型DCは非課税で運用が可能です。
掛金を運用した際に出た利益が全額非課税になるため、運用益がそのまま自分の利益になります。
基本的に、金融商品の運用で利益が出た際は、その運用益に対して20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかります。例えば、10万円の運用益が出た場合、20,315円が税金で引かれてしまい、手元に残る利益は79,685円です。
しかし、企業型DCで運用を行なえば非課税で運用ができるため、10万円がまるまる利益になります。
このように、企業型DCで資産運用をすることで、節税対策をすることが可能です。
③退職所得控除や公的年金等控除が適用される
企業型DCを運用して受け取る際に、さらなる節税対策が可能です。
受け取り方法は、「退職一時金」と「企業年金」の2種類から選択できます。
一時金として受け取った場合、「退職所得控除」が適用されます。退職所得控除によって、住民税や所得税の税率を、通常の所得よりも低く抑えることが可能です。勤続年数が長ければ長いほど、控除額が大きくなります。
企業年金として分割で受け取る場合は、「公的年金等控除」が適用されます。年金を受け取る際の年齢や所得にあわせて、税制優遇を受けることが可能です。
このように、退職所得控除や公的等控除によって、受け取り時にも節税ができます。あなたの状況に合わせて、どちらの受け取り方法を選択すべきか検討してみましょう。
④掛金の額を変更して給与受け取り額を調整できる
選択制企業型DCで、「掛金の拠出」を選択した場合、掛金の額を変更して、給与の受け取り金額を調整できます。
原則として、「掛金の拠出」か「給与受け取り」のどちらかを選択したら、60歳までその選択を変更することはできません。
しかし、「掛金の拠出」を選択しておくことで、給与の受取額を変更することはできるのです。
つまり、「掛金の拠出」を選択しておいて、自身の財政状況に合わせて給料の受け取り金額を増やしたり、掛金の拠出額を増やしたりすることができます。ただし、掛金は60歳まで引き出しができませんので、それを踏まえた上で選択しましょう。
iDeCo(確定拠出年金)における選択型企業DCのデメリット
選択制企業型DCのデメリットは、厚生年金が減る可能性がある点です。
選択制企業型DCで、「掛金の拠出」を選択した場合、支払う社会保険料が減ります。社会保険料の支払い額が減ることは一見メリットですが、将来受け取れる厚生年金額は減ります。
また、厚生年金だけでなくあらゆる社会保険が影響を受ける可能性があることを覚えておきましょう。影響を受けると考えられるのは以下の通りです。
- 傷病手当金 (健康保険)
- 出産手当金 (健康保険)
- 失業給付 (雇用保険)
- 育児休業給付金 (雇用保険)
- 介護休業給付金 (雇用保険)
厚生年金を減らさないためには?iDeCoを活用しよう
会社に企業型DCがある場合、受け取る厚生年金額を減らさずにiDeCoを活用するためにはどうしたらいいのでしょうか。例として、次のステップが考えられます。
- 企業型DCに拠出せず、全額給与として受け取る
- 受け取った給与で自主的にiDeCoを活用する
それぞれのステップごとの状況を詳しく解説していきますので、参考にしてみてください。
①企業型DCに拠出せず、全額給与として受け取る
厚生年金の受け取り金額を減らさないためには、まず、企業型DCには拠出せずに全額を給与として受け取る選択をしましょう。
給与をまるまる受け取るので、標準報酬月額に変化はありません。
給与額から算出される社会保険料は上がってしまいますが、その分、将来受け取れる厚生年金は増えることが見込めます。
さらに、健康保険の傷病手当金や出産手当金、雇用保険の失業給付や休業給付も、給与が高ければ高いほど多く受け取れるメリットがあります。
ただし、全額給与として受け取る選択をした後に、「掛金の拠出」に変更することはできないのでご注意ください。全ての会社が選択制企業型DCを導入しているわけではないので、慎重に考えましょう。
②受け取った給与で自主的にiDeCoを活用する
そして、受け取った給与で自主的にiDeCoを活用しましょう。
iDeCoは毎月5000円から1000円単位で積み立て投資が可能です。自営業者、公務員、専業主婦(夫)、会社員によって、掛金の上限は異なりますので、自身の状況に合わせて掛金を選択することが大切です。
原則的には、勤務先に企業型確定拠出年金制度がある場合、iDeCoの加入はできません。しかし、会社の規約で同時加入が認められていれば、iDeCoに加入することができます。
なお、iDeCoを利用する場合は、以下の手数料を自己負担しなければなりません。
- 加入時手数料 (加入時)
- 口座管理手数料 (運営中)
- 給付事務手数料 (受取時)
- 移換時手数料 (金融機関変更時)
- 還付事務手数料 (掛金を還付してもらうとき)
ちなみに企業型DCでは、口座管理手数料を会社が負担してくれます。
選択制DCにより支給額が減る可能性のあるもの
選択制企業型DCにより支給額が減る可能性があるものは、以下の通りです。
- 傷病手当金 (健康保険)
- 出産手当金 (健康保険)
- 失業給付 (雇用保険)
- 育児休業給付金 (雇用保険)
- 介護休業給付金 (雇用保険)
- 老齢厚生年金
- 障害厚生年金
- 遺族厚生年金
①老齢厚生年金
老齢厚生年金の受け取り金額は、厚生年金被保険者期間の給与・賞与総額に応じた額となります。
つまり、選択制企業型DCによって「掛金の拠出」を選択した場合、給与額が減るため老齢厚生年金の受け取り金額も減少します。
受け取れる老齢厚生年金の金額を確認し、老後資金を準備しておく必要があります。
なお、厚生年金の年金加入期間や、年金額、受給資格期間を確認したい場合、「ねんきん定期便」を活用しましょう。ねんきん定期便は、毎年誕生月に送付されます。
また、ねんきんネットを活用すれば、年金見込み額の試算が可能ですので、試してみてはいかがでしょうか。
②障害厚生年金
③遺族厚生年金
遺族厚生年金とは、厚生年金加入者が死亡した場合に遺族に支払われる年金です。受給の対象者の条件は、生計維持要件や対象遺族の範囲から定められています。
給与・所得総額に応じて年金支給が行なわれるため、選択制企業型DCによって「掛金の拠出」を選択した場合、給与額が減るので、支給額も減ります。
自分にもしものことがあった場合、家族にはなるべくたくさんのお金を残しておきたいもの。遺族厚生年金は生涯受け取り続けられるため、支給額を増やしておければ心強いです。
選択制企業型DCによって「掛金の拠出」を選択した場合、大切な家族を守るための手段である遺族厚生年金の支給額が減ってしまう可能性があることも覚えておきましょう。
参考:確定拠出年金の選択制度で厚生年金はどのくらい減る?
選択制企業型DCで、「掛金の拠出」を選択した場合、厚生年金はどれくらい減るのでしょうか。35歳の月収40万円の人を例に、おおまかに試算してみましょう。
「給与の受け取り」を選択した場合、受け取れる老齢厚生年金の見込み額は約2055万円です。選択制企業型DCで月3万円の「掛金の拠出」を選択した場合、受け取れる老齢厚生年金の見込み額は約1890万円になります。
選択制企業型DCに加入した場合としなかった場合の、老齢厚生年金における受け取り差額は次の通りです。
2055万円-1890万円=165万円
選択制企業型DCで月3万円の掛金を拠出した場合、老齢厚生年金の受け取り金額が165万円減ることになります。
もちろん、支給期間や支払った保険料の関係で、どちらを選択するのが得かどうかを一概に決めることはできません。しかし、老齢厚生年金額が多ければ多いほど、お金を稼ぐ手段が限られた時期には心強いはずです。
まとめ:iDeCoの相談ならマネーキャリアへ
iDeCoに加入することによって受け取る厚生年金の金額は減りませんが、企業型DCに加入する場合、厚生年金の受け取り金額が減ってしまうこともあります。
iDeCoや企業型DCの加入は、税金や公的年金などの多くの観点から検討すべきですが、個人でそれらの情報を網羅することはなかなか難しいでしょう。
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