内容をまとめると
- 2020年の高等学校等就学支援金の制度改正により、私立高校に通う生徒にも支援の範囲が拡大された
- 共働き世帯でも、年収の合計が1,000万円程度までは支給が受けられる
- 生命保険控除や医療費控除、iDeCoなどの所得控除を利用することで、所得制限を回避できる可能性がある
- とはいえ制度改正によりどの程度支援を受けられるのか、支援を受けるためにどうしたら良いのかを自分で考えるのは難しく解釈を誤る危険性がある。
- そこで多くの方が無料で何度でもお金の専門家に家計や教育費の相談ができるマネーキャリアを利用している。
監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 私立高校の授業料無償化とは
- 高等学校等就学支援金(返還不要の授業料支援)とは
- 手続きをしないと支援を受けることができないので注意
- 共働き世帯でも私立高校の授業料無償化対象に入れる?
- 共働きの場合の所得制限
- 【参考】年収での制限は不公平という意見も
- 共働き世帯の私立高校授業料無償化でよくある質問3選
- 質問①私立高校無償化の所得制限はいくら?
- 質問②共働きの収入は合算するの?
- 質問③子供の人数は反映されるの?
- 高校の授業料無償化の所得制限を回避するための方法
- 方法①生命保険料控除
- 方法②医療費控除
- 方法③iDeCo(確定拠出年金)を利用する
- 都道府県が提供する高校無償化制度を紹介
- 東京都の場合
- 大阪府の場合
- 愛知県の場合
- 子供の教育費に関する無料相談はマネーキャリアへ
- まとめ:共働き家計でも私立高校授業料無償化の対象になる!
私立高校の授業料無償化とは
私立高校の授業料無償化とは「高等学校等就学支援金」の制度改正により、私立高校に通う生徒への支援が手厚くなったことを指す言葉です。
高等学校等就学支援金は、生徒の学習支援を目的とし、授業料の負担を軽減するために2010年からスタートした制度です。
2020年の制度改正により、公立高校に加えて私立高校に通う生徒にも支給対象が拡大されました。
制度改正をうけ、今では多くの世帯が無償化の恩恵を受けられるようになっております。
そもそも、授業料無償化を実現している「高等学校等就学支援金」とは、どのような制度なのでしょうか。
以下で詳しく解説いたします。
高等学校等就学支援金(返還不要の授業料支援)とは
高等学校等就学支援金(返還不要の授業料支援)とは、授業料にあてるための就学支援金を支給することで、高等学校等における教育にかかる経済的負担の軽減を図り、教育の機会均等に寄与することを目的とした国(文部科学省)による制度です。
受給資格は、以下の通りになります。
- 日本国内に在住、高等学校等に在学
- 世帯年収約910万円未満世帯(目安)の生徒
- 所得制限:年収910万円未満(目安)
- 支給額:年間118,800円
- 所得制限:年収590万円未満(目安)
- 支給額:年間39万6,000円※年収910万円未満は11万ためには、公立高校に比べて所得制限が大きくかかります。
手続きをしないと支援を受けることができないので注意
高等学校等就学支援金制度の支援を受けるためには、受給の手続きが必要です。
以下の申請時期に、学校を通して必要書類を提出します。
申請時期
- 新入生は4月頃
- 在校生は7月頃
- 受給資格認定申請書
- マイナンバー確認を書類
共働き世帯でも私立高校の授業料無償化対象に入れる?
授業料無償化の水準を満たすためには、公立高校と私立高校で所得制限に違いがあることをお伝えしました。
私立高校は公立高校に比べて所得制限が大きいため、共働き世帯は私立高校の授業料無償化の対象に入れるか気になるところです。
結論、共働き世帯でも条件を満たすことで、私立高校の授業料無償化対象に入れます。
また、高等学校就学支援金の所得制限は、両親の働き方や家族構成によっても異なります。
共働きの場合の所得制限はどのようになるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
共働きの場合の所得制限
高等学校等就学支援金制度の所得要件はあくまで目安です。
実際は次の計算式で算出した金額をもとに判断されます。
(市町村民税の)課税標準額×6% - (市町村民税の)調整控除の額
上記で算出した両親2人分の合計額で判定し、以下のように支給額が決まります。- 154,500円未満の場合:支給額は396,000円
- 304,200円未満の場合:支給額は118,800円
子どもの数 | 118,800円の支給対象 | 396,000円の支給対象 |
---|---|---|
子1人(高校生) 扶養控除対象者1人 | ~約1,030万円 | ~約660万円 |
子2人(高校生・中学生以下) 扶養控除対象者1人 | ~約1,030万円 | ~約660万円 |
子2人(高校生・高校生) 扶養控除対象者2人 | 〜約1,070万円 | ~約720万円 |
子2人(大学生・高校生) 扶養控除対象者1人、特定扶養控除対象者1人 | 〜約1,090万円 | ~約740万円 |
子3人(大学生・高校生・中学生以下) 扶養控除対象者1人、特定扶養控除対象者1人 | 〜約1,090万円 | ~約740万円 |
【参考】年収での制限は不公平という意見も
私立高校に通う生徒にも支給対象が拡大された高等学校等就学支援金ですが、年収で支給の制限をかける制度には、一部で不満の声も出ているようです。
このような不満の声があるのは事実です。
しかし、制度として決まってしまったものは仕方ありません。
不満を漏らすよりも、制度を上手に活用していくことが大切です。
共働き世帯の私立高校授業料無償化でよくある質問3選
ここでは、共働き世帯の私立高校授業料無償化でよくある以下の質問について回答していきます。
- 質問①私立高校無償化の所得制限はいくら?
- 質問②共働きの収入は合算するの?
- 質問③子供の人数は反映されるの?
質問①私立高校無償化の所得制限はいくら?
共働き世帯の私立高校無償化の所得制限の目安は、以下の通りです。
ただし「年収」はあくまで目安。実際には住民税決定通知書の数字をもとに判断されます。
子どもの数 | 118,800円の支給対象 | 396,000円の支給対象 |
---|---|---|
子1人(高校生) 扶養控除対象者1人 | ~約1,030万円 | ~約660万円 |
子2人(高校生・中学生以下)
扶養控除対象者1人 | ~約1,030万円 | ~約660万円 |
子2人(高校生・高校生)
扶養控除対象者2人 | 〜約1,070万円 | ~約720万円 |
子2人(大学生・高校生)
扶養控除対象者1人、特定扶養控除対象者1人 | 〜約1,090万円 | ~約740万円 |
子3人(大学生・高校生・中学生以下)
扶養控除対象者1人、特定扶養控除対象者1人 | 〜約1,090万円 | ~約740万円 |
質問②共働きの収入は合算するの?
共働きの収入は合算します。
高等学校等就学支援金制度の所得要件を判定するための計算式は、以下の通りです。
(市町村民税の)課税標準額×6% - (市町村民税の)調整控除の額
上記で算出した両親2人分の合計額をもとに、以下のように支給額が決まります。
- 154,500円未満の場合:支給額は396,000円
- 304,200円未満の場合:支給額は118,800円
質問③子供の人数は反映されるの?
子どもの人数によって所得制限は変わってきます。
子どもの人数による支給条件の変化は、質問①をご参照ください。
また、子どもの年齢は、中学生以下は15歳以下、高校生は16~18歳、大学生は19~22歳としています。
扶養控除の対象者が1〜2人であれば、共働きで世帯年収が1,000万円程度の場合でも、118,800円の支援が受けられます。
高校の授業料無償化の所得制限を回避するための方法
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- ひとり親控除
- 寡婦控除
- 勤労学生控除
- 障害者控除
- 雑損控除
方法①生命保険料控除
1つ目は、生命保険料控除です。
控除額を増やして所得額を減らせば、支援を受けられる可能性が高まります。
生命保険料控除は、一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料のそれぞれ「4万円」ずつ、最大で「12万円」控除が可能です。
生命保険に加入している方や医療費が高額になる方は、積極的に控除を活用していきましょう。
方法②医療費控除
2つ目は、医療費控除です。
医療費控除は、年間所得が200万円以上の場合は「10万円」、年間所得が200万円未満の場合は「総所得金額×5%」を超えた分の金額を控除できます。
1年間の医療費は健康保険組合の支払い明細でも確認できますが自身でも家計の医療費の明細を保管し総額がいくらなのか管理しておきましょう。
年末調整では申告できませんので確定申告が必要です。ご注意ください。
方法③iDeCo(確定拠出年金)を利用する
3つ目は、iDeCo(確定拠出年金)を利用することです。
iDeCoとは、個人型の確定拠出年金のことで、掛金を投資信託や保険商品などで運用し、掛金と運用益を60歳以降に受け取れる私的年金制度になります。
所得控除のなかの「小規模企業共済等掛金控除」にあたるのがiDeCoです。
iDeCoを利用することで、拠出金を全額所得控除できます。
会社員の場合、最大で月額2.3万円(年額27.6万円)まで控除を受けることが可能です。
税制面にメリットのある制度ですが、所得制限を回避できる可能性もあるため、iDeCoを利用していない方にとっては有効な手段の1つといえるでしょう。
ちなみに、「住宅ローン控除」や「寄付金控除」などの税額控除は判定基準には影響しませんのでご注意ください。
都道府県が提供する高校無償化制度を紹介
高校無償化の制度は、国以外にも都道府県独自の制度を実施している場合があります。
公立高校の授業料は国の制度でカバーできますが、カバーしきれない私立高校に通う生徒のために、独自の支援制度を設けている自治体が多いです。
ここでは、代表的な都道府県である東京都・大阪府・愛知県の制度を紹介します。
また、制度の内容は自治体によって異なりますので、詳しくはお住まいの地域の情報をご確認ください。
東京都の場合
授業料軽減助成金の対象となる年収の目安は約910万円で、年間35万200円の授業料が補助されます。
また、国の高等学校就学支援金との併用が認められており、合わせると46万9,000円まで支援が受けられる手厚い制度です。
国の高等学校就学支援金とは異なる制度になるため、それぞれ申請が必要になります。
大阪府の場合
大阪府の場合は「私立高等学校等授業料支援補助金」という制度があります。
支給要件は、以下の通りです。
- 子どもと保護者等が大阪府内に住所を有していること
- 「私立高校生等就学支援推進校」として指定された大阪府内の私立高等学校に、受給する年度の10月1日時点で在学していること
- 国の高等学校就学支援金を受給していること
- 保護者等の所得要件が満たされていること
この制度は、保護者の年収や子どもの数に応じて支援額が異なります。
年収が590万円未満であれば、子どもの数にかかわらず授業料は無償です。
年収が590万円〜800万円未満であれば、扶養する子どもが3人以上の世帯は無償、子どもが1人なら20万円、2人なら10万円が補助されます。
また、年収が800万円〜910万円未満の場合は、子どもの数と所得に応じて支援される補助金額の上限が決められています。
愛知県の場合
愛知県の場合は「私立高等学校等授業料軽減補助金」という制度があります。
愛知県の私立高校に通う生徒の授業料を支援する制度で、生徒と保護者等が愛知県内に住所を有していることを条件に、保護者の所得制限に応じて以下の支援が受けられます。
- 愛知県私立高等学校等授業料軽減補助金
- 愛知県入学納付金補助金
- 対象校:愛知県の私立高等学校(全日制、定時制)、中等教育学校後期課程
- 補助額①:年収目安が720万円未満の場合、1年生で最大42万8,400円、2,3年生で最大42万2,400円まで(国の高等学校就学支援金と合算)
- 補助額②:年収目安が720万円〜840万円未満の場合、1年生で最大21万4,800円、2,3年生で最大21万1,200円まで(国の高等学校就学支援金と合算)
- 対象校:愛知県の高等学校(全日制)
- 補助額①:年収目安が720万円未満の場合、20万円
- 補助額②:年収目安が720万円〜840万円未満の場合、10万円
子供の教育費に関する無料相談はマネーキャリアへ
国の高等学校就学支援金や地方自治体の制度によって、授業料の多くがカバーできることがわかりました。
しかし、制度によって支援されるのはあくまで授業料のみです。
授業料以外にも高校に通うことで多くの付随費用が発生します。
文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査」によると、年間の学習費総額は、公立高等学校(全日制)で51万2,971円、私立高等学校(全日制)で105万4,444円でした。
具体的には、教材費や部活動費などが含まれ、これらの費用は別途用意しなければなりません。
お子さんが進学を希望すれば、さらに塾や家庭教師といった教育費用も必要となるでしょう。
教育費の問題は、家計にとって切っても切り離せない存在なのです。
もし、子どもの教育費でお困りの場合は、ぜひマネーキャリアへご相談ください。
マネーキャリアでは、子供の教育資金に関するお悩みも、プロのFPが解決をお手伝いいたします。
相談は何度でも無料で行っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
まとめ:共働き家計でも私立高校授業料無償化の対象になる!
今回は、私立高校の授業料の無償化について解説いたしました。
この記事のポイントは以下の通りです。
- 2020年の高等学校等就学支援金の制度改正により、私立高校に通う生徒にも支援の範囲が拡大された
- 共働き世帯でも、年収の合計が1,000万円程度までは支給が受けられる
- 生命保険控除や医療費控除、iDeCoなどの所得控除を利用することで、所得制限を回避できる可能性がある