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生活費の送金に贈与税はかかる?かからない?親子・夫婦・恋人・兄弟姉妹間の違いは?同居か別居かで変わってくる?扶養義務者の生活費の送金であれば同居・別居にかかわらず贈与税はかかりません!生活費の具体例・贈与税がかかるケース・贈与税を控除する制度についても解説!

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

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生活費の仕送りに贈与税はかかる?かからない?


「贈与税という言葉を聞いたことあるけど、よくわからない」という方も多いのではないでしょうか。

また、「家族間や恋人同士で贈与税がかかる場合はあるの?」と疑問に思われる方もいるでしょう。

そこで本記事では、

  • 贈与税がかかる対象について

  • 贈与税と生活費の違い

  • 相続税の節税について

  • 贈与税と制度の関係

  • 【参考】恋人同士間での贈与税について

を解説します。

難しい税金ルールをわかりやすく解説しているので、ぜひ最後まで読んでみて下さい。

扶養義務者からの送金であれば贈与税はかからない!


扶養義務とは、自分の稼ぎだけでは生活を成立させることができない親族がいる場合に、経済的な援助(生活費や教育費)を行わなければならない義務のことです。


従って、扶養義務者による経済的援助は義務なので、贈与税はかかりません


ただし、経済的援助は「通常の生活をする上で必要な範囲」でなければならず、「必要な範囲」を超えているとみなされた場合は贈与税が課せられる可能性があります。


以下では、扶養義務者、生活費・教育費と贈与税の関係について解説していきます。

扶養義務者には親子・夫婦・兄弟姉妹が当てはまる

扶養義務者に当たる人を以下にまとめています。


  • 配偶者

  • 直系家族及び兄弟、姉妹

  • 父母、祖父母、曾祖父母(そうそふぼ)、子ども、孫、ひ孫

  • 三等親以内の家族で生計を一にする者


生計を一にするとは、「日常生活に必要なお金を共にしている」状態です。


また、三等親以内とは、上記の親族に加え、おじ、おば、姪、甥が含まれます。





生活費の贈与税は同居・別居に関係なくかからない

生活費の援助が贈与税に当たるかどうかを判断する要素に、同居・別居の項目はありません。


また、毎月の仕送りなど、常に生活費や教育費、医療費費を援助している場合は、「生計を一にしている」とみなされます。


従って、別居していても三等親以内の人に定期的な援助をしていれば、贈与税がかかることはありません。

生活費として認められるものは?

扶養義務者からの生活費や教育費について、それぞれ具体例を紹介します。


【贈与税が非課税となる生活費の具体例】

  • 家賃、食費、日用品、家電購入費などの仕送り

  • 医療費

  • 結婚式や披露宴の費用

  • 婚姻時の家具や家電などの購入費用

  •  出産時の検査及び入院費用、治療費用、不妊治療の費用、ベビー用品代など


【贈与税が非課税となる教育費の具体例】

  • 学費

  • 教材・ 文具費用

  • 通学費

  • 修学旅行費

  • 学習塾の授業料

  • 高校・大学や資格などの受験料

  • 留学費用

  • 習い事の費用


生活費や教育費は、幅広く認められる事が多いです。


上記以外の費用が該当するかどうか確認したい場合は、国税庁 税についての相談窓口からたずねましょう。


敷金・礼金・家具家電のための生活費はその都度渡す!

敷金、礼金、家具家電も「生活費」に該当しますが、注意点について具体例で解説します。


大学進学に伴い親元を離れ、一人暮らしを始める環境を考えてみましょう。


どんな価格の家電をどれくらいわからない状態で、一括で50万円渡したとします。


しかし、実際には30万円で住んだ場合、残りの20万円は「必要な範囲の生活費」を超えたとみなされ、贈与税が課される可能性があります


従って、生活費は都度渡すことを心がけましょう。

生活費で贈与税がかかってしまうケースとは?


上記で解説した生活費・教育費以外や年間の基礎控除額を超えた場合などに贈与税がかかります。


以下では具体的なケースを5つ紹介します。

①1年間の送金が110万円を超えてしまっている

1月1日から12月31日までの1年間の贈与額から、基礎控除額を引いた金額に贈与税がかかり、基礎控除額は110万円と定められています。


ただし、扶養義務者からの経済的援助であれば110万円以上でも贈与税はかかりません


従って、扶養義務者以外の人から仕送りなどをしてもらう場合は注意しましょう。

②高額なプレゼントを購入して送る

日常生活に必要とは言い難い高額なプレゼントに関しては、贈与税がかかります


扶養義務者からであっても、生活費や教育費に該当しない場合は110万円を超えれば贈与税がかかるため注意が必要です。


従って、扶養義務者かどうかによらず、110万円を境目として贈与税がかかるかどうか決まると覚えておきましょう。

③自分が保険料を払っていない保険金を受けとる

満期や解約、被保険者の死亡により、保険料を負担していない人が生命保険金を受け取った場合、保険料を負担している人から生命保険金の贈与があったとみなされます。

(けがや病気などによるものは除く。)


なお、被保険者が保険料の負担者となっていた場合は、贈与税ではなく相続税の対象となります。


詳しくは、契約者・被保険者・保険金受取人の関係と税金についてを参照して下さい。

④生活費で株や金融資産を購入している

生活費や教育費としてもらったお金を株式などの金融資産に当ててしまうと、生活費・教育費の範囲外として贈与税の課税対象になります。


株や金融資産を購入する場合は、アルバイトなどで得た自分の収入で行うようにしましょう。

⑤生活費を預金している

預貯金に関しても、考え方は株などの金融資産と同じです。


援助でもらったお金は、必ず必要な分の生活費や教育費として使いましょう。

生活費の贈与を長年続ければ相続税の節税にもなる!


財産を渡す人が生きている間に財産を受け取ることを「(生前)贈与」、なくなった後に財産を受け取ることを「相続」といいます。


それぞれにかかる税金が「贈与税」と「相続税」です。


多額の財産を受け取った場合相続税も高くなります。


しかし、贈与税がかからないよう長年に渡り生活費として援助すると、相続税の節税効果を得ることができます


例として、夫婦、子供2人の場合を考えてみましょう。


相続税の基礎控除は以下の式で算出します。

3000万円+600万円×法定相続人の数

例の場合、法定相続人は3人なので、相続税の基礎控除額は

3000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

と計算できます。


仮に6000万円の財産を持つ夫が亡くなった場合、課税総額は

6000万円ー4800万円=1,200万円

となり、1人あたり400万円が分配されます。


一人あたりの金額が1000万円以下の場合の控除額は0円、税率は10%なので、相続税は

400万円 × 0.1 × 3人分 = 120万円

と算出されます。


以上より贈与税を非課税にするためには、1,200万円を事前に生活費・教育費として援助する必要があります。


例えば、6年間子供2人に毎年100万円を援助する(=1,200万円)ことで、総額6000万円を非課税で贈与できます(相続時は4,800万円)。




贈与税は制度を使うとかからないこともある!


以下では、贈与税を減らせる可能性がある制度について解説します。

①相続時精算課税制度

2,500万円までは贈与税を納めずに受け取り、贈与者が亡くなった時に改めて相続税額を計算・納税する制度です。


例えば、生前に父からまとめて2,000万円の贈与を受け、他界後に残りの5,000万円を相続されたとします。


例の場合、合計7,000万円に対する相続税のみがかかる、という制度です。

それぞれのメリット・デメリットを以下にまとめます。


【メリット】

  • 早期にまとまったお金を貰える

  • うまく活用すれば、贈与税、相続税も非課税のまま


【デメリット】

  • 年間基礎控除額が110万円の枠(暦年贈与)が使えない
    (同じ贈与者のみ適用。他の贈与者からの贈与には利用可能。)

  • 贈与税の申告や手続きに必要な書類の提出が必要


これらを踏まえ、本制度を使うべき人の例としては、「相続財産が基礎控除の範囲内の人」が考えられます。


例えば、夫婦、子供二人の家庭で夫が4,000万円の財産を所有している場合、相続税はかかりません。

(相続の基礎控除額は4,800万円)


従って本制度を利用することで、110万円以上のまとまったお金を一括で受け取れます。


本制度を使うべきな人、使うべきでない人について詳しく知りたい方は、相続時精算課税制度のメリット・デメリットと使うべき7パターンをご確認下さい。

②おしどり贈与

婚姻期間が20年以上であれば、夫婦間にて不動産を贈与した際に、2,000万円までは非課税になる制度です。


メリットとデメリットを1つずつ紹介します。


【メリット】

  • 財産を分散させて、相続税を減らすことができる


夫婦の財産が夫に偏っている場合、相続税率及び相続税額が高くなることを防げる可能性があります。


 ただし、コストと節税効果をよく見極めてから行わないと、逆に損をすることもあるため注意が必要です。


【デメリット】


「配偶者の税額軽減」は、


(1)1.6億円

もしくは

(2)配偶者の法定相続分に相当する金額


の多い方よりも、相続した金額が少ない場合に配偶者に相続税がかからない制度です。


これらの金額を超えて相続税が発生しそうな場合は、「おしどり贈与」が有効かもしれません。


本制度はコストと節税効果の算出が非常に難しいため、検討する場合は事前に税理士への相談をオススメします。

贈与税はかからなくても相続税がかかることもあるので注意

上述したように、制度の使い方次第では全く節税にならない可能性も十分に考えられるため、一概にどの制度を使えば良いということはありません。


贈与税と相続税は密接に関係するため、慎重に検討を行いましょう。

【参考】恋人同士で生活費の送金をするとき贈与税はかかる?

恋人は扶養義務者に認められないため、年間110万円を超えると贈与税が課せられます


非課税にしたい場合は、110万円以内に抑えましょう。


なお、結婚すれば扶養義務者になるため、「必要な範囲」の生活費や教育資金であれば特に上限もなく、贈与税はかかりません。

【まとめ】生活費に贈与税は基本かからないが注意が必要!

贈与税に関して解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?


本記事のポイントは、


  • 贈与税の基礎控除額は年間110万円

  • 扶養義務者であれば、控除額は関係ない

  • ただし、「通常の必要な範囲」での生活費・教育費に限定

  • 生活費・教育費は都度支払うことが重要

  • 生前贈与にて相続税の節税が可能

  • 制度を利用して贈与税を抑える場合は、事前に弁理士に相談すべき

  • 恋人関係は贈与税の課税対象


です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。