入院や手術にかかる医療費が払えない場合はどうする?医療費が払えない場合に利用できる公的制度を解説中!そのほかにも自分でできる対処法を紹介しています。それでも医療費が払えない場合どうなるのか・医療費で困った時に活用したいソーシャルワーカーについても解説!
監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。
>> 谷川 昌平の詳細な経歴を見る
この記事の目次
- 入院費・手術費などの医療費が払えない場合どうする?
- 医療費が払えない場合に使える公的制度について解説!
- ①「高額療養費制度」を利用する
- 制度を長期間利用すると多数該当になり自己負担額が減る
- ②「高額療養貸付制度」を利用する
- 制度を利用しても支払いが難しい場合「高額療養委任払い」を利用
- ③「限度額適用認定証」を活用する
- ④「傷病手当金制度」を利用する
- ⑤「一部負担金減免制度」を利用する
- ⑥精神疾患の治療にかかる医療費は「自立支援制度」を利用する
- ⑦「生活保護制度」を活用し医療扶助を受け取る
- ⑧「無料低額診療事業」を活用する
- ⑨「医療費控除」で払い過ぎた医療費の還付金を受け取る
- 【参考】出産で入院する場合は「出産手当一時金」がもらえる
- 公的制度のみでは全ての医療費を賄えないので注意!
- 医療費が払えない場合に自分でできる対処法について解説!
- ①周りの人にお金を借りられないか相談する
- ②病院に分割払い・支払いの先延ばしの相談をする
- ③民間の医療ローンを組んで支払いを行う
- ④クレジットカード・消費者金融からお金を借りる
- 注意:民間からお金を借りると利息が発生し返済が難しくなる
- それでも医療費が払えない場合はどうなる?
- 支払いの督促がくるようになる
- 医療費の保証人に支払いの請求が行く
- 入院している場合は早期退院・転院を促されることもある
- 最終的に弁護士を通じて民事訴訟に発展する可能性もある
- 【参考】ソーシャルワーカーに医療費の相談をしてみるのもOK
- 【まとめ】医療費を支払う手段はたくさんあるので活用しよう!
入院費・手術費などの医療費が払えない場合どうする?
こんにちは、マネーキャリアライターです。
先日、年金生活を送っている年配の方からこんな相談がありました。
年配の方は収入や貯蓄以上の治療費がかかる場合があります。
また、若い世代でもコロナショックの影響で収入が激減しているところにケガや病気をしてしまい、治療費が支払えないケースも見られます。
「入院費が支払えないと医療を受けることができないのか。」
入院費用の平均額は自己負担分で20.8万円と高額です。
十分な収入や貯蓄がある人しか入院を伴う医療をうけることができません。
しかし、そのような低所得者や収入が激減している人たちが使える公的制度が存在します。
今回は医療費が支払えない場合の対処方法について紹介します。
医療費が支払えないと悩んでいる人たちのお手伝いになれば幸いです。
医療費が払えない場合に使える公的制度について解説!
まずは医療費が払えない場合に使える公的制度を9つ紹介します。
- 高額療養費制度
- 高額療養貸付制度
- 限度額適用認定証
- 傷病手当金制度
- 一部負担金減免制度
- 自立支援制度
- 生活保護制度
- 無料低額診療事業
- 医療費控除
①「高額療養費制度」を利用する
医療費が払えない場合に使える公的制度1つ目は高額療養費制度です。
この制度は高額な医療費を支払う場合、自己負担額が一定の金額を超えるとその超えた金額については払い戻しが受けられる制度です。
国民健康保険に加入している国民であれば利用できる公的制度です。
申請には、医療費の領収書のコピー、所得証明書、本人確認書類などが必要になります。
協会けんぽに申請した後、払戻金を受け取ることができますが、審査等の関係で申請から3か月以上の時間がかかることに注意が必要です。
制度を長期間利用すると多数該当になり自己負担額が減る
高額療養費制度には多数該当という制度があり、該当すると自己負担額を減らすことができます。
多数該当とは、直近1年間で3ヶ月以上自己負担額の上限を超えると4ヶ月目からはその自己負担額の上限が引き下げられます。
70歳未満の方が対象になります。
標準報酬月額が55万円の方を例に解説します。
この方の自己負担額の上限額は
167400円+(総医療費-558000円)×1%
です。
つまり、自己負担額が167400円を超えると高額医療費制度による払い戻しを受けることができます。
しかし、多数該当の対象になると自己負担額の上限は93000円に引き下げられます。
つまり、自己負担額が93000円を超えると払い戻しの対象になります。
以上から多数該当は自己負担額を減らすことができる制度であると言えます。
②「高額療養貸付制度」を利用する
医療費が払えない場合に使える公的制度2つ目は高額療費貸付制度です。
この制度では高額療養費制度で支給される予定の金額の8割相当を無利子で貸し付けてもらうことができます。
高額療養費制度は申請してから払い戻されるまでに3か月以上の時間がかかります。
しかし、医療費の支払いは3か月待ってくれるわけではありません。
その支払いのためのお金を持っていない人のために作られた制度です。
貸付金の支払いは申請の受付後2~3週間後に振り込まれます。
申請には申請書のほか、領収書のコピー、高額医療費貸付金借用書などが必要になります。
高額療養貸付制度の返済は高額療養費制度での払戻額との相殺によって完了します。
相殺をしても払戻金がある場合は、指定の口座に振り込まれます。
制度を利用しても支払いが難しい場合「高額療養委任払い」を利用
高額療養貸付制度を利用しても支払いが難しい場合は高額療養委任払いを利用することができます。
高額療養貸付制度では払戻金の8割相当額まで貸付してもらうことができますが、超高額の医療を受けた場合や低所得者の場合、残りの2割の支払いで生活に支障をきたす恐れがあります。
このような方を対象の作られた制度が高額療養委任払いです。
この制度の申請者は自己負担額の上限額だけを医療機関に支払い、残りの自己負担額は国民健康保険によって支払われます。
申請書類として保険証や医療機関の同意書などが必要になりますが、各自治体によって異なるため、利用する場合は必ず確認しましょう。
③「限度額適用認定証」を活用する
医療費が払えない場合に使える公的制度3つ目は限度額適用認定証です。
この制度は先ほど紹介した高額療養委任払いとほぼ同じ制度です。
ただし、両者の制度には2つ違いがあります。
1つ目の違いは運用している団体です。
高額療養委任払いでは、市町村が運営しており、申請書は市町村に提出する必要があります。
しかし、限度額適用認定証は協会けんぽが運営しており、協会けんぽに申請書を提出する必要があります。
2つ目の違いは制度を利用できる医療機関です。
高額療養委任払いは市町村と協定締結を行っている医療機関でしか制度を利用することができません。
一方、限度額適用認定証はどの医療機関でも利用することができます。
以上から利便性が良いのは限度額適用認定証ですが、事前に認定証を協会けんぽから交付してもらう必要があることに注意が必要です。
④「傷病手当金制度」を利用する
医療費が払えない場合に使える公的制度4つ目は傷病手当金制度です。
この制度は、国民健康保険の被保険者が病気やけがで事業主から十分な報酬が受けられない場合に本人やその家族の生活を保障するために支給される手当です。
申請には申請書のほかに療養担当者の意見書や負傷原因届などが必要で、これを協会けんぽに提出します。
支給される金額は直近12カ月でもらっていた月額給与の平均額の3分の2です。
平均で月額30万円もらっていた場合、支給額は月額で20万円となります。
なお、支給される期間は休業を始めてから4日目からです。
⑤「一部負担金減免制度」を利用する
医療費が払えない場合に使える公的制度5つ目は一部負担金減免制度です。
高額医療費の負担ができない場合は、上記で紹介した高額療養委任払いや限度額適用認定証を利用します。
一方で、高額医療費ではないが、特別の理由により自己負担分の医療費が支払えない人が利用できる制度が一部負担金減免制度です。
特別の理由とは災害等により居住する住宅が著しい損害を受けた時もしくは失業などにより著しく収入が減少したときにこの制度を利用できます。
申請には申請書のほかに保険証や特別の理由に該当する証明書を添付する必要があります。
各市町村の担当部署で審査が行われ、最大自己負担金の10割を免除してもらうことができます。
⑥精神疾患の治療にかかる医療費は「自立支援制度」を利用する
医療費が払えない場合に使える公的制度6つ目は自立支援制度です。
この制度は心身の障害を除去・軽減するための医療費について自己負担額を軽減させる制度です。
精神通院医療・更生医療・育成医療を受けている人が対象です。
申請には申請書のほか、主治医の診断書や所得証明書、健康保険証が必要になります。
負担額の上限は世帯収入によって異なっています。
例えば、一定所得以上の世帯の場合、この制度は対象外です。
しかし、重度かつ継続の場合は上限額が2万円となります。
⑦「生活保護制度」を活用し医療扶助を受け取る
医療費が払えない場合に使える公的制度7つ目は生活保護制度です。
この制度により医療扶助を受けるためには生活保護受給者であることが必須です。
生活保護制度による医療扶助では自己負担するべき医療費は無料です。
ただし、医療扶助を受けるための申請が必要であることや指定医療機関でしか医療扶助が受けられないなどデメリットがいくつかあります。
⑧「無料低額診療事業」を活用する
医療費が払えない場合に使える公的制度8つ目は無料低額診療事業です。
無料低額診療事業とは、低所得者などが医療機関を利用する際に無料もしくは低額な料金によって医療提供を行う事業のことです。
無料低額診療事業で利用できる医療機関は限られているため、まずは近くで利用できる医療機関を探し、そこの窓口で相談する必要があります。
その後、担当者との面談、申請を行います。
審査で当該事業の適用と判断されると医療費の支払いが減額もしくは免除を受けることができます。
⑨「医療費控除」で払い過ぎた医療費の還付金を受け取る
医療費が払えない場合に使える公的制度9つ目は医療費控除です。
医療費控除は、1年間の医療費に応じて所得税や住民税の納付額を減少させる制度のことです。
年収が200万円を超えている人の場合、医療費控除の対象となる金額は自己負担額-10万円です。
つまり、医療費の内、10万円を超える部分が医療費控除の対象となります。
医療費控除により住民税は納税額が減額されます。
また、所得税の場合は毎月徴収されているため、確定申告により還付されることになります。
医療費控除は無職でも受け取れる場合がある!確定申告についても解説でより詳しく解説していますので参考にしてみてください。
【参考】出産で入院する場合は「出産手当一時金」がもらえる
出産で入院する場合は「出産手当一時金」が支給されます。
支給額は上限が42万円です。
申請書を協会けんぽに提出すれば、一時金の支給を受けられます。
ほとんどの場合は病院で申請書類の提出や記載方法の説明を受けられるため、その説明に従って申請を行いましょう。
また、高額医療を受けた時の高額療養貸付制度と同様に出産費用で生活が困窮する恐れがある場合、出産費貸付制度もあります。
貸付額は出産手当一時金の8割相当額で無利子で貸し付けてもらうことができます。
公的制度のみでは全ての医療費を賄えないので注意!
ここまで紹介してきた公的制度は医療扶助、無料低額診療事業(低額を除く)を除いてすべて一部は医療費を自己負担する必要があります。
日本の場合、医療費は国民健康保険制度により自己負担額が総医療費の3割負担(後期高齢者は1割負担)で済むようになっています。
この自己負担額でも支払いことができない人を対象に上記で解説した公的制度が設けられています。
そのため、公的制度だけではすべての医療費を賄うことはできないため注意が必要です。
自己負担額の入院費や治療費を支払うことが困難な場合は事前に病院側と相談しましょう。
病気やけがの程度、また病院側の対応によっては治療方法など医療費がかからないように柔軟に対応してもらえる可能性があります。
医療費が払えない場合に自分でできる対処法について解説!
次は医療費が払えない場合に自分でできる対処方法をこの記事では4つ紹介します。
- 周りの人にお金を借りられないか相談する
- 病院に分割払い・支払いの先延ばしの相談をする方法
- 民間の医療ローンを組んで支払いを行う方法
- クレジットカード・消費者金融からお金を借りる方法
①周りの人にお金を借りられないか相談する
医療費が払えない場合の対処方法1つ目は周りの人に相談する方法です。
お金の貸し借りを積極的に承諾してくれる人はあまりいません。
親戚であっても信頼関係が成立していなければお金を借りることは困難です。
しかし、人の命はお金に変えることはできません。
高額な医療費のためにお金が必要であること、公的制度を用いてもある程度の費用が必要になることなどをしっかり説明することができれば、周りの人からお金を借りられる可能性があります。
高額医療費のために生活が困窮する恐れがあるときには周りの人に相談してみましょう。
②病院に分割払い・支払いの先延ばしの相談をする
医療費が払えない場合の対処方法2つ目は病院に分割払い・支払いの先延ばしの相談をする方法です。
先ほど紹介したことは医療費が支払えないことを病院に相談すると薬価の安いジェネリック医薬品を使用するなど医療費自体を抑える治療法を考えてくれる可能性があることです。
ここで紹介する内容は病院側が医療費の分割払いや支払いの先延ばしに応じてくれる可能性があることです。
医療費の金額や現在の収入などをきちんと説明して病院側が理解してくれることで分割払いや支払いの先延ばしに応じてもらえる可能性があります。
高額医療費で医療費の支払いに困っている場合は治療を受ける前に病院に相談してみましょう。
③民間の医療ローンを組んで支払いを行う
医療費が払えない場合の対処方法3つ目は民間の医療ローンを組んで支払いを行う方法です。
医療ローンとは、医療費の支払いを目的にお金を貸し出すローンのことです。
医療ローンのメリットは、保険適用外の自由診療にも使えること、大手クリニックと提携しているローンの場合は利息を負担してもらえる場合があることなどがあります。
一方、デメリットとして審査が厳しく、融資までに時間がかかること、ローンによっては高金利であることなどが挙げられます。
医療ローンのメリットとデメリットを理解した上で利用することが重要です。
医療ローンには、利息が低いことが特徴の銀行系医療ローンと病院と提携していることが多い信販会社系ローンがあります。
④クレジットカード・消費者金融からお金を借りる
医療費が払えない場合の対処方法4つ目はクレジットカード・消費者金融からお金を借りる方法です。
クレジットカードでお金を借りる場合、キャッシング機能を使いことになります。
キャッシングとはクレジットカードでATMから現金を引き出すことを言います。
急に現金が必要になった場合に利用できます。
引き出したお金は通常のクレジットカードの支払いと同様に翌月に一括で返済するかリボ払いで分割して返済します。
また、アコムやプロミスなどの消費者金融からお金を借りて医療費を工面する方法もあります。
しかし、審査が比較的緩いことや使用目的に制限がないことから金利は高くなっています。
注意:民間からお金を借りると利息が発生し返済が難しくなる
医療ローンや消費者金融を利用すると利息が発生し、返済が難しくなる可能性があります。
特に消費者金融系のローンでは金利が一般的に高いため、返済の見込みを立てられない人は十分な注意が必要です。
高額医療費で生活費が困窮する恐れがある人は公的制度を利用した上で、周りの人や病院に相談しましょう。
それでも医療費が払えない場合はどうなる?
最後に公的制度を利用したり、ローンなどでお金を工面しようとしたが、それでも払えない場合はどうなるのかについて以下の4つのステージを解説します。
- 支払いの督促がくるようになる
- 医療費の保証人に支払いの請求が行く
- 入院している場合は早期退院・転院を促されることもある
- 最終的に弁護士を通じて民事訴訟に発展する可能性もある
支払いの督促がくるようになる
医療費が支払えない場合、まずは支払いの督促が来るようになります。
病院で一定期間医療費を支払っていない場合や事前に取り決めした期日までに支払いがされていないと催促が来ます。
具体的には電話での催促や郵便・内容証明の送付、自宅に訪問して支払いの催促が行われることもあります。
特に催告書が送られてくると訴訟を視野に入れているという意思表示をしていることを示しているため、この段階で医療費が支払えるのであれば支払うようにしましょう。
医療費の保証人に支払いの請求が行く
次に医療費の保証人に支払いの請求が行きます。
病院に入院する際の必要な書類の中には医療費が支払えない場合の保証人についても記載する必要があります。
万が一、本人への催促でも支払いに応じてもらえない場合、保証人に支払いの請求が行われます。
この段階になると病院だけでなく、保証人との関係も悪化する可能性があります。
入院している場合は早期退院・転院を促されることもある
患者本人や保証人が支払いに応じない場合は早期退院や転院を促されることもあります。
病院としては経営を成り立たせるために支払いに応じてくれる患者を優先的に受け入れようとします。
そのため、支払いに応じない場合は早期退院・転院を促されます。
関係がさらに悪化する前に医療費を支払う手立てや相談を行うようにしましょう。
最終的に弁護士を通じて民事訴訟に発展する可能性もある
この段階でも医療費の支払いに応じてもらえない場合は弁護士を通じて民事訴訟に発展する可能性もあります。
民事訴訟に発展すると弁護士同士のやり取りになり、法的手段で医療費を回収されることになります。
給与や保険などの財産が差し押さえられ、また、弁護士費用などを請求される可能性があります。
また、医療費の件で民事訴訟に発展してしまうとこのことが原因で医療機関のネットワークを通して、ほかの医療機関の利用を制限される可能性があります。
医療費の支払いは極力早い段階で済ませるようにしましょう。
【参考】ソーシャルワーカーに医療費の相談をしてみるのもOK
ソーシャルワーカーとは治療以外の生活やお金に関する相談を受けてくれる専門家のことです。
大きな病院ではソーシャルワーカーが在籍していることが多く、相談支援室といった名称のところに配属していることが多いです。
医療費に関する相談ができるので医療費が高額になる治療を受ける前に一度相談されることをおすすめします。
【まとめ】医療費を支払う手段はたくさんあるので活用しよう!
入院費・手術費などの医療費が払えない場合の対応方法について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の記事のポイントは
- 高額療養費制度など公的制度を利用すること
- 病院に相談するなど自分で対応してみること
- 医療費の支払いがかなり遅れると訴訟問題に発展する可能性があること