- 14年以内に退職手当の支給を受けている人
- iDeCoの受け取り方をまだ決めていない人
- iDeCoの退職所得控除の条件に当てはまる「19年以内に退職手当等の支給を受けている」人
- 所得控除がいくらになるのか相談窓口に確認をしたい人
内容をまとめると
- 確定拠出年金(iDeCo)の受給方法は3つの受け取り方で税金が変わる
- 以下のような複雑なiDeCoの退職所得控除額の計算は「iDeCoの無料相談窓口」で相談を受け付け
- iDeCo受取時、他の所得などによって「保険料や所得税・住民税の高騰」「雑所得が108万円を超えると課税」など、思わぬ税負担や受取額の減少が発生することがあるため要注意。
- 課税額が最も少ない最適なiDeCoの受け取り方は、退職金やiDeCoの状況、退職後の公的年金などによって異なるため「iDeCoの無料相談窓口」に相談
監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
iDeCo(イデコ)の退職所得控除額、14年以内に退職手当の支給を受けている場合は?
こんにちは。マネーキャリア編集部です。
先日、30代男性から次のようの相談を受けました。
今回の記事のポイントは以下の4つです。
- iDeCoの受給方法3種類とそれぞれにかかる税金について
- 退職所得控除額の仕組み・計算方法
- iDeCoの退職所得控除額計算の注意点
- iDeCoを受け取る年から19年以内に退職金を受け取っている場合には、退職所得控除額は調整される
確定拠出年金(iDeCo)の受給方法は3種類!受け取り方で税金が変わる
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、自分で申し込み、掛金を決めて運用し資産を形成する私的年金の制度です。
受け取り方 | 年金 | 一時金 | 年金と一時金の併用 |
---|---|---|---|
税目 | 雑所得 | 退職所得 | 雑所得・退職所得 |
- 年金として受け取る
- 一時金として受け取る
- 年金と一時金の併用
①年金として受け取る
65歳未満で他に受け取る年金がない場合は、iDeCoの年金は、公的年金控除額60万円+基礎控除48万円=108万円以内であれば、そのまま受け取れることになります。
ただし、受け取りごとに手数料がかかることと、iDeCoを継続するには口座管理手数料などもかかることに注意しましょう。
②一時金として受け取る
iDeCoは普通の退職金と同じで一時金として一括で貰うことも出来ます。
一度に大きなお金を貰うことができるため、住居の修繕や、海外旅行、車の買い替えなどまとまった金額の出費を予定している人におすすめです。
iDeCoを一時金として一括で受け取った場合は、退職所得としての扱いになります。
退職所得は他の所得と分離して所得税を計算する、いわゆる分離課税と呼ばれる方式です。
退職所得は、受け取った金額の総額に対して税金がかかるのではなく、「2分の1課税」「退職所得控除」の適用により控除金額を超えた部分についてのみ課税されるため支払う税金の額は抑えられます。
ただし、同時に退職金などがある場合は、同じ退職所得として合算して計算されることに注意しましょう。
③年金と一時金の併用
iDeCoは一時金受取と年金受取を併用することも可能です。
ある程度まとまったお金を一時的にもらい、かつ残りを年金にして生活費にする、など細かい配分も含め分けることが出来ます。
この場合、一時金部分については、退職所得として税額が、年金部分については同様に公的年金などの雑所得として年金の税額が適用されます。
自分のライフプランに合わせて柔軟な受給が可能ですが、あまりにも細かくしてしまうと税金で損をしてしまったり、手数料がかかるので注意しましょう。
iDeCoの退職所得控除額の仕組み・計算方法
iDeCoを一時金として一括で受け取った場合は、退職所得扱いになり、税金を支払う必要があります。
退職所得は税金が優遇されています。そのために活用するのが退職所得控除です。
退職所得控除について仕組みや実際の計算方法などについてお伝えして行きます。
退職所得控除額の計算方法
次に退職所得控除の計算方法です。
勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円 × A (80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円 + 70万円 × (A - 20年) |
※iDeCoの場合は勤続年数=加入年数
退職所得控除は、加入年数に応じて金額が大きくなる仕組みになっています。「退職」と言う名前がついていますが、会社員の方でなくてもこの退職所得控除を受けることが可能です。
iDeCoを受け取る19年以内に退職金を受け取っている場合には、退職所得控除額はその退職金と一緒に計算することになります。その場合は、iDeCoの加入年数と会社の勤務期間の長い方を採用して控除額を計算します。
払う税金を少なくするためには、退職金とiDeCoの一時金を貰うタイミングに注意する必要があるということですね。
税額の計算方法
上記で計算した、退職所得金額に対して税金がかかります。
かかる税金は、所得税と住民税です。
所得税と住民税に関しては、給料などにかかる税率と同じになります。所得税は、所得金額に応じて税率が増える累進課税なので国税庁のHPを参考に計算しましょう。
受け取る退職金が、退職金控除額の枠内に収まっている場合は、税金を払う必要はありません。
iDeCoの退職所得控除額計算の注意点!14年以内に支給されている場合は?
iDeCoの退職所得控除額計算をする際に注意すべきことがあります。
それは、iDeCoの受け取る14年以内に退職金を受け取っている場合には、退職所得控除額はその退職金も一緒に計算する、ということです。
例えば、会社の退職金とiDeCoを同じ年に受け取る場合には、
退職所得金額=(会社の退職金+iDeCoの一時金-退職所得控除額)×1/2
となり、退職所得控除額を使いきる可能性が高くなります。
払う税金を少なくするためには、会社の退職金とiDeCoの一時金を受け取るタイミングをずらしたり、iDeCoは年金方式で貰うなど、工夫をする必要があります。
①同じ年に他から退職手当等の支給を受けている場合
例えば、会社の退職金とiDeCoを同じ年に受け取る場合について見ていきましょう。
退職所得控除額の計算は、それぞれの勤続期間を計算し、最も長い期間を勤続年数として計算します。ただし、重複してない期間がある場合は、その期間は合算してください。
勤務年数が30年、iDeCo加入年数が25年の場合は勤続30年として計算。
800万円 + 70万円 × (30年 - 20年)=1500万円
退職所得控除額は1500万円になります。
②前年以前19年以内に退職手当等の支給を受けている場合
iDeCoの一時金を受給した年よりも前に会社などから退職一時金の支給があった場合には、以前に受けた退職一時金の額がその時の退職所得控除額に収まっているかどうかで計算方法が変わってきます。
退職一時金の額>退職所得控除額、の場合
すでに以前に退職所得控除額を使い切って、税金を収めていいますがiDeCo加入期間を加味して再度計算をし直します。
iDeCoの加入期間と勤務期間が重複している場合は前回の退職金控除額と同様になるので残っている控除枠がiDeCo受け取り時に適用となる控除額となります。
退職一時金の額<退職所得控除額、の場合
前の退職一時金が退職所得控除額を使い切っていないので、使い切っていない退職所得控除額を日数に変換し、iDeCoの勤続期間との重複期間を計算して計算します。
iDeCoの受け取り方、退職所得控除額をシミュレーション!
iDeCoの受け取り方によってかかる税金の違いについてお伝えしてきました。
- 会社からの退職金(30年)1,000万円
- iDeCo(20年) 2,000万円(iDeCoの加入期間と勤務期間が重複している場合)
- 退職後の公的年金 年間200万円
・一時金で受け取った場合
iDeCoを一時金として貰った場合は、会社からの退職金と合計して計算します。
退職所得控除額は、
800万円 + 70万円 × (30年 - 20年)=1500万円
退職所得金額は
(1,000万円+2,000万円-1500万円)×1/2=750万円
750万円に対して、かかる所得税と住民税の合計は約186万円になります。
・年金で受け取った場合
年金で受け取る場合は、退職金の1000万年は退職所得控除額の1500万円ないの収まるので、退職金にかかる税金はありません。
iDeCoで受け取る年金は100万円ですが、それに加えて国民年金なども受給するので、雑所得としての控除枠である108万円を越えるので、年間の社会保険料や所得税・住民税の金額
がその分増税されます。
一年で支払う必要がある社会保険料や所得税・住民税は、45万1,000円となり、年金で受け取らない場合の22万5,000円よりも22万6,000円ほど多く支払う必要が出てきます。20年間で452万円ほど多く支払う必要があるということです。
・一時金と年金を併用した場合
iDeCoの半分の1000万円を一時金、半分を年金で毎年50万円貰うとした場合で計算していきます。
一時金は、
(1,000万円+1,000万円-1500万円)×1/2=250万円
250万円にかかる所得税と住民税の合計は約51万になります。
一年で支払う必要がある社会保険料や所得税・住民税は、33万3,000円となります。
一時金で払った場合に比べると、総額で267万円払う必要があります。
3つのパターンを比べてみると、一時金で受け取った場合がもっとも得をするということがわかります。
iDeCoの年金受取時は他の所得や手数料に注意
iDeCoの年金受取で気をつけることは他にもあります。他に受け取っている所得や年金がある場合は毎年払う社会保険料や所得税・住民税が高くなること、と、年金を受け取る時にも手数料がかかる、ということです。
iDeCoを年金で受け取る場合には雑所得としての扱いになり、108万円までの年金控除枠があるのですが、同時に公的年金や厚生年金などを受け取ると控除額を越え、課税されるようになります。
また、各種金融機関ごとに価格はかわりますが、年金を受け取るごとに手数料がかかります。更に、iDeCoの口座管理手数料などもかかるので、諸経費がかさみ受け取る年金の総額が少なくなります。
確定拠出年金(iDeCo)の退職所得控除額まとめ
iDeCoの退職所得控除額を中心にお伝えしてきましたがいかがだったでしょうか。
今回の記事のポイントは
- iDeCoには3つの受け取り方があり、それぞれかかる税金が異なる
- 一時金で受け取り退職所得控除額活用するのが一番得
- 19年以内に他の退職金を貰っている場合は退職所得控除額の調整があるので注意