iDeCoをやめたい人はどうする?転職・就職先で企業型DCに加入する方法ものサムネイル画像

「掛金が払えないのでイデコをやめたい」「転職・就職先で企業型DCに移換したい」このような悩みを抱える人は多いでしょう。そこで本記事ではiDeCo(個人型確定拠出年金)をやめたいときの対処法やiDeCoを減額・停止するデメリットについてまとめます。

監修者「谷川 昌平」

監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー

株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。
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この記事の目次

iDeCo(個人型確定拠出年金)をやめたい人はどうすればよいの?

こんにちは、マネーキャリア編集部です。


先日、30代男性からこんな質問をいただきました。


今度転職することになったのですが、転職先が企業型DCをやっているので、iDeCoの方をやめたいと思っています。

どうすればやめられますか。


転職や就職によってiDeCoをやめたいという人は少なくないでしょう。


そこで今回はiDeCoのをやめたい人はどうするのかを中心に、

  • iDeCoをやめたい人も原則解約できない
  • iDeCoを払えずやめたい人は減額と停止を検討
  • iDeCoの掛け金を減額・停止するときの注意点・デメリット
  • iDeCoをやめて転職・就職先で企業型DCに加入したいときは?
  • iDeCoを払えなくなったら運用指揮者に登録変更する方法もある
  • iDeCoの運用について迷ったらお金のプロに相談すべき理由

について解説します。

iDeCoをやめたい人も原則解約できない

結論から申し上げますと、iDeCoを個人的な理由でやめたいと思っても基本的には不可能です。


なぜならiDeCoは60歳まで引き出しができなかったり、運用益が非課税になったりと、豊かな老後資金を拠出することに特化しているためです。


もし途中で辞められるのであれば、60歳まで引き出しができないというルールに齟齬が生じます。


あくまで老後資金の準備を前提としている制度なのです。


とはいえ、絶対解約できないというわけではありません。


いくつかの限られた条件を満たせば、

  • 脱退一時金
  • 障害給付金
  • 死亡一時金
などを得られるとともに解約できます。

ここからはそれぞれの条件に付いて解説します。

脱退一時金を受け取れる条件

まず脱退一時金を受け取るための条件について解説します。


その条件とは、複雑なので以下の表を参照してください。


2017年1月以降に資格喪失した方
2016年12月までに 資格喪失した方


年金資産が15,000円以下で、次の要件をすべて満たしていること。
  • 企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金のいずれかの加入者、運用指図者でないこと。
  • 加入者の資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して6カ月を経過してないこと。
年金資産が15,000円以下で、次の要件をすべて満たしていること。
  • 企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金のいずれかの加入者、運用指図者でないこと。
  • 加入者の資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して6カ月を経過してないこと。


次の要件をすべて満たしていること。
  • 国民年金保険料免除(納付猶予)者であること。
  • 障害給付金の受給権者でないこと。
  • 通算拠出期間が5年以下、または年金資産が25万円以下であること。
  • 加入者資格を喪失してから2年以内であること。
次の要件をすべて満たしていること。
  • 個人型確定拠出年金の加入者となる資格があること。
  • 継続個人型年金運用指図者 (企業型確定拠出年金の加入者資格喪失後、企業型確定拠出年金の運用指図者または個人型確定拠出年金の加入者となることなく個人型確定拠出年金の運用指図者となった者で、その申し出をした日から起算して2年を経過している者) であること。
  • 障害給付金の受給権者でないこと。
  • 通算拠出期間が1カ月以上3年以下であること、または年金資産が25万円以下であること。
  • 継続個人型年金運用指図者となった日から2年を経過していないこと。
  • 年金資産が15,000円以下の場合の脱退一時金を受け取っていないこと。


この表を簡単にすると、

  1. 保険料免除者である場合
  2. 障害給付金の受給権者でない場合
  3. 通算掛金拠出期間が1ヵ月以上5年以下であること、または年金資産額が25万円以下である場合
  4. 最後に企業型確定拠出年金加入者又は個人型年金加入者の資格を喪失した日から起算して2年を経過していない場合
  5. ほかに脱退一時金の支給を受けていない場合
となります。

この条件からは、被保険者ではなく、年金資産が極端に低い人しか脱退一時金を得ることが難しいことが分かります。

健康的で人並みに稼いでいる人なら無論不可能に近いでしょう。

それだけ老後資金を途中で得ることは認められないということです。

限られた人がやめたいとなったときのみ、脱退一時金を受け取ることができることが確認できました。

生涯手帳を持つと障害給付金を受け取れる

障害給付金を受け取るための条件を解説します。


障害給付金を受け取れるのは、国で定められた「高度障害」の状態になった人のみです。


その状態とは、

  • 障害基礎年金の受給者であること(1級および2級)
  • 身体障害者手帳(1級~3級)の交付を受けている
  • 療育手帳(最重度、重度)の交付を受けている
  • 精神保健福祉手帳(1級および2級)の交付を受けている
です。

これらの状態にある場合、iDeCoの加入年数に関係なくすぐに「障害給付金」を受け取れます。

やめたいという思い以前に、やめなければ今の暮らしが大変になる恐れがあるためです。

なお、障害給付金に関しては、
  • 一時金(一括)として受け取る
  • 年金として受け取る
  • 一時金と年金の組み合わせとして受け取る
を選べます。

ご自身に合ったものを選択してください。

加入者が死亡した場合は死亡一時金を受け取れる

死亡一時金を受け取ることに関しては、特別な条件はありません。


ただ本人が受け取れないので、「相続」という形になります。


iDeCoの相続は、通常の遺産相続とは異なる部分も多いため注意が必要です。


詳しくはマネーキャリアの「ideco(イデコ)の相続方法や税、死亡一時金や相続対策について徹底解説」を参照ください。


なお、死亡一時金は「一時金」として受け取るので、死亡者が60歳以上で年金を受け取っていた場合でも継続しません


60歳未満なら言うまでもありません。

iDeCoを払えずやめたい人は減額と停止を検討

先ほどiDeCoはやめたいからといってやめられるものではないとお伝えしましたが、どうしてもやめたいと人は減額と停止で我慢する手があります。


経済的に苦しくなってやめたい場合にはこれらの方法を選択するとよいでしょう。


ここからはそれぞれの仕組みや方法を紹介します。

掛金の減額

iDeCoにお金をかける余裕がなくなった場合、一年に一度だけ掛金の減額が可能です。

減額には、「加入者掛金額変更届」が必要になります。


この変更届は、国民年金の区分」と「掛金の拠出頻度」によって異なるので、以下の表をお役立てください。


月額拠出年額拠出
第一号被保険者リンクリンク
第二号被保険者リンクリンク
第三号被保険者リンクリンク


以上のリンクを参考に、加入者掛金額変更届を提出してください。

掛金の停止

iDeCoの掛金拠出そのものをストップしたい場合は、減額とは異なり、誰でも一様に「加入資格損失届」が必要になります。


ただ、誰でも簡単に手続きができるのではなく、

  1. 死亡したとき
  2. 60歳に達したとき
  3. 国民年金の被保険者の資格を喪失したとき
  4. 個人型年金運用指図者となるとき
  5. 企業年金の加入者になったとき(企業型確定拠出年金の規約で加入者が個人型年金に加入できると定めている場合は資格喪失になりません。)
  6. 保険料免除制度等により国民年金の保険料の全額または一部の額を要しないものとされたとき
  7. 農業者年金の被保険者になったとき
の場合に限ります。

資格損失届ということで、一見すると二度とiDeCoに加入できないように見えますが、再開は可能です。

一時的に停止したい場合は、4の「運用指図者になる」を選択して停止し、再開したい場合は、もう一度金融機関に手続きをするとよいでしょう。

iDeCoの掛け金を減額・停止するときの注意点・デメリット

しかしiDeCoが老後資金の準備を前提としている以上、何のデメリットもなく気軽に減額・停止できるわけではありません。


デメリットとしては、

  • 手数料
  • 税制メリットが受けられない
などがあります。

ここからそれぞれについて解説します。

手数料に注意

まずデメリットの一つとして、手数料がかかることがあげられます。


特に気を付けたい手数料は、

  • 事務委託手数料
  • 運営管理手数料
です。

楽天証券を例に挙げると、


支払先手数料
事務委託手数料信託銀行
66円
運営管理手数料
楽天証券0円
合計66円

楽天証券は条件に関わらず無料ですが、みずほ銀行は掛金が低いと余分に260円かかってしまいます。

これらの手数料はたとえ減額したり、停止させたりしても継続的にかかってきます。

ただそれは掛金を拠出している状態でも変わらずかかっているので、問題ないのではないかという方もいるかもしれません。

しかし停止させた場合には驚くべき落とし穴があるのです。

以下で解説します。

拠出をやめると税制メリットを十分に受けられない

iDeCoは、掛金の全額所得控除というメリットを売りにしています。


つまり掛金をかけた分だけ所得控除として自分にお金が返ってくることになります。


そして手数料は掛金から天引きされる仕組みになっています。


そのため、掛金を拠出している状態でも確かに手数料がかかっているはいえ、それは回りまわって所得控除によって返ってくることになります。


もし掛金を停止させたらどうなるでしょうか。


今まで所得控除で実質無料になっていた手数料が、自己負担になってしまうのです。


この落とし穴をどう見るかは人それぞれですが、毎年手数料が引かれていってしまいにはせっかく老後年金を準備したのに手数料のせいで元本割れすることも考えられます


また、運営管理手数料が無料であっても、「事務委託手数料」は継続的にかかります。


こちらも掛金から天引きされるものなので、停止した場合は自己負担となります。


もっとも、新たに掛金をかけないだけで運用はできます。


運用益で賄えるのであれば心配いりません。


もうそうでない場合にはこれらの点に注意してください。

iDeCoをやめて転職・就職先で企業型DCに加入したいときは?

ここからは転職や就職でiDeCoから企業型DCに加入する場合について解説します。


ここで一度企業型DCについて解説すると、いずれ退職金としてもらうお金を前々から運用できる制度のことです。


加入者の行動によっては退職金が増えることもあります。


一般的に企業型DCがある企業なら、iDeCoの加入を制限するところが多いです。


そうした場合に余計なiDeCoはやめたいですよね。


しかし当然ながらiDeCo自体を脱退するのは原則不可能です。


その代替案として、

  • 就職先の企業型DCに移換できる
  • 規約で認められている場合、企業型DCとiDeCo併用も可能
  • 確定給付企業年金へ移換が可能な場合もある
ということが可能です。

ここからそれぞれについて解説します。

就職先の企業型DCに移換できる

iDeCoから企業型DCに移る場合、いくつかのステップが必要になります。


そのステップとは、

  1. iDeCoの加入資格を損失する(加入資格損失届を提出する)
  2. 企業型DCに加入する
  3. iDeCoの資産を企業型DCに移換する(個人別管理資産移換依頼書を提出する)
です。

加入資格を損失することで、先にお伝えしたようなデメリットがあることに注意が必要です。


また移換に伴い、金融機関によっては手数料をとることろもあります


一例として楽天証券を挙げると、楽天証券では国民年金基金連合会に2,829円の手数料を支払わなければいけません。


人気のあるSBI証券だと4,400円がかかります。


必ず加入している金融機関の手数料がどうなっているのかを確認するようにしましょう。

規約で認められている場合、企業型DCとiDeCo併用も可能

もし会社の規約で認められているなら、企業型DCとiDeCo併用も可能です。


しかしiDeCo単体で利用していた時よりも掛金の上限額が下がってしまうことに注意が必要です。


具体的な上限額についてはほかの条件とも絡めて以下の表をご覧ください。


国民年金保険の加入区分職業の例掛金上限
第一号被保険者自営業、フリーランス、フリーターなど月額6.8万円
第二号被保険者企業型DCのない会社員月額2.3万円
企業型DCに加入している会社員月額2万円
確定給付企業年金に加入している会社員
公務員
月額1.2万円
第三号被保険者専業主婦(夫)月額2.3万円


ここで注目していただきたいのが、上から4つ目の「企業型DCに加入している会社員」です。


これはiDeCoと企業型DCを併用している方を指します。


会社員でもiDeCo単体(上から三つ目の企業型DCのない会社員)だと、掛金の上限が月額2.3万円なのに対し、併用だと月額2万円になります。


このように併用だと上限額が下がってしまうので、これまで上限目一杯かけていた方は掛金の減額が必要になります。


それに伴い手続きも発生するのでその点にお気をつけ下さい。

確定給付企業年金へ移換が可能な場合もある

確定給付企業年金とは、いずれ退職金としてもらうお金を前々から企業が運用してくれる制度のことです。


iDeCoからこの確定給付企業年金に移換できるケースもあります。


ただしそれは、

  • 確定給付企業年金の規約において、確定拠出年金の個人別管理資産を受入れることが可能と定められている場合
に限ります。

ご自身の企業が移換可能かどうかは担当部署にご確認ください。


また、確定給付企業年金とiDeCoを併用することも可能です。


その際、上の表にあるように、掛金の上限額が1.2万円と最低になることを忘れないようにしてください。

【参考】iDeCoを払えなくなったら運用指揮者に登録変更する方法もある

iDeCoの加入資格を損失する理由として、

  • 運用指図者(指揮者)になる
ことをあげました。

そもそも運用指図者とは、新たに掛金を拠出することなく、今ある分の資産を運用する人を指します。

運用指図者のメリットは、
  • 毎月・毎年の掛金がかからない
  • 運用益が非課税なので気兼ねなく運用できる
などがあります。

デメリットは、
  • 手数料がかかる
  • 掛金の全額所得控除のメリットを受けられない
  • 手続きしなければいけない
  • 加入の際に再度手数料がかかる
などがあります。

デメリットを見てもらえれば分かるように、できることなら運用指図者は避けたいです。

ただ、
  • 失業などの理由で掛金を拠出し続けられない場合
等の場合、iDeCoの掛金も負担になることが考えられます。

そうした場合には、運用指図者に登録を変更することがおすすめです。

また、60歳以降なら通常は積立金を受け取るのですが、そうではなく運用したいという人が運用指図者になるケースもあります。

70歳まで資産運用を継続できるので資産をまだ増やしたいという人は目指してもよいかもしれません。

iDeCoの運用について迷ったらお金のプロに相談すべき理由

ここまでよりiDeCoのやめたい人はどうするのかを理解していただけたかと思います。


とはいえ、

  • そんなリスクを負ってまでiDeCoを利用する必要はあるのかな…
  • iDeCoをうまく活用できるかな…
というようにiDeCoに不安を抱いた方もおられるでしょう。

結論から申し上げますと、そのような方には、お金のプロに相談することをおすすめします。

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まとめ:iDeCoは無理のない範囲で運用しよう

ここまではiDeCoをやめたい人はどうするのかを中心に見てきました。

この記事のポイントは、

  • iDeCoをやめたい人も原則解約できない
  • iDeCoを払えずやめたい人は減額と停止すれば掛金だけは払わずに済む
  • iDeCoの掛け金を減額・停止すると、税制控除が受けられなかったり、手数料が余分にかかったりする。
  • iDeCoをやめて転職・就職先で企業型DCや確定給付企業年金に入るなら、iDeCoの加入資格を損失して資産を移換するか、併用する。
  • 資産を移換するにあたって手数料がかかることもある。
  • iDeCoをやめたいと思ってもやめられないので、運用指揮者に登録変更する方法もある。
  • iDeCoをやめたいと思ったら、マネーキャリアの無料FP相談がおすすめ
でした。

ここまで見てきたようにiDeCoをやめたいという個人的な思いではやめることはできず、減額・停止させてもデメリットがあります。

そのリスクを受け入れてiDeCoに加入するのなら、無理のない範囲で掛金を設定し運用するようにしましょう。

一般的に最初は最低額の5000円から始めて、ゆとりがあれば10000万円以上を目指し、老後が見えてきた50代になって一気に掛金を高くするという使い方がおすすめです。

ただこれは一般論であり、それぞれのライフプランによっては異なるでしょう。

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