年末調整を忘れた場合、本来受けられたはずの控除を受けられなくなり、無駄な税金を納めることになりかねません。今回の記事では、年末調整を忘れた場合の問題点や、控除の申告を忘れた具体的なケースと対処方法について解説していきいます。
監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。
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この記事の目次
年末調整を行わなかった場合の問題点
年末調整を忘れた場合の問題点は4つあります。
- 多く収めた税金の還付を受けられない
給与所得者が得た給与や賞与から源泉徴収した所得税などの税金を、勤務先などが12月に税金の過不足を精算するのが年末調整です。
納税すべき金額よりも毎月差し引かれている所得税などのほうが大きい場合に、年末調整を行うことで還付を受けられます。
しかし、年末調整を行わないと納税すべき税額より多く引かれていたとしても、税務署が判断することができず、給与所得者が損をする可能性があります。
- 住民税が高くなる
住民税の税額は年収の金額ではなく、各種控除を差し引いた「課税所得」を基準に決定されます。
年末調整を忘れた場合は本来受けられたはずの控除が反映されず、課税所得が大きくなってしまうため、次の年に支払うべき住民税の金額が高くなってしまうのです。
- 受けられたはずの控除が受けられなくなる
先ほども紹介しましたが、年末調整を忘れた場合は本来受けられたはずの控除が受けられなくなります。
年末調整で受けられるのは、基礎控除、配偶者控除、生命保険料控除など10種類の控除があります。
年末調整を忘れた場合にはこれらの控除が受けられなくなり、本来納めるべき税金の額よりも多く支払うことになります。
- 自分で確定申告をする必要が出てくる
後に対処方法でも解説しますが、年末調整を忘れた場合は自分で税務署に行って確定申告をする必要があります。
年末調整は、必要な書類を勤務先に提出することで勤務先が手続きをしてくれますが、自身で確定申告をする場合にはそうはいきません。
確定申告書の記載の仕方、どのような控除が受けられるかなどを自身で調べる時間もかかり、税務署に行く時間なども無駄になってしまいます。
自身の時間を無駄にしないためにも、「勤務先での年末調整を忘れた」とならないように気を付けましょう。
よくある「控除の申告漏れ」
控除の申告を忘れた場合は、本来受けられるはずだった控除を受けられなくなります。
年末調整で申告を忘れた具体的なケースは下記です。
- 配偶者特別控除・・・年収141万円以上となり、配偶者特別控除が適用できないと考えていた
- 生命保険料控除・・・生命保険料控除証明書を提出するのを忘れた
- 地震保険料控除・・・地震保険料控除証明書を提出するのを忘れた
- 社会保険料控除・・・給料天引きの他にも国民健康保険料や国民年金保険料を支払っているが、記載するのを忘れた
- 小規模企業共済等掛金控除・・・個人型確定拠出年金について、記載するのを忘れた
年末調整の提出期限はいつ?
年末調整を忘れた場合の対処方法
先ほど、年末調整を忘れた場合の問題点について紹介しましたが、もし忘れた場合にはどのように対処すればよいのでしょうか。
年末調整で申告を忘れた場合は、まずは勤務先に申し出ましょう。 再度年末調整の処理を行ってもらえることがあります。
しかし、再度年末調整の処理を行うことは、事務作業が二度手間になってしまい、あまり良い顔をされないので、個別に確定申告で対応するのがおすすめです。
確定申告は、原則3月15日までに申告をすれば問題ないので、年末調整の時期よりも3か月ほど猶予があります。
そのため、申告するのを忘れてしまった控除については、落ち着いて確定申告の際に自身で対応するのが良いでしょう。
また、確定申告では、年末調整では対応していない雑損控除、医療費控除、寄付金控除などについても申告ができますので、もし該当する場合にはこちらも忘れずに申告するようにしましょう。
まとめ
今回の記事では、年末調整を忘れた場合の問題点や、控除の申告を忘れた具体的なケースと対処方法について解説しました。
年末調整を忘れた場合でも、自分で確定申告をすれば罰則などはありません。
しかし、確定申告の時期に自分で必要な書類の記入などの対応をしなければいけないので、時間と労力を消費してしまいます。
年末調整のタイミングで焦らないように、勤務先から促される年末調整の書類などは前もって準備しておきましょう。