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予防接種の費用は医療費控除の対象になるのでしょうか。この記事では、予防接種が医療費控除の対象になるかどうかを説明しています。また、医療費控除の対象になる意外なモノや、予防接種の費用を節約する方法も紹介しているので、ぜひお読みください。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

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予防接種は医療費控除の対象になる?


毎年、予防接種を受けている方や、医療費控除の申請をしている方、いらっしゃるかと思います。


予防接種は医療費控除の対象になるか否か、ご存じでしょうか?


今回は

  • 予防接種は医療費控除の対象?
  • 医療費控除の対象とは?
  • 予防接種の費用を節約する方法
以上の内容を中心に解説していきます。

予防接種にかかる費用をなるべく抑える方法や、意外と知られていない医療費控除に代わる制度についても説明しているので、ぜひ最後までお読みください。

マネーキャリアには他にも、医療費控除について説明した記事があるので、ぜひご覧ください。

予防接種は医療費控除の対象にならない!

結論、予防接種は医療費控除の対象ではありません。


大前提として、医療費控除について説明しておくと、1年間に支払った医療費が10万円を超える場合に確定申告をすると、課税所得を減らすことができる制度です。


医療費控除を考える際に鍵となる考え方は「その行為が治療に該当するのか否か」ということです。


予防接種は、その名の通り「予防」であって「治療」ではありません。

誤って、予防接種の費用を医療費控除の対象額として計算しないようにしましょう。


万が一、医療費控除の対象金額としてしまった場合の対処法は、後ほど掲載しています。


また、後ほど説明するセルフメディケーション税制の適用に際し、予防接種が「健康の保持増進に取り組んでいる」という要件には当てはまることは覚えておいて損はないです。

医療費控除の対象になる意外なものを紹介!


ところで、医療費控除は、診察代や処方された薬だけが対象だとは思っていないでしょうか?

そんなことはありません。


実は、医療費控除は

  1. 生計を一にしている家族分の医療費
  2. 通院の際の交通費
  3. ドラッグストア等で購入した市販薬
等も対象になっています。

意外と見過ごしがちなので、今まで「あと少しで医療費控除の対象だったのに!」という方は、ぜひ見直してみましょう。

上記3点について、詳しく解説していきます。

①生計を一にしている家族分の医療費

医療費控除は自分1人の分しか、対象ではないと思っていませんか?


実は、生計が同一の家族分は、合算して医療費控除の対象とすることができるのです。

今まで1人分ずつで計算していた方は、ぜひご家族分を合算してみてくださいね。


「生計を一にしている」とは,必ずしも一緒の家に住んでいる必要はありません。


会社や学校が休みの時にその親族のもとで生活を共にしている、つまり帰省先の場合。

その親族へ、常に生活費・学費等の送金が行われている、つまり仕送り先の場合。

要するに、家族と離れて暮らしている方でも、実家と合算できるということですね。


「生計を一にしている」時期かどうかの判断基準としては、医療費を支払う事態が発生した時、もしくは医療費を支払った時の状況によるとされています。


例えば、息子の結婚前に、母親が息子の医療費を支払ったとしたら、その時点ではまだ「生計を一にしている」と言えるので、医療費控除の対象となります。

②通院の際の交通費


通院する際に、交通費がかかっている場合は、医療費控除の対象として考えることができます。

電車やバスのといった公共交通機関の交通費の場合は、領収書は必ずしも必要ではありません。
いつ・どこまで・どの経路で公共交通機関を利用したかの情報は必要になりますので、メモを残して把握しておきましょう。

ただし、定期券の利用範囲と、病院までの経路が重なっていた場合、その部分に関しては医療費控除の対象外となります。

また、全部の交通費が対象となるわけではなく、以下のケースは、対象外です。
  • タクシー代
  • 車のガソリン代・駐車料金・高速料金
  • 自己都合の新幹線や飛行機代
  • 必然性がない付き添い人の交通費
ただ、ケースバイケースで考える必要があります。

タクシー代

「タクシーの方が楽」「公共交通機関だと行きづらいからタクシーを利用した」というように、利便性が目的の場合は、対象となりません。

しかし、交通機関が動いていない深夜にどうしても病院に行かなければならない場合や、
病気やケガの程度が重くてタクシーを利用しないと通院が厳しい場合は、その限りではありません。
タクシー代は基本的に対象外ですが、今挙げた二つのケースでは医療費控除の対象となります。
しかるべき理由でタクシーを利用した場合は、領収書を受け取っておきましょう。 

車のガソリン代・駐車料金・高速料金

自家用車で通院するという人もいらっしゃるでしょう。
その時にかかるガソリン代・駐車料金・高速料金については、医療費控除の対象外です。

医療費控除の対象となるのは、他者から受けたサービスの対価として支払いをした場合です。
公共交通機関では、運転手が行うサービスに対し支出をしたことになり、控除の対象となるわけです。

しかし、自家用車で通院する場合、ガソリン代や駐車料金は、購入や利用に対して支払いをしたということになり、対象外となります。

自己都合の新幹線や飛行機代

自宅の近くで受けられる治療にもかかわらず、わざわざ「遠方の病院に通いたい」と自己都合で遠方の病院を選択した場合、かかる交通費は控除の対象外となります。

かかりつけ医から遠くの病院への紹介を受けて、そこでしか受けられない治療を受ける場合は、新幹線・飛行機の料金が医療費控除の対象となります。

ちなみに、遠方の病院に行く場合、ホテルに宿泊することもありますが、宿泊費に関しては、いかなる理由であっても、医療費控除の対象にはなりません。

必然性がない付き添い人の交通費

「心配だから付き添った」といった理由では控除の対象になりません。
また、子どもや親が入院しており、その世話のため病院に通う場合もあります。
この場合は本人が通院をしていないため、医療費控除の対象外です。

付き添いとは少し違いますが、長期入院患者が自宅で過ごすためにかかった、病院と自宅の交通費についても、診療に関わることではありません。
自己都合でかかった費用なので、医療費控除の対象にはなりません。

ご紹介してきたように、交通費といっても、医療費控除の対象となるもの、ならないものがあります。
国税庁のホームページでは、納税者から寄せられた質問に対する回答がまとまっているページがあるので、確認してみましょう。

しかし、これはあくまで基本的な区分であり、事情や背景によっては、医療費控除の対象になったり、ならなかったりすることが十分にあり得ます。
イレギュラーな交通費が発生する場合、前もって管轄の税務署に医療費控除の対象となるかを確認しておくと安心ですね。

③ドラッグストア等で購入した市販薬


今回ご紹介した3つの医療費控除の意外な対象費用の中では、一番意外な対象かつ知らない方も多いのではないでしょうか?


頭痛薬・風邪薬・下痢止めなどをドラッグストアで購入することもあるかと思いますが、その際も実は医療費控除の対象となるのです。


ドラッグストアで購入した際は、もちろん割引やお店のポイントを利用した分は対象外となり、実際に支払った金額分だけが控除の対象です。


また、以下は対象外となるので注意しましょう。

  • 健康増進、疲労回復を目的とした栄養ドリンク
  • ビタミン剤
  • 腰痛のための温湿布薬
  • 市販の漢方薬
  • 養毛剤、発毛剤
  • 健康食品、サプリメント
  • 市販の目薬
ただ、漢方薬やビタミン剤でも、医師による処方箋や薬剤師が作成した文書があれば、治療または療養に必要なものとして証明することができ、医療費控除の対象となります。

もちろん、領収書・レシートが必要になるので、忘れずにとっておきましょう。

医療費控除よりセルフメディケーション税制の方がお得な可能性もある


セルフメディケーション税制をご存じでしょうか?

医療費控除よりも控除対象となる金額が低く、

OTC医薬品(ドラッグストアで処方箋なしで購入できる医薬品)が対象となっています。


セルフメディケーション税制の対象となる品目には、パッケージに目印となるマークが書いてあります。

レシートにも、 ★や※等、お店によって異なりますが印がついています。


病院はさほど受診しないけど市販薬はよく買う方には、利用しやすい制度です。


年間12,000円を超える場合に適用され、上限は88,000円までです。

医療費控除はなかなか適用できない!という方も、セルフメディケーション税制なら、だいぶハードルが下がると思います。


ただし、セルフメディケーション税制を利用するにあたっては、予防接種・健康診断の受診など、以下のような健康保持増進への取り組みをしていることが条件となります。

  • インフルエンザの予防接種
  • 市町村のがん検診
  • 会社の定期健康診断
  • 特定健康診査
  • 定期健康診断
  • 人間ドック

また、医療費控除か、セルフメディケーション税制か、どちらかしか選べない点には要注意ですが、利用できそうな場合はよりお得な方を利用してみてくださいね。


ちなみに最近では、消毒液・アルコール・マスクを購入する方が多いと思いますが、これらは医療費控除対象外です。


セルフメディケーション税制については、他の記事でも説明しているので、良かったらぜひチェックしてみてくださいね。

予防接種の費用を節約する方法を紹介


医療費控除や、セルフメディケーション税制の対象とはならない予防接種。


とはいえ、セルフメディケーション税制の適用が受けられますし、ワクチンがあるのなら、予防接種を受けて予防しておきたいものです。


接種するとなれば、できることなら、なるべくかかってくる費用を抑えたいですよね。


実は、予防接種の費用を節約する方法があります。

  1. 自治体等の予防接種費用の助成制度を利用する
  2. 予防接種の料金が安い病院を探す
以上2つ、順番に解説していきます。

①自治体等の予防接種費用の助成制度を利用する


自治体や会社で予防接種費用の助成制度があることをご存じでしょうか?


中には、予防接種費用を全額助成する会社や自治体もあります。  


会社・自治体によって、対象となる予防接種・助成される金額・助成金を受け取る方法に違いがあるので、確認してみてください。

会社の場合、健康保険組合で助成金制度が設けられている場合もあります。


また、会社や自治体が指定する病院以外で予防接種を受けると、助成が受けられない場合もあります。

対象医療機関をチェックし、会社や自治体からの注意事項をよく読んでおきましょう。


子ども向けの予防接種について知りたい場合は、小児ワクチンの助成制度をまとめた情報サイトがあるので、こちらで調べてみるのもいいかもしれません。

②予防接種の料金が安い病院を探す


実は予防接種の費用は、病院によって違います。


予防接種は保険外診療(自由診療)となっています。

よって、病院側で自由に料金を設定できます。

ワクチンの原価に加えて診療料金を各病院で設定しており、費用にばらつきが見られます。

近隣で予防接種を実施している病院に、一通り確認してみることをおすすめします。


病院によって、確保できるワクチンの数が違うこともあります。

予防接種の費用が安い病院が見つかった場合は、早めに予約してしまいましょう。


インフルエンザの場合だと、病院によっては10月など早い時期に接種する人や、2回接種がすすめられている子どもを対象に、割引を行っているところもあります。

早めに情報収集することで、こうした割引を利用できるかもしれません。

予防接種を接種しないことは絶対におすすめしない


予防接種を接種することで、私たちの体内に感染症に対する免疫を作り出します。

ただし自然に感染してしまった時のように、実際にその病気を発症させるわけではありません。

コントロールされた安全な状態で免疫を作り出すことができます。

そのため、接種後に症状が出ず、たとえ症状が出ても大変軽いのが特徴です。


他人へ感染しない点も、ワクチンの利点です。


しかし、自然に感染した場合に比べて、生み出される免疫力は弱くなります。

1回の接種では充分でなく、何回かに分けての追加接種が必要になることがあります。  


ところで、ワクチンが開発されている感染症は、極めて少ないことをご存じでしょうか?


この世界には非常に多くの感染症が存在します。

中には、デング熱・マラリヤをはじめとした、ワクチンが存在しないことにより、効果的な予防ができず、年間何十万、何百万という人の命を奪っている感染症も多くあります。


予防接種には、自分が病気にかかりにくくなるだけでなく、社会全体でも流行を防ぐ効果があります。


ポリオやジフテリアなど、過去には命に関わり、障害の原因ともなっていた重大な感染症でさえも、誰もが予防接種を受けることにより、現在では流行しなくなりました。


しかし、予防接種を受けないと、海外へ行った際に感染したり、再び日本で流行したりする原因となる恐れがあります。


せっかくワクチンがあっても、接種しなければ予防はできません。

防ぐ方法のある病気なのに、防がないのは非常にもったいないことです。


中には、副作用のリスクをはらむ予防接種も認められているため、接種前には十分注意したり、よく考えたうえでの接種が必要にはなります。


しかし、予防接種をせず、病気にかかってしまっては、元も子もありません。

多くの場合、予防接種にかかった費用より、多額の医療費がかかることになるので、予防接種代を惜しむことは、おすすめしません。

参考:医療費控除の申告に予防接種を入れてしまったらどうする?


予防接種は医療費控除の対象外であることをお伝えしましたが

誤って予防接種代を医療費控除に入れてしまう場合もあり得ると思います。


このような間違いがあったときには、可能な限り早めに確定申告の修正を行うことが重要です。


確定申告の期限内であれば、改めて申告書を作成して再提出をすることができます。

確定申告の期限後に誤りに気づいた時は、所定の用紙を所轄税務署長に提出して修正申告を行わなければなりません。


医療費控除の対象外である予防接種代を申告してしまったということは、すなわち税額を実際より少なく申告したということ。

よって、修正後は新たな税金や延滞税を納めることになります。


税務署の指摘後に修正申告をした場合、過少申告加算税がかかることもあるので、気づいたらなるべく早めに修正を行うようにしましょう。

まとめ:予防接種は医療費控除の対象にならない!


今回は、予防接種と医療費控除について

  • 予防接種は医療費控除の対象にならない
  • セルフメディケーション税制の方がお得な可能性も
  • 医療費控除の対象
  • 予防接種の費用を節約する方法
  • 予防接種をしないことは絶対におすすめしない
以上の内容を中心にお伝えしてきました。

医療費控除は、知っているか知らないかで、大きく差がつく制度と言えます。

予防接種は医療費控除の対象にはならないとお伝えしましたが
このことを知っているか否かで、予防接種を受ける際の行動も変わってくるでしょう。

この記事を読んでいただけた方は、使える助成制度があるのか?接種費用が安い病院はどこか?と調べるといった行動に繋げることができると思います。

マネーキャリアでは、他にも医療費控除に関する記事や、知らないと損するお金や節約に関する情報を配信しています。
ぜひ他の記事も見てみてくださいね。