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共働き世帯の人は医療費控除をどのように申告すればいいのでしょうか。夫と妻で分けて申告するのでしょうか。それとも2人まとめて申告するのでしょうか。この記事では、共働き世帯の医療費控除のやり方を徹底解説しています。控除額が大きくなる医療費控除のやり方も説明します。

監修者「井村 那奈」

監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー

ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次

共働き世帯の医療費控除のやり方は?まとめる?それとも分ける?


この記事を読んでいる人は、共働き世帯の医療費控除について疑問がある人でしょう。


申告する方法・控除される金額・夫婦別々で申告した方が良いのかなど、控除のことを調べているとわからないことがたくさん出てきますよね。


共働き世帯の人が医療費控除を申告すると、申告した医療費をもとに算出した金額が戻ってきます。


節税対策になるので、毎年医療費がかかっている共働き世帯の人は、ぜひ医療費控除の申告を検討してください。


この記事では共働き世帯の医療費控除について

  • 夫婦別々で申告した方が良いのか
  • 夫と妻のどちらが申告した方が良いのか
  • セルフメディケーションって?
  • 医療費控除の注意点
  • 医療費控除を申請する方法
これらを中心に紹介します。

この記事で出てくる主な専門用語は次の2つです。
  • 課税所得:会社のお給料などの所得から一定の金額を引いたもの
  • 還付:払い過ぎた税金が戻ってくること
課税所得は源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いたら計算できます。

できるだけわかりやすく紹介していくので、ぜひ最後までご覧ください。

共働き世帯の医療費控除は夫または妻がまとめて申告すればよい!

医療費控除を申請するときは、夫または妻のどちらかが申告すれば構いません


「お給料は別々の会社からもらっているから、医療費控除の申告も夫婦別々にしないとダメだよね・・・」なんてことはないのです。


さらに子どもがいる場合は、子どもの医療費も医療費控除の控除額に含めることができます


例えば夫婦と子供2人の4人家族で、1年間に次のような医療費の出費があったとします。

  • 夫:市販の風邪薬 2,000円
  • 妻:腰痛治療のための鍼灸 10,000円
  • 長女:虫歯の治療 5,000円
  • 長男:骨折のため入院(10日間) 150,000円
この場合、4人医療費の合計金額167,000円をもとに医療費控除される金額が計算されます。

夫または妻が家族全員分の医療費控除をまとめて申告すると、それぞれが医療費を計算して申告する手間が省けるというメリットがあります。

共働き世帯で医療費控除を申告するときは、夫または妻がまとめて申告しましょう。

共働き世帯の医療費控除はどちらが申告すれば得になる?



結論から申し上げますと基本的には「所得の大きい方」が申告するのが良いでしょう。


しかし、申告金額によってはその限りではありません。以下で解説していきます。



始めに医療費控除の上限金額と計算方法を整理しておきましょう。


医療費控除の上限金額は200万円です。


そのため長期の入院や大きな手術で300万円払っても、医療費控除されるのは200万円までになります。


医療費控除の金額は、次の計算式で求めます。


課税所得が200万円以上の場合

  • 支出した医療費の金額-保険金などで給付された金額-10万円
課税所得が200万円未満の場合
  • 支出した医療費の金額-保険金などで給付された金額-課税標準の合計×5%
「えっ、10万円引かれるの?」と思った人もいるかもしれません。

そうなんです。

医療費控除では、1年間に支払った医療費がそのまま全額控除されるわけではないのです。

そのため、課税所得が350万円で夫婦の医療費が7万円だった共働き世帯の場合、医療費控除は受けられないことになります。

医療費控除を申告する目安は、1年間の医療費が10万円以上かかったときと言えます。

(課税所得が200万円未満のときは、1年間の医療費が10万円未満でも医療費控除ができることがあります。)

①所得が高いほうが申告すると得になるケース

例えば夫の課税所得が400万円・妻の課税所得が300万円・1年間払った医療費が25万円の場合、所得が高い方が申告するとお得になります。


このとき25万円から10万円引いても、残りの15万円は医療費控除の対象になりますね。


つまり課税所得が夫も妻も200万円以上で、1年間の医療費が10万円以上のときは、所得が高いほうが申告するとお得になるということです。


これには所得税の金額を計算する方法と関係しています。


所得税の金額の計算方法は超過累進課税という、課税標準の金額が大きくなるほど高い税率で計算される仕組みで算出されます。


課税所得が400万円の場合は最大20%、課税所得が300万円の場合は最大10%の金額を所得税として納めなければなりません。


(厳密に言うと納める金額はもう少し減りますが、複雑なので今回は省略します。)


税率が高いほど軽減される金額が大きくなるので、このような場合は所得が高いほうが申告するとお得になるのです。

②所得が低いほうが申告すると特になるケース

夫と妻のどちらかの課税所得が200万円未満で、1年間に払った医療費が10万円未満の場合は、所得が低いほうが申告するとお得になることがあります。


先ほど紹介した通り、課税所得が200万円以上で医療費が10万円未満の人は原則医療費控除を受けられません。


しかし課税所得が200万円未満なら「課税標準の合計×5%」の計算式をもとに、医療費控除を受けられる可能性があるのです。


例えば夫の課税所得が300万円・妻の課税所得が100万円・夫婦の1年間の医療費が7万円だったとします。


夫は申告しても医療費控除を受けられないですよね。


しかし妻が申告すると

  • 7万円(医療費)-0円(保険などの給付金)-100万円×5%=2万円
このように2万円が控除されます。

共働き世帯が医療費控除申告するときは、それぞれの所得と1年間払った医療費の金額をもとに、どちらが申告するかを決めましょう。

セルフメディケーション税制を使うともっと得する可能性がある


医療費控除を申告したい共働き世帯の人の中には、「スイッチOTC医薬品」を購入したことがある人もいるのではないでしょうか?


スイッチOTC医薬品とは、元々お医者さんの判断でしか処方できなかったけれど、薬局などで販売することも許可された薬のことを指します。


このスイッチOTC医薬品を12,000円以上購入すると

  • スイッチOTC医薬品に支出した金額-12,000円
の金額が控除されます。

控除される上限金額は88,000円です。


購入した薬によっては、箱に「セルフメディケーション・税・控除対象」のマークが付いているものもあります。


箱にマークが付いていないときは、薬局の店員・薬剤師・レシート・厚生労働省のサイトのいずれかで確認してみてください。

共働き世帯が医療費控除を申告する際の注意点!

税金の申告と聞くと、ややこしい書類を書いて、証明書を準備して、税務署に持って行って・・・と本当に自分でできるのか心配になりますよね。


しかし安心してください。


これから紹介する注意点さえ意識しておけば、詳しい知識を持っていなくても申告できます。


共働き世帯が医療費控除を申告するときの主な注意点は、次の3つです。

  1. 控除額がそのまま還付されるわけではない
  2. こまめに記録する
  3. 治療目的以外の費用は対象にならない
この3点を押さえて、確定申告の直前に慌てないようにしましょう。

①医療費項を申告しても控除額がそのまま還付されるわけではない

繰り返しになりますが、医療費控除は1年間に払った医療費が全額控除の対象になるわけではありません


課税標準が200万円以上なら10万円、課税標準が200万円未満なら課税標準×5%の金額を引いたものが医療費控除の控除額になります。


共働き世帯で医療費控除を受けたいときは

  • 夫婦どちらか、もしくは両方の課税標準が200万円以上で、医療費が10万円以上
  • 夫婦どちらか、もしくは両方の課税標準が200万円未満で、医療費が10万円以上
  • 夫婦どちらか、もしくは両方の課税標準が200万円未満で、医療費が10万円未満
これらのいずれかに当てはまっている必要があります。

医療費控除は、普段から治療のため頻繁に通院している、入院・手術で大きな出費があったときなどに使えると言えます。

②各医療費が誰に対して支払われたのかを記録しておく必要がある

医療費控除を申告したいときは、病院・薬局の領収書を保存して、誰に対して支払われたのか記録しておかなければなりません。


医療費控除を申告するときは、次の項目を書類に記入します。

  • 誰に対しての医療費なのか(氏名)
  • その医療費はどこの病院・薬局で払ったのか
  • 治療・介護など医療費の区分
  • 支払った金額
  • 生命保険・社会保険などからの給付・補てん
医療費を記録するときは、医療費専用のメモ帳とファイルを用意しておくのがおすすめです。

実際に書類を作成するときに慌てないようにしましょう。

③治療目的以外の費用は医療費控除の対象にならない

医療費控除は、医療に関する支払いなら何でも対象に加えられるわけではありません


医療費控除の対象になる費用には、次のようなものがあります。

  • 医師・歯科医師による診療費と治療費
  • 治療や療養に必要な薬代(ドラッグストアの薬も含む)
  • 治療のためのマッサージ・鍼灸
  • 入院費
  • 松葉杖など医療用器具の購入
逆に次のような治療目的以外の費用は医療費控除の対象にはなりません。
  • 美容整形
  • 人間ドック・健康診断(病気が見つかって治療したら控除の対象になる)
  • 病気予防・健康増進の薬やサプリメント
  • 疲れを癒すマッサージ
  • 近視や乱視のための眼鏡代・コンタクト代
医療費控除の対象になるのは、病気・ケガ・持病などの治療のために払った費用だけです。

何でも医療費に加えないよう、注意しましょう。

共働き世帯が医療費控除を申告するする方法を紹介!


共働き世帯が医療費控除を申告するとき用意するものは、次の4つです。

  • 確定申告書
  • 医療費控除の明細書
  • 源泉徴収票
  • マイナンバー
確定申告書を作るときは、国税庁ホームページの「確定申告等作成コーナー」を使うと簡単に作成できます。

医療費控除の明細書も国税庁ホームページからダウンロードできます。

会社員などで年末調整をした場合は、会社から交付される源泉徴収票も提出しましょう。

提出する源泉徴収票は原本とされているので、コピーは提出しないようにしてください。

マイナンバーは本人確認や確定申告書に記入するために使用します。

書類が用意できたら、ついに確定申告です。

ここでは共働き世帯が医療費控除を申告する方法を紹介します。

①申告期間は翌年の1月1日から5年間!

医療費控除を申告できるのは、翌年の1月1日から5年間です。


つまり2021年分の医療費控除を申告できるのは、翌年の2022年1月1日~2026年12月31日ということになります。


年末年始は税務署はお休みなので、申告するタイミングには気をつけましょう。


「申告期間は5年間」と聞いて、過去の医療費も申告できるのか気になった人もいるのではないでしょうか?


実は、過去の医療費も申告できるのです。


申告した医療費をもとに算出した金額が戻ってきます。


5年間遡ることができるので、2021年に申告するときは2016年~2020年の医療費が対象です。


最近医療費控除のことを知った人は、過去5年間で医療費控除の対象になる費用がないか探してみてください。

②オンライン上で医療費控除の申告を完了させる

共働き世帯だと2人とも仕事が忙しくて、なかなか税務署まで申告に行けないこともあるでしょう。


そんなときは、オンライン上で医療費控除を申告するのがおすすめです。


オンライン上で医療費控除を申告するときは、e-Taxという国税庁の納税システムを使います。


まず始めにマイナンバーカードか、税務署に行くと取得できる専用のID・パスワードを用意しておきましょう。


あとは申告書を作成して送信するだけです。


税務署に行く時間が取れない共働き世帯の人は、ぜひオンライン申告を検討してください。

オンライン上ではなく必要書類を税務署に郵送することもできる

医療費控除を申告するとき、必要書類を税務署に郵送することもできます。

郵送する書類は先ほど紹介した4つの書類と同じです。

マイナンバーはコピーしたものを封筒に入れます。

郵送での必要書類の提出には、税務署まで行かなくて良いというメリットがありますが、万が一記入漏れ・書類の不足があった場合はもう一度郵送し直さなければなりません。

念のため日程に余裕を持って提出するようにしましょう。

また東京・大阪・名古屋・仙台などの都会だと、住んでいる区や地域によって提出する税務署が異なります。

自宅の住所がある地域を管轄している税務署はどこなのかを確認してから郵送してくださいね。

まとめ:共働き世帯は適切な医療費控除の申告で得をしよう!

共働き世帯の医療費控除について紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。


この記事のポイントは

  • 医療費控除は夫と妻のどちらかがまとめて申告すればよい
  • 所得金額によってお得になるケースが違う
  • セルフメディケーション税制を使うともっとお得に!
  • 申告期間は翌年の1月1日から5年間
  • 申告の方法は税務署に行って提出・オンライン・郵送
でした。

医療費控除は、治療のためたくさん出費した人を助けるための制度です。

支払った医療費が自分の負担にならないよう、積極的に活用していきたいですね。

1年間の医療費が10万円以上かかったときは、ぜひ医療費控除を申告してください。