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医療費控除の仕組みが複雑でなかなか間違いに気づかない…そんなあなたに。まず医療費控除のよくある「気づかない間違い」について知りましょう!「気づかない間違い」の対処方法・訂正方法・間違いの場合に税務署から連絡がくるか・罰則規定・確定申告ソフトについても解説中!

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

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医療費控除の間違いをしたか気づかないけどどうすればいい?

こんにちは、マネーキャリア編集部です。


先日、40代男性からこんな相談をいただきました。


先日、医療費控除を利用したのですが、ちゃんとできているか不安です。


医療費控除のためには、確定申告をしなければいけません。


ただ、確定申告というと、難しい・複雑といったイメージをお持ちの方もいるかもしれません。


実際、仕組みが複雑で間違いが起きやすいものです。


少しでも間違いを減らすために、今日は

  • 医療費控除に潜む気づきにくい対象とは?
  • 医療費控除で間違えないようにするためには何が必要?
  • 医療費控除の間違いに気づいた場合の訂正はどうすればいい?
  • 医療費控除を間違えたら、税務署から連絡が来る?
  • 医療費控除の間違いに気づかないで提出したらどうなる?
  • 医療費控除を自分一人で計算するのが難しい時はどうしたらいい?
について紹介していきたいと思います。

医療費控除のよくある「気づかない間違い」を知っておこう!



ここからは、医療費控除のよくある間違いについて

  1. 所得200万円以上・未満による医療費控除の計算の違い
  2. 医療費に含まれる・含まれないものの違い
  3. 保険金などの補填金額に含まれる・含まれないものの違い
  4. 医療費控除によって「ふるさと納税」の上限額が変わる
の4点を紹介します。

①所得200万円以上・未満による医療費控除の計算の違い

医療費控除制度では、所得によって計算が変わるのをご存じでしょうか。


例えば、所得200万円未満の場合、

(医療費)-(保険金など補填分)-(所得の5%)=控除分 


となります。


それに対して、所得200万円以上の場合、

(医療費)-(保険金など補填分)-(10万円)=控除分

となります。 


このように、所得200万円以上であれば、いずれにしても、医療費から10万円が引かれることになります。


では、この10万円とはどういった数字なのでしょうか。


実は、医療費控除をする際には、必ず10万円以上の医療費でなくてはなりません。


10万円に満たない場合は、医療費控除制度を利用できないのです。

②医療費に含まれる・含まれないものの違い

医療費控除をする際には、すべての医療費が対象となるわけではないことも知っておきましょう。


例えば、

  • 病院での診療費/治療費/入院費
  • 医師の処方箋をもとに購入した医薬品の費用
  • 治療に必要な松葉杖など、医療器具の購入費用
  • 通院に必要な交通費 歯の治療費(保険適用外の費用を含む)
  • 子供の歯列矯正費用 治療のためのリハビリ/マッサージ費用
  • 介護保険の対象となる介護費用
などは、医療費に含まれます。

しかし、
  • 人間ドックなど健康診断の費用(病気が発見され治療をした場合は対象になる) 
  • 予防注射の費用
  • 美容整形の治療費用
  • 漢方薬やビタミン剤の費用
などは、医療費に含まれません。

この違いは、治療を目的としていてるかどうかです。

③保険金などの補填金額に含まれる・含まれないものの違い

医療費控除制度で間違いやすいのが、保険金です。


医療費控除の対象となるものは、治療を目的としているかどうかに関わるということを先に述べました。


つまり、治療を目的としていさえすれば、保険適用外のものであっても、医療費控除の対象となるのです。


具体的に言うと、

  • 妊婦健診・出産費
  • 通院費(原則として公共交通機関
  • 入院中の食事代
  • レーシック手術代
  • インプラント治療費
  • 不正噛合など子の歯科矯正費

などは保険適用外ですが、治療を目的としているので医療費控除の対象に含まれます。


それに対して、

  • マイカー通院のガソリン代や駐車料金
  • 里帰り出産のための実家への交通費
  • 自分の都合で利用した差額ベッド代

などは含まれません。


特に出産やレーシックのような自由診療の場合、保険適用外ということで多額の医療費を支払わなければなりません


医療費控除制度を利用して、少しでも多くの医療費を回収するのがおすすめです。

④医療費控除によって「ふるさと納税」の上限額が変わる

医療費控除制度において、控除の対象となるのは、住民税と所得税です。


これら2つは、ふるさと納税の控除の対象でもあります。


つまり、医療費控除ふるさと納税の両方を利用したとした場合、控除の対象が被ってしまうのです。


そのため、ふるさと納税の上限額が低くなってしまい、ふるさと納税のメリットを最大限受けられなくなってしまいます


ふるさと納税をよく利用している人であれば、このことに気を付けなければいけません。

医療費控除の気づきにくい間違いへの対処方法を解説!



医療費控除制度は、上で見たように、何が対象となるのかということだけをとっても、複雑でややこしい制度です。


そのため、間違いを起こしてしまうケースが想定されます。


そこでここからは、間違えやすいポイントを中心に

  1. 医療費の領収書と必要な書類を整理しよう
  2. 領収書と書類をもとに明細書を作成 
について紹介したいと思います。

手順①:医療費の領収書と必要な書類を整理しよう

一つ目の手順は、医療費の領収書と必要な書類を整理するです。


医療費の領収書に関しては、同じところにまとめて保管して必ず失くさないようにしましょう。


期間としては、5年間保管することが目安となっています。


そして、領収書を整理できたら、次は必要な書類を準備しましょう。


必要な書類とは、

  1. 医療費控除の明細書
  2. 確定申告書Aまたは確定申告書B
  3. 源泉徴収税(会社員の場合)
  4. 医療費のお知らせ
の4つです。

これらがなければ、医療費控除を受けることができません。


4の医療費のお知らせに関して補足すると、具体的には

  • 健康保険の加入者などの氏名
  • 療養を受けた年月
  • 療養を受けた人の名前
  • 療養を受けた病院、診療所、薬局などの名称
  • 健康保険の加入者などが支払った医療費の額
  • 健康保険組合などの名称
が記載されていることを確認しましょう。

そして、来るべき時に整理して、準備したうえで、手順2に移ってください。

手順②:領収書と書類をもとに明細書を作成

2つ目の手順は、1つ目の手順で用意した領収書と書類を手元に置いたうえで、明細書を作成することです。


これらの明細書は、税務署の窓口や、国税庁のホームページで受け取れます。(ダウンロードはこちら


これらに必要事項を記入します。


その手順をステップに分けて紹介します。


①医療費の額を記載する

明細書を受け取ったら、まずは自己負担した医療費の額を記載しましょう。

医療費のお知らせを見れば確認できるので、間違わないよう正確に写しましょう。

②実際に支払った額を記載する

次に、自己負担した医療費の中で、すでに支払った額を記載しましょう。

なぜこの記載が必要なのかというと、治療自体は前年に受けていても、その代金は年をまたいで支払うというケースもあるためです。

医療費控除はあくまで同年の合計額ですので、代金が翌年に持ち越された場合、次の医療費控除の対象となります。

必ずお知らせをチェックするようにしましょう。

③保険金や高額医療費などの補填を受けた額を記載する

医療費自体は高額でも、保険金や高額医療費などの補填によって、ある程度抑えられることもあります。

医療費控除の金額に大きく関わることなので、書き漏らしの内容にしましょう。

④医療費のお知らせに載っていない医療費控除の対象があれば記載する

医療費のお知らせに載っていないということは、すなわち治療以外の行動によるものです。

例えば、通院費や入院時の食費などです。

どんなものが医療費控除の対象になるのかを理解しておかないと、この時書き漏らしてしまう恐れがあります。

必ずチェックしておくようにしましょう。

⑤控除額を計算する

ここまでに記載した数字を基に控除額を計算します。

間違いのないように、見直しを徹底しましょう。

⑥控除額を転記する

⑤で計算した控除額を所定の位置に転記します。

誤った欄に転記しないよう、注意書きをよく見て写すようにしましょう。

医療費控除の間違いに気づいた場合の訂正はどうすればいい?



ではもし医療費控除の間違いに気づいたときにはどうしたらいいのでしょうか。


こここらは、

  • 【確定申告前】の訂正方法
  • 【確定申告後】の訂正方法
に2つに分けて紹介します。

【確定申告前】の訂正方法

まず、確定申告前、つまり、確定申告の期限内に間違いに気づいたときの訂正方法です。


その時は、焦らず期限内にもう一度同じ要領で、申告するようにしましょう。


これは訂正申告と言われ、罰則も取られることなく済ませることができる方法です。


なお、訂正申告においても、もう一度同じ書類が必要となるので、一度提出した書類の控えも用意しておきましょう。


ただし、一度目の確定申告の際に、還付申告も済ませてしまった場合、訂正申告が受理されないことがあるので、税務署に問い合わせるのがおすすめです。

【確定申告後】の訂正方法

次に、確定申告後、つまり、確定申告の期限後に間違いに気づいたときの訂正方法です。


この時は、申告前と同じようにはいきません。


まず、どういった間違いなのかを認識することが大切です。


例えば、申告を間違えたといっても、自分に不利に働く申告をしてしまったのか、それとも有利に働く申告をしてしまったのかで大きく異なります。


ここからは、

  • 自分に不利に働く申告をしてしまった場合(税金を多く申告・還付される税金を少なく申告)
  • 自分に有利に働く申告をしてしまった場合(税金を少なく申告・還付される税金を多く申告)
に分けてそれぞれの訂正方法を紹介します。

自分に不利に働く申告をしてしまった場合

必ず5年以内に規定の書類を提出するようにしましょう。

規定の書類とは、「所得税及び復興特別所得税の更正の請求書」のことです。(ダウンロードはこちら


こちら様式は異なりますが、記載する内容に関しては通常のものとそう変わりません。


確定申告の手引きを参考に記載していきましょう。


自分に有利に働く申告をしてしまった場合

必ずすぐに規定の書類を提出するようにしましょう。


なぜなら、この場合には、遅れれが遅れる分だけペナルティが大きくなっていくためです。


また、これは修正申告と呼ばれ、確定申告書B第一表に加え、新たに「所得税及び復興特別所得税の修正申告書(第五表)」(ダウンロードはこちら)が必要になります。


もう二度と間違えないよう注意して記載しましょう。

医療費控除の間違いで税務署から連絡がくる場合もある



税務署から連絡が来るのは、申告に問題があった場合です。

例えば、

  • 国外所得についての申告が漏れている
  • 副業による収入の申告が漏れている
  • 医療費控除に対象外の内容が加算されている
などの場合、申告漏れとして再度書類を提出しなおす必要があります。

それに対して、税務署から連絡が来ない場合には、単に間違いのない場合だけでなく、自分が損している場合もあります

例えば、
  • 基礎控除の記載が漏れている
  • 寡婦控除・寡夫控除の記載が漏れている
  • 扶養控除の記載が漏れている
などの場合、自分の控除額が減ってしまうだけなので、わざわざ連絡が来ることはありません。

医療費控除の間違いに気づかないで提出したときの罰則を解説

医療費控除も含めて、確定申告の間違いに気づかないで提出してしまった場合、

  1. 過少申告加算税
  2. 無申告加算税
  3. 重加算税
  4. 延滞税
の税法が適用されてしまいます。

どれもペナルティの大きいものですので、絶対避けたいものです。

ここからは、それぞれを紹介するので、特に注意してお読みください。

【罰則①】過少申告加算税

これは、納税額を満額支払わなかったときに課せられる税法です。


納付額の10%を追加で納税することが義務付けられています。


ただし、場合によっては、15%になることもあります。


それは、

  1. 本来支払うべきであった額より多い金額を追加で支払う場合
  2. 追加で納税する額が50万円を超える場合
です。

最低でも10%の納税を強いられることになってしまうので、申告はミスのないようにしましょう。

【罰則②】無申告加算税

正当な理由もなしに、期限内に申告しなかった際に課せられる税法です。


無申告加算税は、申告の義務を怠ったとみなされ、より罰則は厳しくなっています。


通常の場合は、納付額の10%ですが、納税額が50万円を超える場合は、20%を支払うことが義務付けられています。


無申告は責任問題が問われるので、かなり厳しい罰則となっています。


必ず忘れずに行うようにしましょう。

【罰則③】重加算税

重加算税は

  1. 過少申告加算税に代わる重加算税
  2. 無申告加算税に代わる重加算税
  3. 不納付加算税に代わる重加算税
の3つがあります。

ここでは、それぞれに分けて紹介します。

過少申告加算税に代わる重加算税

過少申告加算税が課税されるケースにも関わらず、それを無視した上で、申告をした際に適用されます。

罰則としては、過少申告加算税の35%分を追加で納税することが義務づけられます。

無申告加算税に代わる重加算税

同じく、無申告加算税を無視したうえで、申告した際に適用されます。

罰則としては、無申告加算税の40%分を追加で納税することが義務づけられます。

不納付加算税に代わる重加算税

不納付加算税とは、源泉所得税を納付期限までに納付しなかった場合に課せられる税法です。

納付額の10%の納税が義務付けられています。

これを無視したうえで、申告をした際に重加算税が適用されます。

罰則としては、35%分を追加で納税することが義務づけられます。

【罰則④】延滞税

期限を過ぎてから納税した場合に、日数に応じて加算される税法です。


延滞税は原則として、納期限の翌日から2カ月間年7.3%、それ以降は年14.6%となっています。


対象となるのは、本税だけで、加算税は含まれていません。 


ただし、延滞税と加算税は併用されるため、期限を過ぎると両方が重くのしかかってきます。


必ず期限内に納めるようにしましょう。

【参考】医療費控除の計算は確定申告ソフトを利用するのもあり



上で見たように、確定申告はペナルティがとても大きいので、間違いをしないようにしなければなりません。


それにもかかわらず、仕組みが複雑で難しいので、間違える恐れがあります。


それを防ぐために、確定申告ソフトを利用してみてはいかがでしょうか。


ここからはおすすめの確定申告ソフトを

  • 弥生の確定申告ソフト
  • freee
  • Money forwardクラウド確定申告
の3点紹介します。

  • 弥生の確定申告ソフト

会社弥生株式会社
代表取締役岡本 浩一郎
設立1978年 
所在地〒101-0021 東京都千代田区外神田 4-14-1 秋葉原 UDX 21F
URLhttps://www.yayoi-kk.co.jp/products/shinkoku.html
対象
  • 初心者
  • Macで申告を済ませたい方
特徴
  • 17年連続売り上げ実績1位
  • データの自動管理サービス
  • シンプルで使いやすいインターフェース
  • 簡単に書類を作成できる
値段個人:無料、年間8,000円
法人:26,000円~

弥生の確定申告ソフトは、用途に応じて、「白色申告オンライン」・「青色申告オンライン」・「青色申告」を使い分けられるソフトです。

確定申告ソフトのジャンルのなかでは、歴史のあるソフトの一つなので、実績・信頼も十分あります。

パソコン限定ですが、その代わりきめ細やかなサポートが受けられるので、初心者におすすめです。

  • freee

会社 freee株式会社
代表取締役佐々木大輔
設立 2012年7月
所在地 〒141-0031 東京都品川区西五反田2-8-1 五反田ファーストビル 9F
URL https://www.freee.co.jp/kakuteishinkoku/
対象
  • 初心者
  • リモートワーカー
  • スマホで申告を済ませたい方
特徴
  • リモートワーク対応
  • 随時アップデートで最新
  • 転記作業の省略化
  • 直観的でわかりやすいインターフェース
値段個人:月額980円~
法人:年間23,760円~

freeeは、確定申告の抜け漏れがないようにサポートしてくれるソフトです。

知識がなくても、簡単に書類を作成できます。

特に法人経理に関しては、非常に大きな支えとなってくれます。

評価も高く、多くの人から支持されています。


  • マネーフォワードクラウド確定申告

会社株式会社マネーフォワード
代表取締役 辻 庸介
設立2012年5月
所在地〒108-0023 東京都港区芝浦3-1-21 msb Tamachi 田町ステーションタワーS 21F
URLhttps://biz.moneyforward.com/tax_return/
対象
  • 初心者
  • スマホで申告を済ませたい方
  • Macで申告を済ませたい方
特徴
  • 収入の自動連係
  • 書類の自動作成
値段個人:月額980円~
法人:月額3,980円~

マネーフォワードは、家計簿アプリとして利用されている方も多いと思います。

まとめて自動で簡単に管理できるのは、家計簿だけでなく、確定申告版においても導入されています。

スマホでも簡単に申告ができるようサポートしてくれます。

【まとめ】医療費控除の複雑な仕組みをまずしっかり理解しよう!

ここまでは、医療費控除を中心に確定申告について見てきました。

この記事のポイントは、

  • 医療費控除は対象が複雑なので、間違いが起きやすい
  • 医療費控除を利用するなら、領収書・書類を大切に保管しておくことが先決
  • 医療費控除の期間内と期限内で、間違いの対処方法が変わる
  • 医療費控除の間違いでも、税務署から連絡が来る場合と来ない場合もある
  • 医療費控除を間違えたときの罰則はかなりきつい
  • 医療費控除の計算は確定申告ソフトを利用するのがおすすめ

でした。


医療費控除は仕組みが複雑でややこしいものです。


しかし、自分の所得にも関わってくることなので、間違いのないようにしたいものです。


そのためには、医療費控除の仕組みをしっかりと理解することが大切です。


マネーキャリアでは、他にも医療費控除についての記事を多数用意しています。


少しでも興味を持たれた方は、一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。