この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 孫への生前贈与のやり方!使える5つの非課税措置を紹介
- 暦年贈与(毎年110万円まで)
- 相続時精算課税制度(2,500万円まで)
- 教育資金の一括贈与(最大1,500万円まで)
- 結婚・子育て資金一括贈与(最大1,000万円まで)
- 住宅取得など資金の贈与(最大1,000万円まで)
- 非課税で孫へ生前贈与するならFPへの無料相談がおすすめ
- 孫に生前贈与を行うメリット
- 相続税の節税対策になる
- 孫への生前贈与は7年以内加算の対象外
- 財産を分割して計画的に贈与できる
- 孫に生前贈与を行うデメリット
- 法律や制度の変更により将来的に不利になる場合もある
- 金額によっては孫の金銭感覚や価値観に影響を与える場合もある
- 孫への生前贈与に関する注意点
- 生活費や教育費の都度払いは原則非課税
- 贈与契約書を作成する
- 年間110万円以下の暦年贈与以外は申告が必要
- 孫への贈与を親が私的に使うのはNG
- 毎年贈与するときは日付や金額を変える
- 【まとめ】孫への生前贈与はマネーキャリアの無料相談がおすすめ
孫への生前贈与のやり方!使える5つの非課税措置を紹介
制度 | 暦年贈与 | 相続時精算課税制度 | 教育資金の一括贈与 | 結婚・子育て資金一括贈与 | 住宅取得など資金の贈与 |
---|---|---|---|---|---|
非課税枠 | 毎年110万円まで | 2,500万円まで | 最大1,500万円まで | 最大1,000万円まで | 最大1,000万円まで |
概要 | 1/1~12/31までの 1年間で贈与された 金額が対象 | 贈与した人が 亡くなったときに 相続財産として 相続税を納める | 30歳未満の 子や孫が対象 ※金融機関で教育資金用の 口座を作る | 18歳以上49歳以下の 子や孫が対象 ※金融機関で結婚・子育て資金用の 口座を作る | 自宅を購入または増築する 資金が対象 ※高性能住宅は1,000万円、 それ以外は500万円まで |
注意点 | ※複数人から贈与を受けたら 全員分合算される | ※税務署に届け出が必要 ※一度始めると撤回できない | ※使途を証明する領収書が必要 ※一度始めると撤回できない ※2026/3/31まで | ※使途を証明する領収書が必要 ※一度始めると撤回できない ※2025/3/31まで | ※受贈者が18歳以上かつ 所得2,000万円以下 ※翌年の3/15までに必ず居住する ※2026/12/31まで |
詳細 | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る |
暦年贈与(毎年110万円まで)
1月1日から12月31日の間に贈与された金額のうち110万円までは非課税になります。毎年使える制度で、年月をかければ総額はいくらでもOKです。申告も不要なので、お手軽だと人気の贈与方法のひとつです。
ただし、孫がその年に複数人からの贈与を受け限度額を超えれば課税されます。例えば祖父が100万円、祖母も30万円を1人の孫に贈与すれば、合計は130万円です。オーバーした20万円は課税対象となります。
相続時精算課税制度(2,500万円まで)
生前贈与時には非課税となる代わりに、相続発生時に相続財産として税額計算されます。この制度の利用条件は次の通りです。
- 祖父母・父母(贈与する人)が60歳以上
- 子・孫(受け取る人)が18歳以上
- 最初の贈与発生翌年の2月1日から3月15日までに管轄税務署に届け出が必要
- 翌年以降も110万円を超える贈与は管轄税務署に届け出が必要
1度届け出をすれば、取り消しはできず、暦年課税には戻れません。ただし、制度を使うかどうかは贈与する人ごとに届け出をするので「祖父は対象だけど祖母は対象外」にはできます。
教育資金の一括贈与(最大1,500万円まで)
30歳未満の子・孫へ1,500万円(うち習い事は500万円)まで教育資金の一括贈与が非課税になる特例です。この特例を使うには、金融機関で教育資金の一括贈与専用口座を作ることになります。
非課税とするには領収書を提出しなければなりません。認められる資金用途も教育関連のみです。同じ参考書を買った場合も、学校指定であれば対象になりますが、個人的に買ったものは対象外です。
【認められる資金用途の例】
- 入学金・授業料
- 給食費
- 学校を通して買う備品
- 塾代など学習系習い事の月謝
- スイミングなど運動系習い事の月謝
- 通学定期代
30歳の時点で受け取る人が学生でなければ契約が終わり、使いきれなかった金額は贈与税対象です。また、贈与した人が亡くなったときは、状況により相続税対象となることがあります。
結婚・子育て資金一括贈与(最大1,000万円まで)
20歳~49歳までの子・孫に結婚や子育て資金を最大1,000万円(うち結婚費用は300万円)まで非課税で生前贈与できます。金融機関で結婚・子育て資金一括贈与の専用口座を作り、使途を証明するために領収書等の提出が求められます。
【認められる資金用途の例】
- 結婚式の費用
- 結婚を機の引っ越し費用
- 不妊治療費
- 妊娠・出産費用
- 子の育児・医療に係る費用
受け取る子・孫の前年所得が1,000万円を超えていると使えません。また、期限は2025年3月31日までとなっています。何度か延長されていますが、今回も延長されるとは限りません。贈与をお考えの方はなるべく急いで検討を始めましょう。
住宅取得など資金の贈与(最大1,000万円まで)
子・孫が住宅購入または増築するための資金は非課税で贈与可能です。贈与発生翌年の2月1日~3月31日までに管轄税務署に届け出をすることで、非課税が適用されます。
この特例を使うためには、条件があります。
- 子・孫(受け取る人)が18歳以上
- 受け取る人の贈与年の合計所得は2,000万円以下(場合により1,000万円)
- この非課税特例の適用を受けたことがない人
- 住宅の所在地が日本国内
- 住宅の床面積40㎡以上240㎡以下
- 住宅の床面積の2分の1以上に受け取る本人が居住
非課税になるのは「省エネ等住宅」であれば1,000万円、それ以外は500万円です。受け取る本人が贈与があった翌年の3月15日までに住む必要があるので、住宅がいつ完成するのかも確認しておきましょう。
非課税で孫へ生前贈与するならFPへの無料相談がおすすめ
お孫さんに生前贈与する方法は、条件が合うのか、お得につかえるのかどうかが人によって異なります。自分だけですべて調べて選ぶのは大変な労力です。そこで、FPへの無料相談がおすすめです。
FPへ相談すれば、資産状況や要望をヒアリングした上で、どの非課税制度があなたに合うのか、いつどういった手続きが必要なのかアドバイスを受けられます。
生前贈与を専門としたFPは、贈与によるトラブル等の避け方もよく知っています。トラブルは専門家の意見をもとに、事前に回避できる対策を考えておきましょう。
孫に生前贈与を行うメリット
主なメリットは3つあります。専門家の視点も含めて、詳しく解説していきます。
相続税の節税対策になる
相続税は、亡くなった方の財産の総額を元にして計算します。そして金額が多ければ多いほど、税率も上がっていきます。つまり、相続時に財産がたくさんあると、より税金を取られるのです。
しかし、相続税にも非課税枠が存在します。相続人の数で変動しますが、最低でも3,600万円までは非課税なので、それ以下であれば税金がかかりません。
生前贈与の非課税制度を利用することで、余計な税金を払わずにたくさんのお金を残してあげられるのです。
孫への生前贈与は7年以内加算の対象外
「生前贈与の7年以内加算」とは、亡くなる7年前までに行った暦年贈与は、相続財産と見なすという制度です。以前は3年以内でしたが、2024年から順次7年まで延長されます。
【生前贈与の7年以内加算の対象者】
- 相続人(主に配偶者や子)
- 遺言により財産を受け取った人
- 生命保険金や死亡退職金を受け取った人
相続をしない孫へ生前贈与した金額は、対象とはなりません。だからお孫さんへの生前贈与はおすすめされやすいのです。
財産を分割して計画的に贈与できる
相続はいつ発生するか誰にも分かりませんが、生前贈与であれば自分の意思で計画的に進められます。特に暦年贈与の非課税110万円は難しい条件がなく誰でも毎年使えるので、計画的に利用していきたい制度です。
暦年贈与を活用した場合と非活用の場合の一例
【子2人に現金8,000万円を相続する場合】【同条件+4人の孫に10年間毎年110万円ずつ生前贈与した場合】
- 総額4,400万円の生前贈与が非課税となる
- 相続財産は3,600万円となり、相続税も非課税となる
- 相続税の申告作業をしなくて済む
【子2人に現金8,000万円を相続する場合】
- 非課税枠(4,200万円)を超えた額に相続税がかかり、470万円を相続税として支払う
- 相続税の申告作業が必要となる
孫に生前贈与を行うデメリット
お孫さんへの生前贈与はメリットがある反面、デメリットも存在します。どんなデメリットがあるのか、避ける方法はあるのかを詳しく解説します。
法律や制度の変更により将来的に不利になる場合もある
法律や制度は、常に話し合いが持たれ、時代に合わせて変化してきました。当然今後も変更があると考えられます。変更内容によっては、良かれと思って行った生前贈与が不利に働くこともあり得ます。
しかしどうやっても将来のことは分からないので、現時点では分かっている法律や制度で考えていくのがベストの選択です。避けるべきなのは、法改正等があったにもかかわらず、それを知らずにいることです。
金額によっては孫の金銭感覚や価値観に影響を与える場合もある
暦年贈与の110万円でも、特にお孫さんが学生であった場合にはびっくりするような大金でしょう。毎年110万円もらえると思ってしまうと、お孫さんの金銭感覚や価値観が歪んでしまう可能性があります。
自分で苦労せずに手に入れたお金は、どうしても軽く考えてしまいがちです。学生という多感な時期に自由に使える大金を手に入れると、今後働くことの意欲が下がったり、金目当ての友人が増えて人間関係がこじれたりといった悪影響が考えられます。
孫への生前贈与に関する注意点
事前に注意点を知っておけば、お孫さんへの生前贈与がより効果的になるはずです。ここでは、知っておくべき注意点5つをチェックしていきましょう。
生活費や教育費の都度払いは原則非課税
「教育資金の一括贈与」や「結婚・子育て資金一括贈与」を使わなくても、都度払いする生活費・教育費はもともと非課税なことをご存じですか?
【都度払いで非課税になる一例】
- 食費
- 家賃
- 治療費
- 入学金・授業料
- 教材費
- 通学費
- 結婚式や披露宴費用
親からご飯代や学費を出してもらって「税金がかかるかも」と心配した経験がある人はほぼいないでしょう。それと同様に、法的に扶養義務者と認められている祖父母は、必要な時に費用を支払うことに何の問題もありません。たとえば大学費用で年間110万円を超えても非課税です。
贈与契約書を作成する
贈与契約書とは、贈与する人・される人の間で交わされる契約書で「いつ・誰が・誰に・何円」贈与するのかが分かるようにするものです。
【贈与契約書の主な記載内容】
- 贈与する人・される人の住所氏名
- 書類作成日
- 贈与実行日
- 贈与の方法(手渡し・振込など)
- 金額や種類(現金・株式・不動産など)
特に誰にも申告しない暦年贈与では、どういった贈与が行われたのかは自分達しか分かりません。
後々の相続で税務調査が入った際に、贈与であると証明できなければ「祖父母が孫へお金を貸している」と見なされ、相続財産の課税対象となることもあります。しかし、贈与契約書を作っておけば、贈与であることの根拠にできます。
年間110万円以下の暦年贈与以外は申告が必要
どんな申告が必要となるのか、表にまとめましたのでご覧ください。
相続時精算課税制度 | 教育資金の一括贈与 | 結婚・子育て資金一括贈与 | 住宅取得など資金の贈与 | |
---|---|---|---|---|
申告先 | 受贈者の管轄税務署 | 金融機関 | 金融機関 | 受贈者の管轄税務署 |
申告者 | 受贈者 | 贈与者・受贈者 | 贈与者・受贈者 | 受贈者 |
申告時期 (最初) | 最初の贈与発生翌年の 2月1日から3月15日まで | 最初の贈与を行う前 | 最初の贈与を行う前 | 贈与発生翌年の 2月1日から3月15日まで |
申告時期 (翌年以降) | 110万円を超える 贈与があるときは 翌年の2月1日から3月15日まで | 領収書の支払日から1年以内 または翌年3月15日 (契約内容による) | 領収書の支払日から1年以内 または翌年3月15日 (契約内容による) | _ |
必要書類例 | ・贈与税の申告書 ・相続時精算課税選択届出書 ・受贈者の戸籍謄本(抄本) ・贈与者の戸籍謄本(抄本) | ・贈与契約書 ・教育資金非課税申告書 ・口座開設申し込み書類 ・戸籍謄本 ・受贈者の源泉徴収票 ・本人確認書類 | ・贈与契約書 ・結婚・子育て資金非課税申告書 ・口座開設申し込み書類 ・戸籍謄本 ・受贈者の源泉徴収票 ・本人確認書類 | ・贈与税の申告書 ・戸籍謄本 ・受贈者の源泉徴収票 ・登記事項証明書 ・住宅性能証明書や 増改築等工事証明書など |
孫への贈与を親が私的に使うのはNG
お孫さんへ贈与したお金は、お孫さんの財産です。たとえ保護者である親でも、私的に使うのはNGです。使った場合は、親(息子さん・娘さん)への贈与とみなされ、税務署とトラブルになることも。
避けるための対策としては、次のようなものが有効です。
- 親である息子さん・娘さんに使ってはいけないお金だと理解してもらうこと
- 保険料に充てるなど自由に使えないようにすること
対策をしっかり立てて、税務署に疑われる余地を減らしていきましょう。
毎年贈与するときは日付や金額を変える
例えば毎年誕生日に100万円を贈与していると、定期贈与とみなされる場合があります。定期贈与は「1,000万円をこれから10年間で分割して毎年贈与する」といった契約書を事前に交わして行う方法で、贈与税がかかります。
暦年贈与を毎年行う場合に特徴が似ていますよね。なので「同じ日に」「同じ額を」「同じように」贈与していると、税務署も定期贈与ではないかと疑います。
定期贈与と疑われないように、毎年の日にちや金額をずらして贈与を行いましょう。
【まとめ】孫への生前贈与はマネーキャリアの無料相談がおすすめ
- 暦年贈与(毎年110万円)
- 相続時精算課税制度(2,500万円)
- 教育資金の一括贈与(1,500万円)
- 結婚・子育て資金一括贈与(1,000万円)
- 住宅取得など資金の贈与(1,000万円)