
- 103万円の壁は、所得税が発生する年収の目安として長年用いられてきたが、2025年の税制改正により、基礎控除や給与所得控除の金額が見直され、所得税が非課税となる年収の上限が実質的に160万円に引き上げられた
- この改正により、従来の103万円の壁や検討段階で案として挙がった123万円の壁ではなく、160万円が所得税に関する新たな目安となる
- 社会保険の扶養の壁は依然として存在し、収入計画には注意が必要
- そのためマネーキャリアのような厳選された経験豊富なFPが在籍する相談窓口を利用すると、最新の情報を知って、自分に合った働き方を一緒に考えることができる

この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 103万の壁と123万の壁って何?
- 2025年以前は103万の壁が所得税の1つの目安だった
- 123万の壁は議論のときに案として出された目安
- 最終的には160万の壁に決定!
- なぜ103万円や123万円などの年収の壁が存在するのか?
- 103万の壁が変わると働き方はどう変わる?
- 所得税の負担が減り働きやすくなる
- 世帯収入の増加につながる
- 2025年の税制改正で所得税の非課税限度額が変更!デメリットや注意点は?
- 社会保険の扶養の壁とは別物である
- 2025年と2026年の2年間適用される見込み
- 総合的な家計の見直しや年収の壁の判断はFPへの相談がおすすめ
- 103万の壁と123万の壁に関するよくある質問
- 130万の壁がなくなるのはいつからですか?
- 103万の壁が2025年に廃止されると大学生はどうなりますか?
- まとめ
103万の壁と123万の壁って何?
パートやアルバイトで働く人にとって103万の壁や123万の壁は収入の目安として重要です。
これらの壁は、所得税や控除の対象となる年収の基準を示しており、働き方や税負担に大きく影響します。
103万と123万の壁の意味と最新の動向をわかりやすく解説します。
2025年以前は103万の壁が所得税の1つの目安だった
103万の壁は、基礎控除48万円と給与所得控除55万円の合計で、これを超えると所得税が発生します。
控除の種類 | 控除額 | 概要 |
---|---|---|
給与所得控除 | 55万円 | 給与所得者が給与収入から差し引ける最低控除額 |
基礎控除 | 48万円 | 所得者全員に適用される控除(所得2400万円以下の場合) |
合計 | 103万円 | 給与所得控除+基礎控除の合計額 |
所得税がかかると手取りが減り、配偶者控除の対象から外れることもあるため、これまで多くの主婦やパート労働者がこの壁を超えないように働き控えをしてきました。
しかし、2025年から103万の壁は廃止されます。
123万の壁は議論のときに案として出された目安
123万の壁は、基礎控除と給与所得控除がそれぞれ10万円ずつ引き上げられた結果、所得税がかからない上限が123万円に設定された案でした。
控除の種類 | 控除額 | 概要 |
---|---|---|
給与所得控除 | 65万円 | 従来より10万円引き上げられた給与所得者が給与収入から差し引ける最低控除額 |
基礎控除 | 58万円 | 従来より10万円引き上げられた所得者全員に適用される控除 |
合計 | 123万円 | 給与所得控除+基礎控除の合計額 |
123万の壁は、103万の壁を超えても一定の控除が受けられるため、働く人にとっては所得税負担の緩和策として注目されました。
しかし2024年末の議論を経て、さらに増えた160万の壁に引き上げられることが決まりました。
最終的には160万の壁に決定!
2025年の税制改正により、所得税がかからない年収の上限は従来の103万円から160万円に拡大されます。
控除の種類 | 2024年までの控除額 | 2025年以降の控除額 |
---|---|---|
給与所得控除 | 55万円 | 65万円 |
基礎控除 (年収200万円以下の場合) | 48万円 | 95万円 |
合計 | 103万円 | 160万円 |
参照:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられ、基礎控除も年収200万円以下の場合は、48万円から最大95万円に引き上げられます。
この160万の壁は、年収200万円以下の給与所得者を中心に適用され、年収に応じて基礎控除が段階的に増える仕組みです。
このように2025年からは、所得税がかからない年収の上限が従来の103万円から160万円に変わります。
なぜ103万円や123万円などの年収の壁が存在するのか?
103万の壁が変わると働き方はどう変わる?
2025年の税制改正により、これまでの103万の壁が160万の壁へと引き上げられました。
これにより、パートやアルバイトの方は所得税がかからない範囲が大幅に広がり、働く時間や収入を増やしやすくなります。
詳しく解説していきます。
所得税の負担が減り働きやすくなる
年収の非課税限度額が103万円から160万円へ引き上げられると、所得税の負担が軽くなり、働く時間を気にする機会が減ります。
例えば、時給1,200円のパート労働者を例に考えてみましょう。
年収の壁 | 年収の上限 | 月あたりの労働時間目安 | 週あたりの労働時間目安 |
---|---|---|---|
103万円の壁 | 103万円 | 約71.5時間 | 約16.5時間 |
160万円の壁 | 160万円 | 約111時間 | 約28時間 |
上記は単純計算ですが、これまで年収103万円の壁を超えないように、週16時間程度で働く場合が多かったですが、160万の壁に引き上げられると、週28時間程度まで働いても所得税がかかりません。
働く時間を増やしても税負担が増えにくく、収入アップを目指しやすくなります。
結果として、パートタイムで働く人の働きやすさが向上し、経済的な自立やキャリア形成の機会も広がります。
世帯収入の増加につながる
2025年の税制改正で所得税の非課税限度額が変更!デメリットや注意点は?
103万の壁が実質的に変更され、非課税限度額が160万円に引き上げられる一方で、注意すべきポイントもあります。
ここでは、社会保険の扶養の壁との違いや、今回の改正が2年間限定の措置であることについて解説します。
社会保険の扶養の壁とは別物である
所得税の非課税限度額が103万円から160万円に引き上げられても、社会保険の扶養の壁は依然として存在します。
年収130万円未満であれば配偶者の扶養に入れ、社会保険料の負担が免除されますが、この130万の壁は所得税の壁とは別の基準です。
さらに、勤務先の規模や労働時間によっては、年収106万円以上で社会保険加入が必要になる場合もあります。
所得税の壁が引き上げられても、社会保険料の負担増を避けるために収入調整が必要なケースが残るため、両者の違いを正しく理解し、働き方や収入計画を立てることが大切です。
社会保険の加入条件は以下のとおりです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が2ヶ月を超える見込みがある
- 月額賃金が88,000円(年収約106万円)以上である
- 学生でない
- 勤務先の従業員数が51人以上の事業所に勤務している
2025年と2026年の2年間適用される見込み
今回の103万の壁の廃止と非課税限度額の160万円への引き上げは、賃金の上昇が物価の上昇に追いつくまでの暫定的な措置です。
現在のところ、2025年と2026年の2年間適用される見込みですが、その後の見直しについては今後の議論次第です。
短期的には大きなメリットがありますが、長期的には変化に柔軟に対応できる準備が求められます。
将来の税制変更にも備え、定期的に情報をアップデートしながら柔軟に対応することが重要です。
総合的な家計の見直しや年収の壁の判断はFPへの相談がおすすめ
年収の壁は税金や社会保険料の負担増を招き、家計に大きな影響を与えます。
これらの壁を正しく理解し、収入や働き方を調整するには、専門的な知識が必要です。
FPに相談すれば、税制や社会保険の最新情報を踏まえたうえで、以下の内容を一緒に考えてくれます。
- 扶養の範囲内での働き方
- 控除を最大限活用する方法
- 家計の将来設計やライフプランに合わせた収入調整
自己判断よりも専門家の助言を受けることで安心感が増し、無理のない働き方を実現できます。
年収の壁に直面した際はFPへの相談がおすすめです。
103万の壁と123万の壁に関するよくある質問
年収の壁に関する疑問は多く、特に130万の壁の今後や、103万の壁廃止が大学生に与える影響についての関心も高いです。
ここでは、以下の疑問についてわかりやすく解説します。
- 130万の壁がなくなるのはいつからですか?
- 103万の壁が2025年に廃止されると大学生はどうなりますか?
130万の壁がなくなるのはいつからですか?
130万円の壁は、社会保険の扶養に関する基準であり、年収130万円未満であれば配偶者の扶養に入り社会保険料の負担が免除されます。
項目 | 内容 | 予定時期 | 備考 |
---|---|---|---|
130万円の壁 | 年収130万円未満で配偶者の扶養に入り社会保険料負担が免除される基準 | 現時点では継続中 | 所得や勤務時間により扶養認定が決まる |
106万円の壁 | 週20時間以上勤務、月収8万8,000円以上などの条件で社会保険加入義務 | 2026年10月撤廃予定 | 撤廃により、条件にかかわらず加入義務が生じる可能性がある |
企業規模要件 | 従業員数51人以上の事業所で社会保険加入義務が発生する条件 | 2027年10月撤廃予定 | 企業規模に関係なく加入義務が拡大される見込み |
130万の壁の撤廃は現時点で明確な時期は決まっていませんが、106万の壁が2026年10月に撤廃される予定であり、これにより130万の壁の意味合いも変わる可能性があります。
企業規模要件の撤廃も2027年10月に予定されているため、今後の制度改正に注目が必要です。
このように、130万の壁が完全に無くなるといった具体的な話は現状ありません。
103万の壁が2025年に廃止されると大学生はどうなりますか?
2025年に103万円の壁が廃止され、非課税限度額が123万円または160万円に引き上げられると、大学生のアルバイト収入に対する税負担も軽減されます。
2025年の税制改正により、特定親族特別控除が新設されました。
これにより、大学生など19歳~22歳の学生アルバイトが年収150万円まで稼いでも、親の所得税負担は増えまぜん。
学生の年収 | 親が受けられる所得税控除 | 控除額 |
---|---|---|
123万円以下 | 特定扶養控除 | 63万円 |
123万円超~150万円以下 | 特定親族特別控除 | 63万円 |
具体的には年収123万円までは、従来通り特定扶養控除の63万円が適用されます。
年収123万円を超えても、150万円までは新設の特定親族特別控除の63万円が満額適用されるため、親の税負担は増えません。
150万円を超えると、控除額が段階的に減少しますが、188万円までは一定の控除が受けられる仕組みです。
ただし、社会保険や住民税の壁は別に存在するため、総合的な収入計画が必要です。
配偶者控除とは、納税者に控除対象となる配偶者がいる場合に、一定の金額を所得から差し引くことで税負担を軽減する制度です。
2025年の税制改正により、配偶者控除を受けられる配偶者の給与所得の上限は従来の103万円から123万円に引き上げられました。
例えば、夫の扶養に妻が入っている場合の配偶者控除・配偶者特別控除の控除額は、以下のとおりです。
控除額は納税者本人の所得や配偶者の年齢によって異なり、最大38万円の控除が受けられます。
配偶者の給与収入123万円以下の場合は、配偶者控除が適用されます。
配偶者の所得が給与収入で123万円を超える場合は、配偶者特別控除が適用され、年収160万円以下までは段階的に控除額が減少しながらも控除を受けることが可能です。
配偶者控除は、夫婦の税負担を調整し、生活の安定を支える重要な制度です。