
「iDeCoの運用指図者とは?」
「運用指図者に移行するメリット・デメリットが知りたい」
とお悩みではないでしょうか。
iDeCoの運用指図者とは掛金の拠出は行わず、既に積み立てた年金資産の運用のみを行う人のことです。
この記事では、iDeCoの運用指図者におけるメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
また、iDeCoの運用指図者に必要な各種手続きや条件なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
▼この記事がおすすめな人
- iDeCoの運用指図者についてメリット・デメリットがよくわからない人
- 掛金拠出ができなくなったときに、iDeCoの扱いがどうなるか不安な人
- 手数料や税制優遇など、運用指図者としてのコスト面を把握しておきたい人
- iDeCoの給付金を受け取る際の流れや注意点を確認しておきたい人

監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- iDeCoの運用指図者とは?加入者との違いや該当者について解説
- iDeCo加入者から運用指図者へ変更となる主なケース
- 60歳以降に会社を定年退職した場合
- 失業等の理由で掛金の拠出ができなくなってしまった場合
- 国外に居住することになった場合
- iDeCoの運用指図者のメリット
- 掛金拠出なしでも資産運用を継続できる
- 市場環境を見ながら運用方針を変更できる
- 必要に応じて掛金の拠出を再開することができる
- iDeCoの運用指図者のデメリット
- 受け取り時の税制優遇が小さくなる
- 手数料によって資産が目減りする可能性がある
- 退職所得控除の勤続年数にカウントされない
- 手続きを怠ると不利益が生じる場合がある
- iDeCoの運用指図者にかかる手数料
- 口座管理手数料
- 投資信託運用にかかる手数料
- iDeCoの運用指図者に関するお悩みなら無料FP相談で解決!
- iDeCo運用指図者が必要な各種手続き
- iDeCoの運用指図者が受け取れる給付金
- iDeCoの運用指図者はメリット・デメリットの把握が大切【まとめ】
iDeCoの運用指図者とは?加入者との違いや該当者について解説
iDeCoの運用指図者とは、掛金拠出をやめた後も積立資産の運用だけを続ける人です。
加入者との主な違いは以下の表の通りです。
項目 | 加入者 | 運用指図者 |
---|---|---|
掛金拠出 | できる | できない |
所得控除 | あり | なし |
運用益非課税 | あり | あり |
商品の変更 | できる | できる |
該当条件 | 加入資格あり | 資格喪失・拠出停止 |
運用指図者になると新たな積立はできませんが、これまでの資産を運用益非課税のメリットを活かしながら運用し続けることができます。
転職や退職などで状況が変わった際は、加入者への復帰や給付手続きなど、忘れずに必要な手続きを行いましょう。
iDeCo加入者から運用指図者へ変更となる主なケース
iDeCo加入者から運用指図者へ変更となる主なケースは以下の通りです。
- 60歳以降に会社を定年退職した場合
- 失業や経済的理由で掛金の拠出を停止した場合
- 国外に居住することになった場合
ここからそれぞれのケースについて詳しく解説するので、自分の場合と照らし合わせて確認してみてください。
60歳以降に会社を定年退職した場合
1つめは60歳以降に会社を定年退職した場合です。
現状、iDeCoの掛金の拠出は65歳まで可能ですが、60歳以降に定年退職するなどして掛金の拠出をやめた場合でも、資産の受け取りは75歳まで遅らせることができます。
例えば、60歳で会社を定年退職するなどの理由で掛金を拠出をやめたが、受け取りは70歳からとした場合、掛金ストップから受取開始までの空白の期間が生じます。
この期間が、掛金を拠出せずに積立金の運用を行なっている状態であり、「運用指図者」と呼ばれます。
失業等の理由で掛金の拠出ができなくなってしまった場合
失業や経済的事情で掛金を支払えなくなった場合、iDeCoでは運用指図者として制度を継続できます。
再就職までの間、掛金を無理に払わずに資産を維持できるのがメリットです。
ただし、拠出を再開するには所定の手続きが必要なため、放置せず状況に応じて管理しましょう。
iDeCoは一度脱退すると再加入が難しいため、拠出停止ではなく「運用指図者」への切り替えが現実的な選択肢となります。
国外に居住することになった場合
国外に転居した場合、原則として「日本国内に居住している」というiDeCoの加入要件を満たさなくなり、掛金拠出ができないため、運用指図者へ移行することになります。
ただし、2022年5月の法改正により、国民年金に任意加入している海外居住者も、iDeCoへの加入が可能となりました。
したがって、海外赴任中でも任意加入していれば、従来どおり掛金の拠出と運用が継続できます。
また、国内企業からの派遣などで引き続き厚生年金に加入している場合も、加入者資格を維持できるケースがあります。
状況により対応が異なるため、海外転居時は条件をよく確認しましょう。
iDeCoの運用指図者のメリット
ここでは、iDeCoの運用指図者のメリットについて紹介していきます。
- 掛金拠出なしでも資産運用を継続できる
- 市場環境を見ながら運用方針を変更できる
- 必要に応じて掛金の拠出を再開することができる
掛金拠出なしでも資産運用を継続できる
一つ目のメリットは、掛金の拠出を停止してもiDeCo内の資産運用を継続できることです。
たとえば退職や失業、海外転居などで掛金を払えなくなっても、既に積み立てた資産はそのまま投資信託などで運用が可能です。
そのため、長期的な資産形成の流れを止めずに済みます。
また、運用商品の変更も自由に行えるため、市場環境に応じた戦略をとることもできます。
市場環境を見ながら運用方針を変更できる
二つ目のメリットは、市場環境を見ながら柔軟に運用方針を変更できることです。
運用指図者は掛金の拠出こそできませんが、すでに積み立てた資産の配分変更やスイッチングは自由に行えます。
たとえば、相場が不安定なときにはリスクを抑える運用に変更するなど、自分の判断で資産の守り方を調整できます。
また、年齢やライフイベントに応じて運用商品を見直すことで、将来の資産形成に備えることが可能です。
このように、掛金を払わずとも状況に合わせて資産運用を最適化できる点は大きな魅力といえます。
必要に応じて掛金の拠出を再開することができる
三つ目のメリットは、必要に応じて再び掛金の納付を再開できることです。
運用指図者は一時的に掛金の拠出を停止している状態であり、再び加入者の条件を満たせば、掛金の拠出を再開できます。
たとえば、失業後に再就職した場合や、海外から帰国して再び日本国内に住むようになった場合などが該当します。
このように、ライフステージや経済状況の変化に応じて、柔軟にiDeCoの活用を継続できるのが大きな魅力です。
iDeCoの運用指図者のデメリット
運用指図者のデメリットは以下のとおりです。
- 受け取り時の税制優遇が小さくなる
- 手数料によって資産が目減りする可能性がある
- 退職所得控除の勤続年数にカウントされない
- 手続きを怠ると不利益が生じる場合がある
メリットだけでなくデメリットも把握し、ご自身の状況に合わせてiDeCoをどう活用すべきか総合的に判断しましょう。
受け取り時の税制優遇が小さくなる
まず運用指図者の一つ目のデメリットとして、受け取り時の税制優遇が小さくなることが挙げられます。
なぜなら、掛金の拠出をしていないため、拠出時の所得控除といった節税メリットを受けることができないためです。
その結果、受け取り時に適用される退職所得控除や公的年金等控除の枠も限られ、将来的に受け取る際の税負担が相対的に大きくなる可能性があります。
手数料によって資産が目減りする可能性がある
二つ目のデメリットは、運用指図者になると手数料負担によって資産が目減りするリスクです。
なぜなら、掛金を拠出しない間もiDeCo口座の管理手数料は毎月発生し続けるためです。
月数百円程度でも長期間にわたれば積み重なり、特に定期預金など低リターンの運用商品を選んでいる場合は、運用収益を上回る恐れがあります。
つまり、掛金を止めても維持コストはかかる点を把握しておかないと、思った以上に運用成果が削られることになります。
資産を守るためには、手数料と利回りのバランスを意識した商品選びが重要です。
退職所得控除の勤続年数にカウントされない
三つ目のデメリットは、退職所得控除の勤続年数にカウントされないことです。
運用指図期間は勤続年数として扱われず、退職所得控除の算定対象から外れるためです。
退職所得控除は以下のように算出されます。
勤続年数 | 退職所得控除の算式 |
---|---|
20年以下 | 40万円x勤続年数 |
20年超 | 800万円+70万円x(勤続年数ー20年) |
このように勤続年数が長いほど節税効果は大きくなりますが、運用指図期間が増えると控除額が縮小されます。
結果として、将来の税負担が増える可能性もあるため、期間の管理と対策が重要です。
手続きを怠ると不利益が生じる場合がある
四つ目のデメリットは、手続きを怠ると不利益が生じる場合があることです。
最も多いのは、初期設定のまま運用され続けるケースで、元本確保型を選んでいた場合、低金利のまま運用されて運用益が期待できなくなる可能性があります。
また、運用指図者であっても口座管理手数料は継続してかかるため、運用益がないのに手数料だけが引かれて資産が目減りしていく場合があります。
さらに60歳以降の受給開始手続きを怠ると、資産の受け取りが遅れたり受給権を失うリスクもあるため、定期的な見直しと適切な手続きが重要です。
iDeCoの運用指図者にかかる手数料
ここでは、iDeCoの運用指図者にかかる手数料について、以下2つをピックアップして解説します。
- 口座管理手数料
- 投資信託運用にかかる手数料
これらの手数料は、運用指図者として掛金の拠出を停止していても発生し続けます。
長期間にわたり放置していると、資産の目減りにつながる恐れもあるため内容を理解しておきましょう。
それでは、各手数料の詳細を見ていきます。
口座管理手数料
口座管理手数料としては主に以下の3つがあります。
- 国民年金連合会に支払う手数料:月額105円
- 事務委託先金融機関業務に関する手数料:月額66円
- 運営管理手数料:運営管理機関によって異なる
運営管理手数料については、運用指図者に対しては加入者よりも安い手数料を適用しているケースが多いですが、運営機関によって手数料率が違い月200円前後から月600円前後まで開きがあります。
非営利法人の確定拠出年金教育協会が運営する「個人型確定拠出年金ナビ」で各運営機関の口座管理手数料水準を確認できますので、是非ご参照ください。
投資信託運用にかかる手数料
口座管理手数料以外に投資信託の運用にかかる手数料もあります。
投資信託の手数料は一般的に以下の3種類があります。
- 購入時にかかる「販売手数料」
- 保有期間中にかかる「信託報酬」
- 解約時にかかる「信託財産留保額」
iDeCoではこれらのうち「信託報酬」が主な手数料となります
多くの金融機関では販売手数料が無料の商品を扱っていますが、一部商品には信託財産留保額などがかかる場合もあるため、商品を選ぶ際には必ず確認しましょう。
iDeCoの運用指図者に関するお悩みなら無料FP相談で解決!
iDeCoの運用指図者に関する悩みは、無料FP相談で解決しましょう。
無料FPに相談することで、iDeCoなど資産運用に精通した専門家があなたの資産状況や運用目的に応じて適切なアドバイスを提供してくれます。
また、運用指図者となった今すべき行動についてもアドバイスしてくれます。
迷いや不安を解消し、最適な運用を目指すためにも、まずは気軽に相談してみましょう。
iDeCo運用指図者が必要な各種手続き
iDeCoの運用指図者になった場合でも、状況に応じていくつかの手続きが必要となることがあり、以下に代表的なケースと提出が必要な書類をまとめました。
- 掛金納付を再開する場合:「個人型年金加入申出書(K-001)」の提出
- 氏名・住所を変更する場合:「加入者等氏名・住所変更届(K-005)」の提出
- 運営管理機関を変更する場合:「加入者等運営管理機関変更届(K-004)」の提出
- 死亡時の受け取り手続き:「加入者等死亡届(K-014)」の提出
iDeCoの運用指図者が受け取れる給付金
iDeCoの運用指図者になっても、一定の条件を満たせば積立資産を「給付金」として受け取ることが可能です。
運用指図者が受け取れる代表的な給付金は以下のとおりです。
給付金 | 内容 |
---|---|
老齢給付金 | 原則60歳以降、通算拠出期間(受給資格期間)が 10年以上ある場合に受け取れる基本的な給付 |
障害給付金 | iDeCo加入中に所定の障害等級(1~3級)に該当した場合、 積立資産を早期に受け取れる仕組み |
死亡給付金 | 加入者本人が死亡した場合、 遺族が積立資産を一時金として受け取れる仕組み |
これらの給付を受け取る際には、運営管理機関の案内に従って必要書類を準備し、手続きを行う必要があります。
iDeCoの運用指図者はメリット・デメリットの把握が大切【まとめ】
この記事では、iDeCoの運用指図者についてメリット・デメリットや、手続きや給付金の受け取りまで幅広く紹介してきました。以下に本記事の内容をまとめます。
- 掛金の停止や海外転居、定年退職などをきっかけに、iDeCoは運用指図者へ自動で切り替わることがある
- 運用指図者になると掛金拠出はできないが、資産運用は継続可能で、再拠出も可能
- 一方で税制優遇が受けづらくなり、手数料や退職所得控除への影響などのデメリットも存在する
- 住所変更や再拠出、死亡時の対応など、運用指図者にも各種の重要な手続きが求められる