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オフィスや店舗の賃貸契約に関して、敷金の会計処理はどうすればいいのでしょうか。この記事では、敷金の勘定科目や仕訳方法に加え、礼金・仲介手数料・家賃の会計処理を解説しています。この記事を読んで賃貸契約の勘定科目や仕訳を確認しましょう。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

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敷金の勘定科目は?事務所や社宅の会計処理や仕訳を解説!

こんにちは、マネーキャリア編集長の谷川です。

先日、個人事業主の30代の男性からこんな相談がありました。
そろそろ事務所を構えて人を雇いたいと思っています。個人事業主になってから、簡単な会計処理は自分でやってきたんですが、事務所を借りる時の処理は調べてもよくわからなくて。どのように処理をしたらいいか教えていただけませんか。

最近、副業や複業に挑戦される方で、事務所を借りたいので会計処理をわかりやすく教えて欲しいといった相談が増えてきています。


「敷金の会計処理が複雑で、正直よくわからない」  


事務所などを借りる際に現れる敷金の会計処理


仕訳を行うときに単純に「敷金」として会計処理を行う場合もあれば、そうではなく他の勘定科目で会計処理を行う場合もあります。


今回はそんな複雑な敷金の処理について解説していきます。

また、事務所や社宅を借りる際に関連してくる礼金、家賃、消費税などについても合わせて確認していきましょう。

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賃貸契約時の敷金の勘定科目・仕訳は賃貸契約書の内容で決まる


敷金は、賃貸契約時に「賃借人(借りる人)」が「賃貸人(大家)」に預けるお金です。


一般的に、事務所として賃貸を借りる場合は居住用の賃貸よりも多額になる、という傾向があります。


賃貸は、賃借人による家賃の滞納や部屋の破損に備えた担保のようなもので、解約時に賃貸人(大家)によって特に問題がないとみなされれば、基本的には返還されるお金です。


しかし、中には返還されない敷金もあり、そのような場合は会計処理が通常と異なります。


敷金の他にも契約の際に会計処理を行う項目は複数あります。

それらの勘定科目についても混乱しないように確認していきましょう。


この記事では、以下のような内容をご紹介します。

  • 契約によって異なる!賃貸契約の際の敷金の仕訳
  • 退去するする際の敷金の仕訳方法は?
  • 礼金の仕訳にもパターン有り!
  • 仲介手数料の会計処理
  • 家賃の勘定科目はどうなる?
  • ここが異なる!社宅契約時の仕訳
  • 消費税区分が異なる敷金礼金

冒頭で「敷金の中には返還されないものもある」とお伝えしましたが、賃貸では「敷引契約」として敷金の一部または全額が返還されないようになっている契約があります。


敷金が返還される場合と返還されない場合の会計処理が異なることはもちろん、返還されない場合の中でもさらに数種類の会計処理が存在します。


1つずつ確認していきましょう。

  1. 返還される敷金の勘定科目は「敷金」や「差入保証金」
  2. 償却され返還されない敷金が20万円未満の場合
  3. 返還されない敷金が20万円以上かつ契約期間が5年未満の場合
  4. 返還されない敷金が20万円以上かつ契約期間が5年以上の場合

①返還される敷金の勘定科目は「敷金」や「差入保証金」

返還される敷金を支払う場合、勘定科目は「敷金(資産)」または「差入証拠金(資産)」のどちらかで記帳します。 


どちらで記帳しても問題ありませんが、一度設定した勘定科目は後から変更しないように注意しましょう。


敷金600,000円を現金で支払う場合の仕訳例は以下の通りです。


<契約締結時>

借方に敷金600,000円、貸方に現金600,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
敷金600,000
現金600,000

②償却され返還されない敷金が20万円未満の場合

償却され返還されない敷金が20万円未満の場合、勘定科目は「支払い手数料(費用)」で記帳します。


現金で支払う敷金100,000円の内、返還されない分が30,000円の場合の仕訳例は以下の通りです。


<契約締結時>

借方に敷金70,000円と支払手数料30,000円、貸方に現金100,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
敷金70,000
支払手数料30,000
現金
100,000

③返還されない敷金が20万円以上かつ契約期間が5年未満の場合

償却され返還されない敷金が20万円以上かつ契約期間が5年未満の場合、勘定科目は「長期前払費用(資産)」または「権利金(資産)」で記帳します。


貸借対照表の資産の部、特に繰延資産として計上し、その後は契約期間で毎年償却します。


2年契約で敷金500,000円、そのうち返還されない分が200,000円を現金で支払う場合の仕訳例は以下の通りです。


<契約締結時>

借方に敷金300,000円と長期前払い費用200,000円、貸方に現金500,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
敷金300,000
長期前払費用200,000
現金500,000

<期末(償却時)>  

期末に長期前払い費用200,000円を契約年数2年で割った額を敷金償却費(費用)として償却します。

償却額 : 200,000円/2年=100,000円

借方に敷金償却費100,000円、貸方に長期前払い費用100,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
敷金償却費100,000
長期前払費用
100,000

④返還されない敷金が20万円以上かつ契約期間が5年以上の場合

償却され返還されない敷金が20万円以上かつ契約期間が5年以上の場合、勘定科目は「長期前前払費用(資産)」または「権利金(資産)」で記帳します。

貸借対照表の資産の部、特に繰延資産として計上し、その後は契約期間で毎年償却します。

「③返還されない敷金が20万円以上かつ契約期間が5年未満の場合」と似ていますが、均等償却の年数が「5年」と決まっているため注意してください。

7年契約で敷金500,000円、その内返還されない分が200,000円を現金で支払う場合の仕訳例は以下の通りです。

<契約締結時>
借方に敷金300,000円と長期前払い費用200,000円、貸方に現金500,000円を計上します。
勘定科目借方貸方
敷金300,000
長期前払費用
200,000
現金500,000

<期末(償却時)>
期末には、長期前払い費用200,000円を5年で割った額を敷金償却費(費用)として計上します。

償却額 : 200,000円/5年=40,000円

借方に敷金償却費40,000円、貸方に長期前払費用40,000円を計上します。
勘定科目借方貸方
敷金償却費40,000
長期前払費用40,000
実務で2年以上の契約に遭遇することは稀ですが、出てきた時のために頭の片隅に入れておきましょう。

賃貸物件の退去時の敷金の勘定科目・仕訳は返還された敷金で決まる


賃貸物件の契約時の会計処理についてこれまで解説してきましたが、退去時はどのような処理があるのでしょうか。


退去の際の敷金の勘定科目は、主に下記のように処理していきます。

  1. 返還される敷金の勘定科目は「現金」「普通預金」とする
  2. 返還されなかった敷金の勘定科目は「修繕費」となる
それぞれ解説していきます。

①返還される敷金の勘定科目は「現金」「普通預金」とする

返還される敷金の勘定科目は「現金(資産)」「普通預金(資産)」で記帳します。


退去時に敷金600,000円が現金で返還された場合の仕訳例は以下の通りです。


<退去時>

借方に現金600,000円、貸方に敷金600,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
現金600,000
敷金600,000

②返還されなかった敷金の勘定科目は「修繕費」となる

返還されなかった敷金の勘定科目は「修繕費(費用)」で記帳します。


敷金600,000円から現状回復費用120,000円が差し引かれて現金で返還された場合の仕訳例は以下の通りです。


<退去時> 

 借方に現金480,000円と修繕費120,000円、貸方に敷金600,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
現金480,000
修繕費120,000
敷金600,000

礼金の勘定科目・仕訳はどうする?


敷金は、契約内容によって異なる勘定科目や処理によって会計処理がなされることを確認しました。
ここで、賃貸契約の際に支払う礼金についても確認しておきましょう。

お礼のため、賃借人(借りる人)に対して返還されることはありません。 

礼金も、敷金のように賃貸の契約内容によって勘定や仕訳の方法が異なります。

  1. 礼金が20万円未満の場合の勘定科目は「地代家賃」とする
  2. 礼金が20万円以上かつ契約期間が5年未満の場合は契約期間で償却する
  3. 礼金が20万円以上かつ契約期間が5年以上の場合は5年間で償却する
それぞれ確認していきましょう。

①礼金が20万円未満の場合の勘定科目は「地代家賃」とする

礼金が20万円未満の場合、勘定科目は「地代家賃(費用)」で記帳します。


賃貸契約時に礼金100,000円を現金で支払う場合の仕訳の例は以下の通りです。


<契約締結時>

借方に地代家賃100,000円、貸方に現金100,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
地代家賃100,000
現金100,000

②礼金が20万円以上かつ契約期間が5年未満の場合は契約期間で償却する

礼金が20万円以上かつ契約期間が5年未満の場合は「長期前払費用(資産)」として記帳します。


貸借対照表の資産の部、特に繰延資産として計上し、契約期間で毎年償却します。


4年契約で礼金240,000円を現金で支払う場合は仕訳は以下の通りです。


<契約締結時>

借方に長期前払費用240,000円、貸方に現金240,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
長期前払費用240,000
現金240,000


<償却時(期末)>

期末に長期前払費用60,000円を契約年数4年で割った計算結果を支払手数料として償却します。

償却額 : 240,000円/4年=60,000円

借方に支払手数料60,000円、貸方に長期前払費用60,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
支払手数料60,000
長期前払費用60,000

③礼金が20万円以上かつ契約期間が5年以上の場合は5年間で償却する

礼金が20万円以上かつ契約期間が5年以上の場合は「長期前払費用(資産)」として記帳します。


貸借対照表の資産の部、特に繰延資産として計上し、契約期間で毎年償却します。


「②礼金が20万円以上かつ契約期間が5年未満の場合は契約期間で償却する」と似ていますが、均等償却の年数が「5年」と決まっているため注意してください。


6年契約で礼金250,000円を現金で支払う場合の仕訳は以下の通りです。


<契約締結時>

借方に長期前払費用250,000円、貸方に現金250,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
長期前払費用250,000
現金250,000


<償却時(期末)>

期末に長期前払費用250,000を5年で割った額を支払い手数料として償却します。

償却額 : 250,000円/5年=50,000円

借方に支払い手数料50,000円、貸方に長期前払費用50,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
支払手数料50,000
長期前払費用50,000

実務で2年以上の契約に遭遇することは稀ですが、出てきた時のために頭の片隅に入れておきましょう。

仲介手数料の勘定科目・仕訳は「支払手数料」とする


不動産へ支払う仲介手数料の勘定科目は「支払手数料(費用)」として記帳します。


仲介手数料100,000円を現金で支払う場合の仕訳は以下の通りです。


<契約締結時>

借方に支払手数料100,000円、貸方に現金100,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
支払手数料100,000
現金100,000

家賃の勘定科目・仕訳は「地代家賃」とする

賃貸人(大家)へ支払う家賃の勘定科目は「地代家賃(費用)」として記帳します。


家賃200,000円を現金で支払う場合の仕訳は以下の通りです。


<家賃支払時>

借方に地代家賃200,000円、貸方に現金200,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
地代家賃200,000
現金200,000

また、自宅で仕事をしている場合は「家事按分」として家賃を按分してその一部を経費に計上することができます。

家事按分は自己申告制です。仕事時間や仕事場の面積などをもとに適切な額を計算してください。

オフィスや店舗ではなく社宅を契約した場合の勘定科目・仕訳は?


オフィスや店舗ではなく社宅を契約した場合でも、「敷金(資金)」を計上します。


そのため、契約時はオフィスや店舗を契約したときと同様の仕訳を行います。


賃貸を契約しているのは会社のため、敷金や礼金は会社が支払います。


ただし、退去の際に現状回復費用を従業員に負担してもらう場合には、「立替金(資産)」として処理するなどの違いがあります。


敷金300,000円を契約時に支払い、退去の際に現状回復費用40,000円を従業員に負担してもらう場合の仕訳例は以下の通りです。


<契約締結時>

借方に敷金300,000円、貸方に現金300,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
敷金300,000
現金300,000


<退去時>

従業員に支払ってもらう予定の原状回復費用を一度会社が立て替えます。


借方に現金260,000円と立替金40,000円、貸方に敷金300,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
現金260,000
立替金40,000
敷金300,000


<従業員への立替金請求時>

会社が立て替えていた原状回復費用40,000円を従業員に請求します。


借方に現金40,000円、貸方に立替金40,000円を計上します。

勘定科目借方貸方
現金40,000
立替金40,000

原状回復費用を従業員負担とするか、会社負担とするかは会社判断となります。

会社規定などがあれば確認しておきましょう。

敷金礼金・仲介手数料に消費税は課せられる?


ここまで賃貸契約について基本的な会計処理を解説してきました。


最後に、事務所や社宅としての賃貸契約する場合の敷金や礼金などの消費税区分を確認しておきましょう。

消費税
返還される敷金課税対象外
返還されない敷金課税対象
礼金課税対象
仲介手数料課税対象
家賃課税対象

参考:No.6225 地台、家賃や権利金、敷金など


賃貸借契約終了後に返還される敷金は、消費税の課税対象外、返還されない敷金は消費税課税対象となります。


同じ敷金でも返還の有無で課税されるかどうか変わる理由は、サービスの有無にあります。

敷金が返還されない場合は、修繕などのサービスを受けるため消費税が課税されます。


礼金や家賃は事業を行うために物件を借りるサービスを受けているとみなされ、消費税が課税されます。


また、仲介手数料についても不動産からサービスを受けているため消費税は課税されます。


ちなみに、事務所や社宅用ではなく通常の住宅として契約する場合には家賃と礼金が消費税課税対象外となります。

一部違いがありますので注意して会計処理を行ってください。

まとめ:敷金の勘定科目・仕訳の方法を確認しよう


敷金の勘定科目や仕訳、関連する他の処理などについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは

  • 敷金の仕訳の契約書によって異なる
  • 敷金返還の有無によって異なる退去時の仕訳
  • 礼金お仕訳も契約書によって異なる
  • 仲介手数料の勘定科目は「支払手数料」
  • 家賃の勘定科目は「地代家賃」
  • 社宅契約における敷金の処理は事務所とは異なる
  • 返還される敷金以外は消費税の課税対象外
でした。

細かなルールがある賃貸契約時の会計処理ですが、契約書を確認した上でそれぞれしっかり仕訳を行いましょう。

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