

この記事の監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。メディア実績:<テレビ出演>テレビ東京-テレ東「WBS」・テレビ朝日「林修の今知りたいでしょ!」
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この記事の目次
- iDeCoで月1万円の積立は意味ないと言われる理由4選
- 老後資金としては不十分
- 流動性リスクに対してリターンが少ない
- 税制優遇効果が限定的
- 手数料の影響が相対的に大きい
- iDeCoで月1万円積立をするのは意味ない?と感じる場合はFPの無料相談を活用しよう
- iDeCoで月1万円積立をするのは本当に意味ない?いくら増えるかシミュレーション
- 40年間積み立てた場合(25歳から運用開始)
- 30年間積み立てた場合(35歳から運用開始)
- 20年間積み立てた場合(45歳から運用開始)
- 10年間積み立てた場合(55歳から運用開始)
- iDeCoで月1万円積立するメリット
- 掛金が全額所得控除になる
- 運用益が非課税になる
- 運用資金の受取時も控除を受けられる
- 長期投資でリターンは大きくなる
- 【iDeCo以外】自分にピッタリの資産形成方法は?月1万円でできる方法とは?
- iDeCoで月1万円の積立をする際のポイント
- 自分の加入区分を確認する
- 60歳時点での希望貯蓄額を考える
- 現在の積立ペースでの想定貯蓄額を求める
- 定期的に積立プランを見直す
- 【まとめ】iDeCoで月1万円の積立は意味ないと言われる理由
iDeCoで月1万円の積立は意味ないと言われる理由4選

「iDeCoを月1万円で始めても意味がない」という声を耳にすることがあります。確かに、少額からの積立に対して疑問を持つ方も多いでしょう。
意味がないと言われる理由は以下のとおりです。
- 老後資金としては不十分
- 流動性リスクに対してリターンが少ない
- 税制優遇効果が限定的
- 手数料の影響が相対的に大きい
月1万円という金額では、老後資金として十分な額を確保できない可能性や、税制優遇効果が限定的になってしまうケースなどの懸念点が挙げられます。
老後資金としては不十分
老後の生活を安心して送るためには、公的年金だけでは不足する可能性が高く、iDeCoなどの私的年金での補完が必要です。しかし、月1万円の積立では老後資金として十分な額を確保するのは難しいと言われています。
生命保険文化センターの調査※によると、夫婦二人で最低限の生活を送るには月に約23万円、ゆとりある生活には月に約38万円が必要とされています。一方、公的年金の標準的な受給額(夫婦だけの無職世帯)は月に約23万円です。
この差額を埋めるためにiDeCoで準備する必要があります。iDeCoで月1万円を積み立てた場合は以下のとおりです。
【月1万円の積立シミュレーション】
運用期間 | 運用利回り3%の場合 | 運用利回り5%の場合 |
---|---|---|
10年間 | 約140万円 | 約155万円 |
20年間 | 約330万円 | 約410万円 |
30年間 | 約580万円 | 約830万円 |
30年間運用しても、月1万円の積立では多くても830万円程度です。これを65歳から20年間で取り崩すと、月々約3.5万円の上乗せにしかなりません。老後に必要と言われる金額と比較すると、豊かな老後生活を送るには物足りないでしょう。
流動性リスクに対してリターンが少ない
iDeCoは原則として60歳まで引き出せないため、非常に流動性の低い制度です。流動性の低さに対して、月1万円の積立では得られる利益が限られるという見方もあります。
たとえば、急な病気や怪我・失業などで資金が必要になっても、iDeCoからは引き出せません。また、マイホーム購入や子どもの教育資金など、人生の大きなイベントにも使えないのです。資金が長期間拘束されるリスクがある一方で、投資成果によっては資産形成が期待通りに進まない場合もあります。
税制優遇効果が限定的
iDeCoの大きな魅力の一つである税制優遇効果ですが、月1万円(年間12万円)の積立では、その恩恵が限定的になる場合があります。とくに所得が少ない方や特定の控除を受けている方にとっては、メリットを十分に感じられないでしょう。
節税効果を確認しましょう。
年収 | 所得税率 | 住民税率 | 年間節税額 |
---|---|---|---|
195万円以下 | 5% | 10% | 約1.8万円 |
330万円以下 | 10% | 10% | 約2.4万円 |
695万円以下 | 20% | 10% | 約3.6万円 |
900万円以下 | 23% | 10% | 約4.0万円 |
※参照:確定申告書等作成コーナーよくある質問|国税庁 NATIONAL TAX AGENCY
上記の表からもわかるように、年収が低い方は節税効果も小さくなります。たとえば、年収195万円以下の方では年間の節税額は約1.8万円です。月あたり1,500円程度の節税効果しかありません。
手数料の影響が相対的に大きい
iDeCoでは運用にあたり様々な手数料が発生します。積立金額が少ないと手数料が運用成果に与える影響が相対的に大きくなります。
iDeCoで発生する主な手数料は以下のとおりです。
手数料の種類 | 金額 | 頻度 |
---|---|---|
加入時手数料 | 2,829円 | 初回のみ |
国民年金基金連合会手数料 | 105円 | 毎月 |
事務委託先金融機関手数料 | 66円 | 毎月 |
金融機関の口座管理費用 | 0〜数百円 | 毎月(金融機関による) |
運用商品の信託報酬 | 資産額の0.1%〜1.0%程度 | 年率(商品による) |
※参照:自分で育てる、自分の年金 iDeCo|国民年金基金連合会(厚生労働省)
月1万円の積立の場合、基本手数料だけで毎月171円(年間2,052円)発生します。これは積立額の1.71%に相当し、金融機関によっては追加で口座管理費用がかかるケースもあります。
たとえば、金融機関の口座管理費用が330円かかった場合は、以下のような金額が発生します。
- 月の手数料総額:171円+330円=501円
- 年間の手数料:501円×12か月=6,012円(積立額の約5%)
- 30年間では約18万円の手数料負担
このように、積立金額が少ない場合は手数料の比率が高くなり、運用益を圧迫するのです。
iDeCoで月1万円積立をするのは意味ない?と感じる場合はFPの無料相談を活用しよう

iDeCoで月1万円の積立が「意味ない」と感じたとしても、まずは専門家へ相談がおすすめです。ファイナンシャルプランナー(FP)に相談すれば、収入状況やライフプランに合わせた最適な資産形成の方法を見つけられます。
マネーキャリアなどのFP相談サービスではiDeCoだけでなく、新NISAや個人年金など、さまざまな選択肢で検討可能です。
とくに投資初心者の方は「どの金融機関を選べばいいのか」「どのような運用商品がいいのか」など疑問が多いでしょう。FPは税制優遇の活用方法や手数料の低い金融機関の選び方、年齢や収入に応じた掛金額の調整など、具体的なアドバイスを提供してくれます。

iDeCoで月1万円積立をするのは本当に意味ない?いくら増えるかシミュレーション
ここでは、iDeCoに「月1万円で投資することで、どれほどの老後資金を準備できるのか」を以下の条件で、シミュレーションしながら解説します。
- 40年間積み立てた場合(25歳から運用開始)
- 30年間積み立てた場合(35歳から運用開始)
- 20年間積み立てた場合(45歳から運用開始)
- 10年間積み立てた場合(55歳から運用開始)
※ シミュレーションは過去のデータに基づいた結果であり、将来の収益を保証するものではありません。
※ シミュレーションは楽天証券が提供しているこちらを参照しております。
40年間積み立てた場合(25歳から運用開始)
iDeCoで月1万円を40年間積み立てた場合のシミュレーションは下記のとおりです。
30年間積み立てた場合(35歳から運用開始)
20年間積み立てた場合(45歳から運用開始)
10年間積み立てた場合(55歳から運用開始)
iDeCoで月1万円積立するメリット

iDeCoは月1万円という少額からでも始められる老後資金形成の強い味方です。
iDeCoのメリットを理解し、うまく活用すれば効率的に資産を増やせます。
iDeCoを活用し、月1万円積立するメリットは以下のとおりです。
- 掛金が全額所得控除になる
- 運用益が非課税になる
- 運用資金の受取時も控除を受けられる
- 長期投資でリターンは大きくなる
月1万円でiDeCoを始める具体的なメリットについて、詳しく見ていきましょう。
掛金が全額所得控除になる
所得税や住民税は、「課税所得」に所定の税率をかけて算出します。つまり、課税所得が少なければ少ないほど、納める税金は少なくすむのです。
課税所得の計算式は以下の通りです。
課税所得=給与所得ー所得控除
給与所得から所得控除として掛金を差し引くことで、課税所得が減少します。その結果、納めるべき所得税と住民税の税額が減少するのです。
運用益が非課税になる
iDeCoで月1万円の積立は意味があると言える理由の2つ目は「運用益が非課税」となる点です。
通常、金融商品を運用すると、運用益は20.315%が課税されます。しかし、iDeCoで運用すれば非課税になります。
たとえば、運用で10万円の利益が出た場合、iDeCoに加入していなければ、20,315円を納税しなければならないので、最終的に手に入るのは79,685円です。一方、iDeCoに加入していれば、運用益10万円を全て手に入れられます。
本来ならば、税金として差し引かれた分も投資に回せるため、効果的な投資効果を見込める可能性もあるのです。
運用資金の受取時も控除を受けられる
そもそもiDeCoでの運用資産を自身で受け取る際は「所得」として課税対象となります。
運用資産の受取方法は以下の2種類です。
- 年金として分割で受け取る
- 一時金として一括で受け取る
年金として分割で受け取る場合、「公的年金等控除」が適応されます。控除額は、年金受取者の年齢や年金収入の合計から決定します。
一時金として一括で受け取る場合、勤続年数に応じた「退職所得控除」が適応されます。控除額は次の通りです。
勤続年数 | 控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数(計算結果が80万円以下になる場合は80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数ー20年) |
いずれの受け取り方でも税制優遇を受けられる点は変わりません。
長期投資でリターンは大きくなる
iDeCoで月1万円の積立は意味があると言える理由の4つ目は「長期投資でリターンは大きくなる」点です。
「投資額が少ないとリターンも同様に少ないのでは?」と考える方は多いです。しかし、小額投資だとしても、長期投資によって多くのリターンを得られるので、意味があると言えます。
「投資額」に注目すると、「投資額=毎月の投資額×投資期間」なのです。つまり、毎月の投資額が少なくても、投資期間が長ければ、合計した投資額は多くなり、その分リターンも多くなります。
出典=金融庁「つみたてNISA早わかりガイドブック」
iDeCoで月1万円を3種類の銘柄で運用すると、いずれの銘柄でも運用収益は5年目に比べて20年目の方が高くなっています。したがって、月1万円の積立でも投資期間を長く確保することで、多くのリターンを得られます。
また、保有期間20年を目安に、長期積立分散投資をした場合、勝率はほぼ100%になることが上記画像からもわかります。月1万円の積立であっても、長期投資をすることで、安定して大きなリターンを得られます。
※シミュレーションは過去のデータに基づいた結果であり、将来の収益を保証するものではありません。
【iDeCo以外】自分にピッタリの資産形成方法は?月1万円でできる方法とは?

iDeCo以外にも月1万円から始められる資産形成方法はいくつかあります。
自分のライフプランや目的に合った方法を選ぶことが大切です。
以下の表で代表的な資産形成方法を比較しました。
資産運用方法 | 新NISA | iDeCo (個人型確定拠出年金) | 個人年金保険 | 投資信託 | REIT |
---|---|---|---|---|---|
こんな方におすすめ | ・柔軟に資金を活用したい方 ・複数の金融商品に投資したい方 ・60歳前に資金が必要になる可能性がある方 | ・節税しながら老後資金を準備したい方 ・強制的に貯蓄する仕組みが欲しい方 ・安定した収入がある方 | ・安全性を重視する方 ・老後の収入を定期的に得たい方 ・投資の知識が少ない方 | ・自由に資金を運用したい方 ・積極的に資産を増やしたい方 ・投資経験を積みたい方 | ・不動産への投資に興味がある方 ・比較的高い分配金を求める方 ・資産分散を図りたい方 |
メリット | ・運用益が非課税
・いつでも引き出し可能 ・投資可能商品が豊富 ・最大1,800万円まで非課税枠がある | ・掛金全額が所得控除 ・運用益が非課税 ・受取時にも税制優遇あり ・複利効果が大きい | ・元本割れリスクが低い ・受取時の税制優遇あり ・生命保険料控除を受けられる | ・いつでも売却可能 ・少額から始められる ・運用の自由度が高い ・商品選択の幅が広い | ・実物不動産より少額で投資可能 ・比較的高い分配金利回り ・株式とは異なる値動き |
デメリット | ・所得控除はない ・自己責任で商品選択が必要 ・投資期間が終了すると課税口座に移行 | ・原則60歳まで引き出せない ・途中解約不可 ・運用商品が限られる ・手数料がかかる | ・運用利回りが低い ・途中解約すると元本割れの可能性 ・掛金の柔軟な変更が難しい | ・運用益に約20%の税金がかかる ・元本保証がない ・商品選択の知識が必要 | ・不動産市況の影響を受ける ・運用益に課税される ・銘柄選択の知識が必要 |
資産形成にはそれぞれ特徴があり、最適な方法を選ぶにはメリットとデメリットの理解が欠かせません。
iDeCoで月1万円の積立をする際のポイント

ここからは、iDeCoで月1万円の積立をする際のポイントを解説します。
iDeCoに加入するだけで十分に節税効果が期待できますが、可能な限りで利益を最大化させるためにも、ポイントを意識して運用しましょう。
自分の加入区分を確認する
iDeCoで月1万円の積立をする際のポイントの1つ目は「自分の加入区分を確認する」ことです。
iDeCoは、加入者の職業や資格によって月ごとに拠出できる限度額が決まっています。まずは自分の加入区分を確認しましょう。それぞれの加入区分における限度額は次の通りです。
- 第一号被保険者(自営業)…6.8万円
- 第二号被保険者(会社員・公務員)…1.2万円~2.3万円
- 第三号被保険者(専業主婦)…2.3万円
退職金がなく、老後資金を準備する必要性が高い自営業者は、他の職業と比べて限度額が多めに定められています。
ただし、将来受け取りたい額から毎月の掛金を計算しても、掛金の上限額を超えられないので、注意が必要です。
60歳時点での希望貯蓄額を考える
iDeCoで月1万円の積立をする際のポイントの2つ目は「60歳時点での希望貯蓄額を考える」ことです。
60歳の時点でどれぐらいの老後資金を準備したいかを考えてみましょう。ポイントは、iDeCoだけでなく他の金融商品(預金など)と組み合わせて、どれだけiDeCoで資金を準備しておきたいのかを設定することです。
たとえば、20歳の人が、60歳までに預金とiDeCoでそれぞれ1,000万円ずつ、合計2000万円の資金を準備すると仮定します。iDeCoで1,000万円を準備するためには、月額10,800円を年率3%で運用すれば達成可能です。
このように、60歳の時点でどれぐらいの老後資金を準備したいかを考えることで月々の拠出額が明確になります。
現在の積立ペースでの想定貯蓄額を求める
iDeCoで月1万円の積立をする際のポイントの3つ目は「現在の積立ペースでの想定貯蓄額を求める」ことです。
人生にはさまざまなライフイベントがあることに加え、急な出費でお金が必要になることもあります。
そこで、手元にどれだけのキャッシュを残しておきたいかを考えてから掛金の金額を決める方法があります。1か月にどれほど拠出できるかを考えて、老後資金形成の準備を始めましょう。
自身の拠出可能額で運用を続けた場合の最終的な貯蓄額は下記の計算式で求められます。
最終積立額=毎月の掛金×運用期間(12カ月)×年金終価係数(想定利回り)
定期的に積立プランを見直す
iDeCoで月1万円の積立をする際のポイントの4つ目は「定期的に積立プランを見直す」ことです。
iDeCoの掛金金額は、収入やライフスタイルの変化に応じて、定期的に積立プランを見直しましょう。iDeCoの開始当初は、少なめの金額でスタートするのがおすすめです。年齢を重ねて収入が増加したタイミングで、掛金の増額を検討するのも手です。
また、開始当初は手数料が低い銘柄でスタートして、資金に余裕ができた際に、手数料は高いが大きいリターンを狙える銘柄にシフトする方法もあります。
ほかにも、次のような戦略が考えられます。
- 独身や共働きで余裕があるときは1万円以上で運用し、住宅ローンなどでキャッシュが必要になったら拠出額を減らす
- セカンドライフが近づき年収も上がりやすい50代は、思い切って上限額を拠出して、より大きい節税効果を享受する
拠出額を変更できるのは「1年に1回」である点に注意が必要です。
【まとめ】iDeCoで月1万円の積立は意味ないと言われる理由

iDeCoの月1万円積立が「意味ない」と言われるのは、老後資金として不足しやすく、節税メリットが小さいうえに手数料の影響が大きいためです。
ただし、長期運用による複利効果や投資習慣を身につける第一歩として月1万円からのスタートには意味があります。
無理のない金額で始め、徐々に増額もできます。掛金の全額所得控除・運用益非課税・受取時の控除といった、3つの税制優遇が少額でも受けられる点もメリットの1つです。
iDeCoは内容が複雑なため、迷ったときはマネーキャリアの無料FP相談を活用すると安心です。満足度98.6%、相談実績100,000件以上の実績があり、iDeCoの仕組みや節税効果を丁寧に解説してくれます。何度でも無料相談が可能で、あなたのライフプランに合わせた最適な資産形成方法を提案してもらえます。
マネーキャリアなら、月1万円の積立が本当に意味ないのか、あなたに最適な方法は何かを専門家と一緒に見つけられるでしょう。
