最新のデータでは老後資金に2000万円は不要と言われています。夫婦世帯、一人暮らしによって必要な老後資金は変わりますが、若いうちから貯金をすることが重要です。今回の記事では、年代ごとの貯金のコツについても紹介していますので、参考にしてください。
監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。
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最新データでは、老後資金は不要って本当?
「老後2000万円問題」とは、2019年に金融庁からの報告書により、老後の30年間で2000万円が足りなくなると公表された問題のことです。
しかし、総務省が2020年に行った家計調査では、2000万円不足ではなく、収支が黒字になる計算となりました。
公的年金の収入増加したことに加え、コロナウイルスの影響による自粛期間で、外出などが減ったことにより支出の減少したことが原因だと考えられます。
具体的な金額について、夫婦二人世帯と一人暮らしの場合に分けて見てみましょう。
夫婦二人世帯の場合
まずは、夫婦二人世帯の場合の老後資金の収支額を見てみましょう。
実収入 | 256,660 |
---|---|
可処分所得 | 225,501 |
消費支出 | 224,390 |
差し引き | 1,111 |
参照:https://www.stat.go.jp/data/kakei/2020np/gaikyo/pdf/gk02.pdf
上記の表を見てわかる通り、毎月1,111円の黒字となっています。
高齢者は特に、コロナ禍での外出が減ったため、消費支出が大きく減少した結果、毎月の収支が黒字になっていると考えられます。
この結果から、老後に2000万円不足するという考え方が改められています。
一人暮らしの場合
次に、一人暮らしの場合の老後資金の収支額を見てみましょう。
実収入 | 136,964 |
---|---|
可処分所得 | 125,423 |
消費支出 | 133,146 |
差し引き | ▲7,723 |
参照:https://www.stat.go.jp/data/kakei/2020np/gaikyo/pdf/gk02.pdf
一人暮らしの場合は、夫婦世帯と比べると毎月7,723円の赤字となっています。
7,723円×12か月×30年=2,780,280円
30年間で約270万円不足する計算になりますが、これまで2000万円不足すると言われていた老後2000万円問題と比較すると、老後に不足する額が大きく減る結果となっています。
なぜ老後資金に2000万円必要と言われていたのか
そもそも、なぜ老後資金に2000万円という大金が必要な計算となったのでしょうか。
2000万円という金額が算出された前提条件は以下の通りです。
- 夫の年齢が65歳で妻の年齢が60歳
- 夫婦ともに働いていない
- 老後30年後まで健在でいること
上記の条件が当てはまる際に、老後資金に2000万円が必要だと言われていました。
先ほど、2020年に総務省が行った家計調査についてのデータを解説しましたが、2017年に行われた同調査では、毎月55,000円の赤字になる計算でした。
55,000円×12か月×30年=19,800,000円
この計算式を見てわかる通り、老後30年間で合計約2000万円が不足します。
これこそが、「老後2000万円問題」が発表された根拠となる数字です。
しかし、前述したとおり、2020年の調査結果では不足金額が大きく減少しているので、現在では考えが改められています。
年代別2000万円の貯め方
老後資金2000万円を準備するには、下記の金額を毎月貯金しないといけません。
60歳までに2000万円 | 65歳までに2000万円 | |
---|---|---|
22歳から貯金 | 48,859円 | 38,759円 |
30歳から貯金 | 55,555円 | 47,619円 |
40歳から貯金 | 83,333円 | 66,666円 |
50歳から貯金 | 166,666円 | 111,111円 |
当然ですが、若いうちから2000万円に向けて貯金を始めた方が、月々の負担額は減ります。
どの世代にも共通している貯金をする工夫は以下の3つです。
- 節約する
- 副業で収入を増やす
- 投資などで資産運用する
貯金をするには、支出を減らすことと、収入を増やすことが大切です。
支出を減らすために、主に携帯代やサブスクリプションなどの固定費から見直すようにしましょう。
会社員の給料では生活費を賄い、副業で得た収入で投資などの運用をすることで、老後の資金を増やしていくことができます。
それでは、年代別の老後資金2000万円の貯め方について、詳しく見ていきましょう。
- 20代
20代から老後資金2000万円を準備するには、月々4万円~5万円程度の貯金が必要です。
20代のうちは収入が低く、貯金に回せるお金も多くないですよね。
しかし、若いうちから貯金を始めるからこそ、長期で運用できる投資法を取り入れることが有効です。
老後資金2000万円に向けて、税金面で優遇されるiDecoやつみたてNISAを取り入れ、長期的な目線で資産を増やしていきましょう。
iDecoが途中解約ができない点には注意が必要です。
- 30代
30代から老後資金2000万円を準備するには、月々5万円~6万円程度の貯金が必要です。
30代になり結婚して家庭を持つと、住宅ローンや車のローンなど、20代と比べると支出が増えてきます。
子供が小学生にあがるまでに、教育費や老後資金を貯めるのがおすすめです。
30代からでもiDecoやつみたてNISAは有効ですが、万が一の時の保障もされる変額保険を視野に入れておきましょう。
- 40代
40代から老後資金2000万円を準備するには、月々7万円~9万円程度の貯金が必要です。
40代では、教育費がかかる家庭が多いでしょう。
会社員で役職などがつき、収入が増える一方で支出が多くなる年代です。
これまでに紹介したiDecoやつみたてNISAは、生活に支障をきたさない範囲で活用しましょう。
- 50代
50代から老後資金2000万円を準備するには、月々11万円~17万円程度の貯金が必要です。
50代からの老後資金準備では、iDecoは運用期間が短く、保険商品では死亡率があがり貯蓄性が低くなるため、つみたてNISAの運用がおすすめです。
つみたてNISAでは最大20年間の運用益が非課税になる制度なので、有効に活用していきましょう。
まとめ
老後2000万円問題は、老後の30年間で2000万円が足りなくなると公表された問題のことですが、最新のデータでは異なる数値が出ています。
しかし、豊かな老後生活を送るためにも、若いうちから正しい方法で貯金や投資をすることが大切です。
正しい方法がわからない場合は、お金のプロに相談をしてみるのも選択肢の一つです。