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親の経済状況によって、こどもの医療保険へ加入する必要性は大きく異なります

自治体による医療費助成制度があるため、必ずしも加入する必要はないこどもの医療保険ですが、健康保険が適用されない医療費や付き添いによる経済的なダメージも考えておくことが大切です。

この記事では、「こどもの医療保険は必要なのか」という疑問について、詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

▼この記事を読んでほしい人
  • こどもの医療保険への加入で悩んでいる人
  • 医療保険への加入が必要かどうかを判断するデータを知りたい人
  • こどもの医療保険は必要ないと考えている人
▼この記事を読んでわかること
  • こどもの医療保険の必要性が低いと言われる理由がわかる
  • こども保険への加入が必要となるケースについて知ることができる
  • こどもが入院した場合の自己負担額や加入率などのデータを知ることができる

こどもに医療保険が必要かと悩む人に向けて、この記事ではこどもの医療保険について詳しく解説しています。親の経済状況によりこどもの医療保険の必要性は大きく変わりるため、様々なデータをもとに、保障内容や保険料、加入の必要性について検討するようにしてください。

この記事の目次

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こどもの医療保険の必要性は比較的薄い


家庭の環境などにも大きく影響されますが、こどもの医療保険へ加入する必要性は、一般的に低いと考えられています。


こどもの医療保険が必要ないと考えられる理由

  1. 入院する確率の低さや、入院期間が短期間となる傾向が高い
  2. 自治体の実施する医療費助成制度が、手厚い場合が多い
  3. 保育園や幼稚園で、共済などに加入するケースが多い

逆に18歳以上になると、将来のことを考えて保険料が安いうちに終身医療保険へ加入しておくという考え方もあります。

なぜこどもの医療保険へ加入する必要性が低いのかという理由について、1つずつ詳しく解説します。

理由①子供が入院する確率は低く、入院日数も短いことが多い

こどもは外来による医療を受ける可能性は高いですが、入院する可能性は低く、もし入院しても短期間で退院するケースが多くなっています。


厚生労働省「令和2年(2020)患者調査の概要」によると、こどもの受療率は以下のとおりです。

人口10万人あたり入院外来
0歳1,0657,296
1~4歳1346,327
5~9歳714,816
10~14歳993,313
15~19歳1232,178

また、こどもが入院した場合の期間は、大人に比べて非常に短くなる傾向があり、入院により医療費が高額となるリスクは高くないと言えるでしょう。


「傷病分類別にみた年齢階級別退院患者の平均在院日数」によると、総数が32.3日と比べた場合、各年齢別の入院期間は以下のとおりです。

  • 0~14歳:8.9日
  • 15~34歳:12.2日
  • 35~64歳:24.4日
  • 65歳以上:40.3日
  • 70歳以上:41.7日


これらのことから小さなこどもの場合、高額な医療費に備える必要性は低く、医療保険へ加入が必ずしも必要とは言えないのです。

理由②医療費助成制度が手厚い自治体が多い

医療保険への加入を必要とする最大の理由は、高額となってしまった医療費を少しでも補填するためです。


しかし医療費助成制度を利用できるこどもは、医療費が高額となるケースが少ないため、医療保険に加入する必要性が低いと言えます。


日本では子供に対する医療費助成制度が充実しており、市町村から発行される「乳幼児等・こども医療費受給者証」を医療機関へ提示することで、医療費の自己負担を軽減することができるのです。


厚生労働省「令和3年度 乳幼児等に係る医療費の援助についての調査について」によると、都道府県による助成は入院・通院ともに就学前まで市区町村による助成は入院が18歳年度末、通院が15歳年度末までというケースが、一番多く採用されています。


自治体により所得制限や自己負担額の有無について違いはありますので、医療費助成制度だけでは医療費のリスクに備えられないという場合には、医療保険の検討をするようにしましょう。

理由③幼稚園・保育園などですでに共済に加入している場合も多い

こどもが幼稚園や保育園へ入園すると、もしもの場合に備えて園児総合補償共済制度などに加入をすすめられたり、加入が必須となるケースがあります。


園児総合補償共済制度で補償される内容は、一般的に以下の通りです。

  1. 怪我、熱中症、細菌性食中毒、特定感染症などに対する補償
  2. 園児や家族の個人賠償責任補償
  3. 親が重度の後遺症を負った場合に育英費用保険金を補償

怪我に対する補償がメインとなり、様々な特約を付加して幅広いリスクに備えることができます。ただし損害保険であることから、特定感染症以外の病気に対しては補償の対象外となることには注意が必要です。

園児総合補償共済制度に加入したうえで医療保険に加入すると、重複してしまう内容が多くなるため、無駄な保険料が発生してしまわないように検討しましょう。

18歳以降に安い保険料で終身の医療保険に入っておくのはあり

終身医療保険のメリットは、一生涯保険料が変わらないという点です。若ければ若いほど、保険料が安くなります。


こどもが将来、終身保険へ加入することを踏まえるなら、加入が可能となる年齢になったら、加入を検討してみても良いでしょう。


ただし、気を付けておきたいのは以下のポイントです。

  • 加入時の保障内容が一生継続するため、保障の見直しが難しい
  • 定期医療保険に比べて、終身医療保険の方が保険料が割高
  • 新しい特約が出ても、付加できない可能性がある

終身保険とは違い、終身医療保険は一般的に掛け捨てとなっていることが多いですが、こどもの将来のために早くから医療保険を準備しておきたいなら検討する余地はあるでしょう。

ただし、解約返戻金のある終身医療保険に加入する際は、税金について注意が必要です。

子どもが成人し親からこどもへ契約者を変更した場合、こどもがなんらかの理由で解約すると解約返戻金に対して税金が課せられます。
  • 親が保険料を支払っていた期間の解約返戻金に対しては贈与税
  • 名義変更後にこどもが保険料を支払った期間の解約返戻金に対しては所得税

こどもが将来解約しなかったり、解約返戻金のない医療保険に加入していると、こうした税金に対する心配の必要はありません。

医療保険の必要性が高い子ども


一方で、どもの医療保険への加入において、必要性が高い場合もあるので詳しく紹介します。

  1. 重篤な疾患を患った場合、治療の選択肢を増やしてあげたい場合
  2. 遺伝的な持病を抱える可能性がある場合
  3. こどもが入院した場合、付きっきりで看護したあげたい場合

これらは、健康保険による医療費助成制度を利用しても、自己負担が大きくなってしまうことが考えられるため、こどもの医療保険への加入を検討した方が良いと言えるのです。

万が一重い病気にかかった場合に、こどもの治療の選択肢を増やしてあげたい方

健康保険が適用となる医療なら、自治体がおこなう医療費助成制度を利用することができますが、先進医療など健康保険適用外の自由診療は、この制度を利用することができません。


つまり、自由診療となる治療を受けるためには、こどもであっても多額の医療費が必要となるのです。


こどもの通院や入院の付き添いにより、収入が減ってしまうリスクもあるため、自己負担や経済的リスクが考えられるなら、医療保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか。


医療保険の種類によっては、主契約に先進医療保障がセットされている場合もあれば、特約として付加する必要がある場合もありますので、医療保険に加入するときは、よく保障内容を確認したうえで加入するようにしましょう。


厚生労働省「令和4年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」によると、83種類ある先進医療技術数のなかで、実際に先進医療にかかった費用の例が以下のとおりです。

先進医療技術名先進医療(平均)
幹細胞がんにる重粒子線治療350万円
腎移植15万614円
幹細胞がんによる陽子線治療160万円


がん治療に有効だと言われている重粒子線治療陽子線治療は、先進医療技術費用の自己負担が高額となるため、先進医療保障があれば安心して治療法の選択ができるようになります。

遺伝的に持病を抱えやすいと考えられるこども

こどもの疾患で多いのは、遺伝的な要素を持っていることが多く、なかでも遺伝子異常から発症する病気は7,000種類以上とも言われています。


近年では、家族性高コレステロール血症が目立ち、500人に1人はこの遺伝子異常を持っており、LDL値が高ければ10歳を超えてから内服治療を受けることができるようになっています。


このように遺伝的な要素により、こどもが持病を抱えてしまう恐れがある場合、自治体の医療費助成制度が適用されなくなってからも、治療を継続する必要があります。


持病があると医療保険へ加入する際の告知で、保険会社から加入を断られてしまうため、早めに医療保険へ加入しておくべきだと言えるでしょう。


こどもの期間は医療費の自己負担は軽減されますが、大人になってから発症する場合も考えられるため、遺伝的な持病が心配だと考えているなら、生涯保険料が変わらない終身医療保険を検討してみてはいかがでしょうか。

こどもが入院した場合、付きっきりで看病してあげたい方

こどもが入院しても医療費助成制度が適用されることにより、医療費を軽減することはできますが、医療費以外を補填する制度はありません


  • 入院している間は付きっきりで看病してあげたい
  • 毎日顔を見に病院へ行ってあげたい
  • 面会時間は、ずっと一緒にいてあげたい
このように思う親は多いですが、専業主婦(夫)でなければ付きっきりの看護は非常に難しいと言えます。

仕事を持っていると入院期間だけでなく、自宅療養となった場合も看護が必要となり、収入減につながるリスクが高くなります

今後の治療などにも備えるため、減収による生活費を預貯金で賄うことができない場合には、医療保険へ加入しておくことで、こどもが入院した場合の減収に備えることもできるのです。

たとえば入院給付金が支払われても、給付金の用途について制限はありません。医療費に使っても生活費に使っても問題はないのです。

そのため、ひとり親や共働きの親は、こどもの医療保険へ加入するケースが多くなっています。

医療保険がいらないこどもは?

医療保険への加入が必要ないと言えるこどもは、親の貯蓄額や収入によって大きく異なります。

  • 入院時の差額ベッド代や食事代
  • 先進医療における技術料
  • 収入が減ることにより生活費へのダメージ
これらの負担が医療保険の力を借りることなく、貯蓄や収入で賄うことができるなら、医療保険への加入は必要ないと言えるでしょう。

負担が必要となる医療費の目安を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

医療費の自己負担必要とする金額の目安
入院時の差額ベッド代1日あたり平均6,354円
入院時の食事代1食あたり460円
先進医療による技術料技術種類によっては100万円単位


例えば、こどもが10日間の入院をした場合、差額ベッド代と食事代は健康保険の適用外となるため、医療費とは別に約77,340円の自己負担が必要となります。


この金額に、居住する自治体やこどもの年齢ごとに定められた医療費の自己負担額が発生することになります。


こどもの看護により減収となった場合は、生活費へのダメージも考えておく必要があるのです。


総務省統計局「家計調査2022年(令和4年)平均」によると、2人以上の世帯では1か月の生活費平均が約29万円です。


たとえこどもの医療費に対する自己負担がなかったとしても、10日の入院や1か月間の生活費を考えると、約37万円の費用と貯蓄でカバーする必要があることを覚えておきましょう。


看護のための通院費用や入院により必要となる備品購入などを含めると、さらに自己負担は多くなります。


もちろん、家庭ごとに生活水準が違うため一概には言えませんが、これらの費用を貯蓄で賄うことができるなら、医療保険への加入は必要ないと言えるでしょう。

こどもが医療保険に加入するか判断するうえで参考になるデータ


こどもの医療保険が必要なのかどうか、判断に迷ったときに参考になるデータを紹介します。

  • こどもの保険加入は、どれくらいの人が考えている?
  • こどもの保険加入は、どれくらいの加入率は?


日本生命文化センターでは、様々な保険に関する情報を定期的に調査しているため、保険を検討するうえでは、非常に役立つデータが揃っていますので、ぜひ参考にしてみてください。

子どもを保険に加入させようと考えている人の割合

生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、就学前や就学中の子どもに対する保険加入への意識調査では、20.1%の方が加入が必要だと考えていることがわかります。


こどもの保険に加入しようとしているひとのうち、保険で必要だと考える保障内容の上位は、以下のとおりです。

  1. 病気や怪我の治療・入院に備えたい【58.1%】
  2. こどもの教育・結婚資金に対する準備【54.5%】
  3. 病気や災害、事故による万が一の場合の保障【43.1%】


医療費助成制度は、各自治体で適用される年齢に上限が設けられています。都道府県で一番多くされているのは就学時まで、市町村では15歳未満が多くなっています。


こどもの医療保険に加入しようとするタイミングは、制度が利用できなくなった時点と考えているひとが多い傾向にあります。

こどもの保険の加入率

どれくらいのこどもが保険に加入しているのかを知りたいなら、生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国調査」による「生命保険(個人年金保険を含む)の加入状況」を参考にすることができます。


未就学児および就学中のこどもの保険加入率は、全生命保険を対象とした場合は46.7%

なっており、加入機関ごとの加入割合は以下のとおりです。

加入機関加入割合
民間保険19.3%
かんぽ生命4.7%
簡易保険1.8%
JA2.9%
県民共済や生協など18.1%


全生命保険を対象とした場合の、世帯ごとの加入率は40歳以上から多くなっています。

  • 29歳以下:24.5%
  • 30~34歳:37.7%
  • 35~39歳:35.3%
  • 40~44歳:49.0%
  • 45~49歳:56.1%
  • 50~54歳:54.7%
  • 55~59歳:43.3%

年代別による分母数の違いも少なからず影響していると考えられますが、全体平均でも42.9%のひとが、こどもの保険に加入していることがわかります。

こどもの医療保険の選び方


こどもの医療保険
に加入しようとする場合、保障内容や保険料など、どれくらいに設定すれば良いのか悩んでしまうことが多くあります。


教育資金や結婚資金などを準備するためには、医療保険に高額な保険料を支払うことは難しいため、ポイントを押さえて加入する医療保険を選ぶことが大切です。

  • こどもが保険に加入する目的を明確にする
  • 必要とする保障内容について、特約を検討する
  • ニーズに合った医療保険を選別し、保障内容や保険料について数種類を比較する


特に重要なことは複数の医療保険を比較することですが、保険の知識を持たずに比較すると重要ポイントを見落としてしまう場合や、そもそも類似した医療保険を複数探すことが困難というケースも多くあります。


保険商品の比較で困ったときには、マネーキャリアの医療保険比較ページを使うことで、簡単に比較できる医療保険を探すことができるのでおすすめです。


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医療保険以外でこどもに医療保障をつける方法



こどもの医療費に備えたい場合、医療保険への加入以外で医療保障を持つ方法があります。

  • 学資保険に医療特約を付加する
  • 障害保険に加入する
  • 親が加入する保険に特約を付加する

効率的にこどもの医療保障を準備することができますが、気をつけておくべきポイントがあります。

それぞれについて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

学資保険に医療特約を付ける

こどもの将来のための貯蓄として利用されることが多い学資保険にも、特約を付加することで医療保障を持つことができます


ただし以下の点には注意が必要です。

  • 医療特約は掛け捨てとなるため、元本割れを起こす可能性がある
  • 医療保険の保障内容比べると、限定的な保障となる
  • 保険料払込免除が適用されても、医療特約の保険料が必要となるケースが多い
  • 満期と同時に、医療特約も消滅する

一般的に学資保険に付加できる医療特約は、入院や手術といった最低限の保障となります。また、主契約である学資保険が満期を迎えると、特約である医療保障は満期とともに効力を失います

「先進医療や通院など幅広い保障内容から選択したい」
「こどもが大人になっても、医療保険を継続できるようにしておきたい」

このように考えるなら、医療保険への加入をおすすめします。

傷害保険に加入する

怪我に対するリスクに備えておきたいなら、傷害保険に加入する方法があります。ただし病気を原因とする医療費は保障の対象外となるので、注意しておきましょう。


傷害保険では、入院だけでなく通院に対する保障にも備えることが可能です。医療保険では通院保障がない、もしくは入院を伴う通院のみ保障となるため、こどもの怪我が心配なひとにはおすすめです。


注意しておくべきことは、保障となるのは「偶然、突発的に起こった事故」により怪我を負った場合のみです。


事故を起こす可能性が高い行動、怪我をすることが安易に予測できた行動が対象となるので、たとえば靴擦れや骨折中のサッカーなどは保障の対象外となるので、注意しておいてください。

親の保険に特約を付ける

親が加入している生命保険があれば、特約を付加することにより、新たにこどもの医療保険へ加入する必要はなくなります


保険は加入ごとに、目には見えない手数料がかかっています。加入件数が増えれば増えるほど、無駄な保険料が増加してしまうことに繋がるのです。


ただし、あくまでこどもの保険は親の保険に特約として付随するものであるため、解約や失効となった場合は、主契約と同時にこどもの医療保障も消滅します。


こどもが成長し、幅広いリスクに備えるために保障を見直す場合は、医療保険に加入する必要があることも覚えておいてください。


しかしながら、子育て中はなにかと経済的な負担が大きくなりがちなので、保険料を抑えたいという場合には、有効的な方法だと言えるでしょう。

まとめ:こどもに医療保険は必要?

自治体ごとにこどもの医療費助成がおこなわれているため、必ずしも医療保険への加入が必要とは言えません


しかし、健康保険が適用されない先進医療や入院時の自己負担、看病による生活費へのダメージを考えると、貯蓄ではカバーしきれない場合も考えられます。


こどもに医療保険が必要かどうかは、親の経済状況などによって大きく異なるため、医療費や生活費の具体的な例などを参考にしながら、検討することが大切だと言えるでしょう。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。