- 60代で医療保険へ加入するべきか悩んでいる人
- 医療保険の必要性について知りたい60代の人
- どんな場合に医療保険が必要になるのか知りたい60代の人
- 60代にとって医療保険の必要性が低くなるケースがわかる
- 医療保険が必要となる60代はどのような人なのかがわかる
- なぜ60代にとって医療保険が必要なのかを知ることができる
60代は医療保険に加入する必要性があるのか悩んでいる人に対して、医療保険の必要性がある60代や医療保険へ加入する必要がない60代などについて詳しく解説しています。年金生活となり老後資金が必要となる60代は、医療保険の加入はよく検討することが大切です。
監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。
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この記事の目次
60代の方の医療保険の必要性は比較的薄い
60代の人の医療保険への加入の必要性が低いと言われることがありますが、それは以下のような理由です。
- 60代で医療保険に加入すると、保険料が割高になる
- 公的医療保障制度があるので、医療保険の必要性が低い
- すでに医療保険に加入している人は解約する必要性はない
理由①医療保険の保険料が割高
60代になってから医療保険に加入しようとすると、若い人と比べると保険料が高く設定されてしまいます。
60代後半になると、年金収入がメインとなる人も多く、保険料の負担が大きくなってしまうケースが多くあるのです。そのため、60代の方にとって、大きな保障を持つ医療保険は、加入の必要性が高いとは言えません。
しかしながら、病気や怪我などのリスクが高くなるのは60代からとも言われており、最低限の医療保険は必要だと考えられる場合もあります。
老後資金と合わせて医療費への備えが貯蓄などで不安がなければ、必ずしも年齢により割高な保険料となる医療保険へ加入する必要性はないと考えられるでしょう。
逆に貯蓄では医療費へのリスクに不安があるという人は、複数の保険商品をピックアップして、保障内容と保険料を比較しながら検討することをおすすめします。
理由②公的医療保険制度がある
病気や怪我により医療を受けても、日本では公的医療保険制度があるため、医療費の自己負担額を軽減させることができます。
60代を含め、医療費の自己負担額を超えた場合は高額療養費制度を利用することができるので、医療費のすべてを医療保険や貯蓄で賄う必要はないのです。
医療費の自己負担額の計算は以下のとおりです。(厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」参照)
年収による 適用区分 | ひと月ごとの上限額 (世帯合算) |
---|---|
約1,160万円以上 | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
約770~1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
約370~770万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
約370万円以下 | 57,600円 |
住民税非課税者 | 35,400円 |
また、65歳以上で障害を持っている場合は後期高齢者医療制度を利用することができるため、病院で支払う医療費を1割に抑えることができます。
ただし、現役並みの収入を得ている場合は通常通り3割の自己負担額となるので、所得の違いに注意しておきましょう。
すでに加入している人が解約する必要は薄い
すでに医療保険へ加入している人は、60代になってから加入するより、安い保険料で加入できているため、必要な保障であれば解約する必要性はありません。
公的医療保障が利用できると言っても、健康保険が適用される医療に対して保障されるだけとなっているたため、入院した場合の差額ベッド代や食事代には、自己負担が発生してしまいます。
特に60代になると、がんの罹患率も高くなるため、健康保険が適用されない先進医療を含む自由診療に対する保障を備えた医療保険なら、逆に継続しておいた方が良いと言えるでしょう。
ただし、若い頃に加入した医療保険を継続する際には、注意が必要です。
- 先進医療に対する保障がない
- 短期入院に対応していない
- 保障される手術種類が少ない
医療保険の必要性が高い60代の方
医療保険の必要性が高いのは、以下のような人です。
- 重篤な病気に罹患した場合、あらゆる治療を受けたい人
- 医療費を賄えるほどの貯蓄がない人
- 入院したときに、個室や少人数の部屋で療養したい人
重い病気にかかった場合にあらゆる治療を受けたい人
例えば、がん治療に有効的だと言われている陽子線治療などの先進医療を受けると、自己負担額は非常に高額となります。
国立がん研究センター東病院「先進医療」によると、患者の自己負担額は以下のとおりです。
先進医療技術名 | 自己負担額 |
---|---|
限局性固形がんに対する陽子線治療 | 294万1,000円 |
根治接受が可能な肝細胞がんに対する陽子線治療 | 160万円 |
シスプラチン静脈内投与及び強度変調陽子線治療の併用療法 | 214万5,000円 |
医療費の自己負担分を賄うほどの貯蓄がない方
入院した場合、治療費に対する費用は健康保険が適用され、自己負担額を軽減することができますが、完全に医療費をなくすことはできません。高額療養費を利用した場合でも、住民税が非課税世帯も含めて、医療費の自己負担額が発生します。
また入院を伴う療養が必要となった場合、60代になると長期化してしまうリスクが考えられます。
厚生労働省「令和2年(2020)患者調査の概況」によると、平均入院日数は以下のとおりです。
年代別(傷病総数) | 平均入院日数 |
---|---|
0~14歳 | 8.9日 |
15~34歳 | 12.2日 |
35~64歳 | 24.4日 |
65歳以上 | 40.3日 |
70歳以上 | 41.7日 |
入院日数が短期化傾向にあるとはいえ、35歳を超えると入院が長くなる傾向があり、60代半ばを超えると更に入院が長期化する可能性があります。
このような背景から医療費の自己負担に備え、自己負担額が貯蓄で賄うことができない場合は、医療保険への加入しておく必要性が高いと言えます。
個室や少人数部屋で入院したい方
入院が必要となった時には、ゆっくりと個室や少人数の部屋で療養したいという人は多く、特別療養環境室に入院した場合は、差額ベッド代が必要となります。
厚生労働省によると特別療養環境室に該当するのは、以下の項目に該当する入院施設です。
- 病室の病床数が4床以下であること
- 病室の面積が、1人あたり6.4平方メートル以上であること
- 病床ごとにプライバシーを確保するための設備を備えていること
- 少なくとも個人用の首脳設備、個人用の照明、小机および椅子を備えていること
日本の病院へ入院すると、ほとんどの場合これらに該当することになり差額ベッド代が発生することになります。
厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」によると、令和元年の差額ベッド代の自己負担額は以下のとおりです。
差額ベッド代 | 1日あたりの平均自己負担額 |
---|---|
1人部屋 | 8,018円 |
2人部屋 | 3,044円 |
3人部屋 | 2,812円 |
4人部屋 | 2,562円 |
これらを平均すると1日あたりの差額ベッド代の平均費用は6,354円です。
病院によっても差額ベッド代に違いがありますが、個室などでの入院を希望するなら自己負担額が多くなってしまう可能性が高くなりますので、医療保険へ加入しておいた方が安心だと言えます。
医療保険の必要性が低い60代の方
60代で医療保険に加入する必要性が低い人は、以下のような内容に該当する場合です。
- 医療費が高額になっても貯蓄で賄うことができる人
- 医療保険の保険料を支払うことが難しい人
医療費の自己負担分を賄える程度の貯蓄がある人
公的医療保障制度を利用しても、医療費の自己負担額は必要となりますが、その金額を貯蓄で賄えるという場合は、医療保険へ加入する必要性は低いと言えます。
たとえば、60代の方で24日間入院した場合、4人部屋に入院すると平均的な差額ベッド代だけで6万1,488円となります。
さらに食事代として1食あたり「標準負担額」に基づき460円が必要となるため、3万3,120円の自己負担額が必要です。
これらを合計すると24日の入院だけで約94,608円となり、個室に入院した場合は同じ入院期間でも22万5,552円が必要となります。
この自己負担額に、入院中や退院後の医療費が加わるため、高額な医療費に備えておく必要があります。
このような医療費を貯蓄で賄うことができる場合は、年齢により保険料が割高となる60代は、医療保険へ加入する必要性は低いと言えるでしょう。
保険料を支払う余裕がない人
60代の場合、医療保険に加入しようとすると保険料は高くなりがちで、年金収入から保険料を支払うことが大きな負担となってしまう場合が考えられます。
たとえば、ある保険会社の医療保険では、以下のような保険料が必要となります。
保険料例 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
60歳 | 11,488円 | 8,536円 |
65歳 | 15,032円 | 10,791円 |
69歳 | 17,412円 | 12,418円 |
夫婦二人で加入すると、毎月支払う保険料が家計を圧迫してしまうことも考えられます。
保険料と保障内容を比較しながら医療保険を検討し、保険料の支払いが困難な場合は、無理して医療保険へ加入する必要性はありません。
それよりも、老後と医療費の両方のリスクに備えて、貯蓄をしておいたほうが良いと考えられます。
60代の方が医療保険に加入するか判断するうえで参考になるデータ
60代の人が医療保険に加入するか判断に悩んだとき、生命保険文化センターの情報が役に立ちます。
1965年から3年ごとに一般家庭の生命保険加入状況を中心に調査が行われており、保険の加入率や入院日数など、様々な情報を知ることができます。
ここでは生命保険文化センターの情報をもとに、以下の内容について解説します。
- 60代の医療保険の加入率
- 60代の入院率
- 60代の平均入院日数
60代の医療保険の加入率
生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、60代の医療保険の加入率は以下のとおりです。
60代の医療保険加入率 | 加入率 |
---|---|
男性 | 75.4% |
女性 | 77.2% |
60代になると、医療保険と重複して預貯金でも医療費に備える人も増加傾向にあり、男性では51.9%、女性では49.1%の人が医療保障に備えていることがわかります。
保険料が高くなりがちな60代の人でも、やはり医療費に備えて医療保険へ加入している人が多いという結果から、必ずしも医療保険に加入する必要はありませんが、万が一の高額な医療費に備えて、医療保険の必要性を考えることも大切だと言えるでしょう。
60代の入院率
60代が直近の入院時、どれくらいの期間入院していのかを知るには、生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」のデータを参考にすることができます。
過去5年間における年代別の入院経験の有無は以下のとおりです。
入院経験 | 入院経験あり | 入院経験なし |
---|---|---|
20代 | 9.9% | 89.9% |
30代 | 8.9% | 91.1% |
40代 | 10.9% | 89.1% |
50代 | 15.0% | 85.0% |
60代 | 20.2% | 79.7% |
70代 | 29.1% | 70.8% |
60代では20.2%、70代では29.1%の方が過去5年間に入院経験があり、そのうち高額療養費制度を利用した人は、60代で65.5%、70代で58.4%となっています。
60代の平均入院日数
60代の入院率と同様、生命文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」をもとに、60代の平均入院日数を調べて、備えておくべき医療費の参考にすることができます。
過去5年以内に入院した60代の入院日数は、以下のとおりです。
入院日数 | 割合 |
---|---|
5日未満 | 21.1% |
5~7日 | 23.9% |
8~14日 | 25.6% |
15~30日 | 18.3% |
31~60日 | 5.6% |
61日以上 | 5.6% |
これらのデータから、60代の平均入院日数は18.8日であることがわかります。
このようなデータから、実態に対する平均である60代の平均入院日数を基準に、医療費のリスクについて考えておくことが重要だと言えるでしょう。
60代の医療保険の選び方
60代で医療保険に加入する場合、保険料を重視することも大切ですが、検討する際には以下の流れで、複数の保険商品を比較するようにしておきましょう。
- 必要となる保障内容に応じて、付加すべき特約を決める
- 継続して支払うことができる保険料の目安を決める
- ニーズに合致する医療保険を複数ピックアップし、比較して検討する
まとめ
60代になると、病気や怪我のリスクが高まり、一度治療を始めると長期化してしまう可能性が高くなります。
貯蓄で医療費に備える方法もありますが、老後の資金と並行して医療費に備えることは難しいたため、医療保険への加入を検討する人も多い傾向にあります。
しかし、60代で医療保険に加入する場合、保険料が割高になる傾向が強く、保険料の捻出が困難となることも懸念されます。
年金生活となっても継続できる医療保険を見つけるためには、保障内容や保険料などについて、保険の専門家に相談することがおすすめです。
必ずしも医療保険へ加入する必要はありませんが、ご自身の医療保険への加入の必要性についても教えてもらうことができるので、ぜひマネーキャリアの無料保険相談を利用してみてはいかがでしょうか。