この記事の監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。
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この記事の目次
- 性同一性障害(GID・MTF・FTM)で生命保険に加入しにくいケースとは?
- 性同一性障害(GID・MTF・FTM)とは?
- 正直に告知しないと告知義務違反になる可能性がある
- 最終的な加入可否は保険会社により異なる
- 性同一性障害で保険に加入できるか不安な方は無料保険相談がおすすめ
- 性同一性障害の治療は健康保険の対象
- 保険適用される性同一性障害の手術内容
- 保険適用の際の制限事項
- 保険適用のための認定施設基準
- ホルモン療法との混合診療は保険適用になる?
- 性同一性障害の手術の保険適用件数はまだ少ない
- 結局GIDのホルモン治療が保険適用にならなければ治療費は高額になる
- 戸籍の性別変更には性別適合手術の実施が条件
- まとめ:性同一性障害(GID)の方は生命保険へ加入しにくい?告知義務違反になる?
性同一性障害(GID・MTF・FTM)で生命保険に加入しにくいケースとは?
性同一性障害(GID・MTF・FTM)の方で、生命保険に加入しにくいケースは、ホルモン剤を投与している場合です。
なぜならホルモン療法は、長期的な健康への影響が不明確であり、副作用のリスクも存在するため、保険会社が将来的な健康リスクがあると考える場合があるからです。
また、今投与していなくても、これから投与するかもしれないということで加入を断られるケースもあるため、確認が必要です。
加えて、ホルモン療法を行っている場合、性別適合手術は保険適用にならないため注意しましょう。
性同一性障害(GID・MTF・FTM)とは?
性同一性障害(GID)とは、個人の生まれつきの性別と自己認識する性別が一致しない状態のことです。
性同一性障害は英語では"Gender Identity Disorder(GID)"と呼びますが、近年、世界的に「病気ではない」とみなすことが進められ、名称が「性別不合(Gender Incongruence)」に変更されました。
性同一性障害(GID)のなかでも、「男性から女性へ」移行したいと考える人のことをMTFといい「女性から男性へ」移行したいと考える人のことをFTMといいます。
生まれたときに割り当てられた生物学的な性別(男性または女性)と、自己の性自認(男性、女性、あるいは他の性別アイデンティティ)が一致しない場合に発症します。
正直に告知しないと告知義務違反になる可能性がある
性同一性障害を抱える方が生命保険に加入する場合、性同一性障害であることや性別適合手術・ホルモン投与の有無を正直に告知する必要があります。
もし正直に告知しないと告知義務違反になる可能性があります。
告知義務違反になると、保険契約を解除されることになり、契約解除前に死亡や入院があった場合でも保険金や給付金は受け取れません。
保険契約解除された場合は、原則として保険解約返戻金相当額が返金されますが、告知義務違反が重大な場合は、解約返戻金が支払われない可能性もあります。
そのため、告知をする際には性同一性障害であることや治療状況などの正確な情報を伝え、誤った告知は必ず避ける必要があります。
最終的な加入可否は保険会社により異なる
性同一性障害の方が生命保険に加入するのは難しいと解説してきましたが、最終的な加入可否の判断は保険会社ごとに異なります。
性同一性障害の主な加入可否の判断基準は以下の通りです。
- 性同一性障害が生活に及ぼしている影響
- 性別適応手術やホルモン投与の有無
性同一性障害で保険に加入できるか不安な方は無料保険相談がおすすめ
性同一性障害で保険に加入できるか不安な方は無料保険相談がおすすめです。
保険会社によって加入条件が異なるため、自分に合った条件を理解するのは難しい場合があります。
保険の専門家に相談してみることによって、個人の状況に合った条件で保険会社を探すことができます。
とはいえ、保険の専門家(FP)に相談せず個人の判断で保険会社を選ぶと、条件が合わずに加入できないことや、告知義務違反によって契約解除になる恐れがあります。
そのため、少しでもわからないことがある場合には、一度マネーキャリアの無料のオンライン無料相談窓口を利用することがおすすめです。
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性同一性障害の治療は健康保険の対象
2018年(平成30年)4月1日から、性同一性障害の治療における重要な変化がありました。
それは、性同一性障害の手術療法が健康保険の適用対象となったことです。
以前は、性同一性障害に対する治療は主に精神療法に限られ、ホルモン療法や手術療法は健康保険の対象外でした。
しかし、現在は乳房切除術、性別適合手術に保険が適応されるようになりました。
ただし、ホルモン療法の履歴がある場合、手術治療は自費診療になるので注意が必要です。
保険適用される性同一性障害の手術内容
2018年(平成30年)4月1日から、性同一性障害の手術療法が健康保険の適用対象になり、具体的にどのような手術が対象になったのかを見ていきましょう。
保険適用される性同一性障害の手術内容は以下のとおりです。
- 乳房切除術
- 尿道形成手術の前部尿道
- 尿道下裂形成手術
- 陰茎形成術
- 陰茎全摘術
- 精巣摘出術
- 会陰形成手術の筋層に及ばないもの
- 造膣術、膣閉鎖症術の遊離植皮によるもの
- 造膣術、膣閉鎖症術の腸管形成によるもの
- 造膣術、膣閉鎖症術の筋皮弁移植によるもの
- 子宮全摘術
- 腔鏡下膣式子宮全摘術
- 子宮附属器腫瘍摘出術(両側)の開腹によるもの
- 子宮附属器腫瘍摘出術(両側)の腹腔鏡によるもの
これにより3割負担で手術が受けられることになりました。
ただし、脱毛や豊胸などは健康保険の対象手術ではありませんので、変わらず自己負担となります。
保険適用の際の制限事項
性別適合手術の保険適用には性同一性障害の治療における規制とガイドラインにより厳格な要件が施設基準とホルモン製剤の投与についての二軸で設定されています。
施設基準は以下のとおりです。
- 形成外科、泌尿器科、産婦人科を専門とする一般病床を有する病院であること
- 関連学会が認定する医師が少なくとも1名以上配置されていること
- 医科点数表に掲載された手術を合わせて20例以上実施していること
ただし、5年以上の経験を持つ医師が関連学会から認定されている場合は実績要件が緩和されます。
また、ホルモン製剤の投与については、薬事承認上の特定効能効果が認められていないため、従来どおりの取扱いが続けられます。
ただし、性別適合手術とホルモン製剤の投与を一体の治療としておこなう場合、通常は混合診療とされます。
保険適用のための認定施設基準
性同一性障害(GID)に関連する性別適合手術が保険適用されるためには、特定の認定施設基準が設けられています。
現行の基準により、認定施設は「病院」に限定され、診療所(クリニックなど)は対象外とされています。
病院として認定されるためには、20床以上のベッド数と医師や看護師の数に特定の基準が適用されます。
これらの基準は、日本精神神経学会のガイドラインに基づき、手術をおこなう際に入院可能な施設を必要とする規定に基づいています。
認定医は常勤である必要はなく、非常勤医師でも認定基準を満たすことができます。
認定施設の数は現時点では限られており、特に関東や関西など人口の多い地域には認定施設が存在しません。
しかし、安全な医療を確保するためにはこの基準が必要とされており、今後、認定施設が増えることが期待されています。
ホルモン療法との混合診療は保険適用になる?
性同一性障害(GID)の治療において、ホルモン療法と性別適合手術を一連の治療として実施する場合、保険適用に関する問題が浮上しています。
厚生労働省のガイドラインによれば、性同一性障害に対するホルモン製剤は薬事承認上、対象疾患とされておらず、そのためホルモン療法の保険診療上の取扱いは従来どおりとされています。
つまり、ホルモン療法は健康保険の対象外とされています。
一方、性同一性障害の治療においては、性別適合手術とホルモン療法を一連の治療として実施することが一般的です。
しかし、この場合混合診療とされ、保険診療と自由診療が組み合わされることになります。
この結果、健康保険の適用対象から外れ、ホルモン療法も自由診療として扱われるため、健康保険を用いて手術を受けることが難しくなります。
現行の制度においてはホルモン療法の保険適用が難しい状況です。
一連の治療が健康保険の対象になれば、より多くの患者が手術療法を受ける機会を得ることができるでしょう。
性同一性障害の手術の保険適用件数はまだ少ない
性同一性障害(GID)の性別適合手術は、保険適用される条件が厳格です。
現在、日本では性同一性障害の手術を受ける人々が保険適用を受けるのは限られています。これにはいくつかの理由があります。
まず、保険適用されるためには特定の病院条件を満たす必要があります。
形成外科、泌尿器科、産婦人科を専門とする病院であることが求められます。
さらに、関連学会が認定する医師が常勤または非常勤として配置され、一定の手術実績が必要です。
手術実績の条件を満たさない場合でも、経験豊富な医師が関連学会から認定されていれば例外が認められます。
性同一性障害の方々にとって、適切な性別適合手術を受けるためにはこれらの条件を満たす医療機関を見つけることが課題です。
今後、保険適用の条件緩和や医療の多様化が期待されていますが、現時点ではまだ制限が多い現状があります。
結局GIDのホルモン治療が保険適用にならなければ治療費は高額になる
性同一性障害(GID)の治療には性別適合手術とホルモン治療が含まれますが、現在の制度ではホルモン治療に対する保険適用が認められていません。
これが治療費用の高額化につながっています。
性同一性障害の方々にとって、ホルモン治療は性別適合手術に先立つ重要なステップであり、身体的な性別の一致を追求する上で欠かせません。
しかし、現行の医療保険制度ではホルモン治療に関する医療費は自己負担が必要で、保険の適用外です。
そのため、治療費用は患者自身やその家族にとって重い負担となります。
性同一性障害のホルモン治療の保険適用拡充が望まれています。
保険適用により、治療費用の軽減が期待され、GIDの方々が必要な医療をより手軽に受けることができるようになるでしょう。
戸籍の性別変更には性別適合手術の実施が条件
性同一性障害(GID)のある方が法的な性別変更を行うためには、性別適合手術を受けることが必要です。
現行の法律において、戸籍の性別を変更するには性別適合手術を実施し、それを証明する必要があります。
この制度は、性同一性障害の方々にとって法的性別と身体的性別を一致させるための一歩として位置づけられています。
しかし、性別適合手術は個々の状況や希望に合わせて選択すべきものであり、必須条件と感じる方々もいれば、選択肢の一つと考える方々もいます。
性同一性障害に関する法的制度は社会的な認知の向上とともに変化しており、将来的には性別適合手術が必須でない場合も考えられるでしょう。
一方で、法的性別変更に関する現行の要件を理解することも大切です。
まとめ:性同一性障害(GID)の方は生命保険へ加入しにくい?告知義務違反になる?
本記事では、性同一性障害(GID)の方は生命保険へ加入しにくいかについて解説してきました。
本記事の重要なポイントをまとめましたので、ご確認ください。
- ホルモン剤を投与している場合は生命保険に加入しにくい
- 正直に告知しないと告知義務違反になる可能性がある
- 加入条件は保険会社によって異なる
- 2018年(平成30年)4月1日から性同一性障害の手術療法が健康保険の適用対象
- ホルモン療法は健康保険の対象外
上記の通り、性同一性障害(GID)の方が生命保険に加入する際や保険金請求する際、いくつかのハードルがあります。
- 性同一性障害でも加入しやすい生命保険を探せる
- 自分の希望条件に合わせた最適な保険が見つかる
- 相談満足度98.6%のFPに何度でも相談できる