2022年10月頃に火災保険が変わる!その内容と今すべきことを解説のサムネイル画像

2022年10月頃に、火災保険が大きく変わると見られています。ポイントは火災保険料の値上げと保険期間の短縮です。そこで今回は、これらの変更点が具体的にどう影響するのか紹介します。今すべきことをもわかるので、ぜひチェックしてみてください。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

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火災保険料の10%前後値上げが予想される

火災保険料が10%程度値上げされることが予想されています。


具体的には、保険会社が火災保険料を決めるときに参考にする参考純率を算出する損害保険料率算出機構が、参考純率を全国平均で10.9%引き上げることを2021年6月16日に発表しました。


ただし、次の3点は勘違いしないようにしておきましょう。


  • すべての保険会社が直接採用するわけではない
  • 地域や建物構造、築年数などによっては35%ほどの値上げや14%ほどの値下げもある
  • 実際の保険料算定時は保険会社の事業経費分に相当する付加保険料率が加えられる

いつから値上げになるのかは保険会社次第ですが、一部保険会社では2022年10月1日からの変更が予定されているようです。

原因は自然災害の多発

参考純率の引き上げは、自然災害の多発が原因です。


損害保険料率算出機構は、改定の背景について「大規模な自然災害が発生しており、自然災害のリスクが高まっているため」だと説明しています。


実際、一般社団法人日本損害保険協会によると2017~2020年度で次のとおり風水災被害による保険金支払いがありました。




保険料率(純保険料率)は、契約者が支払う保険料と保険事故(災害)が起きたときに支払われる保険金(保険収支)のバランスで決まります。


保険事故(災害)が増えると、当然に保険料が上がるのです。

どのくらい保険料が上がりそうか

それでは、実際にどのくらい保険料が上がりそうか確認してみましょう。


保険金額が建物2,000万円で家財1,000万円とすると、建物構造や都道府県、築年数に応じた改定率の例は次のとおりです。


冒頭で紹介したとおり、実際の保険料の増減率を示したものではない点に注意してください。




出典:損害保険料率算出機構「火災保険参考純率改定のご案内 」


例えば、東京都の築5年未満の木造建物なら参考純率ベースで保険料は3.3%ほど上がりそうだと目安的な認識ができます。


なお、M構造やT構造、H構造とはそれぞれ次のとおりです。


  • M構造:耐火構造の共同住宅(一般にマンション)
  • T構造:M構造以外の耐火構造の建物など
  • H構造:M構造でもT構造でもない建物など(一般に木造)

割安な10年契約が廃止に


火災保険の契約期間で10年を選択できなくなるのも、保険料の改定と同様に大きな変更点です。


具体的には、参考純率の適用期間が従来の10年から5年に縮小されてしまいました。


保険料と同様、一部の保険会社では2022年10月1日以降からの変更が予定されています。


短縮された理由と具体的な影響を把握しておきましょう。

やはり自然災害の多発が理由

契約期間が5年に短縮された理由は、やはり自然災害の多発が理由です。


厳密には、10年という長いスパンでは自然災害リスクを適切に評価して保険料に織り込むことが難しくなってきたためだと説明されています。


特に平均気温の上昇など気候変動にかかる不確実性は高く、10年先の災害リスクの予測が困難と指摘されているところです。


もっとも、火災保険の契約期間はそもそも5年が主流です。




出典:損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況 2020年度版」


地震保険の最長契約期間が5年であることから、火災保険と地震保険の契約期間を同じにしたいという背景もあるかもしれません。

保険料の総支払額が増える

契約期間が10年から5年に短縮されたことで、保険料の総支払額が増えることがあります。


損害保険で1年を超える契約を長期契約と呼び、長期契約の保険料を一括払いするときは、一定の割引率がある長期係数が適用されます。


10年契約なら年間保険料に10(年)を掛けて一括払い保険料を計算するのが自然ですが、例えば長期係数として9を掛けることがあるのです。


割引率は保険会社や金融市場の動向によって異なりますが、目安として示すと3年で10%、5年で14%、10年で18%です。


契約期間が短いほど割引率も低いため、契約期間短縮により保険料が割高になってしまいます。


もっとも、保険期間5年が終わって更新する際に保険料が値下がりしていればその恩恵を受けられますが、自然災害リスクの低下を過度に期待するのは避けるべきでしょう。

加入している人が今しておくべきこと

火災保険に加入している人が今しておくべきことは次のとおりです。


  • 改定までに10年契約を結び直す
  •  今の保険の内容を見直す
具体的にどうすれば良いか紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

改定までに10年契約を結び直す

保険料が改定される前に、10年で契約を結び直すことを検討してみましょう。


保険会社が火災保険料の改定を実施する前なら従来と同様に10年契約も可能です。


つまり、値上がり前に安めの保険料で10年間固定することを目指します。




ただし、山口県の木造建物など改定で値下げとなる場合もあります。


後述する保険内容の見直しとあわせて、保険料の見積もりを確認しておきましょう。


なお、既存の保険契約を解約するときは保険料の払込方法に応じて解約返戻金(未経過期間の保険料)を受け取れることがあります。


ただし、例えば残り半分の保険期間を残して解約しても、解約返戻金は半額よりも少なくなることが一般的ですので注意しておきましょう。

今の保険の内容を見直す

保険料改定と直接は関係しませんが、この機会に保険の内容を見直してみてはいかがでしょうか。


例えば次のような点をチェックしてみてください。


  • 免責金額(自己負担額)を設定するかどうか検討する
  • 10年契約にしていないのであれば10年契約を検討する
  • 他の保険会社の火災保険を検討する
  • 水災や水濡れ、盗難、破損・汚損などの補償が必要か検討する
  • 家族構成などを考慮し家財保険の保険金額が適切か検討してみる
  • 個人賠償責任補償が重複していないか確認する
もっとも、補償が必要かどうかについては判断が難しいでしょう。

また、10年契約なら保険料が安いと言っても、お金に余裕がないのに無理して一括払いするのは避けるべきです。

保険の見直しが難しいと感じたら、専門家に相談することをおすすめします。

改定前に火災保険の見直しをしよう

2022年10月頃から火災保険が変わるということを紹介してきました。


主な変更点は、全国平均ベースで参考純率が引き上げ(一部引き下げ)られたことと、保険期間が10年から5年に短縮されたことです。


この記事で紹介した内容を参考にしつつ、ぜひこの機会に火災保険の見直しを検討してみてください。