監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。
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この記事の目次
iDeCo(確定拠出年金)の分散しすぎるデメリット
iDeCo(確定拠出年金)は、複数の商品に対して投資を行うリスク分散型の投資信託です。しかし、分散しすぎてしまうと利益を生み出しにくくなると言われているのをご存じでしょうか。
まずは、「iDeCo=たくさん分散した方が良い」という認識が間違いであることを理解していただくために、分散しすぎるデメリットを3つ解説します。
- 同じ値動きの資産同士を組み合わせても分散投資の効果が薄い
- 銘柄が増えると1銘柄あたりの投資金額が少なくなる
- ひとつひとつの金融商品の動向に目が行き届かなくなる
iDeCoの目的は、老後資金を貯めて生活を豊かにすることです。長期的な考えを持って動く必要があるので、分散しすぎないためにも、ひとつずつ見ていきましょう。
同じ値動きの資産同士を組み合わせても分散投資の効果が薄い
まず、iDeCo(確定拠出年金)のなかで分散投資を行う「メリット」は、ひとつ商品が大きな値値下がりを見せたとしても、異なる動きをする別の商品の値動きでカバーし、利益を減らさない部分にあります。
しかし、商品の分散先を増やしてしまうと、同じ値動きをしてしまう商品が重複する場合があります。
これからiDeCoを始めようとする人の中には、似たような投資先ばかり選んでいる人も多いと思います。しかし、それだとリスクを分散できません。
つまり、大きくマイナスが出た場合には、リスクを分散できずに損益を生み出してしまうのです。
iDeCoで分散投資を行い、しっかりと利益を生み出していくためには、値動きが異なる商品を選択していく必要があります。このとき、ただ沢山の投資先を選んで分散しすぎるのではなく、数を厳選し、必要最低限の商品で分散するのがオススメです。
銘柄が増えると1銘柄あたりの投資金額が少なくなる
iDeCo(確定拠出年金)は、あなたが今得ている収入の一部を使って、将来のための投資を行います。つまり、人によって収入が変わるため、投資限度額は人それぞれであり、銘柄の数が多ければ多いほど、1銘柄あたりの投資金額が少なくなります。
これに対して「別に問題なのでは?」と感じる人もいるでしょう。では、次のことを考えてみてください。
- 1銘柄に対して100万円を投資
- 1銘柄に対して50万円を投資
- 100万円の投資が500万円になる(400万円の利益)
- 50万円の投資が250万円になる(200万円の利益)
ひとつひとつの金融商品の動向に目が行き届かなくなる
投資商品を選んでiDeCoを運用するとき、定期的に対象銘柄の「評価額の上下」や今後値動きはどうなるかをチェックしておきたいという人もいるでしょう。
このとき、分散しすぎた投資を行ってしまうと、あなたがチェックすべきものが増えてしまいます。つまり、銘柄が増えれば増えるほどチェックに要する手間や時間が増えてしまうということです。
あまり投資信託について詳しくない人であれば、この状況は望ましくありません。
限られた時間内で一つひとつの銘柄を丁寧にケアしていく方がシンプルでわかりやすく、利益を出しやすくなるので、分散しすぎないように気を付けましょう。
iDeCo(確定拠出年金)を分散しすぎている人が投資で分散効果を高めるコツ
iDeCo(確定拠出年金)を分散しすぎている人は、分散しすぎない運用を行いましょう。
ですが、なかには投資信託について詳しくない人も多いはずです。とくに、商品の選び方のノウハウを知らない人もいるでしょう。
ここでは、分散しすぎている人向けに、iDeCoの分散効果を高めるコツを3つ紹介しています。
- 現金買付余力を20~30%以上残し、資金が100万円以内なら1~2銘柄
- 値動きが異なる2つ以上の資産を組み入れるようにする
- 時間分散によって購入単価を平均化する
①現金買付余力を20~30%以上残し、資金が100万円以内なら1~2銘柄
分散投資を行う銘柄の数は、あなたがiDeCoに利用する「資金」の規模から選んでいくのがオススメです。
また、分散投資を行う時には「現時点で入金しなくても買い付けできる現金の余力」を意味する「現金買付余力」を20~30%残しておくことも重要です。
それを踏まえて資金ごとの参考銘柄数を以下に整理します。
- 証券口座の資金が100万円以内の場合:1~2銘柄
- 証券口座の資金が200万円以内の場合:2~3銘柄
- 証券口座の資金が500万円以内の場合:3~4銘柄
②値動きが異なる2つ以上の資産を組み入れるようにする
iDeCo(確定拠出年金)で分散投資を行うなら、必ず値動きが異なる2つ以上の商品を組み入れるようにしましょう。
iDeCoで行う分散投資は「ドルコスト平均法」と呼ばれる投資の考え方に基づき、長期的にゆっくりと利益を生み出していく投資方法です。
このとき値動きが異なる商品を選ぶ際には、次の商品を組み合わせるのがオススメです。
- 株式
- 証券
③時間分散によって購入単価を平均化する
分散効率を高める方法のひとつに「時間分散」を行うという方法があります。
時間分散とは、投資のタイミングを分散することによって、1年あたりの価格変動のブレを小さくする投資方法です。時間分散を行っていけば、商品の購入単価を平均化することができ、安全に右肩上がりを期待できる投資が行えます。
たとえば、毎月2万円という資金を準備し、その中で購入できる数量(口数)だけ購入していくといった「定時定額積立投資」を行っていけば、価格変動のブレを小さくできます。
毎月の投資額に強弱があった場合、マイナスが大きい月に高額投資してしまうと、損益が生まれやすくなります。そのため、毎月の投資額を事前に決定しておき、効率よく分散効率を高めていきましょう。
iDeCo(確定拠出年金)の分散投資について解説
分散しすぎた投資を行うデメリット、そして投資のコツが理解できたところで、iDeCo(確定拠出年金)の分散投資の特徴について解説していきます。
- 投資信託1本でも資産分配することができる
- どの資産や地域を投資対象とするかでリスクとリターンが決まる
- パッシブ型とアクティブ型の2種類の分類がある
- 自分のリスク許容度に応じて資産配分を考える
ここでご紹介するのは、初心者の方に覚えておいてほしいiDeCo運用の基礎知識です。事前に理解しておくことで、安定した資産運用を行えるようになります。
重要なポイントを4項目に分類して解説していきますので、まだ理解できていない項目があれば、ぜひチェックしてiDeCoの運用に役立ててみてください。
①投資信託1本でも資産分配することができる
投資信託を行う中では、株式(国内、外国)や証券など様々な商品を組み合わせるのが良いと言われています。ですが、じつは投資信託1本でも資産分配できることをご存じでしょうか。
たとえば、次のような投資信託の商品を組み合わせていけば、カスタマイズ性に優れる資産分配ができます。
- 国内株式型
- 国内証券型
- 外国株式型
- 外国証券型
- バランス型
②どの資産や地域を投資対象とするかでリスクとリターンが決まる
投資信託では、選ぶ資産、対象地域によって、商品のリスクとリターンが変動することをご存じでしょうか。
株式と債券という違い、国内と外国という違いがあり、それぞれ異なる特徴を持つことから、投資対象の選び方によってリスクとリターンが変動します。
たとえば、リスク・リターンの大きさは、次の降順で大きくなっていきます。
- 国内債券
- 外国債券
- 国内株式
- 外国株式
③パッシブ型とアクティブ型の2種類の分類がある
投資信託には次に示す2つの動き方があります。
- アクティブ型:投資対象とする市場のインデックスを中長期的に上回る運用成果を目指す手法
- パッシブ型:投資対象の市場の動きを示す代表的な指標(インデックス)と、同じ値動きを目指して運用する手法
④自分のリスク許容度に応じて資産配分を考える
資産に対するリスク許容度は、人によって異なります。
たとえば、資産に余裕があり余剰金の一部を使って投資信託を行う場合には、リスクが生じても生活に大きな影響がないので、投資信託の資産配分に自由度が効きます。
また、資産に余裕がなくできる限り冒険をしない動きが必要だという人なら、投資信託の資産配分にあまり自由がありません。
もし、これから投資する商品への資産配分を決めていこうとしているのなら、まずは現状の自分のリスク許容度がどれくらいなのかを考えていきましょう。
自分の資産状況などを考えずに無理な投資を行ってしまうと、老後資金を貯めるというiDeCoの根本的な目的を見失う場合があります。貯金や将来収入などを考えつつ、資産配分を行ってみましょう。
iDeCo(確定拠出年金)の分散投資でおすすめの運用スタイル
「自分で考えて分散投資を行うのは難しそうだから、運用スタイルなどを決めたうえで動いていきたい」
そう考えているのなら、ぜひここで紹介する2つの運用スタイルを覚えていきましょう。
- 無難にバランスよく分散投資して運用したい方
- 投資経験があり自分で組み合わせたい方
この2つの運用スタイルは、iDeCoを利用する大勢が利用しています。そこで、運用スタイルの特徴や利用するメリットを詳しく把握していきましょう。
運用スタイルを持たずに動く人の中には、分散しすぎによってマイナスを生み出してしまう人もいます。そのようなトラブルを避け、安定的に利益を生み出していくためにも、2つの運用スタイルを理解して、スムーズな運用に挑戦してみてはいかがでしょうか。
①無難にバランスよく分散投資して運用したい方
投資の知識がなく、無難にバランスよく分散投資を行い、少しずつ利益を生み出していきたいというのなら「バランス型投資信託」にチャレンジしてみましょう。
バランス型投資信託とは、国内・海外株式や債券などの性格が異なる資産を組み合わせて運用するスタイルのことであり、iDeCo初心者にオススメの運用方法です。
それぞれ異なる値動きを見せることから、大きな値下がりが起きた場合に、資産が大きく減りにくいという特徴を持ちます。
また、バランス型投資信託には次のようなタイプが存在します。
- 安定型
- 安定成長型
- 成長型
②投資経験があり自分で組み合わせたい方
ある程度の投資経験があり、自分のライフプランや目的に合わせて投資信託を行いたいのなら年齢に沿って「資産分配」という考え方を持つと良いでしょう。
資産分配とは、株式・債券だけではなく、不動産投資やコモディティといった様々な商品を組み合わせつつ分散投資を行うという運用スタイルです。
年々変化する収入や考え方に合わせて、組み合わせの割合を変更しつつ動くため、多少の投資知識があれば、リスクを抑えた運用を行えます。
たとえば、20代ごとに次のような動きをする人もいます。
- 20~30代:運用に時間を掛けられるため、国内外の株式を中核とした配分で積極的にリターンを追求
- 40代:「価格変動リスクが高い株式」「為替変動リスクの絡む海外資産」の比率を下げるといった微調整を行う
- 50代以降:徐々にリスクの低い資産の比率を高めていく
まとめ|iDeCo(確定拠出年金)の分散しすぎは効果ない?
この記事では、次のことを紹介しました。
- 同じ値動きの商品ばかり選ぶことや分散しすぎるのは、分散投資として好ましくない
- 分散しすぎた投資は、1つの商品あたりの利益が小さくなってしまう
- 時間分散を意識したり、資産に合わせて銘柄の数を調整したりするのがオススメ
- iDeCoの分散投資は、商品のリスク&リターン、そして組み合わせを意識して運用スタイルを考えるのがオススメ
- 初心者は「バランス型投資信託」、投資経験者は「資産分配」のスタイルで投資するのがオススメ