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法改正などにより私たちの暮らしのルールは日々変化を続けています。2022年10月より変更される、私たちの暮らしに関わるお金のトピックスをお届けします。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

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最低賃金、過去最高の引上げへ


2022年8月2日に開催された中央最低賃金審議会で、最低賃金の大幅な引上げ決まりました。今年度は47都道府県すべてで最低賃金の引上げが実施されます。地域によって最大33円、全国平均では31円と、過去最高額の引上げとなります。 

地域別の引上げ額

最低賃金は地域ごとの状況に合わせて決定される為、全国一律の金額ではありません。 毎年の引上げ額も地域によって違います。最低賃金を確認する際には、住んでいる場所ではなく、職場のある地域を確認してください。


【地域別最低賃金の全国一覧】(出典:厚生労働省)


最低賃金の歴史と今後

昭和22年に制定された労働基準法において最低賃金を定めることができるという規定が定められ、 その後昭和34年に最低賃金法によって最低賃金制度が導入されました。 

 昭和52年の東京の最低賃金は345円となっており、平成元年には525円、令和元年に1,013円と、令和に入ってからようやく1,000円を上回りました。 

 厚生労働省によると最低賃金の引上げ率は「年率3%程度を目途」とされていますが、就職氷河期ピークと言われる平成14年・15年(2002年・2003年)はほとんどの地域で引上げされておらず、新型コロナ感染症が発生した令和2年(2020年)は0円~3円の引上げに留まっています。 

諸外国との比較

2020年版世界(OECD加盟国)の「最低賃金」ランキングを見てみると、上から順にオーストラリア12,9ドル、ルクセンブルク12,6ドル、フランス12,2ドルとなっており、日本は8,2ドルで14位となります。 

 「平均年収」で見ていくと、上から順にアメリカ69,392ドル、アイスランド67,488ドル、ルクセンブルク65,884ドルとなり、日本は38,515ドルで22位という結果になっています。

 近年では、諸外国の賃金アップに比べ日本の賃金が低く抑えられていると知られていますが、その背景には、長引くデフレ、諸外国と比べて割安な消費税、根強く残る終身雇用制度など、様々な要因があるとされています。

まとめ

最低賃金は、私たちの生活に直結する大事な制度です。 最低賃金は毎年見直しされていますので、自分の仕事の時給が最低賃金を下回っていないか、都度確認しておきましょう。

 ただし、政府は今後も最低賃金を引き上げていく方針を打ち出してはいますが、円安や様々な世界情勢による物価上昇、日本の景気後退などで、家計が更に厳しくなっていくことも予想されます。最低賃金の上昇だけに頼らず、自分自身の生活費を今一度見直す必要があるかもしれませんね。    

児童手当の特例給付が廃止に


2022年10月支給分より児童手当法が改正され、高所得者世帯における児童手当の特例給付が廃止されます。夫婦どちらかの年収が1,200万円を超える世帯が対象と言われていますが、これはあくまで目安であり、実際には扶養人数によって基準となる年収が変わってきます。 

児童手当の支給額

以下が現在の児童手当の支給額です。

  • 3歳未満の児童:一律15,000円
  • 3歳以上小学校終了前の児童:10,000円(第3子以降は15,000円) 
  • 中学生:一律10,000円 

児童手当の「特例給付」

現行の児童手当には所得制限限度額が設けられており、夫婦どちらかの年収が960万円(目安)を超える場合には、月額一律5,000円が児童手当として支給されています。 

児童手当「特例給付」対象外の所得と収入目安

前述のとおり年収960万円を超える場合には一律5,000円の特例給付が支給されていますが、今回の制度改正により、年収1,200万円程度を超える場合は特例給付の対象外となることが決められました。

所得上限限度額

所得上限限度額

ただし、上記の所得上限は、夫または妻の所得が高い方が対象です。夫婦の合算収入が対象ではありませんので、共働きが不利になるわけではありません。

まとめ

児童手当の支給対象は0歳から15歳までの児童を養育する世帯で、養育者の所得や扶養人数によって支給金額が変わってきます。 今回の制度改正では、夫婦のいずれかが年収960万円を超える場合の「特例給付」の部分について変更になります。 扶養人数ごとに所得制限の基準は変わりますので、事前に自治体のホームページなどで確認しておきましょう。 

パート・アルバイトの社会保険の適用範囲が拡大


2022年10月、2024年10月と、段階的に短時間労働者への社会保険(厚生年金・健康保険)の適用範囲が拡大されます。しかし実は、企業の規模によってはすでに2016年からスタートされています。以下の要件をすべて満たす従業員は、社会保険の被保険者となります。 

現行の適用範囲(2016年10月~)

  • 従業員数:501人以上 
  • 週の所定労働時間:20時間以上 
  • 雇用期間:1年以上見込まれる 
  • 賃金月額が88,000円以上(年収106万円以上) 
  • 学生でないこと 

2022年10月~の適用範囲(今回)

  • 従業員数:101人以上 
  • 週の所定労働時間:20時間以上 
  • 雇用期間:2か月以上見込まれる 
  • 賃金月額が88,000円以上(年収106万円以上) 
  • 学生でないこと 

2024年10月~の適用範囲

  • 従業員数:51人以上
  • 週の所定労働時間:20時間以上 
  • 雇用期間:2か月以上見込まれる 
  • 賃金月額が88,000円以上(年収106万円以上) 
  • 学生でないこと 

どうしても社会保険に加入したくない場合は?

中には、「社会保険料を支払うと手取りが減る。世帯全体の収入が減ってしまう。」と心配される方もいます。どうしても社会保険に加入したくない場合は、週の所定労働時間を20時間未満に抑えるか、年収を106万未満に調整する必要が出てきます。


 ただし、新たに社会保険に加入することによって、 

  1.  厚生年金に加入することで、将来の年金受給額が増える 
  2.  病気で休みが長引いても、傷病手当金を受給することができる 
  3.  保険料を会社が半分負担してくれるので、現在国民年金や国民健康保険に加入している人は保険料が安くなることがある
  4.  年収や労働時間の上限を気にせず働くことができれば、今以上のキャリアアップや、ゆとりある生活の実現へも繋がる 

 など、デメリットばかりではありません。 

まとめ

多様な働き方を求められる現代において、すべての世代の安心を確保するために、今後も社会保険の適用範囲は段階的に拡大していきます。 パートやアルバイト勤務でも、自分自身の将来に向け、安定した人生を送る為に、働き方を今一度考える機会にしていただければ幸いです。

雇用保険料率が引き上げへ


新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、雇用環境の悪化から雇用保険の支出が大幅に増えたことにより、財政が悪化し2020年10月から雇用保険料率が引き上げられることが決まりました

雇用保険とは

雇用保険は、労働者と事業主によって負担される保険料と国費によって成り立っています。雇用保険によって、失業等給付や育児休業給付など、働いていない期間の支援を受けることができます。    

労働者の負担引き上げはいくらか?

雇用保険の保険料=賃金の総額×雇用保険料率 


 一般企業の雇用保険料率:0.3%から0.5%へ引き上げ。 

 農林水産・清酒製造・建設事業の紅葉保険料率:0.4%から0.6%へ引き上げ。 


 つまり、一般事業で賃金の総額が30万円の人は、2022年9月までは900円だった雇用保険料が、2022年10月から1,500円に引き上げられることとなります。 

新型コロナウイルス感染拡大の影響

新型コロナウイルスの感染拡大により、労働者の解雇や雇い止めの急増を抑えることを目的とし、企業が労働者に休業手当を支払う為に、企業に向けて多額の雇用調整助成金が支払われました。もちろん、コロナの影響により失業してしまった方への失業手当も雇用保険から支払われています。 2008年のリーマンショック直後に支払われた雇用調整助成金は、およそ6,500億円でした。その後は雇用が改善し、雇用保険の財源は2019年末で約4.5兆円あったとも言われています。 しかし、コロナ渦における雇用調整助成金の支払いは5兆円以上にのぼるとも言われており、財政は底をついてしまった為、今回の雇用保険料率引き上げが決定されました。 

雇用保険の今後

今回の雇用保険料引き上げにおける財政改善はわずかなものとなっています。いつまで感染症対策が続くのか?この先何が起こるのか?見通しをたてるのは困難な為、今後も更なる改正があるかもしれません。 

iDeCoへの加入要件が緩和


これまで企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入されている会社員は、企業型DCの規約によってはiDeCoへの加入が認められていませんでした。2022年の法改正により、一定の要件を満たせばiDeCoへの加入が可能になります。 

iDeCoとは?

日本の年金制度は三階建てと言われています。一階部分は20歳以上の国民全員が加入する国民年金、二階部分は会社員や公務員が加入する厚生年金であり、この2つは公的年金と呼ばれています。そして三階部分は私的年金と呼ばれ、企業の福利厚生のひとつである企業年金、自営業者などが加入できる国民年金基金、保険会社が扱っている個人年金保険などに加え、私的年金の一つとして専業主婦や公務員が加入できるiDeCoがあります。 IDeCoとは、自分の意思で加入して、自分で掛金を運用する、「自分で準備する確定拠出型年金」です。 

iDeCoの特徴

iDeCoには、掛金が全額所得控除される、運用収益がすべて非課税になる、受取る際にも税負担が軽減されるといった税制上のメリットが最大の特徴です。 反対に、お金は原則60歳以降にしか引き出せない、元本割れのリスクがある、加入時や掛金納付の際などには手数料がかかるといったデメリットも合わせ持っています。 

企業型確定拠出年金(企業型DC)加入者のiDeCo加入の要件緩和

2022年10月1日から、企業型年金規約の定めによりiDeCoに加入できなかった企業型DC加入者の方も加入できるようになります。 ただし、各月の企業型の事業主掛金額と合算して月額5.5万円をまで、掛金(企業型の事業主掛金・iDeCo)が各月拠出であること、企業型DCのマッチング拠出を利用していないこと、が必要となります。

(出典:iDeCo公式サイト) 

まとめ

老後の収入の基礎となるのは公的年金ですが、ご存知のように公的年金の受け取り時期を繰り下げることで給付額が大きくなり、終身受けとることができるため、老後が長くても安心できます。公的年金の受け取り時期を繰り下げる分、少しでも長く働いて収入を得たり、iDeCoなどの私的年金で貯めたお金を活用することで、老後のお金についてさらに安心できることと思います。