個人年金保険解約の税金・確定申告を解説!計算やデメリットとはのサムネイル画像
個人年金保険を解約するときには、契約期間にかかわらず解約返戻金を受け取れるのが一般的です。なお、解約返戻金を受け取る条件によっては税金が課せられる場合があります。

さらに、解約返戻金を受け取る条件によって、課される税金の種類税率が異なるため、場合によっては損をすることがあるのです。

そこで本記事では、個人年金保険を解約するときに発生する税金や、中途解約するときの注意点などについて詳しく解説していきます。

また、中途解約以外の選択肢などについても紹介していますので、個人年金保険の解約を検討している人はぜひ参考にしてみてください。

個人年金保険を途中解約する際の解約返戻金は場合によって税金がかかることがあります。どのような時に税金が課税されるのか、確定申告が必要なケースなどは知っておきたい情報です。この記事では個人年金保険解約時の税金やデメリット、元本割れの危険性等を解説します!

この記事の目次

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個人年金保険の途中解約は損?解約時にかかる税金とは


個人年金保険を途中解約するときには、をする可能性があります。老後資金を貯めるために個人年金保険を活用している人も増えてきていますが、保険にかかるお金の見積もりが甘いと、中途解約せざるを得ない状況になるかもしれません。


また、個人年金保険の解約返戻金は、契約者と受取人によって税金の種類が異なります。

  • 契約者=解約返戻金の受取人|所得税
  • 契約者≠解約返戻金の受取人|贈与税
なお、一時払個人年金保険を5年以内に解約した場合は「金融類似商品」に該当するため、20.315%の税率で解約返戻金から源泉徴収されます。

このように、解約返戻金は状況によって異なる税金や税率がかけられるため、注意しながら解約を検討しなければ思わぬ損に繋がりかねません。

基本的に満期を迎えるまでに解約する場合はほとんどの保険商品は損をする仕組みになっているため、中途解約は避けるべきでしょう。

解約返戻金にかかる税金と計算方法一覧


ここからは、解約返戻金にかかる税金と計算方法を一覧にして紹介していきます。


前述の通り、個人年金保険の解約返戻金を受け取るときには、状況に応じてかけられる税金の種類や税率が異なります。


契約期間や、契約者と解約返戻金の受取人に注意しなければ、想定外の税金をかけられてしまい、思わぬ損となるでしょう。


これから個人年金保険を契約しようとしている人や、解約しようか迷っている人は、必ず今の状況ではどの税金がどれくらいかかるのか把握しておくべきといえます。


下記でそれぞれの税金の種類や計算方法を詳しくまとめていきますので、ぜひ参考にしてみてください。

所得税|契約者と解約返戻金の受取人が同一の場合

個人年金保険の契約者と、解約返戻金の受取人が同一の場合は「所得税」が課せられます。


解約返戻金を一時金として受け取る場合は「一時所得」とみなされ、課税対象額は次の計算式で求められます。


  • {解約返戻金−支払保険料総額−特別控除額(50万円)}×1/2
例えば、解約返戻金が300万円、支払保険料総額が200万円の場合の課税対象額は次のようになります。
  • (300−200−50)×1/2=25(万円)
上記の例では25万円が所得税の課税対象額となり、対象の税率をかけて所得税額が求められます。

なお、支払保険料総額と解約返戻金の差が50万円以下であったり、支払保険料総額が解約返戻金を上回っていたりする場合は、所得税がかかりません。

個人年金保険の解約返戻金と支払保険料総額に50万円以上の差が生まれるケースは珍しいため、所得税もかからないケースが多いです。

所得税でも雑所得は計算が異なるので注意!

解約返戻金を一時金として受け取る場合は一時所得とみなされるため、上記の計算式で課税対象額が求められます。しかし、解約返戻金を「年金受取」による方法で受け取る場合は「雑所得」とみなされる点に注意が必要です。


雑所得の計算式は次のとおりです。

  • 総収入額−必要経費
また、必要経費は次の計算式で求められます。
  • 対象年の年金受取額×(支払保険料総額/年金総支給見込額)
例をあげて解説していきます。
  • 対象年の年金受取額:50万円
  • 受取期間:10年
  • 支払保険料総額:400万円
この場合の必要経費は次のとおりです。
  • 50×(400/500(年金総支給見込額))=40(万円)
よって、このケースの対象年の雑所得額は「50−40」=10(万円)となります。

贈与税|契約者と解約返戻金の受取人が異なる場合

契約者と解約返戻金の受取人が異なる場合は「贈与税」が課されます。解約返戻金を一時金として受け取る場合は全額が贈与税の対象です。


なお、解約返戻金の受取方法が「年金受取」の場合は次のように税金が課されます。

  • 受取開始初年度:贈与税
  • 2年目以降:雑所得
贈与税は受取金額の全額が課税対象となる点に注意しましょう。ただし、年間110万円までは控除されるため、受取額によっては非課税にできます。

具体的に、次のケースで贈与税額を計算していきます。
  • 解約返戻金額:200万円
  • 受取方法:一時金
このケースでの贈与税課税額は次のとおりです。
  • 200万円−110万円(基礎控除額)=90万円
贈与税が課される場合は、所得税が課される場合よりも税額が大きくなる場合が多くなるでしょう。そのため、基礎控除額や受取方法に注意しながら解約返戻金を受け取るのがおすすめです。

一時払個人年金保険を5年以内に解約した場合

一時払い個人年金保険を5年以内に解約した場合は「金融類似商品」としてみなされるため、課税対象額の20.315%が源泉徴収されます。


20.315%の内訳は次のとおりです。

  • 所得税:15%
  • 地方税:5%
  • 復興特別所得税:0.315%

なお、課税対象額は次の計算式で求められます。

  • 解約返戻金−払込保険料
では、次のケースで課税対象額を計算してみます。
  • 解約返戻金:300万円
  • 払込保険料(一時払い):200万円
このケースで源泉徴収される税額は次のとおりです。
  • (300−200)×20.315%=203,150円

払込保険料から100万円を上乗せして返戻されても、金融類似商品とみなされる場合の手取額は80万円未満となります。


また、一時払養老保険を5年以内に解約する場合においても、解約返戻金から20.315%の税率で源泉徴収されるため、全額を受け取れるわけではない点に注意しましょう。

個人年金保険の解約で確定申告が必要な時とは

個人年金保険を解約して解約返戻金を受け取るときには、次のケースで確定申告が必要になります。

  • 一時所得が発生する場合
  • 雑所得が発生する場合
なお、必要な確定申告を行わないと、次のペナルティが課される場合があります。
  • 延滞税:2ヶ月以内の延滞は2.5%、2ヶ月を超えると8.8%の税率で課される
  • 無申告加算税:納付額50万円までは15%、50万円を超える部分は20%が課される
いずれにしても高い税率でペナルティが課されるため、必要な確定申告は必ず行いましょう。下記で確定申告が必要なケースについて詳しく解説していきます。

一時所得として受け取る場合は確定申告が必要な時も

個人年金保険の契約者と解約返戻金の受取人が同一で、一時所得が発生する場合は確定申告が必要です。


なお、一時所得が発生するケースは次のとおりです。

  • 一時所得額が(解約返戻金+50万円)を超えるとき
ここでおさらいですが、一時所得額は次の計算式で求められます。
  • {解約返戻金−支払保険料総額−特別控除額(50万円)}×1/2 
つまり、解約返戻金が支払保険料総額よりも50万円高くならなければ、所得としてみなされないのです。

また、個人年金保険を中途解約する場合には、ほとんどのケースで解約返戻金が支払保険料総額を上回ることはないため、確定申告は不要となる場合が多いでしょう。

とはいえ、場合によっては確定申告が必要になるケースもあるため、個人年金保険を解約するときには注意が必要です。

確定申告をした場合は一時所得とその他の所得が合算されて、所得税額が求められます。

解約返戻金を年金として受け取る場合は不要

個人年金保険の契約者と解約返戻金の受取人が同一で、年金として受け取る場合は「雑所得」とみなされます。なお、雑所得が発生するケースは次のとおりです。

  • 年金額(対象年)が必要経費を上回る場合
年金受け取り時の必要経費は次の計算式で求められます。
  • 対象年の年金受取額×(支払保険料総額/年金総支給見込額) 
上記の計算式で雑所得が発生する場合は、確定申告が必要になるケースがあるため注意しましょう。

なお、1箇所から給与を受け取っている人で、給与や退職所得以外の所得金額が20万円以下の場合は確定申告不要です。

例えば、会社員で1箇所からのみ給与の支払いを受けている人が、年金として年間20万円(雑所得)を受け取る場合には、確定申告が必要ありません。

確定申告と保険料控除の関係性


個人年金保険を契約していて毎年保険料を払込んでいる場合は、保険料控除を受けられます。個人年金保険は、個人年金保険料控除の対象です。


個人年金保険料控除とは、1年間に支払った保険料に応じて所得額から一定額を控除できる制度のことです。


なお、保険契約は新契約と旧契約に分類されており、契約時期によって控除額が異なります。

新契約旧契約
契約日平成24年1月1日以降平成23年12月31日まで
控除額最高4万円最高5万円

ちなみに、新契約では生命保険料、介護医療保険料のそれぞれにおいても最高4万円控除できるため、最高12万円までは控除対象となります。


旧契約では生命保険料で最高5万円の控除となるため、最大でも10万円までしか控除されません。


個人年金保険料控除を受けるためには、所定の手続きを行う必要があります。

  • 会社員の場合:年末調整
  • 個人事業主・自営業の場合:確定申告
年末調整や確定申告を行うときには、保険会社が発行する「生命保険料控除証明書」が必要になるため、手元に届いたときには必ず保管しておきましょう。

【豆知識】解約返戻金の一時所得に税金がかかるケースは少なめ


解約返戻金を一時金として受け取る場合には、一時所得としてみなされると解説してきました。とはいえ、解約返戻金の一時所得に税金が課せられるケースは珍しいでしょう。


下記でその理由について詳しく解説していきます。


まず、一時所得の発生条件は次のとおりです。

  • 解約返戻金(一時金)が(払込保険料総額+50万円)を上回る場合
例えば、解約返戻金が「250万円」で払込保険料総額が「200万円」のケースでは、一時所得は発生しません。たとえ満期まで契約していたとしても、解約返戻金が払込保険料総額よりも50万円多くなるケースは珍しいです。

さらに、中途解約をする場合はほとんどのケースで解約返戻金が払込保険料総額を下回ります。個人年金保険では満期まで契約していなければ元本割れする可能性がかなり高いです。

そのため、解約返戻金の一時所得に税金が課せられるケースは少ないでしょう。

個人年金保険解約時の注意点2つ


ここからは、個人年金保険解約時の注意点について解説していきます。生活資金が苦しいなどの理由でなにも考えずに個人年金保険を解約してしまうと、思わぬデメリットが発生する可能性があります。保険解約を検討している人は次の2点に注意しましょう。

  1. 解約後の入り直しは条件が悪くなることがある
  2. 中途解約をすると元本割れする可能性がある
それぞれの注意点について詳しく解説していきます。

①解約後の入り直しは条件が悪くなることも

個人年金保険を一度解約してから、再度契約する場合には、条件が悪くなる場合があります。なお、想定される悪条件は次のとおりです。

  • 年齢が上がったために保険料が高くなる
  • 年齢によって個人年金保険を契約できない場合がある
個人年金保険を一度解約してから再度契約する場合は、契約時の年齢で条件が設定されます。基本的に年齢が高いほど保険料も高くなるため、再度契約するときには前回の契約よりも保険料が高くなる可能性がある点に注意しましょう。

また、保険契約の対象年齢が60歳までの商品を契約していて、57歳時点で解約したケースを想定します。このケースでは、解約から4年後の61歳になってから契約しようとしても、解約した保険には再度加入できません。

解約を検討しているときには、契約中の保険の契約条件についてもよく確認しておくと良いでしょう。

②途中解約では元本割れする可能性も

個人年金保険を中途解約する場合は、元本割れする可能性が高いです。


元本割れとは、払込んだ保険料が解約返戻金を下回るケースを指します。例えば、払込保険料総額が200万円で、中途解約して返戻された金額が150万円の場合は、元本割れとなります。


個人年金保険を満期まで契約していなければ、ほとんどのケースで元本割れとなるため注意が必要です。保険契約の内容をよく確認して、契約から何年経過していれば元本割れしないかもよく確認しておくべきでしょう。

個人年金保険解約前に考え直したいこと3選


ここからは、個人年金保険解約前に考え直したい3つの事項について詳しく解説していきます。個人年金保険を解約すると、再度契約するときの条件が悪くなるなどのデメリットが発生します。


そのため、本当に解約が必要なのか、別の選択肢で対処できないかなどをよく考えてから解約の申込みを行うのがおすすめです。


なお、個人年金保険解約前に検討できる別の選択肢は次のとおりです。

  1. 払済年金保険に変更する
  2. 保険料を減額する
  3. 契約者貸付を検討する
それぞれの選択肢について解説していきますので、個人年金保険の解約を検討している人は参考にしてみてください。

①払済年金保険に変更する

個人年金保険を解約する以外にも、払済年金保険に変更することで保険料の払込みを中止できます。


払済年金保険とは、解約する時点での解約返戻金を一時払保険料に充てることで、保険料の払込みをなくせる方法です。


払済年金保険のメリットは次のとおりです。

  • 保険料の払込がなくなる
  • 保障を継続させられる
ただし、払済年金保険に変更する場合は、年金額が減額される点に注意しましょう。

なお、払済年金保険への変更がおすすめな人は次のとおりです。
  • 保険料の払込みによる家計の圧迫が苦しい
  • 保障は継続させたい
  • 今すぐお金が必要になるわけではない
上記の特徴にあてはまる場合は、FPや保険契約時の担当者に払済保険への変更ができないか相談してみるのがおすすめです。

②保険料を減額する

個人年金保険料の払込みが苦しい場合は、保険料の減額を検討してみましょう。保険料を減額する場合は、将来受け取れる年金額が減りますが、保険料の払込みによる負担を抑えられます。


なお、保険料の減額をするメリットは次のとおりです。

  • 保険料の払込みによる負担を抑えられる
  • 減額分の返戻金を受け取れる(個人年金保険料税制適格特約を付加していない場合)
上記のメリットから、保険料の減額をおすすめできる人は次のとおりです。
  • 保険料の払込みによる負担を抑えたい
  • 少しでも生活の足しにできるお金がほしい
  • 保障は継続させたい
保険料を減額するときには将来受け取れる年金が減るため、将来的に必要になる生活費などを再度見直しておくのがおすすめといえます。

③契約者貸付を検討する

個人年金保険料の払込みが厳しく、かつ今すぐお金が必要な人は「契約者貸付」の利用を検討するのがおすすめです。


契約者貸付とは、その時点での解約返戻金から一定の割合までの金額を保険会社から借りられる制度です。


なお、契約者貸付で借りられる上限額は、一般的に7〜9割程度とされています。例えば、解約返戻金が100万円で、9割まで借りられる場合は、90万円を上限に保険会社から借りられます。


ただし、契約者貸付で借りたお金には一定の利息がつくため、早期に完済しなければ返済額も大きくなります。


そのため、契約者貸付は次の特徴がある人におすすめです。

  • 保障は継続させたい
  • 一時しのぎのためのお金が必要
  • 借りたお金を返済できる目処がある
借りたお金を返済できる目処が立っていない人には契約者貸付の活用はおすすめできないため、注意しましょう。

解約のタイミングに関する相談はマネーキャリアへ!


個人年金保険を解約するときには、税金が課せられる場合があります。また、課せられる税金の種類や税率は、解約返戻金を受け取る条件によっても異なるため、お金のプロであるFPに相談しておくのがおすすめです。


また、FPに相談する上でおすすめなのが「マネーキャリア」です。


マネーキャリアとは、提携FPが3,000名で、相談実績40,000件以上を誇る業界最大手のFP相談窓口です。


「解約におすすめのタイミングがあるのか」「解約以外に別の良い選択肢があるか」など、判断が難しいと感じているなら、一度FPに相談してみましょう。


なお、マネーキャリアで相談する場合は、納得できるまで何度でも無料で相談可能です。相談場所も、自宅や近くのカフェ、オンラインなどから選択できます。

まとめ:個人年金保険の解約時には税金が発生することがある

個人年金保険を解約するときには、税金が発生する可能性があります。また、解約時の条件や、契約者と解約返戻金の受取人が異なる場合には課せられる税金の種類も変わる点に注意が必要です。


所得税なら課せられなくても、贈与税であるために税金がかかるなど、損をするケースもあります。また、一時払個人年金保険を5年以内に解約すると、返戻金から20.315%の税金が源泉徴収されます。


保険や税金についてよくわからない場合は、お金のプロであるFPに相談するのがおすすめです。マネーキャリアなら納得するまで何度でも無料相談できるため、ぜひ検討してみてください。