年末調整後だけど医療費控除ってどうやれば受け取れるの?医療費控除は年末調整の対象ではなく確定申告・還付申告の対象なので申告する必要があります。年末調整後の確定申告の手順・必要書類の作成方法や提出方法について徹底解説!医療費控除と各種控除との関係も解説!
監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。
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この記事の目次
- 年末調整後に医療費控除を受け取るにはどうすればいい?
- 年末調整後の医療費控除は確定申告を行うことが必要!
- 医療費控除は年末調整の対象に含まれていない
- 医療費控除は確定申告の対象に含まれている
- 確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日まで
- 確定申告がいらない会社員の場合は還付申告のみでOK
- 還付申告では払い過ぎた税金を取り戻すことができる
- 還付申告は対象の年から5年以内であれば申告可能
- 年末調整後の確定申告を行う手順について解説!
- ①支払った医療費が医療費控除の対象かどうか確認する
- ②確定申告に必要な書類を準備し必要事項を記入する
- ③必要な書類を税務署などに提出する
- ④振り込まれている還付金が正しいかどうか確認する
- 確定申告書に必要な書類の作成方法について解説!
- 医療費の明細書はエクセルや手書きで自作する
- 確定申告書等作成コーナーで確定申告書Aを作成する
- 医療費の領収書は提出不要だが5年間の保管が義務!
- 医療費控除の書類の提出方法について解説!
- ①地域指定の税務署に直接持参する
- ②税務署に郵送する
- ③e-Taxで申告する
- 【参考】医療費控除はふるさと納税・住宅ローン控除に影響する?
- 【まとめ】医療費控除を受け取るためには確定申告の準備が大切!
年末調整後に医療費控除を受け取るにはどうすればいい?
こんにちは。マネーキャリア編集部・FPの西田です。
先日、50代のサラリーマンから次のような相談をされました。
年間の医療費が10万円、もしくは総所得金額等の5%を超える場合、医療費控除を受けることができます。
会社員の方も年末調整後に医療費控除の申告を行うことで、所得税、住民税の負担を軽減できます。
医療費控除を受けるためには、会社員、サラリーマンの方も自分で確定申告を行わなければなりません。
そこで、本記事では、年末調整後の確定申告の手順・必要書類の作成方法、提出方法を徹底解説していきます。
あわせて、医療費控除と各種控除との関係も説明していきます。
本記事が、年末調整後に医療費控除の申請を行う方の参考になりますと幸いです。
年末調整後の医療費控除は確定申告を行うことが必要!
医療費控除は、 1年間(1月1日から12月31日)に支払った医療費が10万円、もしくは所得金額の5%を超えた場合に適用されます。
医療費控除を受けるには一年間にかかった医療費が一定以上あることが大前提です。
その金額の算出は納税者本人の医療費のみならず、生計を一にする家族の医療費を合算できます。
医療費控除を受けるためには、自分で申告を行うことが必要不可欠です。
会社員の方のなかには個人での確定申告が不要な方も多いですが、医療費控除を受けるためには確定申告を行う必要があります。
医療費控除は年末調整の対象に含まれていない
会社員の方のなかには、個人で年末調整を行う必要のない方も多いです。
会社に勤めていると、自分で確定申告を行わなくても会社が代わりにやってくれるからです。
それゆえに、確定申告について、個人事業主やフリーランスが行うものといったイメージを抱かれている方も少なくありません。
しかし、会社員、サラリーマンの方であっても、別途年末調整が必要となるケースがあります。
そして、医療費控除も年末調整後の確定申告の対象です。
年末調整の対象に含まれる・含まれないものをそれぞれ確認していきましょう。
年末調整の対象に含まれるもの(一部抜粋)
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 障害者控除
- 寡婦(夫)控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
- 医療費控除
- 住宅ローン控除
- ふるさと納税
- 雑損控除
- 特定支出控除
医療費控除は確定申告の対象に含まれている
会社員の確定申告には対象に含まれるものと含まれないものがあります。
確定申告に含まれる・含まれないものを確認していきましょう。
確定申告に含まれるもの(一部抜粋)
- 医療費控除
- 生命保険料控除
- 勤労学生、障害者控除
- 基礎控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 住宅借入金等特別控除(初回のみ)
- 住宅耐震改修特別控除(初回のみ)
- 宝くじの当選金
- 借金(支払利息)
- 雑損控除
- 寄附金控除
- 配当控除
確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日まで
確定申告の期間は、例年2月16日から3月15日までとなっています。
この時期は、あくまでも目安として覚えておくことをおすすめします。
確定申告の期間は社会状況によって変わることもあります。
たとえば、2021年は、新型コロナウィルスの影響を受けて、確定申告の期間は2月16日~4月15日に変更になりました。
確定申告の締切日近くは提出窓口が混雑しまするので、早めに提出されることをおすすめします。
確定申告がいらない会社員の場合は還付申告のみでOK
会社員が医療費控除を受けるにあたって、確定申告が不要な方は還付申告を行うという方法もあります。
還付申告とは、会社員、サラリーマンなど確定申告が不要な人が、確定申告で払い過ぎた税金を取り戻す制度です。
一方、確定申告とは、前年の所得および算出される税額を国に申告する制度でした。
還付申告は義務ではありませんが、税金を過払いした方は還付申告によって過払い分が返還されるのでお得です。
還付申告では払い過ぎた税金を取り戻すことができる
会社員、サラリーマンが還付申告を行えば、源泉徴収などで払い過ぎた税金を取り戻すことができます。
還付申告の対象となるのは、主に以下の場合です。
- 年の途中で退職したため年末調整を受けておらず、源泉徴収税額を過払いしている
- 一定の要件を満たした住宅ローンがある
- マイホームに特定の改修工事を行った
- 災害、ないし盗難で資産に損害を受けた
- 多額の医療費を支払った
還付申告は対象の年から5年以内であれば申告可能
還付申告は対象の年から5年以内であれば、申告を行えます。
確定申告は申告を行う時期が明確に定まっていますので、確定申告の時期を過ぎた場合は還付申告をすることをおすすめします。
年末調整後に医療費控除の還付申告を行うにあたって、医療費控除の明細書の提出が義務づけられています。
治療費の領収書、医薬品の領収書、通院時の交通費の領収書などを必ずとっておくようにしてください。
申告期限から5年は領収書の提出が求められることがあるので、5年間は領収書を保管しておきましょう。
年末調整後の確定申告を行う手順について解説!
医療費控除を受ける場合、会社員、サラリーマンであっても年末調整後に確定申告を行う必要があります。
確定申告を行わなかった場合、医療費控除の適用を受けられませんので気を付けてください。
以下、年末調整後の確定申告を行う手順を解説していきます。
確定申告は難しいものではなく、4つのステップで完了します。
①支払った医療費が医療費控除の対象かどうか確認する
医療費控除を年末調整後に受ける場合、支払った医療費が医療費控除の対象かどうかを確認してください。
医療費のなかには医療費控除の対象として認められないものもありますので、注意が必要です。
医療費控除の対象となる費用
- 医師による診療もしくは治療の費用
- 健康診断・人間ドックにかかった費用(治療を受けることになった場合のみ)
- 医師の判断に基づいた治療に必要なマッサージ・整体
- 医師の指示によって購入した医療器具(松葉杖、補聴器など)
- 入院費
- 入院時の食費
- 出産費
- 通院のための交通費(公共交通機関、緊急時のみタクシー可)
医療費控除の対象とならない費用
- 美容整形費
- 美容、健康促進を目的にしたマッサージ・整体
- 美容目的の歯科矯正
- 健康診断・人間ドックにかかった費用(検診のみ)
- 通院にかかったマイカーのガソリン代
- 自己都合での差額ベッド代
- 入院時に売店で購入したおやつ代、お茶代など
②確定申告に必要な書類を準備し必要事項を記入する
例年、確定申告は2月16日から3月15日までに行います。
確定申告を行うにあたって、必要書類を準備し、書類に必要事項を期日まで記入する必要があります。
確定申告書や医療費控除の明細書は、税務署の窓口、および国税庁のホームページから入手可能です。
医療費控除を受けるためには医療機関から受け取った領収書が不可欠ですので、医療費控除に少しでも関心のある方は、領収書を必ず保管しておきましょう。
場合によっては、源泉徴収票などが必要な場合があります。
③必要な書類を税務署などに提出する
必要な書類の用意が整ったら、書類を税務署に提出します。
確定申告の期間は2月16日から3月15日と定められる年がほとんどですが、社会の状況などによって前後する可能性もあります。
医療費控除などの還付を受けるだけの確定申告であれば、申告書を税務署に2月16日よりも前に提出可能です。
提出方法は、窓口、郵送、オンラインのなかからご自身の都合に合わせて選択できます。
④振り込まれている還付金が正しいかどうか確認する
年末調整後に医療費控除の申請を行う際は、還付金の振込日を確認しましょう。
振込日には、振り込まれた還付金が正しい金額かどうか確認してください。
お金が振込日に振り込まれていない場合は、手続きのプロセスにおいてミスや手違いなどが発生している可能性があるので、税務署に早急に確認しましょう。
確定申告書に必要な書類の作成方法について解説!
年末調整後の確定申告を行うにあたって、必要書類は自分自身で作成する必要があります。
公的書類ですので、細かな規定なども少なくなく、慣れないうちは必要書類の作成は大変かもしれません。
書類について分からないことがあれば、税務署の窓口に問い合わせることもできます。
また、最近では確定申告における明細書・申告書を作成する便利なサイトも多いので、こうしたものを利用してみるのも手です。
医療費の明細書はエクセルや手書きで自作する
医療費の明細書は、Excelや手書きで自作するのが基本です。
年末調整後の医療費控除申請において、明細書の中に含めなければならない内容は細かく決まっています。
医療費集計フォーム(平成29年分以降用)を活用すれば、項目に合わせて記入していくだけでよいので、初心者の方も安心して明細書の作成を行えます。
作成が完了した明細書をデータで保存しておけば、印刷した紙を紛失した時も安心です。
確定申告書等作成コーナーで確定申告書Aを作成する
会社員が確定申告を行う場合、申告書Aのみの提出となります。
税務署が提供する確定申告書等作成コーナーでは、確定申告書Aをインターネット上で手軽、かつ簡単に作成できます。
画面上の説明に従って入力していけば、申告書Aの作成が完了しますので、記入漏れなどの心配も不要です。
必要事項の入力が完了したら印刷を行い、郵送などで提出します。
医療費の領収書は提出不要だが5年間の保管が義務!
年末調整後に医療費控除を受ける場合、領収書の提出は必要ありません。
しかし、領収書は確定申告の書類作成において必要不可欠なものです。
そして、医療費控除の適用を受けた場合、5年間の領収書保管が義務となっています。
保管した領収書は、税務署にミスなどの指摘を受けた場合に必要となります。
また、申請後、何かあった場合に調査が入ることも稀にありますが、この時に領収書の提示が求められることもあります。
医療費控除の書類の提出方法について解説!
医療費控除の書類の提出方法は、税務署へ持参、郵送、オンラインの3種類となっています。
ご自身の都合に合わせて提出方法の決定が可能です。
忙しい方、日中時間がとれない方でも、医療費控除の提出方法において困ることはほとんどありません。
以下、年末調整後の医療費控除の書類の各提出方法について、やり方・ポイントを解説していきます。
①地域指定の税務署に直接持参する
地域指定の税務署に直接持参するメリットは、医療費控除の書類の不明点などをその場で確認・解決できるところにあります。
また、大きなミスがあった場合、担当職員からその場でご指摘を受けられることもあります。
年末調整後の医療費控除の申請がはじめての方は、税務署に直接持参する方法が最も安心です。
申請締切日の直前は税務署が混み合うため、待ち時間が発生する可能性もあります。
締切日に余裕をもって提出することをおすすめします。
②税務署に郵送する
医療費控除の書類は税務署に郵送で提出することもできます。
税務署まで出向く手間が省けるため、会社員、サラリーマンの方も手軽に提出できます。
郵送で提出する場合は、郵便もしくは信書便にて送付してください。
郵送で医療費控除の書類を提出する場合、いくつかの注意事項があるので確認しておきましょう。
- 確定申告書を郵送する場合、封筒のサイズは角形2号で郵送を行う
- 封筒の表面に税務署の住所にあわせて、「確定申告書 在中」と赤字で記入する
- 封筒の裏面に送り主(自分)の住所、氏名を記入する
③e-Taxで申告する
医療費控除の申請はe-Taxで行うことも可能です。
e-Taxを活用すれば、封筒を用意したり、書類を印刷したりする手間がかからないため、必要書類をとても簡単に提出できます。
e-Taxでの申告はパソコン、スマホに対応していますので、ご自身のスキマ時間などにも申請を行えます。
e-Taxの利用時間は、次の通りです。
- 月曜日~金曜日 24時間
- 休祝日の翌稼働日、毎月の最終土曜日及び翌日の日曜日 8時30分~24時
- 休祝日 12月29日~1月3日
休止
【参考】医療費控除はふるさと納税・住宅ローン控除に影響する?
医療費控除はふるさと納税、住宅ローン控除とも併用可能です。
これら3つを併せて使うこともできますが、いくつか注意点があります。
ふるさと納税を医療費控除、住宅ローン控除と併用した場合、ふるさと納税の控除上限額が変わる場合もあります。
住民税、所得税は年間の所得で決まりますので、医療費控除、住宅ローン控除によって所得が小さくなった場合、ふるさと納税の控除限度額が下がることもあります。
それでは、医療費控除、住宅ローン控除がふるさと納税に与える影響をみていきましょう。
・医療費控除
医療費控除との併用によって、ふるさと納税の控除限度額が2%から4.5%程度下がることが多いです。
医療費控除が20万円の場合、ふるさと納税の控除限度額が4000円から9000円程度少なくなります。
・住宅ローン控除
住宅ローン控除は医療費控除よりも大きな金額の控除を受けるケースがほとんどです。
住宅ローン控除がふるさと納税に与える影響は大きいといえるでしょう。
住宅ローン控除を受けたことで所得税が0円になり、ふるさと納税の対象にならない方も少なくありません。
住宅ローン控除を行った後も住民税の控除限度額未満の場合は、ふるさと納税で控除を受けられます。
医療費控除、ふるさと納税、住宅ローン控除をあわせて利用することはできます。
ただし、医療費控除、ないし住宅ローン控除を行うことによって所得金額が下がるため、ふるさと納税にあてられる金額は少なくなります。
【まとめ】医療費控除を受け取るためには確定申告の準備が大切!
年末調整後の医療費控除は、会社員、サラリーマンの方でも確定申告を自分で行う必要があります。
確定申告を行わなかった場合、年間の医療費が一定金額を超えていても支払った税金が還付されませんので気を付けてください。
確定申告を行うにあたって、領収書は不可欠ですので必ず保管しておくようにしてください。
確定申告を行うにあたって、年間にかかった医療費が医療費控除の対象であるか確認するところからはじめましょう。
一年間に支払った医療費の確認が終わったら、必要書類を記入し、期日までに税務署に提出してください。
医療費控除の適用を受けることで税負担が軽減されるため、メリットは大きいです。
領収書の管理、確定申告の事前準備は年末調整後の医療費控除をスムーズに行うために重要です。