

この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 個人事業主がフラット35を借りるための条件は?
- 直近の1年間の所得と返済負担率で判断される
- 連帯債務者の収入合算も可能
- 個人事業主の住宅ローンのお悩みは無料FP相談を活用しよう
- 個人事業主がフラット35の審査で必要な書類
- 個人事業主がフラット35の審査で注意すべきポイント
- 「所得」が基準になるため、経費のかけ過ぎに注意する
- 既存の借り入れを完済・減額させる
- 納税状況や信用情報に問題がないか確認する
- 【実際どうだった?】個人事業主でフラット35を借りた人の体験談
- フラット35の審査を受けたのは開業して何年後でしたか?
- フラット35の審査で、特に不安だった点は何ですか?
- 頭金はどのくらい準備しましたか?それは審査にどう影響したと感じましたか?
- フラット35の審査や契約の過程で、特に大変だったこと・工夫したことがあれば教えてください
- 【まとめ】個人事業主でもフラット35は使える!不安な点はFPに相談しよう
個人事業主がフラット35を借りるための条件は?
個人事業主の方でも、一定の条件を満たせばフラット35を利用して住宅ローンを組むことが可能です。民間の金融機関では、収入の安定性や提出書類の複雑さから審査が厳しい傾向がありますが、フラット35は公的支援を背景としたローンのため、比較的柔軟な対応が行われるといわれています。
ただし、誰でも無条件に借りられるわけではなく、フラット35にも審査基準があります。特に「所得」と「返済負担率」は重要な判断材料となるため、自身の経営状況を正しく理解しておくことが欠かせません。
こちらでは、フラット35を利用するうえで知っておきたい「直近の所得と返済負担率」「連帯債務者の収入合算」という2つのポイントについて解説していきます。
直近の1年間の所得と返済負担率で判断される
個人事業主がフラット35を利用する際には「直近1年間の所得」と「返済負担率」が審査の重要なポイントです。
会社員の場合は年収が基準になりますが、個人事業主の場合は確定申告書に記載された「所得」で判断されるため、収入が高くても、経費を差し引いた所得が低ければ、借入可能額は想定より少なくなることがあります。
提出書類としては、確定申告書2年分が必要です。ただし、返済負担率の審査においては、直近1年間の所得をもとに判断されます。具体的には「年間返済額 ÷ 所得」が30〜35%以下であることが条件とされるケースが一般的です。
以下に、所得ごとの目安となる年間返済可能額と月額返済の上限をまとめました。
所得(年間) | 最大年間返済額(30%) | 月額返済の目安 | 返済負担率35%での 年間返済上限 | 月額返済目安(35%) |
---|---|---|---|---|
200万円 | 60万円 | 約5万円 | 70万円 | 約5.8万円 |
300万円 | 90万円 | 約7.5万円 | 105万円 | 約8.7万円 |
400万円 | 120万円 | 約10万円 | 140万円 | 約11.6万円 |
500万円 | 150万円 | 約12.5万円 | 175万円 | 約14.5万円 |
連帯債務者の収入合算も可能
個人事業主がフラット35を利用する際、単独での収入だけでは希望する借入額に届かないことがあります。そのような場合に有効なのが「連帯債務者との収入合算」です。フラット35では、配偶者や親、子どもなどの親族を連帯債務者として設定し、その人の収入を合算することが認められています。
たとえば、夫が個人事業主で安定的な所得が確保しにくい場合でも、妻が会社員やパートタイム、契約社員、あるいは派遣社員として働いていれば、その「給与収入」を加えることで借入可能額を増やすことができます。合算の対象となるのは、源泉徴収票に記載された給与収入であり、安定的な収入とみなされれば審査で有利に働くでしょう。
個人事業主の住宅ローンのお悩みは無料FP相談を活用しよう

個人事業主として住宅ローンを組む際は「審査に通るか不安」「借入可能額が分からない」「将来的に返済していけるか心配」といった悩みを抱える方は多くいらっしゃるでしょう。会社員と比べて収入の安定性が見えにくく、提出書類も多岐にわたるため、自分ひとりで判断するのは難しいのが現実です。
こうした不安を解消するためにおすすめなのが、FP(ファイナンシャルプランナー)への相談です。
FPは家計や収支、将来のライフプランを踏まえた上で、無理のない資金計画を一緒に立ててくれる専門家です。どの金融機関を選ぶべきか、フラット35と民間ローンのどちらが自分に合っているのかなど、住宅ローン選びに関する具体的なアドバイスも受けられます。

個人事業主がフラット35の審査で必要な書類
フラット35は個人事業主でも利用できる住宅ローンとして人気がありますが、審査を通過するためには、必要な書類をしっかりと揃えることが前提となります。
会社員とは異なり、個人事業主の場合は「収入の安定性」を示すための証拠書類が多く求められる傾向があります。提出する書類の内容に不備や不足があると、審査が長引くことや、否決されることもあるため注意が必要です。
以下は、個人事業主がフラット35を申し込む際に一般的に必要とされる主な書類の一覧です。
書類名 | 内容・目的 | 補足事項 |
---|---|---|
確定申告書 (直近2~3年分) | 過去2年間の収入状況を 確認するために使用 | 第一表・第二表・
収支内訳書(青色なら青色申告決算書)を含む |
課税証明書 または 納税証明書 | 所得金額・納税状況の確認用 | 役所(市区町村)で発行 最新のものを用意する |
物件関連書類 | 購入予定物件の詳細や 契約内容を確認するために使用 | 住宅や土地の登記事項証明書や売買契約書、 重要事項説明書、建築確認通知書など |
借入申込書 | 借入金額や返済計画、 家計状況などを記載する書類 | 金融機関が指定したフォーマットを 使用する必要あり |
住民票 | 申込者の住所 および同居家族を確認する目的 | 続柄や世帯全員の記載があるものが望ましい |
本人確認書類 | 身元確認のため | 顔写真付きの公的身分証が必要 (例:運転免許証、マイナンバーカード) |
個人事業主がフラット35の審査で注意すべきポイント

個人事業主がフラット35を利用する際には、会社員とは異なる観点で審査が行われるため、事前に理解しておくべき注意点があります。特に重要なのが、審査基準として「年収」ではなく「所得」が用いられる点です。
また、既存の借り入れ状況や納税の履歴、信用情報なども審査の対象です。クレジットカードの分割払いや車のローン、奨学金の残債などは可能な限り完済、または返済額を減らすことで、審査が通りやすくなります。
こちらでは、フラット35の審査において個人事業主が特に注意すべき「所得の見られ方」と「借り入れや信用情報に関するポイント」「納税状況や信用情報」について、順を追って解説していきます。
「所得」が基準になるため、経費のかけ過ぎに注意する
個人事業主がフラット35を利用する際、特に注意したいのが「所得」の金額です。
会社員の場合は源泉徴収票などで「年収」が審査基準となりますが、個人事業主は「所得」、つまり「売上から必要経費を差し引いた後の金額」が評価対象です。そのため、節税を意識して経費を多めに計上していると、実際の収入状況よりも低い所得と見なされ、審査に不利になる可能性があります。
たとえば、事業用の備品や交際費、車両費などを積極的に経費計上することで、確定申告上の所得は抑えられますが、その分だけ返済能力が低いと判断されてしまうリスクが出てきます。フラット35の審査では、返済負担率や借入可能額の判定にこの「所得」が直接影響するため、節税対策が思わぬ障壁となることもあるのです。
既存の借り入れを完済・減額させる
フラット35をはじめとする住宅ローンの審査では「返済負担率」が重視されます。
返済負担率とは「年収に対する年間返済額の割合」を示すもので、基準を超えると融資が難しくなる可能性があります。個人事業主の場合、以下のような借入れが返済負担率に含まれるため注意が必要です。
- 事業資金としての借り入れ(設備投資や運転資金など)
- 自動車ローンやカードローン
- リボ払いの残高
特に、複数の借り入れを抱えている場合、それぞれの年間返済額が合算され、審査上で不利になることがあります。また、月々の返済が少額でも、合計金額が基準を超えると、希望する借入額を得られないケースもあります。住宅購入を検討しているなら、既存の借金はできる限り完済、あるいは返済額を減らしておきましょう。
また、前もって借入れ内容を整理し、どれを優先して返済すべきか明確にすることも大切です。事業への影響や手元資金とのバランスも考え、無理のない返済計画を立てましょう。
納税状況や信用情報に問題がないか確認する
フラット35を申し込む際、個人事業主が特に意識すべきなのが「納税状況」と「信用情報」の健全性です。住宅ローンの審査では、収入の金額だけでなく、誠実に納税義務を果たしているか、日常的に金銭管理を適切に行っているかといった点も厳しく見られます。
たとえば、所得税や消費税、個人事業税などに未納や滞納がある場合は「返済能力があっても信用に欠ける」と判断され、融資に不利になるおそれがあります。加えて、国民健康保険や年金などの社会保険料も、期日通りに納めているか確認されることがあるため注意が必要です。
他にも、過去の納税記録は、税務署で発行される納税証明書(その1・その2)を使って確認しておくと安心です。
【実際どうだった?】個人事業主でフラット35を借りた人の体験談
会社員と比べて、個人事業主は収入が不安定と見なされやすいため、住宅ローン審査では厳しく評価されます。そのため「どのタイミングで審査を受けたのか」「自己資金はどれくらい用意すべきか」など、実際に経験した人の声は、これから申し込もうとしている方にとって参考になるはずです。
特に、開業後の年数や確定申告の内容は、審査通過に大きな影響を与える要素の一つとされています。そのため、審査において不安だったことや工夫したこと、実際に用意した頭金の額など、リアルな体験談から学べるポイントは多いでしょう。
こちらでは、実際にフラット35を利用して住宅を購入した個人事業主の体験談を紹介していきます。これからフラット35の利用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
※2025年7月8日~2025年7月11日時点での当編集部独自調査による
※審査や借入額は個人によって異なるためご了承ください。
フラット35の審査を受けたのは開業して何年後でしたか?

個人事業主の方にフラット35の審査を受けたのは開業してからどのタイミングか伺ったところ「4~6年後」が最も多く、全体の37.5%を占めていました。次いで「1~2年後」および「2~4年後」がいずれも25%という結果になっています。一方で「6年以上経過後」に審査を受けた人は12.5%と少数派でした。
この結果から、開業してある程度の期間が経過し、収入や経営の安定性が確保されてから審査に臨んでいる傾向が読み取れます。特に4年以上経過後の申し込みが半数を超えていることから、審査通過に向けて実績作りを重視していることが分かります。
フラット35の審査で、特に不安だった点は何ですか?

続いて、フラット35の審査を受ける際に、特に不安だったことを伺ったところ「審査全般」と回答した人が47.7%と最も多く、審査そのものが不安だったことがわかりました。個人事業主にとって、審査基準が不透明であることや、提出書類の多さが心理的な負担となっている可能性が高いです。
次に多かったのは「その他」の25%です。収入の波や信用情報への懸念など、不安要素は人それぞれ異なる背景があると考えられます。
頭金はどのくらい準備しましたか?それは審査にどう影響したと感じましたか?

審査を受ける際に、頭金をどのくらい準備したか伺ったところ「0〜200万円」と回答した人が最も多く、全体の47.7%を占めました。次いで「300〜600万円」が25.0%で「1,000万円以上」が18.7%。そして「700〜900万円」が8.6%という結果になりました。
アンケート結果から、約半数の方が比較的少額の頭金でフラット35の審査に臨んでいたことがわかります。特に0〜200万円という少ない自己資金でも融資を受けられたという事実は、自己資金に不安を抱える個人事業主にとって心強い材料と言えるでしょう。

40代男性
頭金は100万円だけだったが、返済比率のおかげで通った

30代女性
頭金なしだが、審査に通った
頭金はまったく準備できませんでしたが、それでも審査に通ったので驚きました。頭金なしは不利だと思っていたものの、収入や返済比率など、他の要素が重視されたように感じます。

30代男性
頭金は物件価格の20%程度を用意した
物件価格の約20%にあたる600万円を頭金として用意しました。おかげで金融機関からの印象も良く、審査は特に滞ることなくスムーズに進行した印象です。
フラット35の審査や契約の過程で、特に大変だったこと・工夫したことがあれば教えてください
フラット35の審査や契約の過程で、特に大変だったことや、工夫したことを伺ったところ、最も多かったのが「確定申告書類の整理と、収入の説明が大変だった」という意見です。特に個人事業主の方の場合は、金融機関側に正確かつ納得のいく情報を提示することが求められるため、多くの労力を使うことになるでしょう。
また「頭金を多めに出すことで、信頼を得られたように感じた」といった意見も見られました。フラット35は物件価格の全額を借りられる制度ですが、あえて多めに自己資金を用意することで、審査に対する安心感や信頼性を高めることができます。このような姿勢が金融機関にも好印象を与える結果につながったと考えられます。

30代男性
確定申告書類の整理と収入の説明が大変
フラット35の審査では、確定申告書類の整理と収入の説明に手間取りました。

40代女性
確定申告書類をそろえるのに苦労した
審査を受けるにあたって、過去3年分の確定申告書類をそろえるのに苦労しました。個人事業主のため、毎年の控えは残していたのですが、一部不足していた書類を再発行する手間があり、時間がかかってしまいました。

40代男性
頭金を多く出したことで、信頼を得られた
フラット35の審査にあたり、少しでも安心してもらえるようにと思い、自己資金から頭金を多めに用意しました。

40代女性
事前審査を複数の金融機関で行った
本審査で落ちてしまうリスクが不安だったため、事前に複数の金融機関で仮審査を受けました。各社で基準や対応が異なることを知り、自分に合った窓口を選ぶ判断材料にもなりました。

40代男性
専門家に相談したことでスムーズに進んだ
住宅ローンに関する知識が乏しく、フラット35の審査が通るか不安だったため、専門の相談窓口を利用しました。
【まとめ】個人事業主でもフラット35は使える!不安な点はFPに相談しよう

フラット35は、収入が安定しにくいとされる個人事業主にとっても、しっかりと準備すれば利用できる住宅ローンです。
確定申告書や事業の収支状況など、求められる書類は多いものの、安定的な収入を証明できれば審査に通る可能性は十分にあります。また、頭金の準備や書類の整備など、前もって対策を講じることで、よりスムーズに手続きが進められるでしょう。

頭金は最低限の100万円しか用意できませんでしたが、返済比率の基準内に収まっていたため、審査は問題なく通りました。