iDeCoの掛金は減額したり増額したりできる?iDeCoの掛金は変更可能なので減額や増額も可能です。ただし、iDeCoの掛金変更には注意点があります。iDeCoの掛金変更の具体的な手続きや注意点、メリット・デメリットを徹底解説!iDeCoの停止手続きも紹介。
監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。
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この記事の目次
- iDeCoの掛金を変更して増額したり減額したりできる?
- iDeCoの掛金は変更可能!増額・減額どちらもできる
- iDeCoの掛金を変更するための手続きについて紹介!
- ①「加入者掛金額変更届」を取り寄せる
- ②「加入者掛金額変更届」に必要事項を記入する
- ③「加入者掛金額変更届」をiDeCo口座のある金融機関に郵送
- 「加入者月別掛金額登録・変更届」が必要な場合もある
- iDeCoの掛金変更の手続きはどこの金融機関でも同じ
- 【注意①】iDeCoの掛金を変更できるのは1年に1回のみ
- 1年の拠出期間(12月〜11月)のうち1回のみ変更できる
- 減額したいと思ったときにいつでも減額できるわけではない
- 【注意②】iDeCoの掛金の増額には上限がある
- iDeCoの掛金の上限は個人の属性によって違いがある
- iDeCoの掛金の上限について解説!
- iDeCoの掛金の平均額について解説!
- iDeCoを減額する前に支払える範囲で掛金を設定しよう
- iDeCoの掛金を変更したときのメリットを紹介!
- 掛金を増額するとiDeCoから得られる利益・運用益は上がる
- 掛金を減額するとiDeCoの毎月の支払いにも余裕が生まれる
- iDeCoの掛金を変更したときのデメリットを紹介!
- 掛金を増額すると運用次第で増額前より損をすることもある
- 掛金の増額は当然毎月の支払いの負担を増やすことになる
- 掛金を減額するとiDeCoによる節税効果が得られにくい
- 掛金を減額すると利益・運用益は得られにくくなる
- 参考:iDeCoの積み立てを停止したい場合の方法を解説!
- 掛金の拠出が難しいなら減額ではなく停止するのもOK
- ①「加入者資格喪失届」を取り寄せて必要事項を記入する
- ②iDeCo口座のある金融機関に「加入者資格喪失届」を郵送
- ③「加入者資格喪失届」が受理されるとiDeCoは一時停止される
- iDeCoの一時停止期間中は「運用指図者」になることに注意
- まとめ:iDeCoの掛金は減額できる!ただし注意が必要
iDeCoの掛金を変更して増額したり減額したりできる?
こんにちは。マネーキャリア編集部です。
先日、50代前半の自営業者の方から次のような相談を受けました。
iDeCoは、個人型確定拠出年金。
自分で出した掛金を自分で運用し、資産を増やし、老後に受け取ることを目指す私的年金制度です。
掛金の額には上限があり、その上限に基づいた金額を積み立て、運用していきます。
しかし、いったん設定した掛金を変更して、増額したり減額したりできるのでしょうか。
加入途中で事情が変わる場合もあるでしょうから、その答えが知りたいでしょう。
そこで、この記事で詳しく解説します。
今回の記事がiDeCoの掛金変更を考えている人のお手伝いになれば幸いです。
iDeCoの掛金は変更可能!増額・減額どちらもできる
結論から先に言いましょう。
iDeCoの掛金変更は可能です。増額も減額もどちらもできます。
では、それに伴う手続きがどのようなもので、掛金変更のメリットやデメリットがどうなっているかについては、これから解説します。
iDeCoの掛金を変更するための手続きについて紹介!
iDeCoの掛金を変更できることは喜ばしいことですが、その手続き方法を知っておかなければいけません。
正しい手順を踏んで、間違いのないように手続きをして、確実を期したいところです。
そこで、手続き方法の詳細をご紹介します。
①「加入者掛金額変更届」を取り寄せる
まず、iDeCoの掛金変更では、運営管理機関(iDeCoの口座がある金融機関のこと)から、「加入者掛金額変更届」を取り寄せましょう。
書式は国民年金基金連合会所定のもので、国民年金の被保険者区分によって以下のような3つの種類があります。
- 第1号被保険者用:自営業者の方など
- 第2号被保険者用:会社員や共済組合の方
- 第3号被保険者用:配偶者が会社員、公務員である被扶養配偶者の方
②「加入者掛金額変更届」に必要事項を記入する
次に、取り寄せた「加入者掛金額変更届」への必要事項の記入です。
記入する内容は、被保険者区分によって一部違うところがありますが、基本的な内容は変わりません。
各被保険者区分に共通する項目は以下の通りです。
- 基礎年金番号
- 氏名
- 生年月日
- 性別
- 住所
- 連絡先電話番号
- 掛金額区分など
③「加入者掛金額変更届」をiDeCo口座のある金融機関に郵送
「加入者掛金額変更届」に必要事項を記入し終わったら、その書類をiDeCo口座のある金融機関に郵送します。
その際に、本人確認書類を同封してください。
金融機関に届いた「加入者掛金額変更届」は確認後、国民年金基金連合会に送られます。
そこで問題がないかどうかの審査が行われます。
問題なし、OKとなったら、翌々月から変更後の掛金の適用となるでしょう。
「加入者月別掛金額登録・変更届」が必要な場合もある
iDeCoで「年単位拠出」が採用された
2018年1月、iDeCoの制度改正が行われました。
その制度改正により、これまでの「月払い」のほか、「年単位拠出」という方法も採用できるようになりました。
「年単位拠出」では、月によって掛金の拠出額の増減or有無を設定することが可能。
したがって、ちょっと支出が多くなりそうな月は掛金を減らし、大変な月は掛金無しにし、余裕のある月は多くするといった工夫もできます。
「年単位拠出」の場合は必要書類が違う
iDeCoの掛金変更の手続きはどこの金融機関でも同じ
iDeCoの口座を設定している金融機関は人それぞれ違うでしょうが、掛金変更手続き自体はどの金融機関でも同じ。
金融機関ごとに違うということはありません。
書類の郵送先はみな異なっていますが、手続きは変わりませんからご安心ください。
【注意①】iDeCoの掛金を変更できるのは1年に1回のみ
iDeCoの掛金変更が可能なら、都合に応じてその都度変更すればいいのかなと思う人もいるでしょうが、制限があります。
変更可能な回数は1年に1回だけ。
1年に何度も変更というわけには行きません。
そのため、変更額を決める場合は、さまざまな状況をよく検討したうえで、慎重に選ぶ必要があります。
後で、変更額が大きすぎた、少ないからもっと多くしようと思っても、翌年まではできませんから注意してください。
1年の拠出期間(12月〜11月)のうち1回のみ変更できる
1年に1回だけiDeCoの掛金変更が可能なのですが、その1年には期間が定められています。
期間は12月から11月までの範囲(拠出期間)です。
その間に掛金変更手続きをして、もう一度やりたいという場合は次の年の同じ拠出期間まで待つことになります。
この拠出期間は非常に重要ですから、しっかり覚えておいてください。
減額したいと思ったときにいつでも減額できるわけではない
iDeCoの掛金拠出が生活にまで影響を及ぼしている場合、減額したくなることもあるでしょう。
しかし、掛金変更は上述のように1年に1回だけしかできません。
その1年以内にすでに掛金変更手続きをしている場合は、減額したくてもできませんから、希望がかなえられません。
したがって、掛金減額の時期には要注意です。
また、最低掛金は5,000円なので、それ未満の減額は不可です。
【注意②】iDeCoの掛金の増額には上限がある
生活資金に余裕があるから、iDeCoの掛金を思い切って増やしてみようかなと考える人がいるかもしれません。
それはそれで結構なことです。
ただし、iDeCoの掛金は無制限に増やせるわけではありません。上限があります。
その上限以上には掛金の拠出はできません。
では、その上限がどうなっているのか知りたいでしょうから、ご説明します。
iDeCoの掛金の上限は個人の属性によって違いがある
iDeCoの掛金の上限は個人の属性によって違います。
個人の属性とは、国民年金の被保険者区分や企業年金の加入状況などのことです。
したがって、自分の属する属性を正確に把握し、その属性に対する上限額がいくらなのかを知ったうえで、掛金を拠出してください。
iDeCoの掛金の上限について解説!
iDeCoの掛金の上限額を属性ごとに表にまとめてみます。
国民年金区分 | 具体例 | 掛金の上限額 |
---|---|---|
第1号被保険者 | 自営業者など | 月額6.8万円 年額81.6万円 |
第2号被保険者 | 企業型DC(企業型確定拠出年金)のない会社の会社員 | 月額2.3万円 年額27.6万円 |
第2号被保険者 | 企業型DCに加入している会社員 | 月額2.0万円 年額24.0万円 |
第2号被保険者 | DB(確定給付企業年金)加入者、公務員 | 月額1.2万円 年額14.4万円 |
第3合被保険者 | 専業主婦(夫)など | 月額2.3万円 年額2.6万円 |
iDeCoの掛金の平均額について解説!
掛金上限額が定まっているiDeCoですが、実際に多くの人はどのくらいの掛金を拠出しているのでしょうか。
非常に興味があるところです。
ご自身にとっても参考になるでしょう。
そこで、iDeCo公式サイトの「ライブラリ」の中の「業務状況」のリンクを参照してみましょう。
「加入等の概況(令和3年7月時点)」というリンクです。
毎月定額拠出の場合ですが、平均掛金額は以下のようになっています。
区分 | 平均掛金額 |
---|---|
第1号 | 28,116円 |
第2号 | 14,290円 |
第3号 | 15,125円 |
全体平均 | 15,885円 |
iDeCoを減額する前に支払える範囲で掛金を設定しよう
iDeCoでは、原則60歳以降まで資金を引き出せません。
そのため、生活が苦しくなっても、途中でお金を受け取れないので、iDeCoは役に立ちません。
さらに、生活が苦しいときは、掛金の拠出負担が大きくなることも。
そのようなときは減額手続きはできるのですが、わざわざ手続きをするのも大変だし、1年に1回までという制限もあります。
そんなことを考えると、減額手続きをする以前に支払える範囲内で掛金を設定しておくほうがいいでしょう。
また、リストラや会社の倒産、家族の病気などが起きる場合も。
その際のことも念頭に入れておく必要があるでしょう。
それをカバーするのが貯金ということになるでしょうが、その貯金額が一定以上になり、余裕があるというのなら、iDeCoの掛金を少し増やすのも悪くありません。
iDeCoの掛金を変更したときのメリットを紹介!
iDeCoの掛金の変更を求める場合、どのようなメリットがあるでしょうか。
変更手続きをしようという人は具体的なメリットを知りたいと思っていることでしょう。
そこで、掛金を増額した場合と減額した場合のメリットを別々にご紹介します。
掛金を増額するとiDeCoから得られる利益・運用益は上がる
iDeCoは老後の資金を掛金を資産運用することで増やそうという制度。
その掛金を増額すると、運用される資金が増えることになりますから、そこから得られる利益や運用益が大きく上がる可能性があります。
これは大きなメリットで、掛金を支払っているときの負担は増え、少し大変ですが、あとで安定した老後の生活を送れます。
掛金を減額するとiDeCoの毎月の支払いにも余裕が生まれる
iDeCoの掛金を減額した場合は、毎月の支払額が減りますから、少し負担が楽になりますね。
生活が苦しくなった場合などは、掛金を減額して、少し支払いに余裕を持たせたいところでしょう。
その後また生活状況がよくなった時に、時期を見計らって掛金を再度増額することも可能。
そうすれば、老後の資金を増やしやすくなります。
iDeCoの掛金を変更したときのデメリットを紹介!
続いて、iDeCoの掛金を変更した場合のデメリットはどうなっているでしょうか。
かなり気になる点でもあり、今後のiDeCoの利用状況にも影響が出てくるでしょうから、よくチェックしてみましょう。
掛金を増額すると運用次第で増額前より損をすることもある
iDeCoの掛金を増額すれば、資産運用で大きな利益や運用益が得られる可能性はありますが、資産運用が思ったように行かない場合もあります。
そのようなときは、損失を生むことになるのですが、掛金増額によりその損失がかえって大きくなる可能性も。
元手が増えることで、資産運用の結果も大きくプラスになったり、大きくマイナスになったりします。
そのため、運用状況によっては、掛金増額前よりも痛手を被る恐れがあることは覚えておきましょう。
掛金の増額は当然毎月の支払いの負担を増やすことになる
iDeCoの掛金増額で、少しでも得られる年金を増やしたいところですが、掛金増額になれば、当然毎月の支払い負担は大きくなります。
それが生活を圧迫しなければいいのですが、少し苦しくなりそうであっても、掛金変更は1年に1回しかできませんから、しばらくは我慢して増額した掛金を支払い続けなければいけないでしょう。
したがって、掛金を増額するにしても、無理のない範囲内で行いたいところです。
掛金を減額するとiDeCoによる節税効果が得られにくい
iDeCoには税金に関するメリットが3つあります。
- 掛金が全額所得控除になる
- 利益・運用益が非課税
- 受取時に税制優遇がある
掛金を減額すると利益・運用益は得られにくくなる
iDeCoは拠出した掛金を元手に資産運用し、利益や運用益を得て、老後の資産を増やそうという制度ですが、掛金を減額すれば、利益や運用益の額も減る可能性が大きくなります。
それでは、老後の生活の安定に少しマイナスの影響が出ることも。
毎月支払う掛金が減って、現在の生活は楽になるでしょうが、後々のことを考えると、少し残念な点です。
参考:iDeCoの積み立てを停止したい場合の方法を解説!
iDeCoへの加入を検討している人の中には、将来何らかの事情で掛金を支払えなくなったらどうなるのだろうと心配している人もいるでしょう。
掛金の減額だけでは不十分で、積み立ての停止をせざるを得なくなった場合などです。
果たして、それは可能なのでしょうか。
可能だとして、どのような手続きを踏めば積み立て停止ができるのでしょうか。
かなり気になる点でしょうから、以下にまとめました。
掛金の拠出が難しいなら減額ではなく停止するのもOK
iDeCoの掛金を全く支払えないほど生活が苦しい状況になったら、停止するのもOKです。
もちろん、掛金減額も検討するでしょうが、減額でも対処できないほど厳しい状況なら、掛金拠出を停止できます。
いつでもどんな理由でもできます。
①「加入者資格喪失届」を取り寄せて必要事項を記入する
iDeCoの掛金拠出を停止できると聞いて、ほっとした方も多いでしょうが、その手続き方法も知っておいた方がいいので、ここで解説しましょう。
手続き方法は掛金減額方法と似ています。
ただし、取り寄せる書類が違います。
iDeCoの口座がある金融機関から「加入者資格喪失届」という書類を取り寄せてください。
金融機関から取り寄せできなければ、iDeCoのコールセンターに連絡して、請求します。
続いて、取り寄せた「加入者資格喪失届」への記入です。
「加入者資格喪失届」の記入の仕方については、iDeCo公式サイトの「加入者の方へ」「各種変更手続き
(氏名・住所、掛金引落金融機関、掛金額等)について」の項目の⑦のリンクに載っています。
「加入者資格喪失届 (K-015)」というリンクです。
記入項目は以下の通りです。
- 基礎年金番号
- 氏名
- 生年月日
- 性別
- 住所
- 連絡先電話番号
- 喪失理由
②iDeCo口座のある金融機関に「加入者資格喪失届」を郵送
③「加入者資格喪失届」が受理されるとiDeCoは一時停止される
金融機関に郵送された「加入者資格喪失届」が受理されると、iDeCoの掛金の一時停止という運びになります。
これで掛金負担が一時的になくなりますから、しばらくは少し楽になるでしょう。
iDeCoの一時停止期間中は「運用指図者」になることに注意
iDeCoの掛金の拠出一時停止中は、「運用指図者」扱いになります。
「運用指図者」とは、掛金の拠出は無し、それ以前に拠出した掛金だけで運用という立場の人のこと。
つまり、iDeCoの掛金拠出一時停止中も、運用自体が一時停止になるわけではなく、「運用指図者」として運用を続けます。
ただし、「運用指図者」にはデメリットも。
そういう意味では、あまりiDeCoの一時停止はおすすめできることではありません。
一時停止よりも、掛金減額のほうがプラス面は大きいですから、できるだけ掛金拠出を続ける方が結果はいいです。
なお、「運用指図者」になり、iDeCoの加入資格を喪失した後でも、掛金拠出の再開はいつでも可能。
ただ、その際は改めて加入手続きをする必要があり、その手続き方法は、新規加入者と同じです。
「個人型年金加入申出書」を金融機関から取り寄せたうえで、必要事項を記入してから、提出してください。
まとめ:iDeCoの掛金は減額できる!ただし注意が必要
この記事では、iDeCoの掛金を増額や減額できるかという点を中心にお伝えしてきました。
iDeCoの掛金の増額・減額は可能です。
ただ、所定の手続きがあるので、その方法を覚えておく必要があります。
と言っても、難しいことではなく、iDeCo口座のある金融機関から必要書類を取り寄せて、記入し提出します。
今回は、そんなiDeCoの掛金変更手続きのほか、以下のようなポイントをご紹介しました。
- iDeCoの掛金変更における注意点
- iDeCoの掛金は支払える範囲内で
- iDeCoの掛金変更に伴うメリット・デメリット
- iDeCoの掛金拠出を一時停止する方法