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パート主婦で老後資金の形成のためにiDeCoを利用したいと考えている方は少なくないと思います。本記事ではパート主婦の方がiDeCoを利用するメリット・デメリットについて解説します。またアルバイトやフリーターのiDeCo利用のメリット・デメリットも解説します。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

この記事の目次

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パート主婦やフリーターの方がiDeCoを利用するメリット・デメリットとは

こんにちは。マネーキャリア編集部FPの西田です。 


先日、パート主婦の方から以下の相談を受けました。  

家事の合間にパートをしています。老後のことを考えて、iDeCoで資産形成したいと考えています。パートで働く私がiDeCoを利用するメリット・デメリットを教えてください

iDeCoとは公的年金にプラスして受け取れる私的年金の一つであり、加入者が着々と増えている制度です。


金融庁が平成31年に発表した人生100年時代における資産形成によると、日本の成人人口 (1億500万人) に占めるiDeCoの加入割合は1.6%と低いものの、加入者は上昇傾向にあります。


パート主婦、フリーターの方のなかにも、将来に備えてiDeCoに興味を持たれている方も少なくないでしょう。


パート主婦、フリーターがiDeCoを利用する大きなメリットとして、月々のiDeCoの掛金全額が所得控除の対象になることが挙げられます。

また、デメリットとしては手数料による元本割れのリスクがあります。


パート主婦、フリーターがiDeCoを利用するメリット・デメリットは上記以外にも少なくありません。


そこで、本記事では、iDeCoのメリット・デメリットについて徹底的に解説していきます。


本記事が、iDeCoを活用した老後資金形成を検討されている方の参考になりますと幸いです。

パート主婦などのためのiDeCo概要や掛金の上限額について解説


パート主婦の掛金の上限額は月額2万3,000円と定められています。


iDeCoの掛金は加入者の職業や雇用形態などによって、上限額が異なります。


例えば、自営業者は月額6万8,000円を上限に掛けられるのに対し、会社員の掛金の上限額は2万円代に留まります。(会社員は加入している年金によって掛金の上限額が異なります)


iDeCoは国民の老後資金形成をサポートする制度なので、会社などから老後資金を形成するための補助が少ない人ほど掛けられる金額が大きくなるのです。


パート主婦は夫が貯めている老後資金にのみ依存するのでなく、自分名義の老後資金があると安心できるはずです。

掛金は毎月5,000円から掛けることができるので、パート代の一部をiDeCoで運用することをおすすめします。

パート主婦の方がiDeCoを利用するメリットとは?


iDeCoには国民が老後資金を貯めやすくするための様々な優遇制度があります。


パート主婦の方は老後のためにパート代を貯金するよりも、iDeCoで運用した方が得られるお金が大きくなるケースが多いです。


パート主婦の方がiDeCoを利用するメリットとして、

  • 毎月のiDeCoへの掛金全額が所得税控除になる
  • iDeCo運用中の運用益は非課税で再投資される
  • iDeCo給付金の受け取り時の税負担が軽減される
を挙げられます。

ここでは、パート主婦の方がiDeCoを利用するメリットについて詳しく解説していきます。

毎月のiDeCoへの掛金全額が所得税控除になる

毎月のiDeCoの掛金は所得控除の対象に全てなります。

iDeCoを活用して老後資金を貯めることによって、所得税住民税の負担を軽減させることができるのです。


例えば、iDeCoで毎月1万円の積立を行うと、年間12万円が所得控除の対象になります。


所得税(所得税率5%:復興特別所得税を加味しない)は6,000円、住民税(一律10%)を1万2,000円とした場合、総額で1万8,000円の負担が免除されます。


定期預金、普通預金、あるいはタンス預金などで、毎月1万円貯めたとしても、税金は1円も戻ってきません。


iDeCoを活用し、所得税控除を受けるためには年末調整が必要です。

年末調整を行わなかった場合、所得控除を受けられないので注意してください。

iDeCo運用中の運用益は非課税で再投資される

株式、債券、投資信託などといった通常の投資では、運用益は課税の対象になります。

例えば、10万円の利益が出た場合、2万315円が税金として差し引かれます。  


対して、iDeCoの場合、運用益は課税の対象になりません

運用益は非課税となり、再投資されますので、お金をどんどん増やしていくことができるのです。

iDeCo給付金の受け取り時の税負担が軽減される

iDeCoは運用したお金を受け取る際に退職所得控除、もしくは公的年金等控除が適用されます。


受け取り方法によって適用される控除は異なります。


一時金として受け取る場合

iDeCoで運用したお金は受け取りが認められる60歳になったら70歳までに、一時金として一括で受け取ることができます。


一時金として受け取る場合は、退職所得扱いになるため課税の対象です。

しかし、退職所得控除が適用される範囲内の金額であれば税金は課されません。


年金として受け取る場合

運用してきたお金を年金として受け取る場合は、5年以上20年以下の分割で支払われます。

この受け取り方を選択したら年金と同様に扱われるので、iDeCoの受取額は課税所得の対象です。


しかし、公的年金等控除が適用されるため、制度の範囲内の金額であれば税負担は軽減されます。

パート主婦の方がiDeCoを利用するデメリットとは?


iDeCoは途中解約が認められず、かつ60歳までお金を引き出すことができません。


やむを得ない事情などで支払いが困難になった場合は、解約することになります。


iDeCoに加入する際は、デメリットについてもしっかりと理解しておく必要があるのです。


パート主婦の方がiDeCoを利用するデメリットとして、

  • 扶養内だとiDeCoの所得税控除のメリットが利用できない
  • 手数料によって元本割れするリスクがある
  • 運用期間が短いと受け取り可能年齢が先延ばしになる

を挙げられます。


パート主婦の方がiDeCoを利用するデメリットについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。

扶養内だとiDeCoの所得税控除のメリットが利用できない

iDeCoの毎月の積立金は所得控除の対象になるため、パートの年収が100万円以上の主婦は所得控除のメリットを受けることができます。

対して、パートの年収が100万円に満たない主婦は、住民税、ないし所得税が課されるお金がないため所得控除の対象にはなりません

所得控除のメリットを利用できないことでマイナスになることはないので、これに関して心配することはないでしょう。

手数料によって元本割れするリスクがある

iDeCoについて、投資信託商品は元本割れするリスクがあることをご存じの方は多くいらっしゃいます。

しかし、元本確保型の預金・保険商品でも元本割れすることもあるので注意してください。


元本確保型の預金・保険商品で元本割れする最大の原因は、iDeCoの運用にかかる手数料が元本確保型商品の金利よりも高いところにあります。


iDeCoはどの金融機関で運用を行っても、運用手数料として月額最低167円年間で2,004円かかります。 


多くの金融機関で提供されているiDeCoの元本確保型預金の適用金利は、年0.01パーセントです。

iDeCoの運用商品を全て元本割れのリスクのない定期預金にしている方は、手数料によって損失が発生してしまう、つまり元本割れが起きるのです。


個人事業主の方の中には、「全額定期預金で運用し、手数料による元本割れが起きても節税対策になるから構わない」と考える方もいらっしゃるでしょう。

しかし、一年間に2,000円前後の損失であっても、何十年も運用を行っていると数万円の損失になります。 


iDeCoの運用における手数料を考慮すると、リスクのない商品とある程度リスクのかかる商品をバランスよく運用すべきと言えるでしょう。

運用期間が短いと受け取り可能年齢が先延ばしになってしまう

iDeCoの年金受け取り開始年齢は原則60歳からとなっています。


しかし、60歳で運用したお金を受け取るには、通算加入者等期間が10年以上という条件をクリアしていなければなりません。


60歳の時点で通算加入者等期間が10年に満たない場合は、年金支給開始年齢が先延ばしになります。


運用期間ごとの受け取り年齢については、以下の通りです。

  • 8年以上~10年未満 61歳から
  • 6年以上~8年未満 62歳から
  • 4年以上~6年未満 63歳から
  • 2年以上~4年未満 64歳から
  • 1カ月以上~2年未満 65歳から 

50歳を過ぎてからiDeCoをはじめると、受け取り開始年齢が先延ばしになります。

運用したお金をできるだけ早く受け取りたい方は、早いうちに加入しましょう。

パート主婦の方はiDeCoをどのように利用するべき?


パート主婦の方にとってもiDeCoに加入することで得られるメリットは多くあります。


そしてなによりも、自分名義の老後資金を形成できることは最大のメリットと言えるでしょう。


パート主婦の方がiDeCoを利用する際のポイントとして、

  • iDeCoの所得税控除を利用するために103万以上稼ぐ
  • 103万は超えても良いが130万を超えると注意が必要
  • パート主婦の方で年収128万なら所得税が発生しない
  • その他の税金の壁について確認する
を挙げられます。

パート主婦の方がiDeCoの運用を行う際は、税金の壁を意識するようにしてください。

パート主婦の方に適したiDeCoの上手な運用方法について解説していきます。

iDeCoの所得税控除を利用するために103万以上稼ぐべきである

iDeCoの所得控除を利用するためには、パートで103万円以上稼ぐ必要があります


家計に余裕があまりない方であっても、これまで通りの103万円にプラスして、iDeCo運用分を稼ぐことで、iDeCoを始めることもできます。

103万は超えても良いが130万を超えると注意が必要である

iDeCoに加入すれば、扶養内で無制限に稼げるわけではありません。

パート収入が130万円を超えると、社会保険料を自ら負担しなければならなくなります


103万円以上130万円以上稼ぎたい主婦の方におすすめの方法があります。

年収を129万円に抑え、iDeCoを満額の27万6,000円積み立てる方法をとれば、課税対象となる所得はなく、かつ社会保険料の負担もありません。

パート主婦の方で年収128万なら所得税が発生しない

パート主婦の方はiDeCoに加入することで、所得税を発生させずに年間128万円まで稼ぐことができます。


年収128万円のパート主婦Aさんのケースを見てみましょう。


Aさんの所得税を計算する際、給与所得控除(65万円)と基礎控除(38万円)を所得控除として差し引きます。


給与収入128万円-65万円(給与所得控除)+38万円(基礎控除)=25万円

上記計算の通り、Aさんの課税所得は25万円です。

この25万円に所得税率(5%)をかけると、所得税は12,500円となります。


AさんがiDeCoに加入するとどうなるのでしょうか。


国民年金第3号被保険者(専業主婦(夫))のiDeCoの掛金の上限額は、月額23,000円、年間では27万6,000円です。


Aさんが最大の27万6,000円を拠出した場合、小規模企業共済等掛金控除によって27万6,000円の所得控除が適用されます。


課税所得25万円のAさんは27万6,000円の所得控除を受けられるので、課税対象となる所得はゼロです。

その他の税金の壁について確認しておこう

パートで働く主婦には、3つの税金の壁があると言われています。 

  • 100万円の壁(住民税)
  • 103万円の壁(所得税)
  • 106万円、あるいは130万円の壁(社会保険料)
100万円の壁、103万円の壁については、気にされないパート主婦も少なくありません。
稼いだ分の一部が課税対象になるだけなので、重い負担ではないからです。

対して、106万円の壁、130万円の壁は注意が必要です。
106万円、あるいは130万円の壁を超えると、配偶者の扶養から外れて社会保険料を自分で負担しなければならなくなります。
130万円以上稼ぐと、収入が増えたにもかかわらず手元に残るお金が減ってしまうという現象が起こることもあります。

主婦の方には、ご自身の働き方、年収などに合わせて、iDeCoの掛金を決めることをおすすめします。

50代を過ぎたパート主婦でもiDeCoを利用するメリットはある?


50代でiDeCoに加入した場合、運用期間が短いためお金を膨らましにくい受け取り年齢が遅れるといったデメリットがあります。


FPや、投資に詳しい人の多くが「iDeCoは20代、30代のうちから始める方が得られるメリットは大きい」と考えていることも事実です。


しかし、50代を過ぎたパート主婦でも、iDeCoを始めることで得られるメリットはたくさんあります。


ここでは、50代を過ぎたパート主婦がiDeCoで得られるメリットを紹介していきます。

年収129万だと7年間の積立で約30万の税金控除がある

年収129万円の方がiDeCoの運用を7年間におよんで行うことで、総額30万円程度の所得控除を受けることができます。


現在53歳でパートとして働いているAさんのケースを見てみましょう。


Aさんはパートで年間129万円稼ぎ、社会保険は夫の扶養に入っています。


AさんのiDeCoの掛金上限は、月額2万3,000円(年額27.6万円)です。

Aさんの年収を60歳まで129万円とし、2万3,000円の掛金を毎月拠出した場合、税額軽減額はトータルで30万8,000円になります。

所得税・住民税それぞれの税金控除額を計算

続いて、Aさんの所得税、住民税の税金控除額を計算してみましょう。


所得税額

1,290,000円(年収)-650,000円(給与所得控除)-380,000円(基礎控除)=260,000円(課税所得)

所得税は上記の課税所得に所定の税率を掛けて計算します。


260,000円×5%=13,000円

年間の所得税は1万3,000円となり、53歳から60歳までの所得税は9万1,000円となります。


iDeCoの掛金によって、27万6,000円は全額控除できます。


Aさんの課税所得26万円から27万6,000円を引くとマイナスになるので、課税所得はゼロになります。

iDeCoに加入することで所得税の負担はなくなり、7年間で総額91,000円の軽減になります。


住民税

住民税の課税所得の計算式は次の通りです。

1,290,000円(年収)-650,000円(給与所得控除)-330,000円(基礎控除)=310,000円 (課税所得)

住民税は課税所得31万円に税率を掛けて計算します。(市町村によって住民税の税率は異なりますが、ここでは10%とします)


310,000円×10%=31,000円


年間の住民税は31,000円となり、 53歳から60歳までの住民税は217,000円となります。


所得税の計算式と住民税の計算式を踏まえると、AさんがiDeCoに加入することで控除される税金は次の通りです。

91,000円(所得税)+217,000円(住民税)=308,000円

AさんはiDeCoに53歳から60歳まで加入することで、30万8,000円の控除を受けられます。



iDeCoは手数料にも注意が必要である

iDeCoで老後資金の形成を考えている方は、運用にかかる手数料に注意する必要があります。

運用手数料として毎月最低167円、1年で2,004円かかります。


運用において元本割れを恐れるあまり、全てを預金商品にした場合、手数料によって元本割れしてしまうので気を付けてください。

iDeCoは受け取り可能年齢が加入期間によって決まる

iDeCoで運用したお金は、原則60歳になったら受け取ることができます。

しかし、60歳で受け取るには、60歳の時点で10年以上加入していなければなりません。


50歳を過ぎてからiDeCoに加入を考えている方は、自分が運用したお金を受け取れる時期を確認しておくようにしてください。

アルバイト・フリーターがiDeCoを利用するメリット・デメリットとは?


アルバイト・フリーターとして働かれている方の中には、将来について不安を抱えていることも少なくないでしょう。

アルバイト・フリーターの場合、会社員のような退職金、厚生年金などがないため老後資金形成を自ら行う必要があります。


ここでは、アルバイト・フリーターがiDeCoを利用するメリット・デメリットについて解説していきます。

アルバイト・フリーターがiDeCoを利用するメリットについて解説

アルバイト・フリーターの方がゆたかな老後のためにできることの一つにiDeCoがあります。


アルバイト・フリーターがiDeCoを利用する3つのメリットを見てみましょう。

  1. アルバイト・フリーターは拠出限度額が高い
  2. 様々な税制控除を受け取れる
  3. 老後資金を確実に貯められる

アルバイト・フリーターは会社員や公務員などと比較して、掛金の上限額が高く設定されています。
毎月、5000円から6万8,000千円の範囲内で、自分の収入や家計の状況などに合わせて掛金を選択できます。

毎月の掛け金分は所得控除の対象になるので、所得税、住民税の負担を軽減できます。
通常の貯金を行っても税金の負担が変わらないことを考えると、iDeCoはお得と言えるでしょう。

また、iDeCoは60歳になるまでお金を原則引き出せませんので、お金を半強制的に貯められるというメリットもあります。
貯金が苦手で、ついつい浪費してしまう方でも、お金を貯められるので安心です。

アルバイト・フリーターがiDeCoを利用するデメリットについて解説

アルバイト・フリーターの方はiDeCoを利用するにあたって、デメリットについても理解しておいてください。


アルバイト・フリーターがiDeCoを利用するデメリットは以下の通りです。

  1. 60歳まで引き出せない
  2. 手数料がかかる
  3. 給与が少ない時期など支払いが大変かもしれない

iDeCoは老後資金形成を目的とする制度であることからも、60歳まで原則として引き出すことができません。

やむを得ない事情などで運用を中止する場合は解約できますが、途中解約では元本割れすることがほとんどです。


iDeCoは運用方法によってはノーリスクで運用できますが、運用手数料が高く、預金型の運用方法のみを用いた場合は元本割れするので注意が必要です。


iDeCoの支払いが負担になったり、目先のライフイベントの支払いに困ったりしないよう、無理のない掛金を設定するようにしてください。

iDeCoや資産運用に関する悩みはFPに相談すべき理由

準備中

まとめ:パート主婦でもiDeCoを利用すべきである

ここまでパート主婦でもiDeCoを利用すべき理由を解説してきました。


パート主婦の方のなかには老後について不安を抱えながらも、老後の資金については夫に一任されている方も少なくないでしょう。


しかし、先行きが見通せない時代であることや、女性の方が男性よりも一般的に支出が多いことを考慮すると、主婦の方もご自身で老後資金の形成を行うことをおすすめします。


パート主婦の方がiDeCoに加入することで、税負担の軽減などのメリットを得られます。

iDeCoの掛金分は所得控除になるため、労働時間をわずかに増やすことで、これまで通りの生活費を手元に置きながらiDeCoの運用を行うことも可能です。


老後の不安を少しでも解消するために、あるいはゆたかな老後のためにiDeCoの加入がおすすめです。


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