申告を忘れると損する?年末調整で申告する10種類の控除のサムネイル画像

年末調整では、自分から控除について申告をしないと損をしてしまいます。今回の記事では、年末調整で申告できる10種類の控除について紹介しています。どのような控除があるのかをしっかりと把握し、申告漏れがないようにぜひ最後まで記事を読んでください。

監修者「谷川 昌平」

監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー

株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。
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この記事の目次

年末調整とは?

年末調整とは、給与所得者に対して支払われた1年間の給与や賞与、源泉徴収した所得税などについて、勤務先が12月の最終支払日に計算をして所得税などの調整をするシステムです。


毎月の給与から天引きされている税額が正しいわけではなく、年末に勤務先が税額を調整されることを年末調整と言います。


勤務先が年末調整を行うことで、毎月天引きされている金額が多ければ還付され、毎月天引きされている金額が少なければ不足分を徴収して初めて納税が完了します。


年末調整の対象となる人は2パターンの時期によって異なります。


  • 12月に年末調整を行う人

12月に年末調整を行う人は、原則企業に在籍しているすべての従業員です。

しかし、年収が2,000万円を超える従業員は、例外として年末調整の対象にならないため、年末調整で控除されるべき項目については自分で確定申告をしましょう。


  • 年の途中で年末調整を行う人

年の途中で年末調整を行う人は、以下5つの条件に1つでも該当する人です。

  1. 海外に転勤になり、非居住者となった人
  2. 死亡によって退職した人
  3. 再就職できないほどの心身の障害のために退職した人
  4. 12月に給与などを受け取ってから退職した人
  5. パートなどで年間の給与が103万円以下の人

年末調整の控除について

控除とは「差し引く」ことを指し、年末調整における控除とは、給与合計から差し引かれるもので、給与合計から控除額を差し引きした金額がその年の「所得」となります。

控除は、基礎控除や配偶者控除など全部で15種類あり、納税者を平等にするために設けられています。

配偶者の有無、子供の有無などの家族構成や、障害を抱えていて納税する力が弱い人、生命保険やiDeCoなどを活用できている人などは、控除額が増えるので納税額が減ることになります。

つまり、「給与が同じなら納税額も同じ」ではないということですね。

年末調整で控除の対象となるものがあれば、年末調整の際に申告をしないと控除されませんので、忘れずに申告をしましょう。

年末調整で申告できる控除10種類

年末調整で申告できる控除について、一つずつ見ていきましょう。

  • 基礎控除

基礎控除は、年齢や性別、家族構成にかかわらず誰でも対象となっています。

合計所得金額基礎控除額
~2,400万円48万円
2,400万円超~2,450万円32万円
2,450万円超~2,500万円16万円
2,500万円超~0円

所得が低い方が、控除額は大きくなります。

基礎控除を受ける際は、「給与所得者の基礎控除申告書」の提出が必要です。

所得2,400万円以下に該当する人がほとんどだと思いますので、何もせずに48万円控除されるのはありがたい仕組みですね。


  • 配偶者控除、配偶者特別控除

配偶者控除は、配偶者の所得が48万円以下で、給与が103万円以下の人が対象です。

合計所得金額一般の控除対象配偶者の控除額70歳以上の控除対象者の控除額
~900万38万円48万円
900万円超~950万円26万円32万円
950万円超~1,000万円13万円16万円

また、103万円を超えた場合でも、給与収入が201.6万円未満の場合は、配偶者の所得に応じて最大38万円の配偶者特別控除を受けられます。

配偶者がアルバイトやパートなどをしている場合は、稼ぎ過ぎないように注意が必要ですね。


  • 扶養控除

扶養控除は、所得の合計が48万円以下の扶養親族がいる人が対象です。

扶養親族の条件控除額
給与収入が103万円以下38万円
19歳~23歳未満
(給与収入は同上)
63万円
70歳以上の親族と同居
(給与収入は同上)
58万円
70歳以上の親族と同居していない場合
(給与収入は同上)
48万円

年齢やその他条件によって、控除額が変わるので、注意しましょう。


  • 生命保険料控除

生命保険料控除は、その年に支払いをした保険料に応じて適用される控除です。

保険契約の種類によって控除限度額が変わります。

保険料の種類新生命保険料控除旧生命保険料控除
一般の生命保険料控除最大4万円最大5万円
介護医療保険料最大4万円最大4万円
個人年金保険料最大4万円最大5万円

合計で最大12万円が控除されます。


  • 地震保険料控除

地震保険料控除は、支払いをした地震保険料や、経過措置対象となる長期損害保険料が控除の対象になり、最大5万円が控除されます。


  • 小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除は、以下の掛金を払っている人が対象です。

  1. 小規模企業共済法の規定によって結ばれた独立行政法人中小企業基盤整備機構との共済契約の掛金
  2. 確定拠出年金法で規定されている企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金
  3. 地方公共団体が実施している心身障害者扶養共済制度の掛金

上限額は設けられておらず、その年に支払った掛金全額が控除されます。


  • 社会保険料控除

社会保険料控除は、以下の保険料などが対象です。

  1. 健康保険料
  2. 介護保険料
  3. 国民年金保険料
  4. 厚生年金保険料

自身だけではなく、扶養家族の分も合算したものが対象となります。

その年に実際に支払った金額または給与や公的年金等から差し引かれた金額全額が控除されます。


  • 障害者控除

障害者控除は、配偶者や扶養親族に障害者がいる人が対象です。

障害者の状態控除額
原則27万円
特別障害40万円
特別障害者が同居75万円

障害等級や医師によって特別障害かどうかが判断されます。


  • ひとり親控除、寡婦控除

ひとり親控除は、シングルマザーまたはシングルファザーの人が受けることができ、一律35万円が控除されますが、事実婚で住民票の続柄が未届の夫または妻の場合は対象外です。


ただし、下記の要件に該当する寡婦の場合は、控除額が27万円になります。

  1. 子供以外の扶養親族を持つ所得500万円以下の人
  2. ひとり親以外で所得500万円以下の人


  • 勤労学生控除

勤労学生控除は、以下の要件を満たす特定の学校の学生が対象です。

  1. 年間の所得金額が75万円以下
  2. 給与所得以外の所得が10万円以下
一律で27万円控除されます。

一つ一つの控除に条件はありますが、無駄な税金を払わないためにも、一つずつ確認をして、年末調整の際に忘れないように気を付けましょう。

まとめ


今回の記事では、年末調整で申告できる10種類の控除を紹介しました。


この控除は、勤務先で教えてもらえるものではなく、自分で申告をする必要があります。

そうしないと、本来控除できるものが控除されず、余計な税金を支払うことになります。


年末調整で申告できる控除をしっかり把握し、正しい知識をつけておくことが大切です。