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▼この記事を読んでほしい人
  • がん保険をこれから検討する人
  • がん保険の見直しを検討している人
  • 加入しているがん保険の内容をチェックしたい人
▼この記事を読んでわかること 
  • がん保険で最低限必要な保障の内容と根拠
  • がん経験者が選ぶがん保険の保障ランキング
  • 各保障の特徴や確認すべきポイント

がん保険に加入しようと思っていても「どんな保障内容にすればいいかわからない」人も多いのではないでしょうか。がんに罹患してときに保険金が受け取れないのは本末転倒です。必要な保障をがん保険に組み込んで加入できるよう本記事をチェックしておきましょう。

この記事の目次

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がん保険に最低限必要な保障は?

がん保険の内容にするべきか悩んでいるがん保険を検討するにあたり、最低限必要な保障は以下の2つです。

  • 診断一時金
  • 通院保障給付金
がん保険の保障内容は最新のがん治療に合わせて日々新しくなっています。

現代のがん治療は、三大治療と言われている手術・放射線・抗がん剤治療がメインです。近年は入院して治療する機会は減り、通院での治療が増えています。

最新のがん治療に備えられる必要な保障を詳しく解説します。

そもそもがん保険が不要か必要か知りたいという方は以下の記事を参考にしてください。

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入院した場合にも備えておきたい人:診断一時金

がん診断一時金は、がんと医師から診断確定されると保険金が受け取れます。50万から100万円程度の保険金額を設定していることが多く、受け取った金額をこれからの治療費や、入院したときの治療費に当てることが可能です。


がんと診断されるまでの検査代や、仕事を休んだことによる収入減少に対しても使えます。保険金の使い道に指定がないため、自由に使うことが可能です。


厚生労働省のデータによると、平成8年ではがんでの入院は46日でしたが、令和2年では19.6日が平均の入院日数です。


ところが、入院日数は減っているものの1日あたりの入院費用は1日あたり2.1万円かかっています。1回の入院で約40万円かかる状況になったとき、治療費に対してまとまったお金が必要な人は診断一時金が必要になると言えるでしょう。

  • どのような状況になったとき受取条件に該当するか
  • 何年に1度受け取り可能か
  • 受取回数に制限があるか
2回目以降の受取条件は、上記の3つのポイントを必ず調べておきましょう。

通院保障を重視したい人:通院給付金

がんの治療では長期的な入院の可能性が低いため、通院保障を手厚くしておくことが大切です。


これまでは入院して治療をしていましたが、近年は通院の治療が主流です。仕事をしながらでも治療ができるメリットがある反面、通院後の出社や遅刻・早退が増えることで収入減少につながるおそれもあります。


入院して治療する費用が通院になっただけなので、治療費は通常通りかかるうえに交通費や外食費なども加算されればさらに費用はかさみます


通院頻度の一例を紹介すると、放射線治療は月曜日から金曜日までの週5日間、毎日通院して治療します。数週間にわたって行うため、一定期間仕事の制限が必要です。


抗がん剤は点滴や注射・飲み薬での治療が2週間程度の周期で数回繰り返します。治療後に仕事ができたとしても、体調が悪く仕事ができないことも考えられます。


通院の治療費だけでなく、通院でかかる雑費や収入減少に対しての通院保障が必要です。

がん保険の入院保障の重要度は意外と低い

がん治療は長期入院する可能性が低いため、がん保険で入院保障を手厚くする必要はありません。


入院時の治療費は、診断一時金や高額療養費制度を使ってカバーできます。高額療養費制度とは、年齢や所得に応じて治療費の上限額を設ける制度です。


例えば、治療費に100万円かかったとしても、健康保険の3割負担で支払額は30万円です。高額療養費制度を申請すると、約9万円が自己負担の上限額になるため差額の約21万円は戻ってきます。※70歳未満で標準報酬月額28万〜50万円の方を例にしています。


高額療養費制度を使っても、差額ベッド代などの保険適用外の費用が発生し負担が大きくなる可能性があります。貯蓄額に不安があるなど、どうしても入院費用に対しての不安感があれば入院給付金を付帯しましょう。


ただし、医療保険に加入していれば医療保険で入院日額保障があるため、がん保険で追加する必要はありません。がん保険で入院保障はつけずに、診断一時金と通院給付金の用意しておくことをおすすめします。

抗がん剤・ホルモン剤治療給付金

三大治療の一つである抗がん剤治療や、ホルモン剤治療は基本的に健康保険適用の治療なので、高額療養費制度で自己負担はおさえられます。おおよその人は月10万円程度の治療費で済むでしょう。


ホルモン剤は前立腺がんや乳がんなどで使われることが多く、ホルモンの刺激によって増殖するがん細胞をおさえることが目的です。数年から10年程度の治療期間になることが想定され、毎月の治療や投薬の費用がかかります。


治療費がかかるだけでなく、抗がん剤の副作用で思うように家事や育児、仕事ができなくなるおそれもあります。


これまでにかからなかった雑費を含む治療費負担や収入減少をカバーするために、治療ごとに月単位で受け取れる抗がん剤・ホルモン剤治療給付金を用意しましょう。現代の治療方法にあっている保障内容なので、さらに安心感が増します。

できればつけておきたいがん保険の保障

がん保険の中でできればつけておきたい保障は以下の4つです。

  • 上皮内新生物に対する保障
  • 先進医療特約
  • 収入サポート特約
  • 抗がん剤・ホルモン剤治療給付金
普段の生活の中であまり聞きなじみのない保障や特約なので、イメージしやすいように分かりやすく解説していきます。自分に必要になりそうかどうかを判断するポイントは「がんになったときの生活の変化」「仕事ができそうかどうか」などを考えることです。

保険料とのバランスをみて必要かどうか検討しましょう。

上皮内新生物に対する保障

保険会社によっては「上皮内新生物」を保障しないがん保険もあるので注意が必要です


上皮内新生物とは、かんたんにいうと「手術して取ってしまえば転移や再発する可能性がきわめて低いがん」のことです。上皮と呼ばれる部分にがん細胞がとどまっており、中に浸潤していくと悪性のがんとなります。


上皮内新生物の診断割合は全体の10%程度ととても多いわけではありませんが(※)、男女ともに罹患率の高い大腸がんや女性の乳がん・子宮頸がんなどで見つかる場合があります。


※参考:厚生労働省「全国がん登録2018」


ほとんどのがん保険は上皮内新生物を保障対象としていますが、以下のポイントに注意しておきましょう。

  • 悪性のがんと同額で出るタイプ
  • 半額しか出ないタイプ
  • 対象外
  • 受取回数
いくつかのがん保険で迷ったときは、上皮内新生物の保障内容を比較して決めるとよいでしょう。

先進医療特約

先進医療特約は、最先端の医療技術を使った治療方法を受けたいときに、かかった技術料を支払ってくれる特約です。


健康保険が適用されないため治療費は大変高額です。例えば、陽子線治療や重粒子線治療は、特定の指定病院で治療を受ける必要があり、治療費は数百万円にもなります。


「治療の効果が見込まれる」「副作用も少ない」というメリットがあるため、治療方法の選択肢として先進医療が受けられるように備えておきたい保障です。


2014年から2018年の間で、先進医療が受けられる医療機関も約400機関増えており、先進医療を受ける人数も増加傾向にあります。

収入サポート特約

がんに罹患すると、治療費だけでなく働けなくなってしまうことによる収入減少にも備えておく必要があります。


ライフネット生命保険が独自に調査したがん経験者へのアンケート調査では、がんに罹患してから収入が平均83万円減少したという結果もあります。そのまま仕事が続けられればいいですが、体調不良により退職を余儀なくされてしまう場合や、体調不良から遅刻や早退が増えて収入減少につながるかもしれません。


会社員であれば「傷病手当金」という制度を使って、収入の約3分の2の手当てを1年6ヶ月受けられます。自営業やフリーランスの人は、傷病手当金がないので働けなくなってしまうと収入減少に直結します。


会社員の人は、休職中の収入減に耐えうる十分な預貯金があれば不要ですが、貯蓄額に不安があれば収入サポート特約をつけた方がよいでしょう自営業・フリーランスの人は、収入サポート特約もしくは働けなくなったときの就業不能保険を検討しておくことをおすすめします。

がん患者が選ぶがん保険に必要な保障ランキング

がんに実際になった人が選ぶ、がん保険に必要な保障のランキングは以下のとおりです。


1位:通院給付金

2位:抗がん剤治療特約・放射線治療給付金

3位:がん診断一時金

4位:複数回受け取り

5位:先進医療

※出所:「第4回がん患者アンケート」(株式会社ニッセンライフとNPO法人がん患者団体支援機構が、2014年12月~2015年3月にかけて、がん患者とその家族を対象に行った共同調査。2015年6月発表)


近年の治療では通院がメインになっていることから、通院の保障が人気です。通院時の交通費は公共交通機関なのかタクシーなのかなど、手段によって大きく金額が変わります。


通院の出費を保険で備えられれば、体調がよくないときなどに安心してタクシーを利用できるでしょう。


治療した月ごとに抗がん剤・ホルモン剤給付金を受け取り、交通費などの雑費は通院給付金を使うとフルカバーの保障できます。


がんと診断されたあとは、がんに罹患するまでの検査代や初期費用にお金がかかります。治療費以外にかかる費用の例を以下に紹介します。

  • 抗がん剤の副作用による脱毛からウィッグ
  • 健康食品やサプリメント
  • 保険適用外の漢方薬など
治療以外にかかる費用にもがん診断給付金は使えます。再発・転移の可能性の高いがんは、がん診断給付金を複数回受け取れる内容にしておくことでより安心感のある保険になるでしょう。

がん保険に必要な保障を見極めよう!代表的な保障を紹介

自分自身に必要ながん保障かどうかを見定めるために、まずは代表的な保障の種類を紹介します。


保障内容の人気ランキングや必ずつけておきたい保障以外にも、がんへの備えがありますので、今加入中の保険の内容を確認し、保険料とのバランスを考え検討すると良いでしょう。

診断一時金

がんと診断されたときにまとまったお金で受け取れる保障です。


数十万円から200万円程度の保険金が受け取れます。だいたいのがん保険は「はじめてがんと医師により診断確定される」ことが受取要件になります。


2回目以降の受け取り要件は保険会社によって異なるため、必ず比較が必要です。保険会社によっては、複数回受取するための特約をつけないと2回目以降の保障がないものもあるため注意しましょう。


【ポイント】

  • 2回目以降の受取はどんな条件になっているか
  • 初回の受取から何年経てば2回目の受取ができるのか
  • 受取回数に制限があるか
上記の内容が、より保険金を受け取りやすい条件になっているかをチェックして保険選びをしましょう。

入院給付金

がんの治療のために入院したとき、日額保障で受け取れるものです。


1日あたり5,000円や10,000円などの設定として、日額 ✕ 入院日数分を受け取ります。がん保険の入院給付金なので、がんになったときにしか保障の対象になりません


すでに医療保険に加入している場合は、医療保険からも入院給付金が受け取れるため重複して受け取れます。


例えば、医療保険:日額5,000円・がん保険:日額5,000円で加入しており、入院日数は10日間だとします。合算した日額1万円✕10日間で10万円が受け取れる保険金です。


【ポイント】

  • 医療保障からでも入院したら保険金は受け取れる
  • 入院の短期化により入院保障は手厚くするは必要ない
  • 原則がん保険の入院給付金は無制限のため、日数制限のある内容になっていないか確認する

手術給付金

がんの手術をしたときに受け取れる給付金です。


手術したら契約時に設定した金額が受け取れます。入院給付金と同様に、医療保険に加入している場合は医療保険からの手術保障があるため、優先順位は高くありません。


何度も手術する可能性も低いので、不安がある場合はがん診断一時金などの他の保障からカバーするとよいでしょう。健康保険適用内の手術であれば高額療養費制度が使えるため、必ずしも手術給付金が必要とは言えません。


【ポイント】

  • 医療保険でもがんの手術は備えられる
  • 高額療養費制度があるため手厚くしすぎる必要はない

放射線治療給付金

放射線治療は三大治療の一つであり、入院・通院どちらでも行われる治療方法です。


放射線治療給付金は、受取制限があるケースが多いため、できるだけ受け取れる日数の多い保険を選びましょう。


放射線量が受取条件となっているがん保険もありますが、最新のがん保険ではほとんどありません。放射線量が受取条件になっている場合は、ほかの保険にすることをおすすめします。


【ポイント】

  • 受け取り回数が少なくないか他のがん保険と比較する
  • 放射線量が受け取り条件になっていないか確認する

抗がん剤・ホルモン剤治療給付金

抗がん剤やホルモン剤などの薬物療法を受けた場合に、給付金が支払われる給付金です。


高額療養費制度を使ったときの自己負担上限額が約9万円であるから、給付金の額は月額10万円前後で設定することが多いです。高額療養費制度は年齢や所得に応じて自己負担額の上限が変わるため、自分の自己負担額にあわせた金額を設定するとよいでしょう。


抗がん剤・ホルモン剤治療給付金は、がん治療にかかる経済的負担を軽減するのに役立つ特約です。


【ポイント】

  • 受け取り回数が無制限になっているか確認する
  • ホルモン剤だけ回数に制限がないかチェックする

通院給付金

がんの治療のための通院で治療を受けた場合に、給付金が支払われます。給付金の設定は、1日あたり1,000円~10,000円程度が一般的です。


受け取り要件が大きく3つに分かれており、どの保障内容になるかで受け取りやすさが大きく変わります。

  • 退院後の通院(入院していることが前提条件)
  • 入院前後の通院(入院したら入院前の通院も保障)
  • 入院なしで通院のみ
入院をしなくても通院保障してくれるものが1番いい条件なので、どの要件になるか確実に確認しましょう。

【ポイント】
  • 通院日数が無制限か
  • 受取要件は上記3つのうちどのタイプになっているか

先進医療特約

先進医療を受けたときの技術料相当が保険金額です。ほとんどのがん保険は2000万円までの先進医療にかかる技術料を支払います。


商品によっては一時金の保障もプラスでついており、交通費や宿泊費、付添人の費用として使えます。数百円で付けられる特約であり、保険適用外の治療に備えられるので付けておくほうがよいでしょう。


ただし医療保険で先進医療特約に加入している人はがん保険で加入する必要はありません。技術料相当の金額を二重に受け取れないからです。


すでに医療保険に加入している人や、これから加入予定の人は、がん以外の病気に対する先進医療も対象とできる医療保険の先進医療特約を選びましょう。


【ポイント】

  • 重複して先進医療特約に加入していないか

まとめ:がん保険に必要な保障は?

がん保険で最低限必要な保障は「がん診断一時金」と「通院給付金」です。通院での治療が増加したことで、入院給付金を受け取りにくくなりました。


どんな使用用途にもできる「がん診断一時金」で入院費用や一時的な収入減少の補填などに備え、通院でかかる治療費や交通費などを「通院給付金」で備えます。


あわせて放射線治療・抗がん剤ホルモン剤治療給付金もつけておくと、さらに治療費に対して手厚く備えられるため安心です。


しかし、がんの治療方法が変化するとがん保険も新しくなります変化の激しい保険のため、数年に1度は保障内容を確認し、最新の医療事情にあっている保障かをチェックすることをおすすめします。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。