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「個人年金保険料税制適格特約」をご存知でしょうか?この記事では、個人年金保険料税制適格特約とは何か、どんなメリット・デメリットがあるのかについて、解説しています。聞き馴染みのない言葉かもしれませんが、活用していない方は、知らないうちに損しているかもしれません。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

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個人年金保険料税制適格特約とは?

こんにちは。マネーキャリア編集部です。 


老後2,000万円問題が話題になってから、老後資金について不安をおぼえている方が増えているようです。

老後は2,000万円じゃ足りない!
今の生活を維持するので精一杯なのに、老後のためにお金を残すなんて考えられない!
など、様々な声を耳にします。

皆さんは、老後の資金をどのように備えていらっしゃるでしょうか?
老後の資金作りのために個人年金保険に加入している方も多いと思います。

今回は個人年金保険に関係する、個人年金保険料税制適格特約という制度について、ご紹介していきます。
この個人年金保険料税制適格特約について、聞いたことはあるでしょうか?

漢字がやたら並んでいて、なんだか難しそうな印象を受けますが、適用すれば皆さんの家計が少し楽になるかもしれません。

個人年金保険料税制適格特約とは、税金の負担を軽減できる特約です。

しかし、個人年金保険すべてに付加できるわけではありません。


今回は、個人年金保険料税制適格特約について

  • 個人年金保険料税制適格特約とは?
  • 個人年金保険料税制適格特約で、どのくらい還付される?
  • 個人年金保険料税制適格特約の条件は?
  • 個人年金保険料税制適格特約のメリット・デメリットは?
  • 個人年金保険料税制適格特約の制限事項とは?
以上の内容を中心にお伝えしていきます。

「個人年金保険料税制適格特約を初めて聞いた」
「個人年金保険料税制適格特約を利用したいけど、どんなデメリットがあるんだろう?」
という方に向けて、個人年金保険料税制適格特約の概要を解説します。
また、個人年金保険料税制適格特約を利用すべきかの判断材料になる内容となっています。

ぜひ最後までお目通しください。

個人年金保険料税制適格特約を付加すると生命保険料控除を受けられる


個人年金保険料税制適格特約がなくても一般生命保険料控除を活用して、控除を受けることができます。

個人年金保険料税制適格特約を付加しないと、控除が受けられない、ということはありません。

ここでは生命保険料控除について、以下の通り解説していきます。

  • 生命保険料控除とは
  • 生命保険料控除の対象
  • 生命保険料控除の具体的な控除額

生命保険料控除とは

生命保険料控除とは、年間所得からその年に支払った保険料を控除することで、所得税と住民税を軽減させるための制度です。


基礎控除・医療費控除・社会保険料控除などの所得控除のひとつが、生命保険料控除です。


生命保険料控除は、保険契約が開始した時期によって、2つのパターンに分かれます。


新制度の生命保険料控除の種類(保険契約が平成24年1月1日以降の保険の場合)

  • 一般生命保険料控除
  • 介護医療保険料控除
  • 個人年金保険料控除

旧制度の生命保険料控除の種類(保険契約が平成23年12月31日以前の保険の場合)

  • 一般生命保険料控除
  • 個人年金保険料控除

生命保険料控除の対象

生命保険料控除の種類は、対象となる保険や特約の種類によって異なります。
具体的には、次のように分類されています。

一般生命保険料控除
  • 定期保険
  • 終身保険
  • 収入保障保険
  • 学資保険
  • 個人年金保険(個人年金保険料税制適格特約なし)
介護医療保険料控除
  • 医療保険
  • がん保険
  • 介護保険
  • 災害・疾病・生活習慣病・がん入院特約
  • 三大疾病保障特約
  • 先進医療特約
個人年金保険料控除
  • 個人年金保険(個人年金保険料税制適格特約あり)

上記のうち「個人年金保険(個人年金保険料税制適格特約あり)」の保険料が、個人年金保険料控除の対象になっています。

生命保険料控除の具体的な控除額

生命保険料控除のそれぞれの控除額は同じですが、所得税と住民税で金額は分かれています。


また控除額は新制度と旧制度でも異なるので、それぞれをまとめると次の表になります。


新制度の所得税の生命保険料控除の控除額

年間保険料生命保険料控除の金額
2万円以下保険料全額
2万円超〜4万円以下保険料✕1/2+1万円
4万円超〜8万円以下保険料✕1/4+2万円
8万円超〜一律4万円
3種類の合計控除額(上限額)12万円


新制度の住民税の生命保険料控除の計算方法

年間保険料生命保険料控除の金額
1万2,000円以下保険料全額
1万2,000円超〜3万2,000円以下保険料✕1/2+6,000円
3万2,000円超〜5万6,000円以下保険料✕1/4+1万4,000円
5万6,000円超〜一律2万8,000円
3種類の合計控除額(上限額)7万円


個人年金保険に、個人年金保険料税制適格特約を付加していないと、他の保険の保険料枠と取り合いになって、控除額が減ってしまう恐れがあるのです。


例えば、所得税の生命保険料控除について、年間の保険料が死亡保険8万円、個人年金保険(個人年金保険料税制適格特約なし)8万円の場合。


一般生命保険料控除の控除枠を使い切ってしまうため、個人年金保険は控除枠から漏れてしまいます。


一方で死亡保険1万円、学資保険1万円、個人年金保険(個人年金保険料税制適格特約あり)2万円なら、一般生命保険料控除と個人年金保険料控除のそれぞれで控除枠を活用できるのです。


旧制度の控除額は、以下の表のようになります。


旧制度の所得税の生命保険料控除の控除額

年間保険料生命保険料控除の金額
2万5,000円以下保険料全額
2万5,000円超〜5万円以下保険料✕1/2+1万2,500円
5万円超〜10万円以下保険料✕1/4+2万5,000円
10万円超〜一律5万円
3種類の合計控除額(上限額)10万円


旧制度の住民税の生命保険料控除の計算方法

年間保険料生命保険料控除の金額
1万5,000円以下保険料全額
1万5,000円超〜4万円以下保険料✕1/2+7,500円
4万円超〜7万円以下保険料✕1/4+1万7,500円
7万円超〜一律3万5,000円
3種類の合計控除額(上限額)7万円


旧制度では、介護医療保険料控除がないため、より個人年金保険料控除の活用が重要になります。


ちなみに、介護医療保険料控除は、平成22年度の税制改正で改正がありました。

平成24年分の所得税から適用されています。

個人年金保険料税制適格特約、いくら還付される?シミュレーション


以下の条件を例に、個人年金保険料税制適格特約でどれくらい還付されるのか、見てみましょう。

  • 30歳男性
  • 会社員で単身
  • 年収は500万円
  • 個人年金保険(10年確定年金)
  • 基本年金額:38.1万円
  • 払込満了:60歳
  • 年金開始:65歳
  • 保険料:毎月10,000円

課税所得は

500万円(年収)- 144万円(給与所得控除)- 124万円(所得控除)=232万円


になります。


ちなみに給与所得控除額は、収入360万円~660万円の場合、以下のように計算します。


年収500万円×20%+44万円=144万円

収入ごとの計算方法は、令和2年以降は以下の通りです。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで550,000円
1,625,001円から 1,800,000円まで収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から 3,600,000円まで収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から 6,600,000円まで収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から 8,500,000円まで収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上1,950,000円(上限) 

他の年の給与所得控除額は、国税庁のHPに計算方法が載っているので、ご覧になって計算してみてください。


所得控除に関しては、以下の内訳になっています。

  • 社会保険料控除:72万円(支払った金額)
  • 生命保険料控除:4万円(個人年金保険のみ加入の場合)
  • 基礎控除:48万円
所得控除も、国税庁HPに詳細が載っているので、併せてご覧ください。

さて、課税所得は232万円と分かりました。
この金額は、以下の表で所得税率10%になると分かります。

課税所得金額税率控除額
195万円未満5% 0円
195万円以上、330万円未満10% 97,500円
330万円以上、695万円未満20% 427,500円
695万円以上、900万円未満23%636,000円
900万円以上、1800万円未満33%1,536,000円
1800万円以上、4000万円未満40% 2,796,000円
4000万円以上45% 4,796,000円
年間保険料は120,000円(月10,000円×12か月)で、個人年金保険料控除額は、以下の表より40,000円となります。

この控除額分の課税所得が下がるため、40,000円に税率10%を掛けた4,000円の所得税が減り、年末調整等で還付されることになります。

住民税は所得にかかわらず全国的にほぼ10%です。
控除額は以下の表より28,000円で、税率10%とすると2,800円が翌年の住民税から減額されることになります。

所得税
年間の支払保険料等控除額
20,000円以下支払保険料等の全額
20,000円超~40,000円以下支払保険料等×1/2+10,000円
40,000円超~80,000円以下 支払保険料等×1/4+20,000円
80,000円超一律40,000円

住民税
年間の支払保険料等控除額
12,000円以下支払保険料等の全額
12,000円超~32,000円以下支払保険料等×1/2+6,000円
32,000円超~56,000円以下支払保険料等×1/4+14,000円
56,000円超一律28,000円


以下は、個人年金保険料を年間8万円以上支払った場合の軽減額です。

課税所得金額所得税軽減額(年間)住民税軽減額(年間)
195万円未満2,000円2,800円
195万円以上、330万円未満4,000円 2,800円
330万円以上、695万円未満8,000円2,800円
695万円以上、900万円未満9,200円2,800円
900万円以上、1800万円未満13,200円  2,800円
1800万円以上、4000万円未満16,000円  2,800円
4000万円以上18,000円  2,800円

保険料払込期間中は毎年控除を使うことができます。

個人年金保険料税制適格特約の条件!受取人に注意


個人年金保険料税制適格特約を付加するには、以下の条件を満たしている必要があります。
  • 年金受取人が被保険者と同じである
  • 年金受取人が、契約者もしくはその配偶者である
  • 保険料の払込期間が10年以上
  • 確定年金・有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降であること、かつ受取期間が10年以上であること
誰でも個人年金保険料税制適格特約が付加できるわけではないことは、覚えておきましょう。

個人年金保険料税制適格特約の条件について、順番に解説していきます。

個人年金保険料税制適格特約の年金受取人と被保険者

個人年金保険料税制適格特約を付加するうえで、年金受取人と被保険者に関しては、以下の条件があります。

  • 年金受取人が被保険者と同一人であること
  • 年金の受取人は、保険料もしくは掛け金の払込みをする者(=契約者)、またはその配偶者となっていること

個人年金保険での被保険者とは、老後資金を受け取る人のこと。

そのため、年金受取人と被保険者が異なるのは、保険の趣旨に反しています。


また、契約者は必ず、夫婦のどちらかでなくてはなりません。

両親・兄弟・友人が契約者になった場合は、個人年金保険料税制適格特約の付加はできません。


契約者が夫の場合、個人年金保険料税制適格特約が付加できるのは、以下の2パターンになります。

  • 契約者:夫、被保険者:夫、年金受取人:夫
  • 契約者:夫、被保険者:妻、年金受取人:妻
年金受取人と被保険者について、いま一度確認してみましょう。

個人年金保険料税制適格特約の払込期間が10年以上

個人年金保険料税制適格特約を付加するには、保険料払込期間は10年以上であることが条件です。


個人年金保険の保険料支払いには、一括払いもあります。

しかし、一括払いを利用すると、個人年金保険料税制適格特約を付加できません。

また、加入時期が遅く、保険料払込期間が10年より短くなった場合も、付加できません


保険期間ではなく、あくまで保険料の払込期間であることにも注意してください。

  • 保険料払込期間:加入している保険に、保険料を支払う期間のこと
  • 保険期間:保険契約が継続し、保障を受けられる期間のこと
結論としては、10年以上、保険料を支払うかどうかになります。

個人年金保険料税制適格特約の確定・有期年金の場合

確定年金・有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降であること、かつ受取期間が10年以上であることが条件です。


確定年金とは、あらかじめ決められた一定期間、年金を受け取れる年金で、年金受取人が死亡していても、遺族が受け取ることができます。


有期年金とは、あらかじめ決められた一定期間、年金を受け取れますが、年金受取人が死亡している場合は、年金を受け取れません。


これら2つの年金に個人年金保険料税制適格特約を付加するには、年金受取開始が60歳以降で、受取期間が10年以上でなければなりません。


例えば確定年金に加入しているなら、60歳から年金を受け取りはじめ、最低でも70歳まで受け取り続ける必要があるのです。


ちなみに年金を一生涯受け取れる終身年金は、この条件と関係ありません。

変額年金はもともと一般生命保険料控除の対象です。

個人年金保険料税制適格特約のメリット・デメリット


ここまで個人年金保険料税制適格特約の概要をお伝えしてきました。


ここからは、個人年金保険料税制適格特約のメリットとデメリットをご紹介していきます。


メリットは以下2つです。

  • 無料で付加できる
  • 生命保険料控除枠を広く使えるため、節税効果が高まる
デメリットは以下2つです。
  • 条件をクリアしなければならない
  • 条件をクリアするため、契約内容の自由度が下がる
順番に解説していきます。

個人年金保険料の税制適格特約のメリット

個人年金保険料税制適格特約は、無料で付加できます。


また、生命保険料控除枠を広く使えるため、節税効果が高まります。


例えば、死亡保険や学資保険などで年間8万円を支払っている場合、「個人年金保険料税制適格特約「なし」なら控除枠から漏れてしまいます。


しかし、個人年金保険料税制適格特約「あり」なら個人年金保険料控除枠が活用できます。

個人年金保険料の税制適格特約のデメリット

個人年金保険料税制適格特約を付加するには、ご紹介した以下の条件をクリアしなければなりません。

  • 年金受取人が被保険者と同じである
  • 年金受取人が、契約者もしくはその配偶者である
  • 保険料の払込期間が10年以上
  • 確定年金・有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降であること、かつ受取期間が10年以上であること

つまり、節税効果を得るために契約内容を条件に合わせようとすると、自分に適した保障が受けられない恐れがあります。


節税も大切ですが、まずは保険の趣旨に立ち返ることで本質を見失わないようにしましょう。

節税ばかりを気にしていては、手段と目的が逆転する恐れもあります。

保障内容をご自身に最適なものにするのが大前提です。

個人年金保険料税制適格特約の制限事項をチェック


個人年金保険料税制適格特約のある程度の制限が発生します。

具体的には以下の通りです。

  • 個人年金保険料税制適格特約だけを解約することはできない
  • 個人年金保険料税制適格特約を付加した後に、条件を満たさない契約内容に変更できない 
  • 年金額の減額など、契約内容の変更による返戻金は、契約途中で受け取ることができない

例えば条件に合わない、年金受取期間を9年などに変更することはできません。


また年金額を減額すると通常、返戻金を受け取れますが、個人年金保険料税制適格特約を付加している限り、契約期間中は受け取れないことに注意しましょう。


その場合は、所定の利息をつけて積み立てられ、年金受取開始日に増額年金の買い増しに充てられます。


ちなみに返戻金とは、保険金の支払いが発生しないまま、解約や満期を迎えた場合に契約者に返されるお金のことです。


個人年金保険料税制適格特約を付加する前に、これらの制限を容認できるかは把握しておきましょう。

個人年金保険料税制適格特約まとめ

今回は、個人年金保険料税制適格特約について

  • 個人年金保険料税制適格特約を付加すると、生命保険料控除を受けられる
  • 個人年金保険料税制適格特約は、払込期間や受取人に条件が付いている
  • 個人年金保険料税制適格特約のメリット:無料で付加できる
  • 個人年金保険料税制適格特約のデメリット:条件をクリアしなければならない
  • 個人年金保険料税制適格特約には制限事項あり
以上の内容を中心に解説してきましたが、いかがだったでしょうか?

一回記事を読んだだけで理解するのは難しいかもしれません。
もし個人年金保険料税制適格特約を付加したい場合は、本記事の気になる項目を都度見返してみることをおすすめします。

また、個人年金保険料税制適格特約にはいくつか条件がありましたが、条件をクリアするために適していない保険を無理に加入し続けるのも本末転倒です。 

これを機に、保険の見直しをしてみてはいかがでしょうか?

保険でも節税を意識することは大切ですが、節税以前に不要な保険を解約したり、保障内容を見直して、保険料を下げたりするほうが効果的な場合もあります。

保険に関して、ご自身だけで分からないことや不安なことがあれば、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談してみるのも良いかもしれません。

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