個人年金保険料税制適格特約とは?条件やメリット・デメリットを解説のサムネイル画像

「個人年金保険料税制適格特約」をご存知でしょうか?この記事では、個人年金保険料税制適格特約とは何か、どんなメリット・デメリットがあるのかについて、解説しています。聞き馴染みのない言葉かもしれませんが、活用していない方は、知らないうちに損しているかもしれません。

記事監修者「谷川 昌平」

この記事の監修者谷川 昌平
フィナンシャルプランナー

東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

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個人年金保険料税制適格特約とは?

スーパーへ行くと生鮮食品や日用品が高くなったと感じる方が多いのではないでしょか?


総務省統計局によると、2023年4月の消費者物価指数は前年度月比で3.5%上昇しており2020年対比だと5.1%も上昇しています。(参考:総務省統計局HP) 日々の出費がかさむと、家計の見直しや資産運用、節約、節税といったワードが気になります。  

本記事では節税対策に繋がる個人年金保険料税制適格特約について取り上げます。

個人年金保険料税制適格特約とは、生命保険料控除を上手く活用する手段の1つです。
しかし個人年金保険料税制適格特約に関して、下記のような疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。 
  • そもそも個人年金保険料税制適格特約って何か? 
  • 特約を付帯する場合、何か条件はあるのか? 
  • 活用するにあたって、デメリットはないのか?
今回は、個人年金保険料税制適格特約の基礎知識や活用条件、特約のメリット・デメリットについて説明します。

就職して初めてご自身で生命保険を検討している方や生命保険を見直したい方、節税対策を検討したい方はぜひ参考にしてください。

個人年金保険料税制適格特約を付加すると生命保険料控除を受けられる

個人年金保険料税制適格特約の付帯有無に関わらず、生命保険に加入すると生命保険料控除が受けられます。ただし当該特約を付帯すると、生命保険料控除の利用枠が変わります。

ここでは生命保険料控除について、以下の通り解説していきます。

  • 生命保険料控除とは
  • 生命保険料控除の対象
  • 生命保険料控除の具体的な控除額

生命保険料控除とは

生命保険には生命保険料控除という仕組みがあるのはご存じでしょうか? 

生命保険料控除とは、所得から支払った生命保険料の一部を控除した上で所得税を算出することができる制度です。


平成24年1月1日以後に契約した保険の場合、生命保険控除には            

  • 新生命保険料控除
  • 介護医療保険料控除
  • 新個人年金保険料控除

の3種類があります。


また、平成23年12月31日以前に契約した保険の場合は、

  • 旧生命保険料控除
  • 旧個人年金保険料控除

の2種類があります。

生命保険料控除の対象

各保険料控除枠を活用できる主な生命保険は以下の通りです。
新生命保険料控除
旧生命保険料控除 
介護医療保険料控除新個人年金保険料控除
旧個人年金保険料控除 
死亡保険
定期保険
学資保険 
医療保険
がん保険
介護保険 
個人年金保険料税制適格特約を
付帯した個人年金保険
死亡保険や学資保険など同じ控除枠の保険商品に複数加入している場合、控除額の上限値に達しやすくなります。

通常生命保険に加入した場合、「新生命保険料控除」という枠の保険料控除が受けられます。しかし個人年金保険料税制適格特約というオプションを付帯すると、「新生命保険料控除」の枠ではなく「新個人年金保険料控除」の枠で保険料控除が受けられます。

既に新生命保険料控除枠で上限の40,000円の控除を受けている方は、個人年金保険料税制適格特約を付帯することで新たに新個人年金保険料控除枠の支払保険料額に応じた控除を受けることができます。

個人年金保険料税制適格特約の条件!受取人に注意


個人年金保険料税制適格特約を付加するには、以下の条件を満たしている必要があります。
  • 年金受取人が被保険者と同じである
  • 年金受取人が、契約者もしくはその配偶者である
  • 保険料の払込期間が10年以上
  • 確定年金・有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降であること、かつ受取期間が10年以上であること
誰でも個人年金保険料税制適格特約が付加できるわけではないことは、覚えておきましょう。

個人年金保険料税制適格特約の条件について、順番に解説していきます。

個人年金保険料税制適格特約の年金受取人と被保険者

個人年金保険料税制適格特約を付加するうえで、年金受取人と被保険者に関しては、以下の条件があります。

  • 年金受取人が被保険者と同一人であること
  • 年金の受取人は、保険料もしくは掛け金の払込みをする者(=契約者)、またはその配偶者となっていること

個人年金保険での被保険者とは、老後資金を受け取る人のこと。

そのため、年金受取人と被保険者が異なるのは、保険の趣旨に反しています。


また、契約者は必ず、夫婦のどちらかでなくてはなりません。

両親・兄弟・友人が契約者になった場合は、個人年金保険料税制適格特約の付加はできません。


契約者が夫の場合、個人年金保険料税制適格特約が付加できるのは、以下の2パターンになります。

  • 契約者:夫、被保険者:夫、年金受取人:夫
  • 契約者:夫、被保険者:妻、年金受取人:妻
年金受取人と被保険者について、いま一度確認してみましょう。

個人年金保険料税制適格特約の払込期間が10年以上

個人年金保険料税制適格特約を付加するには、保険料払込期間は10年以上であることが条件です。


個人年金保険の保険料支払いには、一括払いもあります。

しかし、一括払いを利用すると、個人年金保険料税制適格特約を付加できません。

また、加入時期が遅く、保険料払込期間が10年より短くなった場合も、付加できません


保険期間ではなく、あくまで保険料の払込期間であることにも注意してください。

  • 保険料払込期間:加入している保険に、保険料を支払う期間のこと
  • 保険期間:保険契約が継続し、保障を受けられる期間のこと
結論としては、10年以上、保険料を支払うかどうかになります。

個人年金保険料税制適格特約の確定・有期年金の場合

確定年金・有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降であること、かつ受取期間が10年以上であることが条件です。


確定年金とは、あらかじめ決められた一定期間、年金を受け取れる年金で、年金受取人が死亡していても、遺族が受け取ることができます。


有期年金とは、あらかじめ決められた一定期間、年金を受け取れますが、年金受取人が死亡している場合は、年金を受け取れません。


これら2つの年金に個人年金保険料税制適格特約を付加するには、年金受取開始が60歳以降で、受取期間が10年以上でなければなりません。


例えば確定年金に加入しているなら、60歳から年金を受け取りはじめ、最低でも70歳まで受け取り続ける必要があるのです。


ちなみに年金を一生涯受け取れる終身年金は、この条件と関係ありません。

変額年金はもともと一般生命保険料控除の対象です。

個人年金保険料税制適格特約のメリット・デメリット


ここまで個人年金保険料税制適格特約の概要をお伝えしてきました。


ここからは、個人年金保険料税制適格特約のメリットとデメリットをご紹介していきます。


メリットは以下2つです。

  • 無料で付加できる
  • 生命保険料控除枠を広く使えるため、節税効果が高まる
デメリットは以下2つです。
  • 条件をクリアしなければならない
  • 条件をクリアするため、契約内容の自由度が下がる
順番に解説していきます。

個人年金保険料の税制適格特約のメリット

個人年金保険料税制適格特約は、無料で付加できます。


また、生命保険料控除枠を広く使えるため、節税効果が高まります。


例えば、死亡保険や学資保険などで年間8万円を支払っている場合、「個人年金保険料税制適格特約「なし」なら控除枠から漏れてしまいます。


しかし、個人年金保険料税制適格特約「あり」なら個人年金保険料控除枠が活用できます。

個人年金保険料の税制適格特約のデメリット

個人年金保険料税制適格特約を付加するには、ご紹介した以下の条件をクリアしなければなりません。

  • 年金受取人が被保険者と同じである
  • 年金受取人が、契約者もしくはその配偶者である
  • 保険料の払込期間が10年以上
  • 確定年金・有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降であること、かつ受取期間が10年以上であること

つまり、節税効果を得るために契約内容を条件に合わせようとすると、自分に適した保障が受けられない恐れがあります。


節税も大切ですが、まずは保険の趣旨に立ち返ることで本質を見失わないようにしましょう。

節税ばかりを気にしていては、手段と目的が逆転する恐れもあります。

保障内容をご自身に最適なものにするのが大前提です。

個人年金保険料税制適格特約の制限事項をチェック


個人年金保険料税制適格特約のある程度の制限が発生します。

具体的には以下の通りです。

  • 個人年金保険料税制適格特約だけを解約することはできない
  • 個人年金保険料税制適格特約を付加した後に、条件を満たさない契約内容に変更できない 
  • 年金額の減額など、契約内容の変更による返戻金は、契約途中で受け取ることができない

例えば条件に合わない、年金受取期間を9年などに変更することはできません。


また年金額を減額すると通常、返戻金を受け取れますが、個人年金保険料税制適格特約を付加している限り、契約期間中は受け取れないことに注意しましょう。


その場合は、所定の利息をつけて積み立てられ、年金受取開始日に増額年金の買い増しに充てられます。


ちなみに返戻金とは、保険金の支払いが発生しないまま、解約や満期を迎えた場合に契約者に返されるお金のことです。


個人年金保険料税制適格特約を付加する前に、これらの制限を容認できるかは把握しておきましょう。

個人年金保険料税制適格特約まとめ

今回は、個人年金保険料税制適格特約について

  • 個人年金保険料税制適格特約を付加すると、生命保険料控除を受けられる
  • 個人年金保険料税制適格特約は、払込期間や受取人に条件が付いている
  • 個人年金保険料税制適格特約のメリット:無料で付加できる
  • 個人年金保険料税制適格特約のデメリット:条件をクリアしなければならない
  • 個人年金保険料税制適格特約には制限事項あり
以上の内容を中心に解説してきましたが、いかがだったでしょうか?

一回記事を読んだだけで理解するのは難しいかもしれません。
もし個人年金保険料税制適格特約を付加したい場合は、本記事の気になる項目を都度見返してみることをおすすめします。

また、個人年金保険料税制適格特約にはいくつか条件がありましたが、条件をクリアするために適していない保険を無理に加入し続けるのも本末転倒です。 

これを機に、保険の見直しをしてみてはいかがでしょうか?

保険でも節税を意識することは大切ですが、節税以前に不要な保険を解約したり、保障内容を見直して、保険料を下げたりするほうが効果的な場合もあります。

保険に関して、ご自身だけで分からないことや不安なことがあれば、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談してみるのも良いかもしれません。

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