
近年の住宅価格高騰により、高額な住宅ローンを組む方が増えています。夫婦2人で力を合せれば払い続けられたが、離婚したら住宅ローンの支払いは厳しい方もいるでしょう。

この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 住宅ローンは離婚したらどうなる?3つのポイントを確認しよう
- 住宅ローンも原則として財産分与の対象となる
- オーバーローン・アンダーローンによって変わってくる
- 支払い義務があるのは住宅ローンの名義人
- 住宅ローン借入中に離婚したらバレる?
- 離婚で家を売却するときの住宅ローンはどうなる?
- オーバーローンの場合
- アンダーローンの場合
- 任意売却する場合
- 名義人が家を出るときのローンはどうなる?妻と子が住み続ける場合
- 住宅ローンの借り換えを検討する
- 妻が家賃として夫に毎月支払いをする
- 住宅ローン借入中に離婚した場合の対策はFPに相談しよう
- 名義人が家に住み続けるときのローンはどうなる?
- 【まとめ】離婚時の住宅ローンは状況によって対処法が異なる点に注意しよう
住宅ローンは離婚したらどうなる?3つのポイントを確認しよう
- 住宅ローンも原則として財産分与の対象となる
- オーバーローン・アンダーローンによって変わってくる
- 支払い義務があるのは住宅ローンの名義人
住宅ローンも原則として財産分与の対象となる
離婚する際は夫婦共有の財産を公平に分配する必要があり、住宅ローンも原則として財産分与の対象になります。なお、住宅ローンが残っている住宅はマイナスの財産になるので注意が必要です。ただし、例外として住宅ローンの残高が住宅の価値を上回っていれば「オーバーローン」となり、資産価値は0円とみなされます。
離婚しても住宅ローンは免除されません。住宅ローンの支払い義務があるのはローンの名義人ですが、話し合いによって2人で協力して支払う形にもっていくことも可能です。
オーバーローン・アンダーローンによって変わってくる
住宅ローンの契約形式には「単独債務」「連帯債務」「連帯保証」「ペアローン」の4つがあります。4つの違いは以下の表のとおりです。
契約形式 | 債務者 | 連帯 |
---|---|---|
単独債務 | 1人 | 無し |
連帯保証 | 1人 | 有 |
連帯債務 | 主債務者1人 連帯債務者1人 | 有 |
ペアローン | 2人(夫婦) | 有 |
単独債務とは、夫婦どちらか1人が主債務者となる契約です。かつては単独債務者が一般的な契約形式でした。住宅ローンの名義人は主債務者のみで、万が一住宅ローンを支払えなくなっても、離婚した配偶者に支払い義務はありません。
連帯保証人は、債務者が住宅ローンを支払えなくなったときだけ連帯保証人に支払いが求められる契約形式です。債務者が住宅ローンを支払っている限り、支払いの義務は生じません。
住宅ローンの残高によって「オーバーローン」と「アンダーローン」のどちらかに分類されます。
- オーバーローン:住宅の現在価値よりもローンの残債のほうが多い
- アンダーローン:住宅の現在価値がローンの残債よりも高い
アンダーローンの場合は住宅を売却した金額で残りの住宅ローンを返済し、残った金額を財産分与する方法もあります。また、住宅ローンの残債が少ない場合は二人の共有財産から残債を支払い、プラスの財産にしたうえで改めて財産分与を行ってもいいでしょう。
一方、オーバーローンの場合は住宅を売却しても残債が残ります。残債が貯金額よりも少なければ、残債を貯金で相殺すると財産分与がスムーズです。しかし、住宅の価値よりローンのほうが多い場合は、離婚後も二人で協力しながら返済を続けていくことが必要です。
支払い義務があるのは住宅ローンの名義人
住宅ローン借入中に離婚したらバレる?
住宅ローン借入中に離婚した場合、金融機関に必ずバレるとは限りませんが、様々なタイミングで発覚する可能性があります。
特に、住所変更手続きや収入合算・連帯保証人の変更、住宅ローン控除の手続きなどで離婚の事実が判明することが多いです。
また、金融機関によっては定期的な確認を行っており、その際に家族構成の変化が発覚する場合もあります。
離婚を隠し続けることは困難であり、後々トラブルになるリスクが高いため、適切なタイミングで金融機関に相談することをおすすめします。
離婚で家を売却するときの住宅ローンはどうなる?
離婚する場合「家を売却して住宅ローンを返済したい」「家を売って得た現金を財産分与したい」と考える方も多いでしょう。住宅ローンが残っている住宅を売却する場合、残高によって対処法が異なります。
ここでは、住宅ローンの残った家を売却する条件として以下の3つを解説します。
- オーバーローンの場合
- アンダーローンの場合
- 任意売却する場合
オーバーローンの場合
オーバーローンとは、住宅ローンの残高が住宅と不動産の価値を上回っている状態です。例えば、住宅ローンの残高が2,000万円、住宅の売却額が1,500万円だった場合、500万円の負債が残ります。
負債の500万円は、原則として名義人が支払わなければなりません。貯金から出す、夫婦2人で折半するなど返済の方法は複数あるので、話し合って決めてください。
なお「もう少し返済すればオーバーローンからアンダーローンになる」等の場合は、家をいったん賃貸に出すなどして住宅ローンを返済し続けたほうが長い目で見るとお得になる可能性もあります。
オーバーローンの住宅を売却する場合は、慎重に検討しましょう。
アンダーローンの場合
アンダーローンの場合は、住宅を売却すれば住宅ローンを売却できます。離婚後は夫婦どちらも現在の家に住む予定がない場合は、売却したほうが財産分与がスムーズにいくでしょう。
アンダーローンで家を売却する場合、住宅ローンを返済して余ったお金を分配する方法を話し合う必要があります。なお、結婚しているときに住宅ローンを組んで住宅を購入した場合は、契約形式に関わらず住宅は夫婦の共有財産とみなされる可能性が高いです。
そのため、売却して得た現金は夫婦平等で分けるのが原則です。夫婦どちらかが専業主婦で収入がなく、どちらかがずっと住宅ローンを払っていた場合も分配は平等に行いましょう。
任意売却する場合
任意売却とは、住宅ローン残高があり支払いも難しい場合に家を売却する方法の1つです。借入先の許可を得る必要がありますが、競売にかけられるより高値で家を売却できる可能性があります。
例えば、住宅ローンの残高が4,000万円あり住宅の価値が2,000万円の場合、売却しても2,000万円の負債が残ります。離婚して1人の収入では住宅ローンの返済ができない場合は、借入先に任意売却の相談をしてみましょう。
ただし、必ず任意売却できるとは限りません。住宅ローンが滞った場合は信用情報に傷がつくリスクもあります。
名義人が家を出るときのローンはどうなる?妻と子が住み続ける場合

離婚によって名義人が家を離れて妻と子どもが住宅ローンが残った家に住み続けるケースもあります。この場合の対処法を、下記2点から解説します。
- 住宅ローンの借り換えを検討する
- 妻が家賃として夫に毎月支払いをする
住宅ローンの借り換えを検討する
住宅ローンの名義変更は条件が厳しく、離婚では認められないケースもあります。そのため、名義人をスムーズに変えたい場合は「住宅ローンの借り換え」を検討してみましょう。
住宅ローンの借り換えを実施すれば現在の住宅ローンは完済できるので、名義人の変更もスムーズです。住宅ローンの名義人を変更できれば不動産の名義変更もできるのがメリットです。
ただし、住宅ローンの借り換えを行うには妻側に十分な収入が必要です。単独債務はもちろんのこと、ペアローンや連帯債務を妻の単独債務にしたい場合も、収入の審査があります。
収入や住宅ローンの残高によっては審査が通らない可能性もあるので、注意が必要です。
妻が家賃として夫に毎月支払いをする
妻が住宅ローンの負担分を家賃として夫に支払い、夫が自分の分と合わせて住宅ローンを返済する方法もあります。住宅ローンの借り換えが難しい場合は、この方法も検討してみましょう。
ただし、事情があって元配偶者と連絡を取りたくない場合等はこの方法は難しいでしょう。また、夫が妻の分を着服してしまう恐れもあります。
金銭が絡む取り決めは、弁護士をはじめとする法律家に「公正証書」を作成してもらうなど、不正が発生しないように対処してください。そうすれば、離婚後のトラブルを防げます。
住宅ローン借入中に離婚した場合の対策はFPに相談しよう

離婚すると、収入や支出のバランスが大きく変化するため、住宅ローン返済の継続に不安を感じる方も少なくありません。
加えて、子どもの養育費や教育資金の確保など、新たな支出への対応も必要になります。
「家計を見直したいが、何から手をつけていいかわからない」と感じる場合は、無料FP相談を活用しましょう。
住宅ローンの返済計画はもちろん、教育資金の準備や、今後のライフプランに沿った貯蓄・支出の最適化など、幅広く相談できます。
たとえば、配偶者からまとまった養育費を受け取った場合、その資金を貯蓄すべきか、運用に回すべきかといった判断も、FPに相談することで冷静かつ合理的に進められるでしょう。

名義人が家に住み続けるときのローンはどうなる?
名義人が住宅ローンが残った家に住み続ける場合は、特に問題はありません。家をマイナスの財産と考え、預金からマイナス分を補填する等他の財産と相殺すれば、財産分与が完了します。
例えば、預金が3,000万、住宅ローンの残高が2,000万、査定の結果家が1,500万円の価値があった場合、負債は500万円です。夫が名義人で家に残る場合、妻が1,000万、夫が2,000万円を受け取れば財産分与が完了します。
ただし、夫と妻が共同債務であったりペアローンを組んでいたりすると話が複雑になります。妻が家を出ても住宅ローンの支払い義務は残るので、それを踏まえたうえで財産分与をしてください。
【まとめ】離婚時の住宅ローンは状況によって対処法が異なる点に注意しよう

住宅ローンが残った住宅がある状態で離婚する場合、ローンの残高や契約形式によって対処法が異なります。単独債務の場合かつ1人でも住宅ローンを支払っていける場合は、住宅ローンの名義人が家に残り、夫、もしくは妻が家を出ても問題ありません。
しかし、共同名義やペアローンの場合は不動産の名義をどちらかに移すか家を売却して住宅ローンを相殺したほうがトラブルを防げます。住宅ローンの借り換えを検討している場合は、マネーキャリアに相談してみましょう。
住宅ローンの借り換えはもちろんのこと、家計の見直しをはじめとして幅広いお金の相談が何度でも無料で可能です。
